コロナ禍により消費者や企業等の行動は、インターネットを中心としたものにさらに進展してきました。この状況に伴いビジネスでのオンライン化もより一層進み、オンラインビジネスによる起業や会社設立が個人にとって大きなチャンスになっています。
そこで今回の記事では、コロナ禍以降の状況などを踏まえて、オンラインビジネスでの起業・会社設立で成功するためのポイントや注意点などを解説します。
オンラインビジネスの現状や事業上の特徴、アフタコロナを踏まえた今後のオンラインビジネス、ビジネスの始め方、成功のポイントや注意点などをご紹介するので、オンラインビジネスに興味のある方、既存事業のオンライン化を検討している経営者の方などは参考にしてみてください。
1 オンラインビジネスの現状や環境
まずはインターネットを活用したビジネスの現状や取り巻く環境について確認してみましょう。
1-1 電子商取引市場の状況
経済産業省は、「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の状況についての報告書を公表しています。
①国内電子商取引の市場規模
令和2年の日本のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、前年より微減の19.3兆円(前年19.4兆円)です。また、令和2年の国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模もやや減少し334.9兆円(前年353.0兆円)になりました。
1)BtoC-EC市場
BtoC-EC市場を、物販系分野、サービス系分野、デジタル系分野の3つに分けてみると下表の状況になっています。
新型コロナの感染拡大防止のために、外出自粛が要請されたりリモートワークの導入が進んだりしたほか、ECの利用も推奨されたことから物販系分野の市場規模が前年の10兆515億円から12兆2,333億円へと大幅に拡大しました。
他方、旅行やサービスの利用が控えられた結果、サービス系分野の市場規模は、前年の7兆1,672億円から4兆5,832億円への大幅減少です。デジタル系分野の市場規模は、前年の2兆1,422億円から2兆4,614億円へとやや増大しました。
BtoC-EC市場全体としては、物販系分野の大幅増とサービス系分野の大幅減が相殺され、830億円の減少となっています。この結果、これまでBtoC-EC市場規模が増加し続けてきましたが令和2年度で初めて減少となったのです。
なお、EC化率※1は、BtoC-ECで8.08%(前年比1.32ポイント増)、BtoB-ECで33.5%(前年比1.8ポイント増)と増加傾向を示しており、商取引の電子化はなお継続中にあります。
各分野の状況は以下のようになっており、当面の起業・開業の判断材料の1つとして参考になります。
●物販系分野
物販系分野のBtoC-EC市場規模の状況を簡単に説明すると、下記4つが上位カテゴリであり、合計すると物販系分野の73%を占めます。なお、新型コロナ感染拡大の影響により全カテゴリで市場規模が大幅に拡大しました。
「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」(2兆3,489億円)
「衣類・服装雑貨等」(2兆2,203億円)
「食品、飲料、酒類」(2兆2,086億円)
「生活雑貨、家具、インテリア」(2兆1,322億円)
EC化率を見ると、「書籍、映像・音楽ソフト」(42.97%)、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」(37.45%)、「生活雑貨、家具、インテリア」(26.03%)と高いです。つまり、これらの分野がオンラインビジネスとして適した分野と言えるでしょう。
たとえば、製品仕様や価格が明確で事前に調査(探索)や確認しやすいと不安も少なくECも利用しやすくなります。「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」などの上記カテゴリはそうした特徴を有する分野としてオンラインビジネスに適しているのです。
また、「家具・インテリア」には、各消費者の事情や好みに伴うサイズや色に関する詳細なニーズがありますが、売り場や在庫の制約がないECはこのカテゴリにもマッチします。このようにECに適した商材のカテゴリでEC化がより進展しているのです。
●サービス系分野
サービス系分野のBtoC-EC市場規模の状況については、「旅行サービス」(1兆5,494億円)が同分野の約33%と他と比べて大きな割合を占めます。なお、2020年は新型コロナの感染拡大の影響で「旅行サービス」、「飲食サービス」、「チケット販売」の市場規模が大きく縮小しました。
上記の内容から「旅行サービス」、「飲食サービス」、「チケット販売」の3カテゴリについて、2021年も市場状況はあまり芳しくないと考えられます。しかし、新型コロナの予防ワクチンの接種が進展するにつれ2021年10月後半以降より感染が大きく減少する傾向が見え始めました。
この感染の減少に伴いGoToトラベルやイートなどの景気刺激策が実施される可能性が高まっており、実施されれば上記カテゴリで大幅な改善が期待できます。
近年の旅行市場ではインターネット経由のオンライン販売比率が年々増加傾向にあるため、一刻も早い感染の収束が望まれる一方、コロナ禍で「オンラインツアー」という新しいスタイルのサービスが登場しました。
オンラインツアーは、インターネット上で疑似的に旅行を体験するツアーのことです。単に観光地などを動画で鑑賞するのではなく、ライブ形式の参加等があり、現地の人達との双方向のコミュニケーションをとりながら疑似的な旅行が楽しめます。
オンラインツアーで実際の旅行で得られるほどの収益を確保することは困難ですが、ツアー・観光地・宿泊先等のPRやファンづくりなどに役立てることは可能です。
●デジタル系分野
デジタル系分野のBtoC-EC市場規模では、「オンラインゲーム」(1兆4,957億円)が最大の割合を占め、「オンラインゲーム」、「有料動画配信」、「有料音楽配信」の市場が拡大しました。
その背景として、新型コロナの感染拡大で消費者のステイホームの増加に伴う巣ごもり需要が増えたことが挙げられます。
②個人間電子商取引の市場規模
近年、個人間での電子商取引(CtoC-EC)が急速に拡大してきました。令和2年のCtoC-ECの市場規模は1兆9,586億円(前年比12.5%増)と推計されており、その主なカテゴリはフリマアプリとネットオークションです。
前年度より市場規模が拡大しましたが、その背景として、新型コロナ感染防止策としての外出自粛の呼びかけやECの利用が推奨された結果、物販系EC市場と同様にCtoC-ECの利用者が増加したと見られています。
CtoC-EC市場は近年、利用者が増え始めた有望市場であるため、新型コロナの感染拡大の収束後も成長が期待されるはずです。こうした個人と個人を繋ぐ新しいオンラインサービスがさらに登場するものと期待されます。
③日本・米国・中国の3カ国間の越境電子商取引の市場規模
令和2年では、日本・米国・中国の3カ国間の越境ECの市場規模は、どの国の間でも増加しました。
なお、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆9,499億円(前年比17.8%増)、米国事業者からの越境EC購入額は2兆3,119億円(前年比15.1%増)で、昨年に続いての増加となっています。
・日本・米国・中国3ヵ国の越境EC市場規模
国 | 越境EC購入額 | 伸び率 |
---|---|---|
日本 | 3,416億円 | 7.6% |
米国 | 1兆7,108億円 | 9.9% |
中国 | 4兆2,617億円 | 16.3% |
なお、2020年の世界のBtoC-EC市場規模は4.28兆USドル、EC化率は18.0%との推計です。世界的な新型コロナの感染拡大により、EC需要が増加し、市場規模やEC化率の増加に結び付いた考えられています。
今後も市場規模の拡大とEC化率の上昇が予想されており、2024年には6.39兆USドル、EC化率は21.8%にまで上昇するとの見込みです。全世界的に小売分野でのEC化が今後も拡大すると予想されているため、ECを主体とした商品販売が益々重要になってくるでしょう。
また、2019年の世界の越境EC市場規模は7,800億USドルと見込まれており、その値は2026年には4兆8,200億USドルにまで拡大するとの予測です。その間の年平均成長率は約30%で、世界のBtoC-EC市場規模の拡大を凌ぐペースで越境ECの市場規模は拡大すると考えられています。
このように小売を中心に世界規模のEC利用が加速しており、全世界を商圏にできるオンラインビジネスは大きなビジネスチャンスを掴む有効な手段になり得ます。
1-2 コロナ禍の新たなEC消費と行動変容
SBペイメントサービス株式会社は、コロナ禍における新たなEC消費・行動変容に関するアンケート調査を実施し、その結果を2021年9月30日に同社サイトで公表しました。その「コロナ禍における新たなEC消費・行動変容に関する調査」の報告によると、以下の4つの点が指摘されています。
1)コロナ禍でオンラインでの買い物・サービス利用の頻度は10代女性の61.6%が「増えた」
Webサイト等でオンライン買物・サービス利用をした経験のある消費者に対し、コロナ禍でのオンラインによる買物・サービス利用頻度の増加を質問したところ、「変わらない」人が57.3%です。一方、「増えた」人は34.5%で「減った」人(4.8%)の7倍以上の割合になっています。
また、「コロナ前は利用していない」人が1.6%おり、新型コロナの影響による外出自粛が、EC利用を促した推察されています。年代別で見ると、特に10代女性の61.6%、10代男性と20~30代女性の40%以上が「増えた」と回答したことから若者世代で特にEC利用の頻度が増加しました。
2)コロナ禍で新たにオンラインで行うようになったことは「ライブ・コンサート鑑賞」や「誕生日のギフト」
コロナ禍において新たにオンラインで行うようになったことへの質問については、「ライブ・コンサート鑑賞」(15.0%)、「スポーツ観戦」(8.4%)、「飲み会・歓送迎会」(7.4%)が上位に挙げられました。新たにオンラインで行うようになった理由は、「人混みなどの感染リスクを避けるため」(52.1%)のほか、「アーティストが生ライブを行っていないため」、「会場に行きたくても無観客で行われているため」などです。
オンラインだと臨場感が足りない、味気ないなどの不満はあるものの、ライブ・コンサートやスポーツをオンラインで鑑賞・観戦できるようにした事業者側の努力も上記の結果に繋がっています。
コロナ禍において新たにオンラインで贈るようになったギフト・お祝いに関しての質問では、「誕生日のギフト」(7.7%)、「母の日・父の日・敬老の日のギフト」(6.7%)、「お中元・お歳暮」(5.9%)が上位となりました。
また、コロナ禍で、新たにオンラインで購入するようになったものについては、物販カテゴリにおいて「ファッション・インナー・ファッション小物」(21.0%)、「食品・スイーツ・ソフトドリンク」(20.0%)、「家電・PC・通信機器」(17.2%)が上位です。
オンラインでのアパレルの購入では、サイズや色・素材などが判断しにくいなどの不安が生じやすいですが、上記の結果からコロナ禍でも快適に過ごすために積極的に購入したいというニーズの存在がうかがえます。
コロナ禍でオンラインによる商品等の購入が促進され、今までECに適していないと思われた商材にも利用の広がりが見られ始めました。そうした場合でもECサービスの工夫等により利用増を引き出すことは可能です。
なお、デジタルコンテンツカテゴリでは「動画視聴サービス」(18.9%)、「電子書籍」(12.2%)が上位になりました。動画視聴は今後とも増加が期待されます。
3)コロナ前と比較してコロナ禍の年間EC利用金額は増加傾向
コロナ禍になる前の1年間(2019年3月~2020年2月)とコロナ禍の1年間(2020年3月~2021年2月)について、オンラインでの買物・サービス利用で利用した合計額を見ると、以下のような点が確認されました。
・コロナ前のEC利用金額で1万円未満/年の人が15.2%であるのに対し、コロナ禍の1年間のEC利用金額では1万円未満/年の人が9.9%に減少した
・1万円以上の金額のすべての項目でコロナ前の1年間と比較して割合が高くなった
・オンラインでの買物・サービス利用の頻度が高まるに伴い年間のEC利用金額も増加傾向にある
⇒オンラインでの買物・サービス利用の便利さや魅力を体験すれば、アフタコロナ以降もECの利用増は期待でき、この分野のオンラインビジネスは有望です。
4)決済手段を選ぶ理由は「ポイントやキャンペーンなどの還元率が良いから」「簡単に利用できるから」「セキュリティが安心だから」
オンラインでの買物・サービス利用で最も利用されいる決済手段は、1位が「クレジットカード決済」64.1%で、2位が「PayPay(オンライン決済)」7.6%という結果でした。
各決済手段を選ぶ理由で比較すると、「PayPay(オンライン決済)」や「Yahoo!ウォレット決済」は「ポイントやキャンペーンなどの還元率が良いから」が約30%、「代金引換」や「後払い決済」「キャリア決済」は「簡単に利用できるから」が33%以上、「口座振替」は「セキュリティが安心だから」が21%以上などとなっています。
⇒オンラインビジネスのターゲットに適した決済手段を上手く設定することが利用者の確保に重要です。
2 オンラインビジネスの特徴とタイプ
ここではオンラインビジネスの特徴をメリット・デメリットから確認し、どのような種類のビジネスがあるのか説明しましょう。
2-1 オンラインビジネスのメリット・デメリット
●初期投資や固定費が比較的小さい
オンラインビジネスは実店舗と比べ初期投資額や毎月の固定費が少ないです。実店舗の場合、商品を販売したりサービスを提供したりするためのお店等が必要であり、建物や設備機器等の購入費用が多くかかります。
また、そうした資産を賃貸やリースする場合でも、毎月小さくない固定費が必要です。一方、オンラインビジネスなら店舗や事務所の代わりに自宅を利用できれば初期費用や固定費を大幅に抑えられます。パソコンやインターネット環境は必要ですが、これは実店舗でも同じです。
初期投資や固定費が小さければ、低い運営コストで事業を有利に展開できます。
●商圏が広い、活動の制約が小さい
オンラインビジネスの場合、営業範囲は全世界が対象であり、実店舗のように物理的な商圏の限界がありません。つまり、実際の距離等の制約を受けない営業活動ができるため、少ない人数で遠方のお客へもアプローチでき収益の拡大が図れます。
実店舗の場合、お客が自店に訪れる可能性は自店までの距離や交通の便利さなどに依存しますが、オンラインビジネスの場合その原則に左右されません。また、実店舗の場合自社の営業担当がお客のところへ行く際の距離の長さが活動の制約となりますが、オンラインビジネスでは関係ないです。
オンラインビジネスは営業活動の自由度が高く収益を拡大させるチャンスを多く有しています。
●受注等の24時間対応
自社サイトで24時間対応の受注システム等を構築しておけば、お客は好きな時に注文できるため、売上を伸ばすことができます。
問い合せなどの対応については、24時間対応のコールセンターを使用しなくてもAIを活用した自動チャットポットでの対応も可能です。オンラインビジネスなら人数やコストを抑えたサービスが提供できます。
●売上に結びつく効率的な接客が可能
オンラインビジネスの場合、自社のビジネスに興味を抱いたお客がアクセスし、実店舗のような冷やかし客が少ないため、売上に結び付く商談が行いやすいです。
実店舗の場合、あまり興味もないのに立ち寄ってあれやこれやと質問攻めにする来店者が時折見られますが、オンラインビジネスではそうしたお客はほとんど見られません。
アクセスして質問してくる人達の多くは、自社の商品・サービスに関心を持っているため、購入や成約に繋がるような応対が多く、効率的な接客(営業)が行えます。
●事業の収益化までに一定の時間が必要
自社サイトや動画配信などを通じたオンラインビジネスで収益化するまでには、実店舗の営業以上に時間が必要になるケースが少なくありません。
リアルのビジネスでは、呼び込みで来店させる、お客へ訪問する、などの方法で手っ取り早く商品・サービスの購入に繋げることが可能です。しかし、オンラインビジネスの場合、自社がターゲットするようなお客が自社サイト等にアクセスして初めて商売・収益へと繋がります。
つまり、オンライン上での集客に成功しないと収益を得ることができず、実店舗等と違って直接的な接触が難しいため売上に至るまでの時間が多くかかってしまうのです。
また、オンラインビジネスでの集客は容易とは言えず、集客できても売上に結び付かないことも珍しくありません。
●オンラインビジネスならではの知識が必要
実店舗などのリアルのビジネスでは、各種の業界・業種に応じたマーケティングなどの経営知識が必要になりますが、オンラインビジネスではそれらに加えオンラインならではの知識も不可欠です。
たとえば、オンラインの場合、自社サイト、ブログ、動画配信、などを通じて商品・サービス等を販売するために、オンライン上でのマーケティングが重要になります。
自社サイト等に誘導するために、オンライン上の広告・SNS広告等の利用やSEO対策、ターゲットがアクセスした後の購入へと繋げる仕組み(購入を促すセールスライティング、ページ構成、商品等の画像や動画の配信、利用者の声、使用場面の演出等)の構築、注文しやすいユーザビリティの確保、などがオンラインビジネスでは欠かせません。
また、オンライン上の販売では利用するアプリやコンテンツ等の利便性や魅力等が望まれることから、プログラミングやデザイン性などでの優位性が求められ、それらの専門スキルも必要です。
このようにオンラインビジネスでは実店舗の営業、マーケティング等の経営知識・スキルと異なるものも多く、成功するためにはそれらを活用しなければなりません。
●類似ビジネスが多く競争が激しい
オンラインビジネスは、初期費用や運営コストが比較的少なく済み容易に始めやすいため、ライバルが多数参入し競争が激しくなるケースが少なくあります。
オンラインビジネスでは初期投資額や毎月の固定費も小さくなりやすいという特徴があるため、自己資金が少ない個人でも簡単に開業しやすいというメリットがあります。
しかし、この特徴から多くの人が参入しやすくなり、その結果競争が激しくなるというデメリットが生じることも多いのです。競争が厳しくなれば事業は失敗する可能性が高くなるため、事業に優位性や独自性が必要になってきます。
先に示した集客と購入促進の仕組みができていても販売する商品等やサイト自体等に魅力がなければ競争に勝つことは困難です。
●撤退の判断が難しい
オンラインビジネスの場合、業績が悪くても毎月の赤字幅が小さく済むケースも多いため、事業からの撤退の判断が難しく廃業のタイミングを遅らせることも少なくありません。
実店舗の場合、初期投資額や毎月の固定費等の経費が多くなりやすいため、大幅な赤字の発生も珍しくないです。その大赤字は事業からの撤退に直結するため、その撤退の判断もつきやすくなります。
しかし、オンラインビジネスの場合は大赤字になりにくいため、ズルズルと悪い状態を継続させてしまいます。事業を継続することで業績を向上させ成長できればよいですが、できなければ時間とお金を無駄に費やし、ほかのビジネスチャンスを見過ごすことになりかねません。
2-2 オンラインビジネスの概要とタイプ
ここではオンラインビジネスの概要と、どのようなビジネスのタイプがあるのかを説明しましょう。
①オンラインビジネスとは
オンラインビジネスとは、インターネット上で実施されるビジネスのことです。ほかにも「インターネット(ネット)ビジネス」や「サイバービジネス」などで表現されるケースも多く見られます。厳格な定義はなく、インターネット上で行われるビジネスならオンラインビジネスと考えてよいでしょう。
オンラインビジネスを広く捉えると、オンライン上で商品・サービスを提供するタイプだけでなく、実店舗とともに自社サイトなどで商品等を販売するケースなどもオンラインビジネスに含まれます。なお、ここではこのように広く捉えた内容をオンラインビジネスとして扱います。
②オンラインビジネスの種類
ここでのオンラインビジネスのタイプについては、「ビジネスの対象を何にするか」「何で収益をあげるか」の点で分けて紹介しましょう。
1)仕入・製造した商品の提供
オンラインビジネスで最もポピュラーなタイプは商品販売です。他社からの仕入や自社の製造による食品、雑貨、書籍、家電、音楽・ゲームのCD・DVD等、楽器、家具などの消費財から工業製品等の産業財までをネット上で提供するタイプになります。
こうした商材の提供は自社サイトで販売する形態のほかECサイトを利用するケースも多いです。なお、個人が小規模で行うタイプには、自身の手作り商品等を販売する形態のほか、ネット上での仕入と販売を繰り返す「せどり」といった副業的なビジネスもあります。
2)サービスの販売
役務の提供というサービス販売もオンラインビジネスでは有効です。こちらもBtoC、CtoCの形が取られますが、個人の場合でも英会話やギター・ピアノ等のレッスン、投資や資産形成などの相談、各種士業のコンサルティング、各種カウンセリングなどの提供が多く見られます。
サービスを効果的に提供する仕組みやスキルを伝授する方法などを確立する必要がありますが、仕入や製造にかかる経費がないため、サービスのスキル・ノウハウを有する個人にも適したタイプです。
3)コンテンツの提供
コンテンツの提供とは、インターネット経由でコンテンツを配信・販売することで、具体的には音楽、動画、アプリ、ゲーム、などの配信・販売になります。
自分が得意とするコンテンツを作成し、自社サイトや動画配信サービスなどで提供することにより収益を得る方法です。自分・自社が作成したコンテンツの販売であるため、利益率は高くなり販売量が多くなれ大きなリターンも得られます。
ただし、知名度の低いコンテンツを集客して購入してもらうには効果的なネットマーケティングが必要であり時間もかかるため、このタイプは決して容易なビジネスとは言えません。
4)広告収入
自社サイトやブログサイトなどにおける他者の広告、YouTube等の動画配信サイトへ投稿した動画コンテンツにつく広告、などには広告収入が発生しますが、その広告収入を目的とするタイプのオンラインビジネスも多いです。
バナー広告(ディスプレイ広告)、リスティング広告、インフィード広告、SNS広告や動画広告などの多様な広告手段があり、自分・自社が提供するコンテンツ等にそうした広告が付くと広告収入が得られます。
また、商品・サービスの提供やサービスの販売などを主体にしながら広告収入を狙うというビジネスも有効です。ただし、収益化にはアクセス増や購入促進が不可欠であり簡単に成功できるビジネスとは言えません。
5)外注請負
オンライン上で自分のやれる仕事を請け負うというタイプもあります。個人でも事業者でも仕事のマッチングサービスを提供するサイトで自分・自社にあった仕事を探し請け負うケースが多く見られます。
たとえば、仕事のマッチングサービスをクラウド上で提供するサービスが多く登場しており、そのサイトに登録すれば自分に合った仕事を探し出し応募して受注できるケースも多いです。特に最近ではフリーランスの利用が多くなっており、会社員が副業や独立に利用しています。
自分のスキルやノウハウを活かして仕事の成果物をオンラインで納入することで収入が簡単に得られるため、手早く始められるオンラインビジネスとして有効です。
3 オンラインビジネスの始め方や会社設立のポイント
ここではオンラインビジネスを始める場合の重要な手順や会社設立する際のポイントなどを説明しましょう。
3-1 オンラインビジネスの開業の流れ
オンラインビジネスを始める場合、以下の項目の内容を参考に検討していきましょう。
①アイデアやコンセプトの創出
どのようなオンラインビジネスを実施するかを第一に決める必要がありますが、そのためにはビジネスの元になるアイデアを出して、ビジネスコンセプトにまとめていかねばなりません。具体的には以下のような手順で検討します。
1)ビジネスアイデアの発想
先ずはビジネスとなりそうなアイデアの列挙です。仕事等で得た知識・スキル・ノウハウほか、趣味の特技や保有する資格などから可能な仕事、やってみたい仕事、などを思い浮かべリストアップしていきます。
この段階では仕事の将来性やスキル等の市場価値などはあまり考慮せず、仕事になりそうと思えるものなら残らず列挙しましょう。こうした作業により自覚していない自分の隠れた才能や興味に気づくこともあり、今後の活動に役立つことも少なくありません。
2)アイデアの選択
上記で抽出したアイデアからオンラインビジネスとして有効なものを絞っていきます。選ぶ基準は様々ですが以下のような項目が候補になるでしょう。
- ・オンラインビジネスとの相性・適合性
- ・需要の大きさや市場の成長性(成長段階等)
- ・市場等での競争優位性(ライバルとの差別化の可能性の程度)
- ・ビジネス化するための必要資源の確保の困難度
- ・起業家等のその事業化へのやる気や熱意の程度
- ・ビジネス化の実現可能性の程度
- ・開業までの所要時間
抽出したアイデアをこうした項目に対して評価し、最も良い評価を得たアイデアの中から決定するといった方法になります。
3)アイデアからビジネスコンセプトへ
決定したアイデアをビジネスコンセプトにまとめなければなりません。アイデアの段階ではビジネスとして成立する要素が欠けていることが多いです。そのためアイデアを、具体的にどのようなビジネスにしていくのかを補いコンセプトへ引き上げる必要があります。
ビジネスコンセプトとは、ビジネスの仕組みの基盤となる内容をコンパクトにまとめたもので、簡単に表現すると、ビジネスとして「誰に」「何を(どのようなことを)」「どのように」提供するかを簡潔に表現した内容と言えるでしょう。
ビジネスコンセプトの例
・誰に:自宅にいる時間が増えた方に
・何を:ギター演奏のレッスンを
・どのように:オンラインレッスンで行う
4)ビジネスモデルの設定
ビジネスコンセプトをビジネスモデルに昇華します。ビジネスモデルの内容もコンセプトと同様の意味を持ちますが、ビジネスとして成立するためのより具体的な内容で「売れる仕組み」として表現していきます。
上記3)の例を元にすると、
・誰に:リモートワークしている方や定年退職した方などで自宅にいる時間が多く、音楽に興味がある方に
・何を:ギター演奏のレッスンを
個別レッスンや、初心者レベルから上級者レベルのクラス別にギター演奏の指導を行う
・どのように:
ZOOMなどのビデオ会議ツールを使ってオンラインレッスンをリアルのレッスンの料金よりも安価で行う
個別の個人レッスンのほか、初級者、中級者、上級者ごとのレッスンメニューを作成しそれに基づいたグループレッスンを一定の時間帯に実施する
レッスン動画も配信する
5)主力商品・サービスの決定
ビジネスモデルの範囲で行う商品やサービスの提供について、その中で主力となるメインメニューを設定することが重要です。自身・自社が最も得意でターゲットから多くの支持が期待でき、大きな収益源となりそうなメニューを決めて重点的に提供するようにします。
たとえば、ギターレッスンの例で示すと、自身がギター初心者の指導が得意である場合、そのクラスをターゲットの中心として彼らが希望するレッスン内容を豊富に取り入れたコースを作っていくといった考え方です。
各起業家などにおいては経営資源が限られ実施できるメニューにも限界があるため、得意で競争力のあるものを中心メニューとして自分の得意な土俵で勝負することが成功に繋がります。
6)ビジネスモデルのシステム化
ビジネスモデルを実際のビジネスとして実施するためには、モデルの内容を業務システムに落とし込む必要があります。たとえば、上記のギターのオンラインレッスンの事業を行う場合、必要な業務を洗い出してどう実施するかというシステムを設定する必要があります。
たとえば、
オラインレッスンに必要な機材の確保とレッスン時の準備
レッスンメニューの作成・変更
オンラインレッスンの集客
レッスンの担当
レッスン動画の作成や配信
サイトの開設と運用
サイトでの入会の募集・申込・入金・質問対応のシステムの作成
入会者の管理(入金やレッスンの状況確認や関係維持等)
以上のような業務を明確にして、誰が、いつ、どこで、どのように実施するかを設定するわけです。
②開業の環境準備
次はオンラインビジネスを具体的に始めるための準備をしていきます。ここでは会社員などが個人事業者として事業を始める場合の準備について説明しましよう。
1)IT環境の整備
パソコンなどの情報端末、それらをインターネットに繋ぐための機器やサービス、などビジネスで必要な情報の受発信ができる環境を整えなければなりません。
スマホの利用も可能ですが、ビジネス利用となると情報量も多くなることから効率的、快適に操作するためにはPCやタブレットなどのデバイスが不可欠です。
受注システムの構築、メールの受送信の管理、ブログ作成、SNSの利用・更新、利用者との関係構築・維持、PRや管理用の資料作成、などの作業も多くなるため、仕事に対応できる機器やネット接続の環境整備が求められます。
なお、やり取りする情報量が多い場合などでは、レンタルサーバーなどの利用も検討しましょう。
2)ビジネス用のサイト、SNSアカウント等の確保
オンラインビジネスを行う自社サイト等の設置のほか、それに伴うメールアドレス、ビジネスで使用する各種サービスのアカウントを確保しなければなりません。メールアドレスは各種の登録や契約で必要となるため、早めに取得しておくことが望ましいです。
どのようなビジネスを行うかによって異なりますが、自社サイト、SNS、ブログ、などビジネスを行う場の設置が必要になります。各ビジネスモデルに適した場を設定しましょう。
3)コミュニケーションツール
お客とのコミュニケーションを取るためのツールも必要になります。特に最近ではSNSの活用は不可欠です。ビジネスコミュニケーションの手段として、メッセージング機能があるTwitter、Facebook、Instagram、LinkedInなどを利用できるようにしましょう(要アカウント)。
また、メッセージ、ファイル共有、スケジュール共有が可能なGoogle、ChatWork、Slackなどの利用も重要です。YouTubeチャンネルはビジネスの提供手段のほか、集客用としても活用できます。
4)各種ITスキル
オンラインビジネスを効率的かつ有効に実施するためには、関連するITスキルを駆使する必要がありその習得が不可欠です。たとえば、サイト作り、画像加工、動画編集、ライティング、プレゼンテーション(トーク等)、などで一定のスキルが求められます。
綺麗で惹きつけるインパクトのある画面、みやすくわかりやすい動画の内容、利用したい思わせる説明文、この人の言うことなら試してみたいと思わせる会話、といったスキルがあるとオンラインビジネスは有利に展開できるでしょう。
5)開業届
個人事業主として事業を行い収益が多くなれば確定申告する義務が生じるため、税務署に開業届を提出しなければなりません。従業員を雇ったり許認可が必要な事業を行ったりする場合は様々な届出が生じる可能性があるため注意しましょう。
なお、青色申告承認申請書を税務署に開業届とともに提出しておけば、最大65万円の税金控除(電子帳簿保存又はe-Taxによる電子申告を行っている場合)を受けることも可能です。
3-2 オンラインビジネスでの会社設立のポイント
ここでは会社設立する場合の手順とポイントを簡単に紹介しましょう。
①会社設立の手順
会社を設立する場合、個人事業主以上に法的な手続も多くなり、それに伴う作業や費用が必要となる点に注意が必要です。その主な手続には以下のような項目があります。
1)会社の基本事項の決定
商号(会社名)、目的、所在地、資本金、役員、などの会社の基本事項の決定
2)会社の印鑑の作成
法人として使用する印鑑の作成
3)定款の作成と認証
会社の基本ルールというべき定款の作成と作成後における公証役場での認証が必要
4)資本金の払込み
指定の金融機関への資本金の振込
5)登記申請
法務局での法人登記
6)会社設立に伴う諸届出
税金(法人設立届出書)は税務署や自治体へ、年金や雇用保険などの各種保険は労働基準監督署や社会保険事務所等へ届出
7)法人口座の開設
法人口座を開設し資本金を移動
②会社設立の判断のポイント
会社設立するかどうかの判断については、法人化により個人事業主以上の利点がどれだけ得られるかを評価することが重要です。
法人化のメリットとしては、
- ・社会的信用やや高い
- ・資金調達や取引でやや有利
- ・経営者は出資の範囲内で有限責任
- ・会社の利益には法人税が適用され利益が多いと有利
- ・経営者は給与所得控除が適用され、節税しやすい
などが挙げられます。特に税金面でどれだけ有利になるかが大きな判断材料になるでしょう。ただし、法人化では手続が多くなる上、法人登記などでは30万円ほどの費用もかかり、株主総会の開催・運営、乗っ取りや経営への介入といったリスクもあるため、デメリット面の評価も欠かせません。
4 オンラインビジネスの成功ポイント
オンラインビジネスで成功するための重要な5つのポイントを説明しましょう。
4-1 ビジネスモデルの明確化
ビジネスモデルの内容が曖昧である場合、業務が非効率になったり十分な成果が出なかったりするため、明確にしてビジネスを具体化させなければなりません。特に開業時にはモデル内容をシンプルにして確実に実行していくことが重要です。
何のために、誰に対して、どのようなニーズをどの商品・サービスで、どう捉えていくかをビジネスとして明確にしておかないと、業務での一貫性が低下しかねません。
たとえば、モデル内容を明確にしないと、何かよさそうに感じたことを思い付きで始めて失敗するといったケースが多くなります。つまり、余計な仕事まで取り込んでメインの仕事が疎かになり失敗してしまうのです。
明確なビジネスモデルを基にマーケティング戦略(簡易なものでも)を策定してビジネスとして実行すれば、限られた資源を有効に使ってより望ましい成果を出しやすくなります。
ターゲット(層)を特定⇒彼らのニーズを分析⇒それを充足できる商品・サービスの内容やメニューを考案⇒彼らにアクセス及びアピールできる方法を実施⇒オンラインで24時間、商品・サービスを提供⇒代金の回収と関係の維持
こうした売るための仕組みを、明確な根拠を前提として作っていきましょう。
4-2 有望なアイデアの抽出
オンラインビジネスでは世界中を相手に商売できるという広域性があるほか、需要の小さいビジネスをかき集めて事業として成立できるという特徴があるため、ニッチな市場でも成長可能なビジネスを創出することが可能です。そのため、アイデア次第で様々なビジネスを生み出せます。
たとえば、世の中には衰退途上の市場、使用量が年々減少しているような産業などがありますが、そうした分野の商品・サービスも少ないながらも一定量の需要が存在するはずです。そうした需要もオンラインで広く集めることができれば、ビジネスとして成立します。
たとえば、「畳の張り替え」のマッチングサービスなどです。国内の住居においては洋間が増え和室が少なくなったため、畳の需要が減り畳店も減少して畳の張り替えに困る消費者が現れています。決して多くはないですが、困っている消費者と仕事を求める事業者を繋ぐことでビジネスになるのです。
こうしたサービスは自身のスキルや資格といった強みに関係なく実施・提供できるため、アイデア次第で様々な事業を創出できます。もちろん自分の特技や趣味なども世の中にはそれを高く評価してくれる人も存在するため、そうした面をビジネスアイデアとして考案することが重要になるのです。
価値が低いと思われるもの、需要が少ないと考えられること、でもオンラインの視点で見ればビジネスになる得るため、様々なアイデアを発想しましょう。
4-3 集客→購入→リピートの勝ちパターン作り
オンラインビジネスでは特に「集客→購入→リピート」の仕組作りが成功に直結するため、自社のビジネスにマッチした内容を検討する必要があります。もちろんターゲットにとって価値が高い、魅力的な商品・サービス等を提供できることが前提です。
①集客
オンラインビジネスは、ターゲットからのアクセスが商売の基盤となるため、アクセスしてもらえる環境や仕掛けを設置しなければなりません。
第一に集客に利用する、自社サイト、ブログ、SNSやYouTubeチャネルなどについて、見栄え、見やすさ、わかりやすさ、情報の豊富さや操作性、などを改善し整備していきます。
次はその集客する場所において、集客用の仕掛けの設置が必要です。インターネット上に数多存在するサイトや商品・サービスから自社及び商品等を認知してもらうための手段を講じなくてはならないのです。
具体的には、メールやメールマガジンによるPR、SEO対策(検索順位を上げる対策)、リスティング広告・DSP広告・SNS広告等、自社のSNSアカウントからの情報発信・PR、人気サイトでのリンク、インフルエンサー(ネット上で影響力のある発信者)によるPR、などになります。
もちろん上記の方法などの中からターゲットがよく利用しているものを選ぶことが重要です。また、最近では起業する際にクラウドファンディングを利用して資金調達するケースが増えていますが、成功するとPRやブランディング化にも役立ちます。
資金提供者がファンとなって自社の商品・サービスを利用してくれるほか、資金調達の成功により自社や事業の知名度が大幅に向上する可能性が高いため、クラウドファンディングは集客にも有効です。
②購入促進
次はアクセスしてくれた人に自社の商品・サービス等に好意を抱かせ購入したいと思わせる仕掛けを設置します。まず、サイトなどのビジネスの場が貧相な状態であれば、即離脱されかねないため、見た目の綺麗さ、わかりやすい(ページ)レイアウト・メニュー構成、豊富な情報量、などで充実させます。
その上でサイト等での訪問者の滞留時間を長くさせ購入を促す仕組みを作らなければなりません。ネットでは商品・サービスの善し悪しを見て触って判断することができないため、そうした評価ができるような手助けが必要です。たとえば、以下のような点が挙げられます。
- ・製品等の仕様などを丁寧に説明する
- ・対象物を様々な角度から画像で示す
- ・動画で製品等の使用場面や使用感などをPRする
- ・コストパフォーマンスの良さを他のモノと比較して説明する
- ・利用者の声を示す
また、次のような購入を後押しするような仕掛けも重要です。
- ・今なら初回特典として配送料が無料!
- ・○月○日までにご購入の場合、現在の価格より20%引き!
- ・友人等をご紹介いただくと○○円の利用チケットをプレゼント!
- ・ご購入後に商品についての感想を送信いただくと仕様を1ランクアップ!
- ・○○コ以上ご購入の場合、○○グッズをプレゼント!
ほかにも商品、支払いや納期等に関する質問や使用上の相談などに迅速に対応するシステムも欠かせません。質問等への丁寧な対応が購入やその後のリピートに繋がります。
③リピーターの確保・固定客化・ファン化
リピーターを増やし維持することがオンラインビジネスでは特に重要です。オンラインビジネスではホームページ、メール、SNSなどで双方向のやり取りが可能であるため、お客との関係作りや囲い込みがしやすいという特徴があります。
そうした利点を活かし、一度購入や質問・相談してくれたお客に対して、お礼とともに、利用状況・使用感、相談内容の解決状況、などを尋ねて関係性を深めることが重要です。
また、その際のお客の反応、返答などに対して新たな商品・サービス等や使用法などを提案できれば、信頼関係を構築していけます。こうした取組でリピーターやファンを増やしていき、新商品等の案内やイベント開催の通知などによりさらに関係の維持向上と収益の拡大が期待できるでしょう。
なお、こうした一連の仕組みは当初設定した内容の状況を見ながら改善していくことが重要です。
4-4 快適性や利便性の提供
オンラインビジネスでは時間や場所を気にせず利用できる、人と直接会わずに利用できる、ストレスなく手軽に利用できる、迅速に利用できる、といった利点があり、それらをお客が求めているケースも少なくありません。そのため、購買や取引に関して快適性や利便性等が重要になります。
たとえば、商品の在庫や納期が直ぐに分かる、料金設定が明確である、キャッシュレスなどの決済が豊富で便利である、発注の操作が簡単である、注意点が明確に示してある、わかりにくいことはQ&Aで直ぐに理解できる、質問ではチャットポット対応がある、配送料がリーゾナブルであるといった点です。
お客はサイトでの利用やサービスの提供等においてストレスを感じるようになれば、購入・利用せずにその場から去ってしまいます。そして、その後の再アクセスの可能性は低くなってしまうでしょう。
自社のオンラインビジネスの一連のシステムの中でどのような点がお客にとっての快適性や利便性に結び付くか、何がストレスになるのかを開業前から念入りにチェックし改善の上で開業する必要があります。もちろん開業後も定期的な確認と改善は不可欠です。
4-5 コロナ禍以降のニーズの変化への対応
現在はアフタコロナへの移行途上と考えられますが、そうした中消費者や事業者の消費行動や購買行動に変化が生じる可能性が高いため、オンラインビジネスにおいてもその対応が求められます。
ウイズコロナの状況にあっては人との接触を少なくするために、ネットを活用した行動が重視され今まで普及していなかった分野でもオンライン化が進みました。こうした流れは今しばらく続くと予想され、オンラインビジネスで起業したい方にはチャンスとなるはずです。
さらに仮想空間を利用したサービス(メタバース)なども増加しており、そうしたサービスを既存のビジネスに導入することで、ターゲットからのアクセスを増やし、関係性をより深めて事業をさら成長させられるでしょう。
一方、新型コロナ感染拡大の第5波が収束しつつある現状では、「リベンジ消費」なる行動が見られるようになっており、飲食業・サービス業・宿泊業などでの需要の急回復が期待できるようになりました。
こうした状況になってくると、コロナ禍で旺盛であったオンラインビジネスでの需要が停滞する恐れが生じかねません。つまり、今までのオンラインビジネスが不調になる可能性があり、その変化に対応するための手段も用意しておく必要があるのです。
たとえば、オンラインで商品・サービスを提供するだけでなく、実店舗で提供したり、お試ししたりできる複合形態を一部に導入するといった方法が考えられます。また、イベントや相談会などをリアルで開催して、「外出を楽しむ」機会を提供するといった試みも有効でしょう。
オンラインでは人に何かを教える、指導する、といったビジネスも多いですが、実際の教室や現場などにお客やターゲットを集めてサービス等を提供するといった「実際に○○すること」を楽しめる場を設けることも必要になってくるのではないでしょうか。
5 オンラインビジネスで失敗しないための注意点
最後にオンラインビジネスで失敗しないために、特に注意しておきたい点を説明します。
5-1 一定の時間をかけて継続する
これまでに確認してきた通り、オンラインビジネスではお客と直接会って購買を進める、PRするといった直接的なアプローチが困難であるため、事業の知名度が広がり一定の収益を確保するまでに時間がかかります。そのためリアルのビジネスよりも事業を安定させるための時間の確保が不可欠です。
収益の拡大には、自社サイトを魅力的な内容にする、検索上位に来るようなSEO対策を行う、ポータルサイトや情報サイトのほか各種SNSなどで広告を打つ、購入を促す仕掛けを作る、といった集客・購入・リピートの仕組み作りが欠かせません。
しかし、この収益システムは直ぐに結果に結び付きにくいため、時間をかけながら試行錯誤(いろんな手段を変えながら)で改善を重ねる必要があります。また、自身のスキルで改善が困難な場合は、この分野の専門家等の支援を受けることも重要です。
このように収益の目途をつけるには一定の時間がかかりやすいため、独立前に副業的にビジネスをスタートさせるという方法も検討する必要があります。いきなり起業した場合の収入減のリスクを避けるためにも、副業による開業は悪い選択にはならないでしょう。
5-2 集客の量と質を高める
オンラインビジネスでは集客が重要であり、多くのアクセスが望まれますが、単に多いだけではなく購買に結び付くターゲットのアクセスを増やすという質も向上させなければなりません。
集客の量を増やすためには、話題のニュース記事を投稿する、商品・サービス等の新しい使用方法を提案する、事業に関するコラムを掲載する、サイトのレイアウトや情報量を改善する、ブログやSNSなどを通じてお客やターゲット等とのコミュニケーションを図る、サイト等でのアクセス分析を行って改善策を実施するといった取組が必要です。
こうした取組を継続することが集客の前提条件となります。しかし、自社ビジネスに興味があり自らそうした情報を求めている人達を自社サイト等に誘導できることが収益の実現にはより重要であり、また実際に実施しなければなりません。
現在ではSEO対策で無理やり検索順位を上げようとするテクニックは通用しなくなってきており、安易な対策ではアクセスを伸ばすのは困難です。そのため情報の中身(価値、意味、魅力等)がより重要になっています。
お客が欲しがる自社の商品・サービス等に関連するお役立ち情報、ターゲットがより強く関心を持っているニュース、などの情報提供のほか、自社・お客同士で意見が交換できるコニュニティーの形成、などにより質の高い集客を行いましょう。
5-3 事業の拡大
オンラインビジネスでは、一般的なリアルのビジネスとは違った視点でターゲットを定め事業を成長させることが重要です。たとえば、実店舗の事業では売上の80%を占める約20%の優良顧客が存在するケース(80対20の法則、パレートの法則)が多いため、その20%に対して有効なマーケティングを展開する傾向が見られます。
その理由は限られた経営資源でもこの優良顧客層に投入すれば、効率的に収益が確保できるからです。もちろんオンラインビジネスでも同様のことが言えますが、前に示したようにオンラインビジネスでは1人当たりの購入量が小さいビジネスでも広く集めて大きなビジネスにできます(ロングテール)。
アマゾンの書籍販売等に見られるように、人気の低い本でもオンラインで広域のお客を相手にすればある程度在庫しても売り切ることができ売上を伸ばせるのです。
自分・自社があまり注力していない商品・サービス等の需要量が小さくても、ニッチでも方法次第(販売やPRの仕方の見直し等)ではオンラインで十分に商売として成立し売上を伸ばせることもあります。また、商圏を日本国内に限定しないで世界を対象にする方法に変えるのも有効です。
訪日外国人の増加とともに、世界には「メイドインジャパン」を求める日本ファンが少なくありません。1つの国だけでは需要量が少なくても全世界が対象ならまとまった売上になります。
そのため集客の方法の中に海外のファンを呼び込む、外国人ファンを作る仕掛けを導入するといった試みも必要です(外国語のサイト設置、海外向け広告、外国語でのPR動画の配信等)。
5-4 スキルの向上
これまで見てきた通りオンラインビジネスでは集客、受注、決済、質問対応、コミュニケーション、などの情報技術を伴う作業が必要であり、その知識やスキルが欠かせません。対応できるスキル等が十分でない場合、商品・サービス等に魅力があっても集客できない、売れない、などの状況になりかねません。
適切なSEO対策の実施(アクセス分析と改善等)、有効な広告手段の選定、人を惹きつける文章や会話、お客との良好な関係を作るためのSNSの活用、利便性の高いアプリの導入、などが実施できる知識やスキルが求められます。
こうした作業は時の流れとともに日々進化して新しいスキル等も必要になってくるため、経営者はその時々の状況に応じて習得し活用できるようにしなければなりません。もちろん自身で行うのが困難な場合は専門家に依頼して時代に合った情報技術を導入できるように努めることが大切です。