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新型コロナ禍でも運送業の起業・会社設立で成功する方法とは

運送業界での起業・会社設立を考えている方も多いでしょうが、現状では新型コロナ感染症の第3波の勢い強く運送業のへの影響も心配されます。そこで今回は運送業をテーマとして、新型コロナ禍でも起業・会社設立して事業を展開していくための各種の手続や事業方法などを解説します。

 

運送業界の現状、許認可等に関する必要資金、運転手等の人材確保などの要件のほか、今後の運送業で取るべき戦略、コロナ禍で成功するためのポイントなどを紹介します。運送業界の動向について知りたい方、運送業で起業・会社設立したい方、運送業での強みを理解したい方などは、参考にしてみてください。

 

 

1 物流業界の現状と問題点

物流業界の現状と問題点

 

まず、運送業を含む物流業界の現状と課題について簡単に説明していきましょう。

 

 

1-1 運送業を取り巻く環境と課題

ここでは国内の物流業界の現状を国土交通省の資料「物流を取り巻く動向について」から確認します。

 

①貨物輸送量が停滞

国内貨物輸送量は、1990年頃には約65億トンの輸送量がありましたが、2005年には約55億トン、2010年には50億トンを割りそれ以降2018年まで47~48億トンあたりを推移しています。

 

国内貨物輸送量の約9割を占める自動車による輸送量は上記の全体量と同じ傾向を示しており、2010年から2018年まで42~45億トン程度で推移しているのです。

 

国際貨物輸送量については1990年から2013年まで7億トン後半から9億トン後半へと増加傾向がみられましたが、2014年から減少に転じ以降9億トン前半へと緩やかな減少を辿っています。

 

2011年からGDPは緩やかに成長しているものの、サービス経済化の拡大のためかGDPの増加が貨物輸送量へ反映されていません。

 

また、国際貨物輸送は2014年から緩やかに減少していますが、日本の輸出入額の推移を見ると停滞感が見られそれが国際貨物輸送量に反映しているものと推察されます。つまり、貿易によるモノの移動も頭打ちになっていることが窺えるのです。

 

財務省貿易統計 年別輸出入総額(確定値)

 

 

以上のことから日本の貨物輸送量は現状において伸びが期待しにくい状況にあり、運送業界への新規参入者にとっては優しい状況ではありません。

 

②トラック運送事業の現状

物流業界の営業収入は全体で約24兆円になりますが、トラック運送事業はそのうち16兆3,571億円、約7割を占めています。その事業者数は62,068社で従業員数は193万人となっており、中小企業が占める割合は99.9%です。

 

トラック運送事業の従業員数は物流業界全体(約258万人)の約7割5分という圧倒的な人数を占めています。

 

以上のことからトラック運送事業はその大半が中小企業で構成される事業であることが分かります。この現象は平成2年の規制緩和(貨物自動車運送事業法施行)によって増加した新規参入者の影響が大きいです。

 

平成3年の総事業者数は約4.1万社でしたが、平成16年には6万社を超えました。しかし、平成19年に6.3万社に達した以降はほぼ横ばいで推移しています。

 

平成19年までは新規参入者が退出者を上回っていましたが、20年以降27年までその逆転現象が多く見られるようになりました。現状では先の貨物輸送量の減少傾向も踏まえると業界での競争状況は厳しくなっていることが推察されます。

 

③国内貨物輸送量の現状

国土交通省の同資料のP9の「国内貨物の輸送機関別距離帯別輸送量」によると、国内貨物輸送量の大半は100㎞未満のトラック輸送です。また、P10の「貨物1流動当たり重量の推移」によると、

 

・「1回の運送で運ばれる貨物の重量は減少から横ばいに転じたが、平均で1トン未満である状況は変わらず小口化は改善されていない」

 

・「0.1トン未満の貨物輸送量が割合・件数ともに近年大きく増加(多頻度化)」

 

と説明されており、1回の配送料が0.1トン未満の小口化・多頻度化の輸送が増加していることが確認できます。

 

つまり、小型のトラックなど何回も配送するような仕事が多くなっており、個人や小規模事業者などが対応しやすい状況が増大していることが窺えます。

 

しかし、P11の「貨物自動車の積載率の推移」では「営業用トラックの積載効率は直近では約40%まで低下している」とあり、運送側にとっては効率の悪い業務が増加している状況にあると言えるでしょう。

 

④トラック運送業界の労働状況

上記資料のP15の「トラックドライバーの労働環境」によると、

 

・「トラックドライバーの年間所得額は、全産業平均と比較して、大型トラック運転者で約1割低く、中小型トラック運転者で約2割低い」

 

・「トラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均と比較して、大型トラック運転者・中小型トラック運転者とも約2割長い」

 

と指摘されています。

 

トラックドライバーの労働状況は、全産業に比べ所得や労働時間の点で劣っていると言えそうです。また、大型トラック運転者と中小型トラック運転者を比較すると、所得面では前者の方が有利になっているものの労働時間ではあまり差がない状況になっています。

 

トラックドライバーの年齢層について、「日本のトラック輸送産業現状と課題 2018」(公益社団法人 全日本トラック協会)(P15)は以下のように指摘しています。

 

「自動車運送事業は、中高年層の男性労働力に依存しており、40歳未満の若い就業者数は全体の約28%である一方で50歳以上が約40%を占めるなど高齢化が進んでいます」

 

トラックドライバーを希望する若者が少なくなり、ドライバーの高齢化が進むことが今後予想され、運送業界の問題になりかねません。特に大型トラックドライバーの高齢に加え、ドライバーの不足も心配される状況です。

 

⑤トラック運送事業の種類

トラック運送事業の種類

 

トラック輸送は、自社の貨物を運送する自家用トラック(白地ナンバープレート)と、他者の貨物を有料で運送する営業用トラック(緑地ナンバープ レート)に分かれます

 

また、営業用トラックは、貨物自動車運送事業法により事業形態として「一般貨物自動車運送事業」と「特定貨物自動車運送事業」に、さらに一般貨物自動車運送事業は、「貨物利用運送」と「特別積合せ貨物運送」に分けられています。

 

 

1-2 運送業市場の動向

ここでは現在の運送業市場でどの(荷主の)産業分野に多くの需要があり、将来においてどの産業が期待できるかなどを確認していきましょう。

 

①品目別国内貨物輸送量

先の国交省の資料P8の「品目別国内貨物輸送量の推移」によると、どの品目の輸送量が多いかが把握できます。その大まかな内容は以下の通りです。

 

・「トンベースでの輸送量はその他特殊品、砂利・砂・石材、機械、食料工業品が多い傾向
⇒震災や台風などの災害復興需要やこれまで旺盛であった建築・土木工事などを背景に建築・土木関係資材等の輸送が寄与していると考えられます。特に東京オリンピック・パラリンピック関連の需要や不動産ブームなどが貢献したはずです。

 

その他特殊品の内容は不明ですが、機械などの生産財(機械加工品や電子部品等)などが挙げられるでしょう。

 

・多くの品目で減少または横ばいの状況であるが、近年特に化学薬品やその他非金属鉱の減少が大きい
⇒化学・鉱工業などの重厚長大産業の低迷が影響している可能性があります。

 

他には日用品の輸送量が多くなっている点が注目されるところです。この背景にはEC市場の拡大にともなう宅配便等の輸送量の増大が影響している可能性が高いです。

 

なお、一般社団法人 東京都トラック協会のweb siteによると、営業トラックが輸送する品目は、食べ物などの「消費関連貨物」が40.7%、家電製品などの「生活関連貨物」が34.5%、建物建材などの「建設関連貨物」が24.8%です。

 

また、矢野経済研究所が2019年7月11日に「物流17業種総市場規模推移と予測」で以下のような市場状況が発表されています。

 

・2017年度の物流17業種総市場規模は、推計で前年度比106.2%の21兆4,950億円。内需では通信販売市場、医薬品・医療機器分野、チェーンストアにおける低温食品市場の伸びと、首都圏を中心とした東京オリンピック・パラリンピック向けのインフラ・建築需要に対する物流需要の伸びが堅調に推移した

 

・最終需要家である一般消費者・生活者へモノを届ける最後の区間である「ラストワンマイル市場」の今後成長が期待される

 

・物流業界の人手不足が社会問題となっているが、IoT(Internet of Things)や人工知能などを利用した省力化・自動化による「スマート物流」の普及が加速すると予想される

 

・2019年度や2020年度の見込みでは、エレクトロニクス、自動車産業は好調に推移すると予測。機械産業、通信販売、医薬品・医療機器、低温食品などの成長分野の勢いは持続し、化学品分野の堅調に推移すると見込む

 

②EC市場の成長と宅配便の増加

国交省資料のP12では「電子商取引(EC)市場の成長と宅配便の増加」について、「EC市場は、2018年には全体で18.0兆円規模、物販系分野で9.3兆円規模まで拡大」すると指摘しています。

 

また、EC市場の規模が拡大するにつれ、「宅配便の取扱件数は5年間で約6.7億個(+18%)増加」したとのことです。なお、平成30年の宅配便等取扱個数は全体で4,307百万個であり、そのうちトラック輸送は4,261百万個で構成比は98.9%となっています。

 

ほかにもフリマアプリによる個人間取引も増加しており、それによる宅配便取扱量も増えているでしょう。

 

また、こうしたネット通販の利用の増大などの影響を受けてスーパーや飲食店などが宅配サービスを強化しています。小型スーパーやコンビニなどでは消費者が欲しいものを欲しい時に直ぐ提供できるように、多頻度小口配送をさらに進めているのです。

 

以上のように最寄品などの消費財の宅配輸送の増大が目覚ましいですが、他方配送サービスの高度化も運送業には求められています。

 

③営業用トラックと自家用トラックの状況

トラックの保有台数については全体として増加していますが、自家用トラックより営業用トラックの方がより伸びが大きくなっています。なお、営業用トラックの利用が伸びる一方、自家用トラックの利用が営業用トラックに置き換わっているケースが少なくないです。

 

消費者や顧客がより小口化、多頻度化やリードタイムの短縮化を求める状況下において、自社配送する企業は自家用トラックだけ対応するのが困難になってきています。そのため企業が自ら車両を保有して輸送する形態から第3者が運用する営業用トラックを利用する形態へと移行しているのです。

 

 

2 トラック運送業の基本情報

トラック運送業の基本情報

 

ここではトラック運送業に関する基本情報を起業・会社設立・事業開始のために説明しましょう。

 

 

2-1 トラック運送業の形態

トラック運送業ではその事業内容により事業許可を国から受ける必要がありますが、ここではその必要がある3つの運送形態について説明しましょう。

 

①貨物利用運送事業

貨物利用運送事業は、他の運送事業者に委託して会社や個人などの貨物を有償で輸送する運送事業のことです。なお、運送責任は当該事業者にあります。同事業は物流会社等から様々な貨物情報を収集して、それらの貨物輸送について各輸送会社へ割り当てる役割を担っている事業とも言えるでしょう。

 

こうした点から同事業ではトラックなどの輸送手段を必ずしも持つ必要がなく事務所と電話1つで事業が行える点が大きな特徴です。なお、貨物利用運送事業は、その形態により第一種と第二種に分けられています

 

貨物利用運送を開始する場合、国土交通大臣または地方運輸局長に申請書を提出し、許可(第一種貨物利用運送事業の場合は登録)を受けねばなりません。

 

申請書の提出から許可の判断が下されるまでの標準的な処理期間は2カ月から4カ月程度かかると見られています。

 

●第一種貨物利用運送事業
この事業は運送事業者(自動車や船舶等)の行う運送を利用した貨物運送です。

 

たとえば、その運送事業者について見れば、トラック等の自動車という1つの輸送モードで発送地から配達地へ輸送する形態になります。従って、貨物が輸送される輸送手段の一部のみを受け持つのが第一種です。

 

●第二種貨物利用運送事業
同事業は、運送事業者(船舶、航空または鉄道の運送事業者)を利用した運送と、その前後の貨物自動車(軽自動車は除く)による集荷および配達を一貫して行い、利用者にドア・ツー・ドアの輸送サービスを提供します。

 

具体的には、集荷先へトラック等で貨物を集荷し、その後最寄りの港、空港や駅などへ輸送し各幹線輸送の船・飛行機・列車を利用して着地の各港、空港や駅へ到着させます。その後着港、着空港、着駅からトラックで配達先へ届けるのです。つまり、輸送手段のすべての部分を担うのが第二種になります。

 

なお、一般貨物自動車運送業は「積合せ」「貸切」のどちらの形態をとってもよいですが、貸切輸送の方が多いです。貸切輸送の場合、1つの荷主に対して1台のトラックで対応する輸送形態であるため、複雑な輸送ネットワークを作らなくて済む容易さがあります。

 

●事業開始の難易度
利用運送事業は登録や許可を受けられれば、資金的な負担が少ないことから事業は始めやすいと言えるでしょう。

 

同事業は事務所と電話1つで事業が始められます。ただし、貨物やその荷主および各種輸送会社などとのコネクションがあり多様な貨物情報を収集できるなどのネットワークを有することが欠かせないでしょう。

 

②特別積合せ貨物自動車運送業

同事業は、不特定多数の荷主の貨物を1台の車両にまとめて積載して、全国的な範囲で(全国規模のネットワークを利用して)輸送する形態のことです。具体的には以下のような特徴があります。

 

  • ・一定エリア内で荷主から貨物を集配する、一定エリア内で貨物を配送する(エリア内の面輸送)
  • ・異なるエリア間を幹線輸送する(主に大型車両で)
  • ・幹線輸送の発地と着地に積卸し施設を持ち、定期的・計画的な幹線輸送が実施される(定時・定路線的な輸送で、荷物の量に関係なく輸送⇒赤字になり得る)
  • ・宅配便もこの事業の一形態

 

特積み事業を行う事業者は、事業計画を国土交通省に申請し、許可を受ける必要があります。

 

●事業開始の難易度
特積み事業は、仕分けや集配車・運行車の接続のためのトラックターミナルが必要であり、貨物の取扱量に応じた規模が要求されます。つまり、特積み事業は車両のほか、トラックターミナルや運送関連の情報システム等への比較的な大きな投資が必要です。

 

そのため特積み事業を自社だけですべて賄う場合、多くの人員や多額の資金が必要となるため、事業を開始するハードルはかなり高いと言えるでしょう。

 

特積み事業者は他の貨物自動車運送事業者より規模が大きいですが、少数の全国ネットワークを保有する大手を除けば、大半は他事業者のネットワークを相互利用する「連絡運輸」もしくは、他事業者のネットワークに頼る「他業者差込み(集貨人が貨物を他業者へ持ち込む)」により事業を行っています。

 

なお、トラックターミナルは、特積み事業者が自ら整備・運営する以外に、地方公共団体等が出資する第三セクター方式の「公共トラックターミナル」などもあります。

 

上記のように他社の運送資源を利用する委託・連絡運送などなら大規模な投資は抑制可能です。

 

③特定貨物自動車運送業

特定貨物自動車運送事業は、特定の1社の荷主の依頼を有償で輸送するもので、軽自動車・自動二輪を除く自動車を使用して貨物を運送する事業です。具体的には、特定の製造業などの貨物を普通トラックで輸送するトラック運送会社などが該当します。

 

この事業の申請については、営業所を設置する都道府県の運輸支局長(運輸監理部長)から特定貨物自動車運送事業の許可を受ける必要があります。

 

なお、普通トラックとは、小型貨物車(4ナンバーのトラック)、普通貨物車(1ナンバーのトラック)、冷凍食品、石油類等の運搬に利用される特殊車(8ナンバーのトラック)などです。

 

一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業の違いについては、運送事業による「売上」が荷主1社(1人)で、かつその荷主の総輸送量の80%以上を担当し、第三者が運送契約や指示に介入しない場合が「特定」にあたり、それ以外なら「一般」に分けられます。

 

●事業開始の難易度
一定数の普通トラックを保有するなどの資本的なハードルは低いとは言えないですが、特積み事業ほど多額の資金は必要ありません。また、特定の企業1社を顧客として確保できれば事業として成立するため事業は始めやすいと言えるでしょう。

 

しかし、その顧客を見つけ取引を結ぶことができる営業力が必要であり、その顧客との契約が切れると事業がストップするというリスクがあります。また、現在の契約している顧客以外の企業などから取引を依頼されても断らざるを得ないという制約がデメリットです。

 

そのため顧客が1社であっても許可を受ける場合、将来の事業の発展を考えて「一般」で取得するケースが多く見られます。「特定」の許可を得て事業を開始しその後「一般」の事業に変更する場合、改めて「一般」で許可を受けなければなりません。

 

そのため「特定」の事業で起業する場合でも最初から「一般」で許可を受ける方が多いです。

 

 

2-2 トラック運送業の許可要件

「一般」と「特定」の許可要件は細かくは異なりますが、大半は同じであるため、ここではその主な要件を説明します。なお、詳しくは運輸局の「一般貨物自動車運送事業および特定貨物自動車運送事業の許可申請事案の処理方針」などを参照してください。

 

①荷扱所

●1年以上の使用権原が有ること
⇒荷扱所の使用権原の保有が前提です。施設は自己所有でも賃貸でも構いません(自己所有は登記事項証明書、賃貸は賃貸契約書が必要)。なお、単に荷物を受け付ける取次所(営業所、コンビニ等)は荷扱所に該当しないです。

 

●事業計画を適切に遂行できる規模で適切な施設であること

 

●都市計画法、建築基準法、消防法、農地法などの関係法令に抵触してないこと

 

②積卸施設

●営業所あるいは荷扱所に併設されていること
⇒この併設では、一定の近接であれば可能です。

 

●1年以上の使用権原を有すること
⇒使用権原を持ち、その裏付けが必要です。なお、自己所有でも賃貸でも構いません。

 

●都市計画法、建築基準法、消防法、農地法などの関係法令に抵触してないこと

 

●貨物の積卸機能のほか、荷捌き、仕分け、一時保管機能を有すること

 

●施設の取扱能力が、運行系統および運行回数に見合う程度の規模であること

 

③営業所と荷扱所の出入口

●複数の事業用自動車を同時に停留できる積卸施設の営業所と荷扱所の場合、その自動車の出入口の設置が、当該出入口の接する道路における道路交通の円滑と安全を阻害しないこと

 

④運行系統および運行回数

●運行系統毎の運行回数は車両数、取扱い貨物の推定運輸数量、積卸施設の取扱能力等から適切なものであること

 

●取扱貨物の推定運輸数量について算出基礎が的確であること
⇒上記の算定基準に関して、1年間における推定取扱貨物の種類と数量の報告が求められ、取扱貨物量に対して適切であるかどうか判断されます。

 

●運行車の運行は、少なくとも一日一便以上の頻度で行われるものであること
⇒ただし、一般的に需要が小さいと考えられる島しょ部、山村等の地域の区間では、一日一便以下でも可能です。

 

⑤管理体制

●貨物の紛失を防止するための適切な貨物追跡管理の手法または設備を有すること
⇒情報システム等の投資も必要になります。

 

●貨物の滅失・毀損を防止するために、営業所および荷扱所において適切な作業管理体制を有すること

 

●貨物の紛失等の事故による苦情処理が的確かつ迅速に行いうる体制を有すること

 

⑥運行管理体制

●運行系統別の乗務基準が平成13年8月20日国土交通省告示第1365号に適合するものであること
⇒具体的には、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」が本規定の基準になります。

 

⑦最低車両台数

●営業所毎に配置する事業用自動車の数は種別(貨物自動車運送事業法施行規則第2条で定める種別)ごとに5両以上とすること

 

など

 

⑧車庫

●原則として営業所に併設するものであること
⇒併設できない場合、営業所との距離が直線距離で10km以内、(場所によっては5km以内)以内の設置です。

 

●出入口の前面道路については、原則的に車両制限令に適合し、かつ、交通安全上支障がないこと

 

など

 

⑨休憩・睡眠施設

●原則として、営業所または車庫に併設するもの

 

●乗務員が有効に利用することができる適切な施設で、乗務員に睡眠を与える必要がある場合は、同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さを有すること

 

など

 

⑩運行管理体制

●車両数およびその他の事業計画に応じた適切な員数の運転者を常に確保し得ること

 

●選任を義務づけられる員数の常勤の運行管理者および整備管理者を確保する管理計画があること
⇒運行管理者になるには、国家試験の運行管理者試験に合格しなければなりません。運行管理者の要員は、事業用自動車の数が5台以上29台までは1人以上、30台以上59両までは2人以上が必要です。

 

整備管理者は自社社員であり、整備の実務経験者であることが要求されます。

 

●運行管理の担当役員など運行管理に関する指揮命令系統が明確であること

 

●事故防止についての教育および指導体制を整え、かつ、事故の処理および自動車事故報告規則に基づく報告の体制について整備されていること

 

など

 

⑪資金計画(特定貨物自動車運送事業申請の場合不要)

●所要資金の見積りが適切であること

 

●所要資金の調達に十分な裏付けがあり、自己資金が所要資金に相当する金額以上であることなど資金計画が適切であること

 

●自己資金が、申請日以降許可日までの間、常時確保されていること
⇒資金計画では、必要とされる所要資金について慎重に検討し、そのことを証明し得る見積書などの資料を用意して作成する必要があります。

 

自己資金額は、車両費用、営業所及駐車場費用、人件費、燃料費、油脂費、修繕費、什器・備品費や税金などの費用の合計額以上でなければ、許可を受けることは困難です。

 

⑫法令遵守

●申請者またはその法人の役員は、貨物自動車運送事業の遂行に必要な法令知識を有し、かつ、その法令を遵守すること

 

●健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法(以下、社会保険等)に基づく社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること

 

など

 

⑬損害賠償能力

●自動車損害賠償責任保険または自動車損害賠償責任共済に加入する計画のほか、一般自動車損害保険(任意保険)の締結等十分な損害賠償能力を有するものであること

 

 

3 運送業を開始する際の手続等の流れ

運送業を開始する際の手続等の流れ

 

これまでに取り上げたトラック運送業を開始するまでの流れを説明します。この場合は運送業の許可を受ける必要があるため、その取得の準備を踏めた流れとして示していきましょう。

 

なお、自社の荷物を運ぶ、軽自動車や自動二輪車を使って荷を運ぶ、運賃を取らずに荷を運ぶようなケースは許可を受ける必要はありません

 

 

3-1 運送業許可を取得し事業を開始するまで

運送業を開始する際の主な流れは以下の通りです。

 

1)運送業許可申請書の提出
「主たる事務所」として登録する事務所を管轄する運輸支局の窓口へ運送業許可申請書と資料などの添付書類を提出します。

 

2)運輸支局による申請書類の審査
運輸支局の窓口で受け付けられた申請書類は、同局で申請書類や添付書類の不備がないか、申請要件が満足できている申請であるかが確認されます。審査期間は約4カ月~5カ月です。

 

3)役員法令試験とヒアリングの実施
上記の運輸局での確認で問題がなければ、申請書は上級庁の運輸局(東京都などの関東圏は関東運輸局)に送られ、役員法令試験の通知が発せられます。運送業許可申請受付後の最初に到来する奇数月(2カ月に1回実施)に、申請者は法令試験を受験できるのです。

 

試験内容は、運送業に関する法令から、正誤選択や語群選択方式で30題が出題されます。8割以上の正確で合格です。申請者が個人事業主である場合は事業主本人、法人では常勤役員から1人が代表者となって試験を受けねばなりません。

 

法令試験終了後その当日に運輸局からヒアリングが行われ、運送業に関する簡単なテストが行われます。なお、試験の合否通知は運輸局によって異なり、即日から1週間程度です。

 

4)運輸局での申請書類審査開始
申請者が役員法令試験に合格した場合、運輸局で申請書類の審査が開始されます。役員法令試験で不合格になった場合は、運送業許可申請が却下されることとなり申請書類は差し戻しです。

 

5)2度目の残高証明書の提出
申請受付から約2カ月後、2度目の残高証明書を提出する旨の通知が地方運輸支局からあります。申請者名義の口座に事業を始めるにあたり必要な資金を確保できていることを証明するため、指定期間内に残高証明書(銀行等の発行)を提出します。

 

6)社会保険と労働保険への加入、36協定の締結
法人の役員や従業員を健康保険・厚生年金、労災保険・雇用保険へ加入させなければなりません。許可取得後に提出が求められる書類の添付書類として、この保険関係に加入したことを証明できる書類が必要です。

 

36協定書(「時間外・休日労働に関する協定届」)は、従業員に残業や休日出勤などの時間外労働(1日8時間、週40時間を超える労働)を行わせるために不可欠な契約書類です。労働組合がある場合はその代表、ない場合は従業員の代表と協定を結び、労働基準監督署へ提出します。

 

7)運送業許可取得の通知
法令試験に合格後運輸局での審査が完了すれば、営業所管轄の地方運輸支局から「許可取得」の通知が届き、運送業の許可が得られたことになります。

 

8)運送業許可証の交付式と登録免許税納付書類の取得
運送業許可証の交付式が管轄の地方運輸支局で実施されるため、原則的に代表者(個人事業主の場合は事業主、法人の場合は役員)や運行管理者が出席して許可証を受領しなければなりません(運輸支局により異なる場合あり)。

 

交付式は約2時間で運送事業者として守るべき法令や、提出する書類などの説明が行われます。交付式の後、登録免許税納付書が交付されます。

 

9)登録免許税の納付
登録免許税「12万円」を金融機関で納付します。登録免許税の納付は、許可取得日から1カ月以内と義務付けられています(銀行もしくは郵便局)。

 

10)運行管理者と整備管理者選任届の提出
運行管理者と整備管理者の「選任届」を運輸局に提出します。提出先は、申請運送業者の営業所を管轄する地方運輸局(保安課等)になります。

 

11)運輸開始前届の提出
営業所地域を管轄する地方運輸局に運輸開始前届を以下の書類とともに提出します。

 

  • ・運輸支局受付印のある運行管理者と整備管理者の選任届写し
  • ・従業員や役員が健康保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険に加入したことを証明する書類の写し
  • ・労働基準監督署の受付印のある36協定書の写し

 

12)事業用自動車等連絡書の取得
運輸開始前届の提出後、自家用車での「車庫証明」にあたる「事業用自動車等連絡書」が発行されます(要保管)。

 

13)緑ナンバーの取得
申請書に記載した事業用トラックのナンバーを営業ナンバー(「緑ナンバー」)に変更して新車検証を取得します。緑ナンバーへの変更後、自動車任意保険へ加入しますが、既に加入している場合は内容の変更が必要です。

 

14)運輸開始届・運賃料金設定届の提出と運輸開始
新車検証の写しと営業用ナンバーで加入した自動車任意保険の保険証券の写しとともに運輸開始届を提出します。これと同時に運賃料金設定届を届け出ると運送業を始めることが可能です。

 

*以上のように運送業許可申請の流れは複雑であるため、申請者自身のみで手続を進めるのは容易ではありません。運送業の開始時期を遅らすことができないなどの場合はこの分野に精通した行政書士に依頼するのが無難です。

 

 

3-2 運送業許可申請の作成と開業の準備

運送業許可申請書の作成や開業に欠かせない準備について簡単に説明しましょう。

 

①資金の確保

まず、運送業を開始するための必要資金を用意しなければなりません。必要額は事業内容やその規模によって異なりますが、1500万円や2000万円以上の金額になることも珍しくありません。

 

②人員確保

事業を行う上で必要な車両の台数に応じた人数の運転者(最低5台以上なので5人以上必要)、運行管理者資格を持つ者1名以上(営業所毎に1名以上)、整備管理者1名(営業所毎)を確保する必要があります。

 

*運行管理者が整備管理者と兼務するのは可能です。
*運送業許可申請において運行管理補助者は必要な人員ではないですが、実際の業務運営では重要になります。

 

③事業に必要な営業所、休憩室・睡眠施設の確保

営業所は事業の内容や規模に応じて必要な場所に構える必要があります。単に申請上の要件を満たすだけでなく、実務上有効な場所に設置することが重要です。

 

なお、営業所(事務所)は、法的に建物と認められないものは許可されません。コンテナハウスなどは土地に定着するための基礎工事をしていないと認められない可能性が生じます。

 

営業所の広さは利用する人員に応じた適切なものとされており人数制限はありません。休憩・仮眠室は営業所や車庫に併設する必要がありますが、仮眠室は必要に応じて設けます。

 

④事業用トラックの車庫の確保

車庫の設置場所の土地は、地目が「田」や「畑」になっている場合は使用できません。また、車庫の前面道路が公道の場合、幅員は「車両制限令」に適合しているか注意しましょう。

 

⑤申請に必要な添付書類の準備

運送業許可申請には様々な添付書類が要求されるため、早めの準備が重要です。主な書類には以下のようなものが挙げられます。

 

  • ・自動車の運行管理等の体制、運転者の確保などに関する計画
  • ・事業開始に要する資金および調達方法
  • ・残高証明書
  • ・自動車、車庫や施設等の使用権原を証明する書面(登記簿謄本または賃貸借契約書)
  • ・法人申請者:履歴事項全部証明書(原本)と定款。発起人、社員または設立者の名簿および履歴書
  • ・個人申請者:戸籍抄本および住民票(原本)と資産目録。事業主の履歴書
  • ・運行管理者資格者証
  • ・整備管理者の整備士の資格者証
  • ・営業所および休憩室・睡眠施設の写真、付近の見取図および平面図(求積図)等
  • ・車庫の位置図、平面図、求積図と写真
  • ・道路幅員証明書または幅員が車両制限令に抵触しない旨の証明書

 

など

 

⑥運送業許可申請書類の作成と地方運輸支局への提出

国交省の運送業許可申請書作成の手引きなどを参考に申請書を作成し、地方運輸支局へ提出します。

 

 

4 成長を目指す運送業の取組事例

成長を目指す運送業の取組事例

 

ここでは運送事業の改革に取り組んだ企業の事例を紹介し、これから運送業で発展を遂げるためのポイントを確認していきましょう。

 

 

4-1 トラック運送における生産性向上の事例

国交省の「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」からトラック運送業での生産性向上に成功した事例を紹介します。

 

①サンネット物流(千葉県市原市)

●企業概要
主に化学品を取り扱うトラック運送事業者

 

●改善前の事業スキームや課題
・同社は東北向けの輸送について発荷主の最寄の同社陸運拠点(千葉県)から直送する長距離輸送で対応していたため以下のような課題が生じていた

 

1)「ドライバー不足、特に長距離輸送の担い手がいない」
⇒千葉から東北全域の顧客に輸送するために長距離輸送となっていたが、長距離ドライバーの不足が深刻化してその対応に迫られていました。

 

2)「石化業界の小口化に対応した新たなネットワークが必要」
⇒石化業界で小口化ニーズが拡大した結果、特積み事業者に依存しているが、採算が取れない路線が多く集約の必要があった。

 

●経営改善のスキームと取組内容
・拠点間で日帰りが可能な240kmごとにストックポイントを設置し、日帰り可能なネットワークを形成することにした。そのため以下のような取り組みを行った

 

1)これまでの長距離輸送では採算面や効率面、人材確保に加えて石化業界の小口化ニーズの拡大によりこれまでの輸送業務のモデルが破綻することを荷主に訴え、モデルの変更を提案した

 

2)サンネット物流は日帰りが可能な距離が約240kmと判断し、東北地域の4カ所にストックポイント(運転手の乗り換えや貨物の一時保管等を行う中継拠点)を配置し日帰りネットワークを形成した

 

3)各ストックポイントまでの輸送を自社が担当し、ストックポイントから顧客への配送は地場のトラック事業者に委託し、自社の運転手は最寄のストックポイントとの往復のみを日帰りで担当することにした

 

●取組成果
・東北の顧客(着荷主)にとっては、ストックポイントの設置により在庫品のリードタイムが減少し、納入の対象メーカーを1社から6社へ拡大できた。その結果、納品車両が減少(これまでは1社から1台納品)できた

 

・荷主にとっては上記のように顧客へのサービス品質が向上し、物流コストの抑制などのメリットが生じた

 

・サンネット物流では、長距離運転手が不要となり運転手の確保が容易となった。また、6社のメーカーの貨物を集約できて積載率も向上した

 

●成功のポイント
・同社が事業環境を分析・把握して課題を捉え、輸送業務のモデルを変革した点が成功に繋がった

 

・その変革の実現にあたり、顧客にもメリットが生じる提案ができた

 

②三共貨物自動車(茨城県筑西市)

●企業概要
主に精密機器、食品を取り扱うトラック運送事業者

 

●改善前の事業スキームや課題
・北関東エリアを中心に営業している三共貨物自動車では、取引先(荷主)の食品スーパーの集配業務の担当のほか、集配拠点の運営も請負っているが、ドライバーが積卸や附帯業務を実施する業務形態であった

 

⇒そのためトラックの非稼動時間が長時間化するという問題が発生していました。

 

●経営改善のスキームと取組内容
・荷主企業が新たな集配拠点を整備する際に、運転手が積卸をしないことによるトラックの非稼働時間を削減する仕組みを作った。具体的には、荷主企業の集配拠点に自社の積卸作業を担当する社員を配置し実車率の向上に取り組んだ

 

⇒荷主企業の新規集配拠点に三共貨物自動車の積卸担当社員7名を常駐させ、自社トラックが入庫した時に担当社員が荷の積卸、附帯業務を実施する方式を採用していました。

 

●取組成果
・運転手は荷卸し後すぐに出発できるためトラックの非稼働時間の削減と運転手の負担軽減を実現できた

 

・自社社員の配置に伴う人件費の発生や、取引先企業の集配拠点にスペースを間借りするための家賃負担があるが、トラックの実車時間の増大により利益の向上を実現した

 

●成功のポイント
・荷主の物流拠点への自社社員の配置は、荷主とトラック運送事業者との信頼関係が必要であるが、同社はそれを築くことができた

 

・自社の課題を把握して、その解決策を荷主に提案できた

 

・費用の増大を吸収するため貨物量の増大に取り組んだ

 

③大塚倉庫(大阪市)

●企業概要
倉庫業、トラック運送事業を主とする物流事業者

 

●改善前の事業スキームや課題
・倉庫の受入ではトラックの先着順で納品、検品は紙ベースで実施、納品書に受領印を押印する形式の受領で受領書は持ち帰り、紙受領書の保管管理という業務スキームであったため以下のような課題が生じていた

 

1)自社の医薬品専用センター「西日本ロジスティクスセンター」で発生している納品時の待機時間が問題となっており、入庫の際に運転手を到着から翌日の荷降し開始まで10時間近く待機させることもあった
⇒実車率の悪化と荷待ち時間の長時間化に結びついていました。

 

●経営改善のスキームと取組内容
・「Web予約システム」および「e-伝票」の導入
ITを活用して、トラック運転手の無駄な待機時間と入庫作業時間を削減し、実車率を上げるために以下の点が実施されました。

 

1)Web予約システムの導入
2)入庫時検品の廃止
3)納品伝票と受領印の電子化

 

・業務スキームは、運転手がスマホで入庫予約、商品写真撮影による検品、データの確認後の受領はスマホで連絡、入庫情報等はデジタルデータ管理へと変更された

 

●取組成果
・西日本ロジでの入構~出構までの平均所要時間約3時間を約1時間へ大幅に短縮
⇒大手医薬品卸売りA社でのテスト運用時の効果は以下の通りです。
1)A社:
・トラック1台当たりの平均滞留時間が48.8分から約15分に低減
・従来の検品工数(平均92アイテム/日≒3,000ケース超)の省略
・荷降し時間削減および荷受作業人数の削減

 

2)配送パートナー:
・A社東京センターへの納品について車両回転数が約2回転から3回転へ向上し、車両の台数を削減
・紙伝票のやり取りに関するコストの削減など

 

3)自社:
紙媒体による送付や受領、管理の負担の削減。また、運転手の拘束時間を削減し、車両回転率・実車率を向上

 

●成功のポイント
・現場が利用しやすいITを導入
⇒運転手など現場作業員が利用しやすいIT活用法の採用が成功に繋がっています。

 

・自社の物流改善のみならず、顧客や協力者などの全体での最適化に貢献できる改善に取り組んだ
⇒物流事業が大きくなると荷主や運送パートナーなどと連携する業務も含まれるため、自社業務の改善には他社の協力も不可欠です。他の協力を得るには各々にメリットが出るように全体の物流業務を最適化するという視点が成功の鍵になり得ます。

 

④久留米運送と第一貨物とトナミ運輸

●企業概要
特積み等を取り扱う物流事業者

 

●改善前の事業スキームや課題
・従来から業務提携を行っていたトラック運送事業者の上記3社は、閑散期の積載率低下、運転者の慢性的な不足や労務管理、積替え時の貨物劣化、労務負荷、時間ロス等の課題があった
⇒経営トップ同士の協議により輸送の効率化への取り組みを決定

 

●経営改善のスキームと取組内容
・特積み幹線輸送等の共同化
⇒久留米運送、トナミ運輸、第一貨物の三者で、閑散期である土曜日に東京-大阪間(上り便)の共同輸送を試みました。

 

・シェイクハンド輸送による長距離輸送の効率化
⇒久留米運送と第一貨物で、北大阪トラックターミナルで運転手を交代し、トラックは相互乗り入れの形態を採用しています。

 

●取組の成果
・3社で3便運航していたが、2便に集約でき運行コストが低下
⇒幹線共同輸送でトナミ運輸と第一貨物の便に荷物を集約することで、積載率が向上し、運行コストが低減されました。

 

・積み替えがなくなり、積荷の品質維持の向上とリードタイムの短縮が実現

1)シェイクハンド輸送により、荷物積卸しが基本的になくなり、積荷の汚損・破損が減少

 

2)積み替えにかかる時間や労力が節減でき、リードタイムの短縮(半日分程度)を実現

 

・運行便の減少および積替作業の減少により、労務環境が改善
⇒運転手の作業時間の減少、休日の増加など労務環境が改善しています。

 

●成功のポイント
・事業内容によっては、自社だけの努力では困難な業務改善も複数社が協力しあえば大きな効果が期待できる場合もある

 

・基本ルールの設定と現場でのコミュニケーション
⇒複数社の共同輸送などでは基本的なルールの設定が必要です。ただし、細部まで決めるのは困難であるため、現場での意思疎通をよくすることが成功の決め手となり得ます。

 

 

4-2 トラック運送での生産性向上に成功するためのポイント

トラック運送事業で生産性を向上させることが、今後の成長・発展には不可欠であるため上記の事例などを踏まえそのポイントを説明しましょう。

 

①生産性向上の考え方

●トラック運送における「生産性」を上げる方向性
物流における「労働生産性」は「付加価値額(経常利益、人件費、租税公課、支払利息、施設使用料の合計)/(就業者数×1人あたり平均労働時間)」と示すことが可能です。

 

この考えに従えば、付加価値額の増大もしくは投入労働時間数の削減が、生産性向上に寄与するため、その方向性で業務を構築・改善することが有効になります。

 

●生産性向上の切り口:KPI(実働率、実車率、積載率)の向上
トラック運送の生産性向上を検討する場合、「実働率」「実車率(時間あたり)」「実車率(距離あたり)」「積載率」が有効なKPI(重要評価指標)として利用できます。

 

これらは全て「付加価値額の増大」に貢献する指標となるほか、「実車率(時間あたり)」は同時に「投入労働時間数の削減」を図る指標としての使用も可能です。

 

●各種KPIによるトラック運送の生産性
トラックあたりの稼動時間を大きくできれば(実働率up)輸送量の増大が期待できます。稼動時間は走行時間とその他の時間に分けられ、走行時間を長くできれば(実車率up)より多くの荷物を輸送できるはずです。

 

走行時間は実車と空車に分けることができ、実車を増やせれば(実車率up)輸送量の増大に結びつきます。さらに実車の折に、積載率を高められれば(積載率up)輸送量の増大に繋がるのです。

 

②生産性向上に向けた取組方法

生産性向上に向けた取組方法

 

1)実働率up
生産性の向上には「トラックの非稼働時間(使用されていない時間)」の削減が必要です。このためには「中継輸送のネットワーク化を通じた長距離輸送の防止によるトラック実働率の向上」などが挙げられます。

 

長距離輸送対策では、1台のトラックが長距離輸送をしないで、250~300km程度の日帰り圏のネットワークを構築し、複数のトラックが1つの長距離輸送の行程を担当する「中継輸送」が有効です。

 

期待される効果は、トラック運転手の負担軽減、長距離トラック運転手の不足の緩和、トラックの実働率の向上(積載率や実車率〈距離あたり〉の向上などが挙げられます。

 

2)実車率up(時間あたり)
生産性の向上には「積卸(荷役や検品、附帯業務)等の効率化」や「荷待ち時間の削減」が重要です。これには、前者について「適切に整理した仕分けの徹底による積卸時間削減、積卸専門社員の配置によるドライバーの負担軽減」が挙げられます。

 

また、後者の対応方法では「荷主とトラック運送事業者の出荷貨物等の情報共有による荷待ち時間の削減、入庫受付システムの導入による荷待ち時間の削減」などです。

 

効果としては、「積卸や附帯業務により生じるトラック運転手の負担軽減」や「トラックの実車率(時間あたり)の向上」が期待できます。

 

3)実車率up(距離あたり)
生産性の向上には「片荷への対応」が必要です。これには、「共同配送による帰り荷の確保」などが有効になります。

 

複数の企業が共同して荷物を往復マッチングできれば、より効率的に帰り荷を確保できます。実現には連携者を集め、各種の運送条件(運送量、車両サイズ、配送時刻など)を企業間で調整しなければなりません。

 

効果としては、「輸送コストの低減」や「トラックの実車率(距離あたり)の向上」が期待できます。

 

4)積載率up
生産性の向上には「各種の共同化、運送条件の変更に伴う空き重量、容量の削減」が必要です。これには、「荷主間の協力による共同配送」「物流拠点の共同化」「荷主、トラック運送事業者の協力による共同配送」「幹線輸送の共同化」などが挙げられます。

 

異なる複数のトラックで運送していた貨物を共同化で1台に集約して運送できれば輸送コストの削減だけでなく環境負荷低減の効果も期待できます。取組の実施にあたり、配送先への納品時間の再設定、発注単位のルール化、商品の積み合わせによる影響の確認などが必要です。

 

効果としては、「輸送コストの削減」「空き容量、空き重量の削減による積載率の向上」「多品種少量商品の配送の効率化」が挙げられます

 

 

5 新型コロナによる運送業への影響と対応策

新型コロナによる運送業への影響と対応策

 

これから起業・会社設立して運送業を始める方には、新型コロナの影響も考慮する必要があるため、その運送業への影響とともに対応策について説明しましょう。

 

 

5-1 コロナの運送業への影響

公益財団法人日本ロジスティックスシステム協会の「緊急アンケート調査『新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大による物流への影響について』調査結果」で新型コロナによる運送業への影響が確認できます。

 

①業務上で課題が発生した物流企業

「全社的な課題が発生した」と「一部に課題が発生した」企業の割合を合計すると57.77%です。

 

運輸業での課題については、物流やサプライチェーンに関する項目で、「配送業務が一部なくなった」「品目により輸送量の増減が発生している」「入荷の大幅な遅れと急な出荷対応」が挙げられています。

 

また、倉庫業での課題では、「海外からの輸入・輸出が停滞」「各種取扱いの大幅減少」が多いです。

 

②物量が増加しているアイテム

例年と比較して、「大幅に物量が増加したアイテムがある」「やや物量が増加したアイテムがある」とした企業の合計は43.95%となっています。その具体的な事例の内容は以下の通りです。

 

運輸業:
一般向け加工食品、製パン、市販用の冷凍食品、納豆、ヨーグルト類、産業廃棄物、紙商品、洗剤等、航空貨物全般の増加

 

倉庫業:
小売店向け生活用品全般、消毒薬、中国からの輸入原材料を組立に必要とする仕掛品、医療機器、紙製品、水・トイレットペーパーなど通販の日用品、はちみつ入り商品

 

③物量が減少しているアイテム

例年と比較して、「大幅に物量が減少したアイテムがある」「やや物量が減少したアイテムがある」とした企業の合計は56.66%です。やはり増加よりも減少の方が大きいという結果になっています。

 

その具体的な事例の内容は以下の通りです。

 

運輸業:
住設機器・自動車関係が特に大幅減少
精密部品輸送・港作業陸運
中国からの冷凍野菜、電子部品、アパレル、建築資材、家具
百貨店販売向けの嗜好品
酒類
衣料品全般
中国・韓国(東アジア)輸出入取扱いが大きく減少。また、自動車関連企業(操業停止)によりトラック輸送等大幅減少
アパレル系荷主の海外生産がストップ。予定物量が入荷されない
家電・自動車等の部品供給・海外(特に中国)からの輸入荷物

 

倉庫業:
業務筋向け商品の減少
中国からの輸入貨物全般(家電製品、食品など)が減少
(主に中国からの)コンテナなど輸出入貨物は激減

 

以上の通り様々な分野の品物に影響が出ていますが、特に中国からの各種輸入品に関する影響が大きいです。

 

④荷主からの要望

新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、荷主から何らかの対応が全体の63.64%の企業で求められています。運輸業についてのその内容を挙げると、

 

対応マニュアルの作成と荷主への対応連絡
入場時の検温、マスク着用
不特定多数のイベントへの参加、会合会食の自粛
企業としての危機管理体制
感染者が出た場合の対応
物量増加に対して、できる限り対応してほしい
貨物チャーター機の運航

 

以上の通り、衛生安全面での管理や物量増加に伴う対応が要請されています。

 

 

5-2 コロナ禍での運送業の対応策

先のコロナの影響を踏まえて、運送業での対応策を示します。

 

①荷主の業界の選定

どの業種の荷主を対象として運送業を展開するかで開業後の成長が左右されるため、コロナの影響で輸送量が減少する業界ではなく、逆に増加が見込める業界の荷主を対象とするべきです。

 

中国を中心として海外からの輸入品の減少が激しかったため、輸入品関連の輸送業務については慎重に取り組むべきでしょう。コロナが収束した後にその分野の荷主を少しずつ開拓するといった方針で検討するべきです。

 

2021年1月5日現在、国内でのコロナ感染が拡大しており、飲食業については緊急事態宣言が出る可能性が高まっています。

 

そのため、この分野では当分の間事業活動が制限され貨物輸送量は低迷する可能性が高いことから対象から外すのが賢明です。

 

期待できる業界は、食品関連、消毒薬・マスク等の医療・衛生関連、巣ごもり需要関連の消費財(日用品や趣味関連商品等)などの業界が挙げられます。外食、旅行やレジャーなどが制限されやすい環境では家庭で消費する商品の量が多くなるため、消費財関連は期待できるでしょう。

 

②輸送量の減少を克服できる事業構造にする

パンデミックや災害などのリスクに直面しても影響を少なくできる事業構造にしておくことが重要です。つまり、危機に弱い事業構造から対応力のある事業構造へ目指す必要があります。

 

・少数の特定荷主に依存した取引から複数の荷主との取引へ
⇒1社の大口顧客との取引は魅力的ですが、その顧客の経営状態が悪化すれば、自社の運送量へもろに影響します。そのためできるだけ顧客を分散しリスクを低減できる構造へ変更していくべきです。資金や人材の確保も必要になりますが、徐々に拡大できるように検討しましょう。

 

・対象荷主が1業種から複数の業種の荷主との取引へ
⇒荷主を分散させてもその業種が同じである場合、その業種全体に及ぶ危機に直面すればすべての顧客に影響が出て自社も大きな打撃を受けることになります。そのため荷主を複数に分散させる場合、できれば異なる業種の荷主を優先しましょう。

 

・コスト削減や労働者の労働環境の改善などに取り組む経営へ
⇒運送業界の変化も激しく、運送料の価格競争、貨物の小口化や運転手不足などの問題が生じています。こうした状況に対応していくためには恒常的な経営改善の実行が不可欠です。

 

事業が順調であってもコロナ禍のようなリスクに見舞われれば直ぐに問題が表面化することもあるため、日頃から様々の面に改善の目を向け取り組む必要があります。

 

・新規顧客開拓に積極的な経営へ
⇒1社の大口顧客があると、その対応に追われ新しい荷主の開拓に取り組めないケースもあるでしょう。「既存業務が忙しい」を言い訳にして新規顧客開拓に取り組まないと、結局特定先依存のままで潜在リスクが増大しかねません。

 

無計画な事業の拡大は不要ですが、一定期間に1社ずつでも増やしていく計画を検討してみましょう。

 

・差別化できる強みと提案力のある経営へ
⇒運送業における強みを保有し、それを活かして荷主のメリットとなる輸送業務を提案して顧客との関係強化や新規顧客開拓に繋げます。運送業における強みとしては、コスト、輸送スピード、荷卸しサービス、小口多頻度輸送、在庫管理などの面で構築することが可能です。

 

そうした強みを活用して、荷主と自社にとってのメリットを確保できるような提案をできるようにして顧客を広げていきましょう。

 

 

6 まとめ

まとめ

 

モノに依存した今日の社会において運送業はインフラの1つで我々の生活を支えてくれています。そのため新型コロナの影響で運送業の事業が一時的に落ち込んでも決して消滅することはありません。

 

ただし、規制緩和を受けて新規参入者が増大してから運送業者間の競争も厳しくなっており、また国内産業の停滞から貨物輸送量が伸び悩んでいるため、運送事業の生産性向上や新規顧客開拓などが不可欠です。

 

新型コロナ禍の中でも取り組み次第では成長の可能性は十分にあるため、運送業での起業・会社設立を検討してみてください。


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