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  <    <  ヘルスケア分野で起業・会社設立する場合の経営のポイントと事業の進め方

ヘルスケア分野で起業・会社設立する場合の経営のポイントと事業の進め方

コロナ禍によって国民の健康意識が以前に増して強まり、企業でも従業員の健康を重視した経営(健康経営)が注目されるようになってきました。このような健康への関心の高まりはビジネスチャンスとなり、様々な事業が登場してきています。

 

そこで今回の記事では、ヘルスケアビジネスで起業・会社設立する際の経営上の重要ポイントや事業の進め方を解説します。

 

ヘルスケア業界の市場状況、事業分野、新規ビジネスの事例、同業界で事業を始める場合のポイント等を説明していきますので、この分野の仕事で社会貢献したい方は参考にしてみてください。

 

 

1 ヘルスケアビジネスの現状

ヘルスケアビジネスの現状

 

ヘルスケアビジネスは、「医療領域」と「ヘルスケア領域」に分けることが可能です。

 

「医療領域」とは、病人や怪我人に対して行う医師や病院等の医療サービス(診断、治療や手術等)に関する分野で、その医療サービスには医療機器や医薬品などが必要となります。従って、この医療サービスや医療機器・医薬品等の提供に関する分野が医療領域です。

 

医療サービスでは医師免許などの資格が必要であり、医療機器や医薬品などの製造についても薬機法の制約を受けることが多く、専門的かつ高度な事業領域でありビジネスとして参入するのは容易でありません。

 

なお、この医療分野はさらに3つに分けることが可能です。A)医師が診療等に使用する際の製品やサービス、B)病院等のオペレーションとして使用される製品やサービス、C)患者等が使用する製品やサービス、になります。

 

Aは上記の通り法規制に縛られ高度で専門性が要求されますが、BやCの場合はAよりも緩くなる可能性があり参入もAよりは容易です。従って、医療分野での専門的な知識やノウハウ等がない場合にはBやCの分野が参入しやすい事業領域になるでしょう。

 

これに対して「ヘルスケア領域」は上記の医療分野以外の、患者や生活者等が医師等の指導なしに個人で使用する製品やサービスを対象とする分野です。ヘルスケアとは、一般的に健康の維持や増進のための行為、および健康管理を指すことばであり、主に個人の判断で行う行為と言えるでしょう。

 

なお、ヘルスケア領域を広義で捉える場合、上記の医療行為の治療等の部分も含まれるケースもありますが、この記事では治療は直接的にはヘルスケア領域には含まないものとします。

 

そのヘルスケア領域は、「保険・予防」、「健康増進」と「美容」などに分類されます。「保険・予防」の製品・サービスの対象は、運動、食事(栄養)、睡眠、疲労、禁煙、メンタルヘルス、感染予防、などです。

 

「健康増進」の対象は、スポーツ、飲食(料理)、住環境、いやし、コミュニケーション、ワークライフバランス、などになります。「美容」の対象は、フィットネス、エステ、スパ、スキンケア、メーク、アンチエイジング、などです。

 

なお、ヘルスケア領域に介護支援関連事業を含めることもあります。

 

 

1-1 ヘルスケアビジネスの市場概要

ここではヘルスケアビジネスの市場について確認しましょう。経済産業省九州経済産業局の「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」の資料によると、「ヘルスケア産業(公的保険外サービスの産業群)の市場規模(推計)」(2017年度調査)(P11)は下表の通りです。

 

単位:兆円
ヘルスケア産業の主要分野 2016年 2020年 2025年
・患者/要支援・要介護者の生活を支援するもの 約15.8 約17.3 約20.6
・健康保持・増進に働きかけるもの 約9.2 約10.3 約12.5
合計 約25.0 約27.6 約33.1

 

上の図は公的保険外サービスの産業群としてのヘルスケア産業の全体像を示しています。その市場規模は2016年が約25兆円でしたが、2025年には約33兆円になると推計されています。

 

上記の主要分野について、各々の領域の市場規模を示した資料が下図です(各分野の内容や具体的なサービス内容は後述)。

 

・健康保持・増進に働きかけるもの 単位:億円
分野 2016年 2025年(予測)
健康経営を支えるサービス 5600 7600
300 600
10200 11200
4000 5200
運動 7100 15900
1000 1300
32000 41600
睡眠 1500 1900
遊・学 23800 32000
機能補完 2700 3400
予防(感染予防) 3600 4000
*「衣」の分野については推計が困難のため試算されていない

 

・患者/要支援・要介護者の生活を支援するもの 単位:億円
分野 2016年 2025年(予測)
保険 72200 93600
患者向け商品・サービス 600 1000
要介護/支援者向け商品・サービス 83800 108600
疾患/介護共通商品・サービス 1200 2300

 

このようにヘルスケアビジネスの市場規模は非常に大きいですが、政府としては、国民の健康の保持・増進のためだけでなく、年々増大する公的医療・介護保険料(からの費用負担)への対応が求められています。

 

そのため、より効率的な医療・介護サービスの提供とともに病気・ケガ等の予防に役立つサービスの充実を図ることが必要となっているのです。こうした背景により、ヘルスケアビジネス市場は今後も拡大する可能性が高く、ビジネス機会の増大が期待されます。

 

 

2 ヘルスケアビジネスの今後

ヘルスケアビジネスの今後

 

ヘルスケアビジネスが今後どのような方向へと進むのかという点について見ていきましょう。

 

 

2-1 国のヘルスケア政策

2021年度の予算ベースによると、社会保障費のうち、医療費は40.7兆円、介護費が12.7兆円となっており、巨額の費用が拠出されています。一人当たり医療費を見ると、「65歳以降急速に増加し、80歳以降は入院にかかる費用(入院+食事・生活療養)の割合が高くなる」という傾向が見られます。

 

そして、医科診療費の傷病別内訳(2013年度)では、その3分の1以上が生活習慣病関連で、そのほかでは、老化に伴う疾患、精神・神経の疾患の占める割合が高い、という傾向が見られました。

 

また、平均寿命や健康寿命で考えると、日本社会は平均寿命では世界一だが、健康寿命は平均寿命より約10年短い点が指摘されているのです(平成27年版高齢社会白書)。

 

こうした状況を踏まえて政府は、以下の政策を推進してきています。

 

  • ・「あるべき医療費・介護費の実現」を目指し、公的保険外の予防・健康管理サービスの活用で、生活習慣の改善や受診勧奨等を促し、「国民の健康寿命の延伸」と「新産業の創出」を同時に達成していく
  •  

  • ・具体的には、①生活習慣病等は、重症化後の治療から予防や早期診断・早期治療への重点を図る、②地域包括ケアシステムと連携した事業(介護予防・生活支援等)に取り組む
  •  

  • ・また、地域では、①高齢化に伴う地域の多様な健康ニーズを充足する、②農業・観光等の地域産業やスポーツ関連産業等との連携による新産業を創出する、③産業創出に向けた基盤整備により、「経済活性化」と「あるべき医療費・介護費の実現」に繋げる

 

以上の通り、国民の寿命の延伸と医療費・介護費の適正化に加えて、これらを実現するための新産業を生み出し経済を活性化できるように政府は取組んでおり、今後もこうした政策が継続される見込みです。

 

なお、3番目の「地域におけるヘルスケア産業の創出」については、「地域版次世代ヘルスケア産業協議会」が各地域に設立され、地域での、①健康への気づき、②法定健診への誘導、③結果に関する医師による相談・助言、④リスクの大小に応じた対応(予防から医療行為まで)を切れ目なく提供できる仕組みが構築されます。

 

具体的には、「地域発の新しいヘルスケアサービスの創出、地域のヘルスケアサービスの振興による地域包括ケアシステムの補完」、「地域内外のヘルスケア事業者に実証フィールドを提供し、併せて地域住民がその効果を享受することができる体制の整備」、が上記の協議会により推進されているのです。

 

 

2-2 新型コロナの影響

新型コロナの感染防止対策の推進に伴い、人々の健康や衛生面に配慮した行動が以前に増して強まってきました。具体的には、人やモノとの接触や混雑する場所等への移動を極力避け、うがいや手洗い必ず行うといった感染防止に向けた行動を取るのが当たり前になっています。

 

また、感染防止の意識が健康意識をさらに強化させ、体に良いことをする(運動する、良い睡眠をとる 等)、体に良い食事をとる、といった行動へと繋がっているのです。

 

ネットリサーチを運営するマイボイスコム株式会社の「健康意識に関する調査」の6回目の結果によると、「健康に気を付けている度合」における、「気を付けている」人の割合は、コロナ以前の2019年では69.3%でしたが、コロナの感染拡大後の2021年では73.6%に増加しました。

 

直近の推移では減少傾向でしたが、コロナの影響により増加したのです。また、「健康の維持・増進のために取り組んでいる分野」については、「食生活」「睡眠」「運動」がトップ3ですが、2019年と比較して2021年では各々の増加が確認できます。

 

国の「健康の保持・増進」にかかる政策推進に加えコロナの影響により、セルフメディケーション(自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で対応すること)などの意識が高められ、ヘルスケア産業では、特に「食生活」「睡眠」「運動」等の分野での需要が増える可能性が高いです。

 

また、コロナ禍においては医療現場でのクラスターや医療資源の逼迫化といった状況の発生が、医療アクセスのあり方を再考する契機となりました。具体的には、遠隔健康医療相談やオンライン診療等の遠隔によるサービスの提供が普及しつつあります。

 

また、非接触・非対面の対応が要請され、医療現場のデジタル化が進み地域の医療連携ネットワークが進展する、といった状況が促進されているのです。

 

 

2-3 デジタル技術の活用

医療・ヘルスケア産業においてもIT・デジタル技術を活用した業務変革が多く見られるようになってきました。

 

医療・介護等の社会保障給付費の増大が懸念される現状においては、公的保険サービスを高度化・効率化して治療効果を向上させ、予防・予後サービスの充実を図り病気になりにくい社会の実現が不可欠となっています。

 

この目的達成のために医療・ヘルスケア産業でのデジタル技術の活用が重視されているのです。具体的には、デジタル技術の進展に伴い新たな医療機器・サービスが登場し利用されることで、以下のような変化が期待されています。

 

  • ・スポットの診断や治療が中心だった医療は、予防段階から予後までを常時連続的に管理するヘルスケアへ
  •  

  • ・遺伝子情報等の医療データの積極的な活用により、個人毎に個別化・最適化された医療や健康管理の実現へ
  •  

  • ・あらゆる場所でヘルスケアサービスの提供ができるようになり、医師や患者は物理的制約からの解放

 

「健康管理」では、「健康管理アプリ」や「DTC遺伝子検査」等、「診断」では「AI画像診断」や「ゲノム診断」等、「治療」では「再生医療」「手術ロボット」「バイオ医薬品」等、「予後」では「見守り機器」「モニタリング機器・サービス」といった利用が進んでいます。

 

なお、新型コロナの感染対策の一環として普及し始めている遠隔での健康相談やオンライン診療等では、当然デジタル技術の活用が欠かせません。例えば、ウェアラブルデバイス・アプリを活用したサービスなどが益々重要になるでしょう。

 

 

2-4 健康経営の推進

経済産業省の定義では、「健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。

 

企業理念に基づき、従業員等への健康投資(業員の健康保持・増進に取り組むこと)に努めることは、従業員の活力や業務の生産性の向上等をもたらして組織の活性化に繋がり、結果として業績向上や株価向上に結び付くと期待されます。

 

この健康経営は、国の日本再興戦略や未来投資戦略で位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取組の一つであり、企業はその実践を要望されているのです。

 

その健康経営の実践により、様々なヘルスケア関連の製品・サービス等が利用されることとなるため、健康経営を推進する企業はヘルスケア産業にとっては有望なターゲットの一つになり得えます。なお、健康経営の実施には以下のようなサービス等の利用が必要です。

 

・計画支援

従業員の健康課題の把握、健康課題解決のための有効な取組の設定、健康経営で実現する目標値と目標年限の明確化等

 

・制度や施策を策定する環境整備の支援

ヘルスリテラシー向上に関する研修の提供、ワークライフバランスや病気と仕事の両立に関する就業規則などの社内規定の整備等

 

・施策の実施支援

食生活の改善や運動機会の増進の指導、感染症予防の指導、メンタルヘルス不調者に対する対応、受動喫煙対策の指導等

 

 

3 ヘルスケアビジネスの事業

ヘルスケアビジネスの事業

 

ここでは先の経済産業省の「ヘルスケア産業(公的保険外サービスの産業群)の市場規模」の内容を中心に事業内容や今後、有望と期待されている事業などを紹介しましょう。

 

 

3-1 「健康保持・増進に働きかけるもの」の事業

 

●健康経営を支えるサービス

 

この事業は「従業員が健康的に働けるように職場環境を整えるための企業・保険者向けサービス」と定義され、「健診事務代行」や「メンタルヘルス対策」などが該当します。

 

・健診事務代行

これは、企業等で働く従業員・職員の健康診断のリスト作成、健診機関への予約、受信票の配布から健診結果の発送、未診者への勧奨、健診結果の集計・データ化、保健指導、などを組織に代わって行うサービスのことです。

健康管理業務全般の支援のほか、組織の健康状態の分析などのサービスもあります。

 

・メンタルヘルス対策

これは、職場や家庭等での仕事や人間関係などの悩みや不安等を解消できるように支援するサービスです。従業員のメンタルヘルス疾患による休業や離職の増加が企業経営を圧迫しかねないため、こうしたサービスは増えていくでしょう。

 

●知

「健康の保持・増進に役に立つ情報を提供する商品およびサービス」のことで、「ヘルスケア関連アプリ」や「ヘルスケア関連書籍・雑誌」などが該当します。

 

・ヘルスケア関連デバイスおよびアプリ

ヘルスケアアプリは、歩数等の運動結果と消費カロリー、体重、血圧、睡眠時間、などの健康に関する様々なデータをまとめ・記録するためのアプリケーションです。

 

そのヘルスケアアプリを利用するためにはデバイスが必要ですが、例えばApple Watch等のウェアラブルデバイスなどが該当します。これらを連携させて利用することで使用者は自身の健康状態等を把握できるのです。

 

人々の健康意識の高まりの中でこうした製品・アプリに対するニーズは強まっていくでしょう。

 

・ヘルスケア関連書籍・雑誌

医療や健康等に関する書籍や雑誌は以前から様々なものが発刊されており、現在ではヘルスケア関連のビジネス本などの発刊も多いです。ヘルスケア分野へのIT・デジタル技術の活用が進む中、「ヘルステック」などをテーマとした書籍が増えています。

 

●測

これは、「自身や家族の健康状態を把握するためのデバイスおよびサービス」のことで、「検査・健診サービス」や「計測機器」などが該当します。

 

・検査・健診サービス

これは、健診機関、企業、健康保険組合からの健康診断や、人間ドックの検体検査の受託、オプション検査の受託、などのサービスのことです。健診項目は、がん、脳疾患、心疾患、肝疾患、認知症、ホルモン、アレルギー、女性向けなどと多岐にわたります。

 

・計測機器

この分野の計測機器は、先のウェアラブルデバイスなども含まれます。スマートウォッチによるバイタルチェック、AIカメラによる動き・転倒のチェック、睡眠や歩数、消費カロリーを計測するリストバンド、睡眠サイクル、心拍数、いびきを検知・記録するベッドセンサー、などが提供されています。

 

●癒

ヘルスケアビジネスの癒し事業

 

これは、「健康を保持・増進するために心身をリラックス・リフレッシュする商品・サービス、および、リラクゼーションに関する教育・指導サービス」と定義されており、該当する製品・サービスは「エステ・リラクゼーションサービス」や「リラクゼーション用品」などです。

 

・エステ・リラクゼーションサービス

エステは「エステティック」の略称で人の肌、身体、心の特徴や状態を踏まえ、手技、化粧品、栄養補助食品、機器、用具、等を使用して、心地よさと安らぎを与え、肌や身体を健康的で美しい状態にする行為を指します。

 

リラクゼーションサービスは、心と身体の「休養」「気晴らし」「緊張の緩和」などをもたらすサービスのことです。具体的には、空間演出などにより心を穏やかにさせ、身体には手指などを使って施術ポイント等をほぐし心身を快適な状態に導く行為を指します。

 

エステサロンが痩身、脱毛、フェイシャルなどの美容に関するサービスに加え、リラクゼーションサービスを提供するケースも多いです。なお、エステ・リラクゼーションサービスは、国家資格を必要とする医療(治療)行為ではありません。

 

そのためエステサロン等では魅力的なメニューをターゲットに合わせて提供するといった経営が重要になります。

 

●運動

ヘルスケアビジネスの運動事業

 

これは、「健康を保持・増進するために必要な適度な運動を提供するための機器・用具および、運動機会を提供する場所(施設)、および運動に関する教育指導サービス」のことです。具体的には「フィットネスクラブ」や「トレーニングマシーン」などが該当します。

 

・フィットネスクラブ(スポーツクラブ等)

フィットネスクラブは「室内プール、トレーニングジム、スタジオなどの運動施設を有し、会員に提供する事業所」が該当し、運動をする目的で個人や企業(従業員向けに)が利用します。

 

タイプとしては、大型の屋内施設でスポーツ、ダンス教室、マシーンを使ったフィットネス、などができ、サウナ等が設置された「総合型」のほか、ヨガ・ピラティス、(スポーツ)格闘技などを小型の屋内施設で行う「特定目的型」があります。

 

スポーツクラブ業界は、健康ブームや学校での武道やダンスの必修化などにより2019年までは穏やかに売上高および会員数が伸びてきましたが、新型コロナの影響で2020年は大きく落ち込みました。今後はオンライン指導のサービスが増える可能性が高いです。

 

最近では運動を目的としたジム運営からヘルスケアの視点を取り入れた事業展開が見られるようになってきました。例えば、介護認定を受けた高齢者や介護予防・日常生活支援等の対象者向けにサービスを提供するジムを兼ねたデイサービス施設が登場しています。

 

また、フィットネスを中心に温浴施設、保育所やイベントスペースを完備した複合施設の運営事業なども見られます。

 

・フィットネス・トレーニングマシーン

これらは運動するための機械類のことで、家庭用とジムなどで使用される業務用に分かれます。

 

この機械類を提供する事業もスポーツクラブ等と同様の成長がみられましたが、コロナ禍にあっては業務用に悪い影響が及ぶ一方、家庭用は逆に需要増になる見込みです。

 

●住

これは、「健康的で、身体的負荷のかかりにくい住環境を提供するために必要な商品およびサービス」のことで、具体的には「健康志向家電・設備」などが該当します。

 

・健康志向家電・設備

製品としては、「健康家電」や「美容家電」などです。健康家電は、健康の増進や体型の維持向上に役立つ家電製品類のことで、美容家電は肌の手入れ、顔・髪、全身の美容に効果・効能を有する家電製品類と考えればよいでしょう。

 

コロナ禍では、外出自粛等が要請され運動不足等を気にする人が増えたため、健康家電も美容家電も需要が伸びており、特に健康家電は2020年度が前年比10%以上も伸びたというデータも見られます。

 

最近の売れ筋商品としては、「非接触型の赤外線体温計」「デジタル自動血圧計」「ストレッチマット」「電動筋膜マッサージ器」「腹筋ベルト」「スマホ連動の体組成計」、などです。

 

●食

これは、「健康を保持・増進するために必要な栄養を補う食品および上記食品を提供する場所、および食に関連する教育指導サービス」と定義されており、具体的には「サプリメント」「健康食品」「OTC医薬品」「医薬部外品」などの製品が該当します。

 

・サプリメント

これは、特定の成分が濃縮され、錠剤、カプセル、顆粒などの状態にされた健康食品のことです。サプリメントや次の健康食品は、法律上において「食品」に分類されますが、内容の定義は特にありません。

 

サプリメントの代表的な成分としては、ビタミン、ミネラル、コラーゲン、ヒアルロン酸やアミノ酸、などが有名で、健康増進、美容、肉体強化などを目的に利用されています。

 

サプリメントの中には「機能性表示食品」に該当するものもあり、その機能性表示食品の需要は他のサプリメントよりも伸びが大きいです(2019年度は前年度比29.8%増の1,329億円となり、サプリメント市場全体に占める割合は16.7%)。

 

なお、機能性表示食品とは、「事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品」と定義されています。

 

・健康食品

これは、「健康の保持増進に資する食品全般」のことで、国が保険効果や健康効果などの表示を許可していない食品です。ただし、「特別用途食品」「特定保健用食品」「栄養機能食品」は、特定の限られた範囲において特定の保健機能や栄養機能を表示することが許されています。

 

株式会社矢野経済研究所の「健康食品市場に関する調査を実施(2022年)」によると、「健康食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで、2020年度が8,659億9,000万円(前年度比0.4%増)と推計され、2021年度は8,880億3,000万円(同2.5%増)」の見込みと発表されています。

 

新型コロナの感染の収束が見えない現代社会においては健康食品市場の拡大も期待できるはずです。

 

・OTC医薬品

これは、薬局やドラッグストアなどで処方せん無しに購入できる医薬品のことです。通称「大衆薬」あるいは「市販薬」と呼ばれてきた医薬品ですが、現在では「OTC医薬品」と呼ばれるようになっています。

 

製品の種類としては、風邪薬、ビタミン剤、点眼薬、胃腸薬、殺菌消毒薬、痔疾用薬、解熱鎮痛剤、水虫薬、発毛薬、などです。

 

コロナ禍で医療機関での受診等が控えられる中、OTC医薬品の価値は以前に増して高まっており、その需要増が期待されます。

 

●睡眠

これは、「健康を保持・増進するために質の高い睡眠を提供するための商品およびサービス、および睡眠に関する教育指導サービス」のことです。睡眠の障害を改善したり、睡眠の質を向上させたりするための「機能性寝具」や「睡眠の可視化、いびきの測定が可能なアプリ」などが該当します。

 

・機能性寝具

機能性寝具は、睡眠の質をよくする何らかの機能を有する寝具のことです。例えば、寝返りが打ちやすい高反発素材を使った布団や枕などが該当します。

 

最近では、IoT技術を活用し、睡眠時の就寝者の状態を、客観的・定量的に把握する機能が付与されている「スマート寝具」もこの機能性寝具の1つです。質の悪い睡眠は身体に悪影響を及ぼしかねないため、ストレスや不安の多い現代社会にあっては貴重な製品として位置づけられるでしょう。

 

・睡眠の可視化、いびきの測定が可能なアプリ

これらの製品・サービスとしては、「睡眠分析」や「いびき検査」などの機器やアプリなどがあります。

 

「睡眠(分析)アプリ」は、個人の睡眠の時間、睡眠のリズム、いびきの有無などを計測するソフトウェアのことです。具体的には、アイフォンあるいはアンドロイドのスマホの本体に内蔵されている加速度センサーとマイクによって、個人の睡眠の深さ、寝返り等の振動、いびきの音、などを検出するアプリなどが該当します。

 

ウェアラブルタイプのリストバンド型や腕時計型のほか、マット型、据置型の睡眠計ガジェット(端末等で動作するミニアプリ)と睡眠アプリを連動させて、睡眠を計測する方法もあります。人々の健康意識が高まるほどこうした機器やアプリの需要も増大するでしょう。

 

●遊・学

ヘルスケアビジネスのヘルスツーリズム事業

 

これは、「健康の保持・増進するための遊びや学びを提供する商品(知的玩具)およびサービス」と定義されており、具体的には「健康志向旅行」や「ヘルスツーリズムなどが該当します。

 

「ヘルスツーリズム」とは、健康回復や健康増進を図る目的で行う旅行のことです。ヘルスツーリズムは、その目的に応じて「疾病予防」と、病気の早期発見や早期治療を目的とした「メディカルツーリズム(医療インバウンド)」に分けられることもあります。

 

その疾病予防も、その目的で「ヘルスプロモーション」「特定疾患の予防」「ウェルネスツーリズム」の3つに分類されます。ウェルネスツーリズムは、旅先でのスパ、ヨガ、瞑想、フィットネス、ヘルシー料理、レクリエーション、交流などを通じて生きがいや生活の質の向上を図る旅行のことです。

 

メディカルツーリズムでは、「健診・検診」「治療」「リハビリテーション」の目的に分かれます。

 

「治療・健康増進」と「旅行・観光」を結び付けた上記のようなサービスは、人々の健康と生活の質を高めるため、その市場の拡大が見込まれています。

 

●機能補完

これは、「健康的な生活を送るために機能低下を補う商品、および、生活を支援する商品・サービス」のことで、具体的には「メガネ・コンタクト」が代表的です。

 

人は加齢や病気等に伴い身体の機能が低下しますが、その機能を補うことが製品・サービスによって実現できるようになってきました。実際に、機能低下を発見・診断する機器・システムから機能を補完する機器・器具等が多く使用されています。

 

病院内に設置される内臓や脳などの疾患の治療を支援する機器のほか、自宅等に設置される支援機器があり、高齢化の進展とともに自宅で使用する機能補完機器やサービスの需要は拡大する可能性が高いです。

 

例えば、自宅用では、服薬管理デバイス、自力排泄・処理デバイス、リハビリ機器、歩行支援機器、などが利用されています。

 

●予防(感染予防/応急措置)

これは、「健康を害する可能性がある菌・ウイルスが体内に侵入・繫殖することを防ぐ商品・サービス」と定義されており、具体的には「衛生用品」「予防接種」などが該当します。

 

新型コロナの感染拡大を機に、人々の衛生に対する意識も高まり、アコール等の消毒薬やマスクなどの衛生関連商品の需要が大幅に増大しました。また、予防接種の重要性が再認識されつつあり、他の疾病に対する接種の需要増が見込まれています。

 

なお、衛生関連商品の供給は十分にあり今後の参入では競争が厳しくなる可能性が高いです。予防接種・治療関連では、コロナの診断薬・診断テスト、ワクチン・治療薬の開発が十分でないため、参入の価値はあります。ただし、専門的で高度な開発体制が必要なため参入は容易ではありません。

 

●衣

これは「健康の保持・増進に役立つ衣服」のことで、具体的には着るだけでヘルスケアができる衣料などが該当します。

 

例えば、むくみケアが可能な着圧ストッキング、暑さ対策できる冷感インナー、寒さ対策できる温感ウェア、骨盤矯正が可能なショーツ、生理用の吸収ショーツ、などです。

 

また、上記のほか、ニッチな領域において特定の疾患や症状の緩和を対象とする衣料なども登場してきました。

 

 

3-2 「患者/要支援・要介護者の生活を支援するもの」の事業

 

●保険

これは、「健康を害した際に適切な医療行為を受けられるようにする医療保険(第三保険)全般」と定義されています。

 

第三保険とは、日本の保険サービスの分類の一つで、「第一分野」と「第二分野」のどちらにも当てはまらない疾病・傷害分野の保険です。具体的な保険としては、医療保険・介護保険・傷害保険などが該当します。

 

●患者向け商品・サービス

これは、「疾患を抱える方向けの健康保持・増進のための商品・サービス」のことで、具体的には「病者用食品」などが該当します。

 

病者用食品は、特別用途食品の中で特定の疾病のための食事療法上の有効性の根拠が医学的、栄養学的に証明されている食品として消費者庁が許可した食品のことです。

 

*特別用途食品は、乳児の発育や、妊産婦、授乳婦、嚥下困難者、病者などの健康の保持・回復などに適する食品で、表示するには消費者庁長官の許可が必要

 

高齢者の増加とともに病者用食品や特別用途食品などのニーズは高まっています。従来の病院等の医療機関向けだけでなく、自宅向けにドラッグストアや通販を通じた販売へと広がる可能性が高いです。

 

●要介護/支援者向け商品・サービス

これは、「要支援・要介護者向けの健康保持・増進のための商品・サービス」のことで、具体的には「介護用食品」「介護旅行/支援付旅行」「介護住宅関連・福祉用具」などが該当します。

 

・高齢者食や介護食

高齢者食とは、特別な食事ではなく加齢につれて生じる体の変化に適応する食事のことで、家族と同じ普通食でありながら以下のような工夫等を伴う食事です。

 

  • 食べやすい(噛み切りやすい)工夫
  • 低下した機能を補う食事(水分を補う食事等)
  • 食欲の低下等を防ぐ、彩り、香り、形状や盛付の工夫

 

介護食とは、疾病等で弱まった食べる機能を補ってくれる食事のことです。誤嚥を防ぐための食事の形状や、生活習慣病に関連する場合はその疾患に適した対応が求められます。具体的には、以下のような食事です。

 

  • やわらかさが調整された、かみやすい食事
  • 口の中でのまとまりがよく、飲みこみやすい食事
  • 高血圧(減塩)、糖尿病、腎臓病などに配慮した食事

 

現在、高齢者食や介護食としての商品や食材の市販品や、それらの食事を宅配するサービスなどが増えてきました。

 

・介護旅行/支援付旅行

これは、ヘルパー、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、看護師などの専門家が帯同して要介護者や障害者等の旅行を支援するサービスのことです。車いす移動、食事、着替え、トイレや温泉入浴などのサポートのほか、要介護者等の状態によっては医療サービスの提供も行われます。

 

もちろん旅行だけでなく、身近な外出や結婚式への出席などの付き添いをサポートするサービスなども多いです。

 

●疾患/介護共通商品・サービス

この分野の製品・サービスとしては、「高齢者向け食事宅配サービス」などが該当します。

 

 

4 ヘルスケアビジネスの事例

ヘルスケアビジネスの事例

 

ここでは起業や事業転換などの参考となるヘルスケアビジネスの事例を紹介しましょう。

 

 

4-1 IoTスタートアップ事例

トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

(引用:「D Free」公式HP)

 

●会社概要

 

 

●ヘルスケア事業の内容

同社は排尿の不安を感じなら生活している高齢者や要介護者等の問題を解決するために、世界初となる排尿のタイミングを予知するウェアラブル機器「D Free」を開発しました。

 

個人向け製品の「(DFree) Personal」は、膀胱の膨らみを超音波で計測し、スマホと連携する専用アプリがトイレのタイミング(尿のたまり具合)を10段階で知らせてくれます。また、この製品は外出時での装着も可能です(気軽に出かけられる)。

 

医療・介護施設向けの製品は「Professional」で、排尿に問題を抱える入居者がいる介護施設等向けの、DFreeとアプリを統合的に運用するシステムサービスになります。

 

このシステムからトイレ誘導やパッド交換のタイミングが知らされるため、その通知に従って排泄介助を行えば、自立排泄の実現や空振りの減少に有効です。

 

●経営のポイント

 

・VCや公的機関からの資金の活用

同社はベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達や、NEDOからの助成金を活用し、DFreeの研究・開発を進めることができました。

 

製品開発には多くの時間とお金がかかり、スタートアップには大きな障害となりますが、同社はそれを上記の機関等を利用することで確保し、製品化に成功したのです。

 

・公的機関等を活用した認知度アップ

同社の取組は政府の経済財政諮問会議(2016年)で紹介され、また、2016年のG7情報通信大臣会合ではDFreeが展示され、社会的に注目を集めました。

 

スタートアップの経営では、開業当初から企業と製品の注目度を高める取組が重要ですが、公的な展示会などを含め利用できるPRの機会は活用しなければなりません。

 

・段階を踏んだ事業展開

同社はDFreeの開発完了後に、「DFree(β版)」を使用して、地方自治体や大手介護施設と連携したトライアルを実施しました。そのトライアル結果を踏まえて量産に向けた調整を行い、その後に介護施設向けの排泄ケアパッケージサービスとして販売を進めたのです。

 

このようにトライアルから本格展開への道筋を立て適切なステップを踏んで事業を進めることが成功に繋がります。

 

・事業の成長を加速させる取組

介護施設向けサービスの事業化後、製品の機能追加、個人向け製品・サービスの開発、介護保険給付対象福祉器具への認定取得、などに取組み、国内の個人向け販売のほか、北米・欧州・アジアを中心にグローバル展開を進めています。

 

スタートアップには成長を促進させる次の一手を打ち続けることが重要です。

 

 

4-2 健康教室の運営事例

健康教室の運営事例

(引用:「ツミノリー」公式HP)

 

●会社概要

  • 会社名:株式会社True Balance
  • 所在地:鹿児島県鹿児島市
  • 設立:1999年
  • 事業内容:健康教授業

 

●ヘルスケア事業の内容

同社の主な事業は、受講者の意識が変わる体験型健康医学教室(りんご教室)の運営です。この健康教室のシステムは、「医学的検査+医学の学び+自分に合った実践」で構成され、「医学の学び+自分に合った実践の部分」を同社が担当しています。

 

その健康教育の学びでは、「医学・栄養学・運動学・精神学の4教科の72単位から好きな単位を選んで受講できる」、「受講単位数に応じて、実践的マルチサポーターである独自資格が取得できる」といった特徴があります。

 

実践では、運動ジム、ヨガ・コアトレ・エアロビクス、体力測定、食事カウンセリング、アロマクラフトづくり、のりのり会(交流会)のメニューがあり、そのサービスの利用が可能です。

 

この健康教室の運営は、自治体向けと企業向けとが用意されており、自治体向けには、全72単位のプログラムのうち一部を、自治体の費用負担で地域住民に提供される仕組みになっています。

 

企業向けでは、企業の健康経営の推進やヘルスケアサービス開発の契機になるように教室が提供されているのです。医療系法人などの職員が認定資格(1級)を取得すれば自ら教室を開催できます。

 

●経営のポイント

 

・初期の事業内容の修正

医師である創業者が健康教育の大切さを痛感し、予防医学の実践の場として健康複合型施設(健康食レストラン、フィットネスジム等のサービスを提供)を作ったの健康教室の運営のきっかけでした。

 

しかし、この予防のコンセプトは地域の住民に理解されず、利用が伸び悩んでいたところ、元教師の専務のアイデアに基づき「医師の理論を分かりやすく・楽しいプログラムへ」というコンテンツに変更し、健康教室が受け入られるようになったのです。

 

新しいコンセプトで起業した場合、想定した反響が得られないことも多いため、その要因を分析して事業を見直していくことが開業当初には特に重要になります。

 

・公的施策の活用

同社の事業は、2016年6月に経産省の「健康寿命延伸産業創出事業」に選出され、それが他の地域への展開モデルの開発に繋がりました。例えば、同年7月には鹿児島県南さつま市をフィールドにした実証事業が行われています。他には、鹿児島県の「日置市健康モデル都市プロジェクト」の事業として採択されました。

 

こうした公的機関の事業を通じて、自社施設以外での「教室の体系化」や「場所を問わない運動プログラム・ツールの整備」が進み、サービスを広く普及させるための体制が出来上がったのです。

 

また、実証事業での良好な結果が、他の自治体や企業からの引き合いをもたらし、事業の成長に繋がっています。公的な事業への参加は、仕事量の確保、業務体制の整備のほか、事業の知名度の向上にも繋がり発展の起爆剤になり得るのです。

 

 

4-3 介護旅行・外出支援サービスの事例

介護旅行・外出支援サービスの事例

(引用:「あ・える倶楽部」公式HP)

 

●会社概要

  • 会社名:株式会社エス・ピー・アイ(営業名称は「あ・える倶楽部」)
  • 所在地:東京都世田谷区宮坂
  • 設立:1991年
  • 事業内容:トラベルヘルパー(外出支援専門員)の人材サービス事業、介護旅行サービス事業、保険外サービス事業化支援コンサルティング・コンテンツ等の提供 他

 

●ヘルスケア事業の内容

外出や旅行を諦めた高齢者や要介護者等や、その家族(孝行)の希望を、安心安全にバックアップして、大切な旅の思い出つくりを支援するのが同社の「あ・える倶楽部」事業です。

 

「あ・える倶楽部」では、介護技術と旅の業務知識を有する介護旅行の専門家であるトラベルヘルパーが、要介護者等が安心して旅行や外出できるサポートを提供します。

 

なお、同事業の旅は、お客の希望に合わせたオーダーメイドが可能ですが、お得なパッケージツアーも容易されています。トラベルヘルパーは車いすの移動から、お食事、入浴など、介護サービス全般を行ってくれるため安心です。

 

●経営のポイント

 

・業界初の介護旅行サービスの提供

同社は、旅行を諦めていた高齢者等への旅行ニーズに応えるべく、これまでの旅行サービスを発展させ、業界初となる介護旅行サービスを開始しました。

 

事業の先駆者には大きなリスクや困難が多いですが、乗り越えれば市場を有利に開拓できるというメリットもあります。工夫と努力次第で事業を大きく成長させることも可能です。

 

・介護保険制度による追い風

介護保険制度開始により介護サービス市場全体が急拡大するにつれ、介護旅行への需要も高まり、これまでの旅行代理店からの斡旋だけでなく、介護施設からの問合せが増えるようになりました。その結果、同社は介護旅行サービスの供給体制の拡充を進めることができたのです。

 

法律・規制の創設や変更により、事業の機会が増えたり減ったりすることがよく起こるため、その動向を見極め自社が有利になるように事業を整備していくことが重要になります。

 

・事業展開のための体制整備

同社の事業の要はトラベルヘルパーという人材であり、その確保が事業の発展に欠かせません。そのため同社は、介護の技術と旅の業務知識を併せ持つ人材を育成するプログラム作るとともに、「トラベルヘルパー」の育成を目的とするNPO法人日本トラベルヘルパー協会を設立しました。

 

起業後は特に事業の発展に不可欠な経営資源の確保に注力しなければなりません。

 

 

4-4 買物支援サービスの事例

買物支援サービスの事例

(引用:「買物支援サービス(わんまいるサービス)」公式HP)

 

●会社概要

  • 会社名:株式会社ファミリーネットワークシステムズ
  • 所在地:大阪市北区太融寺町
  • 設立:1993年
  • 事業内容:
    ・冷凍タイプのミールキット、冷凍惣菜の開発
    ・カタログ宅配事業
    ・ネット通販事業
    ・スーパー・百貨店・通販会社への卸事業
    ・海外へ輸出

 

●ヘルスケア事業の内容

同社は、高齢者向けにおいしいものを宅配したいとの考えから1988年に「御用聞きサービス」をスタートし、様々な取組を経て「買物支援サービス(わんまいるサービス)」を始めました。

 

わんまいるサービスでは、お酒やお米・飲料水のほか、ティッシュペーパー・トイレットペーパー、子供用・大人用紙おむつ、などが配達してもらえます。

 

ほかにも、お一人様用の惣菜や全国の名産品、電子レンジや湯煎で簡単に温めて食せる夕食セットなど、1品から配達料無料で届けてもらえるのです。

 

同社は、こうした宅配サービスを地域の介護事業者、新聞販売所、酒店等と連携して同事業を展開しています(全国に100以上のFC加盟店)。

 

●経営のポイント

 

・効率性アップ

利用客の客単価の維持・向上のために、独自システムによる購買データの活用や、対面による注文書回収が行われています。例えば、購買データを活用し、買い忘れ品がでないように、お客の家の在庫状況を把握して御用聞きするというスタイルが取られているのです。

 

ただし、お客に売り込む方法は取らず、必要な人にアプローチする営業が重視されています。接客は5分を基本とし、御用聞き時(週に1度等)には対面で注文がなくても注文書を回収するスタイルを取っており、購買喚起に繋げています。

 

インターネット利用が苦手な方やコミュニケーションを求める高齢者等にはこうした御用聞きサービスは有効です。ネット通販に注力することは重要ですが、事業内容によっては対面サービスの活用も価値があります。

 

・無在庫販売システムの実現

1品から無料で配達する同サービスでは、物流費のコスト低減は必須であり、同社はそのために無在庫販売システムを導入しているのです。

 

このシステムでは、各営業所が御用聞きで受注したデータをシステムに入力すると、それに基づき集約センターや提携卸売業から商品が出荷され、お客に配達する前日に営業所へ納品される、という仕組みになっています。

 

各営業車は在庫を抱えずに済み、一般的な在庫にかかる倉庫料・在庫費用・管理費などがかからず低コスト運営が可能です。流通業は特に物流費・在庫費用の負担軽減が事業継続や競争の観点から重要であり、デジタル技術等を活用するなどして取組んでいかねばなりません。

 

 

4-5 健康情報を活用する事業の事例

健康情報を活用する事業の事例

(引用:「ヒポクラ×マイナビ」公式HP)

 

●会社概要

  • 会社名:株式会社エクスメディオ
  • 所在地:東京都千代田区麹町
  • 設立:2014年
  • 事業内容:インターネット等のネットワークシステムを利用した医療支援ソフトウェア・ITサービスの企画・研究・開発

 

●ヘルスケア事業の内容

同社は、提携している皮膚科医を活用し、非皮膚科医にスマートフォンアプリ(ヒポクラ)を介しての無料の皮膚病診断支援サービス(医師のための臨床互助ツール)を開発し事業をスタートさせました。

 

現在は、その臨床互助ツールは「ヒポクラ×マイナビ」として提供されており、非専門医が匿名で専門医に診断のアドバイスが受けらる「他科コンサルト」、医師同士が経験に基づく知見を共有し、人工知能(AI)が臨床の問題解決を支援する「知見共有」、世界のオピニオンリーダーが発信/シェアする医療ニュースをAIが紹介する「世界医療ニュース」、日米のデータベースから横断的に論文が検索できる「Bibgraph」の4つのサービスが提供されています。

 

時間や場所に関係なく、各領域の専門医に診療助言を受けられる「コンサルト」機能は、現在では皮膚疾患「ヒフミルくん」のほか、眼疾患「メミルちゃん」、心不全・心電図「ハトミル」、呼吸器疾患「肺ミル」、希少疾患「HAEコンサルト」などへサービスが拡大されているのです。

 

●経営のポイント

 

・専門知識と経営知識の活用

同社の創業者である物部真一郎氏は精神科医ですが、スタンフォード大学でMBAを取得しており高度な経営の知識を有しています。医学知識と経営知識を兼ね備えた創業者だからこそ、医学データをAIで学習させ皮膚病診断を補助するスマートフォンアプリの開発というアイデアを事業化できたのではないでしょうか。

 

・関係者相互にメリットが得られるシステム

災害等の場合、医師の不足から専門外の医師が皮膚病等の診療に従事するケースがありますが、「ヒポクラ」の活用により、患者と医師の両方にメリットが得られました。

 

患者は専門外の医師からでも質の高い医療が受けられるようになり、ヒポクラのユーザーである専門外の医師は皮膚病の誤診のリスクを低減できたのです。また、皮膚科医では他の医師等からの紹介により稀少疾患の対診依頼が増え、より専門的な治療・研究に集中しやすくなりました。

 

このように商品・サービスを利用する関係者にメリットが生じさせることが事業の成功に重要です。

 

・事業パートナーの確保と協力

臨床支援ツール「ヒポクラ」は、2018年4月からの株式会社マイナビとの業務提携により、その共同運営体制が構築され、名称も「ヒポクラ×マイナビ」に変更されました。

 

エクスメディオ社は自社の医療関係者とのネットワークと、マイナビが有するコンテンツ制作力や情報収集・拡散力、全国の医療機関とのネットワークを活用しブランド力やコンテンツ制作力の強化に成功しています。

 

事業を成長させるためには有力なパートナーを確保し連携して事業を進めることも必要です。

 

 

5 ヘルスケア業界で起業・会社設立する場合の事業の進め方とポイント

健康ビジネスの未経験の個人や事業者がこの分野で事業を始める場合などの進め方や経営上の重要点を説明しましょう。

 

 

5-1 事業の構想

課題解決型の事業を考える場合、問題に対して、それを解決したいという「意志」と、その人・企業が有する「強み」とのマッチングが重要になります。

 

例えば、ヘルスケアに関するある問題に対して、それを自分が有する知識・経験・技術・ノウハウ等の強みで解決したいと認識できた時にそれがビジネスアイデアに繋がり、事業化へのスタートラインに立てるのです。

 

既存事業からの事業転換や新事業進出を行う場合でも、この「意志×強み」の視点が出発点になります。また、その意志の強さがそのビジネスの原点となり、起業や事業展開での障害等を乗り越える原動力になるのです。

 

「どのような困難があっても、この問題を解決する」という強い志を持つことが、挫折に陥ることを防いでくれます。

 

なお、既存の強みがない場合は他者から獲得する方法が有効です。具体的には、ヘルスケアビジネスのフランチャイズの加盟店となり、その事業ノウハウを獲得するという方法になります。

 

 

5-2 事業の立ち上げ

事業構想を事業化していくには、対象者のニーズや業界の状況を調査した上で、「どのような価値を提供できるか」という価値設計に基づいたビジネスモデル(事業が成立するための仕組み)の構築が必要です。

 

具体的には、ターゲットを定め、その人が望む価値を明らかにし、提供する方法を整え、その対価を得る、ための一連の仕組みを構築しなければなりません。

 

例えば、ヘルスケア分野では「健康以上の価値を提供する」という価値設計が重要です。病気や高齢化で健康上の問題を抱えている場合、「健康になる」ことが1次目標になります。しかし、真の目標は健康になって「不自由な生活をしない」「趣味や家族との行動が楽しめる」などと感じられることです。

 

つまり、単に健康に戻すというのではく、以前のような暮らしを取り戻すという真の目標を達成させることが「健康以上の価値を提供する」ということになります。

 

例えば、高齢者等へ健康や特定の疾患に有効な食事を宅配するというサービスに、家事支援、見守りや楽しい会話といったサービスを加えることで、健康回復とともに快適な暮らしを提供することが可能です。

 

ほかには医療業界の特定の課題を解決するという価値設計なども見られます。事例の無料の皮膚病診断支援サービス「ヒポクラ」では、皮膚の疾患に悩む患者、それに対応する専門外の医者の存在という、業界の課題の解決に貢献しました。

 

このようにヘルスケアの事業に関連する人のニーズや問題を的確に把握して、真に解決できる価値を設計することが事業の価値を高めます。

 

 

5-3 ノウハウ構築とシステム化

事業化して成長の軌道に乗せるには、そのビジネスの成功モデルを実現し、それをノウハウとしてまとめシステム化することが重要です。

 

新規ビジネスでは最初に考案した事業モデルで上手くいかないことが多く、試行錯誤の改善を加えながら成功モデルへと導く必要があります。例えば、介護旅行の支援サービスでは、事業の開始直後は旅行先の宿舎の受入先が少ない、ガイドできるヘルパーが少ない、などの問題がみられました。新規事業は開始することで様々な課題が浮かび上がり、改善する部分が明確になっていきます。

 

そして、対策として、宿泊先を介護施設と連携して探し増やしていく、ガイドができるヘルパーを育成する、ヘルパーの業務を標準化する、といった対応をとり、成功モデルへと昇華できるのです。

 

そして、改善した業務のノウハウをまとめ、サービスのプログラムやメニュー等の項目およびその内容を明確にし、誰がどのように実施するか、といった業務の進め方をシステムとして完成させなければなりません。もちろんそのシステムには、業務の標準化や従業員への教育なども含まれます。

 

 

5-4 事業の成長促進

次は事業を成長させるための普及や拡大に向けた活動が必要になります。確立したビジネスモデルの事業を普及させていくには、市場での認知度を高め早めに多くの実績を作ることが重要です。

 

ヘルスケア分野の事業は政府や自治体等の関心も高いため、様々な施策が講じられており、様々な課題解決をテーマとした事業を公募しているケースも多く見られます。その公的な実証実験やコンテストなどに応募・参加し、知名度を上げるとともに事業の実績を増やすことは成長促進に有効です。

 

また、成長を加速させるには周辺ビジネスを取込んでいくことも必要になります。具体的には、現在対象としているターゲットやニーズの周辺部分への対応を図っていくことです。

 

例えば、介護旅行支援サービスなら外出支援サービス全般へと範囲を広げるという方法になります。病院・買物・お墓参りなどの外出に対応することで利用者数を増やし、介護旅行の利用者の増加も狙えます。

 

また、周辺ビジネスへ進出するには、新たな知識やノウハウなどが必要となり得ますが、自社で賄えない場合には外部での協力者の確保も必要です。パートナーを確保して事業を連携して進めることで事業を強化し対象範囲を拡大しやすくなります。

 

もちろん自社事業にあった営業活動や販売促進活動が必要であるため、適切なマーケティング戦略を立案の上実施することが前提です。

 

 

6 まとめ

ヘルスケア分野での起業や事業進出は、医療・介護等に関係するため専門的かつ高度な知識・技術等が必要となることも多く参入は容易とは言えません。しかし、ヘルスケア産業のすそ野は広く、様々な分野での知識・経験等を活かして事業化できるケースも多いです。

 

「意志×強み」の視点で事業を構想し、ビジネスモデルを作って事業化する点は他の分野の事業と大きな違いはありません。他の分野等で培ってきた知識・ノウハウ等でヘルスケア分野での問題を解決したい、という強い思いがあればこの分野での新規ビジネスの推進は可能です。この機会に自身・自社の強みを棚卸してヘルスケア分野の問題解決を構想してみてください。


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