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コロナ禍以降の不動産ビジネスの会社設立と経営のポイント

現在、中国では不動産バブルの崩壊が危惧されており中国経済のみならず、世界経済への影響が懸念されつつあります。一方、日本の不動産業界でもコロナ禍の影響や2022年問題など不安材料は少なくありません。

 

そこで今回は、不動産業界の現状と課題、今後の不動産ビジネスの動向、同業界の有望分野を解説するとともに、不動産業での開業・会社設立の手順や経営上の注意点などをご紹介します。

 

不動産業界の現状を知りたい方、不動産ビジネスで起業・会社設立を考えている方、不動産業界で就職・転職を希望している方などはぜひ参考にしてください。

 

 

1 国内不動産業界の現状と課題

国内不動産業界の現状と課題

近年の不動産業界の現状から問題や課題を確認していきましょう。不動産業界の不動産取引件数、取引価格、売上高や建物等の賃料などからその現状を見ていきます。

 

 

1-1 不動産ビジネスの今

指標などから不動産市場の状況を確認していきます。

 

①不動産業界の市場動向

不動産業界の市場動向を見るのに「不動産価格指数」と「不動産取引件数」は有効です。

 

1)不動産価格指数

国土交通省では年間約30万件の不動産の取引価格情報から、全国や都道府県別等の不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」を毎月公表しています。

 

そのデータには「住宅」と「商業用不動産」の2種類があり、2020年から2021年半ばまでのデータをグラフ化した資料が下図(上記国交省の不動産指数のデータを基に作成)です。

 

「住宅」

住宅

 

「商業用不動産」

商業用不動産

 

上表を見ると、「住宅」と「商業用不動産」の価格指数ともに2020年の半ばから2021年の直近まで上昇傾向にあることが確認できます。2020年の前半までは新型コロナの影響などにより市場価格の下落が見られましたが、その影響も薄らいで特に住宅分野では強い回復傾向が確認できるようになりました。

 

2)不動産取引件数

2020年1月から21年6月までの国内不動産の取引件数は下表の通りです。なお、下表の合計値は、戸建住宅、マンション(区分所有)、店舗、オフィス、倉庫、工場、マンション(区分所有)の物件を合算しています。

 

このデータを見ると、2020年3月から5月まで下落傾向となり、同年6月から11月まで上昇・下落を繰り返し12月には一旦大幅な上昇を見せました。しかし、2021年1月には大きく落ち込み、その後は上昇と下落を繰り返す状況になっています。

 

上昇と下落を繰り返すことは過去にもみられる現象ですが、2020年1月から21年6月までの期間のように大幅な上昇・下落が短期間で繰り返すケースは多くありません。この原因は新型コロナによる経済への影響(事業者の経済活動の抑制・制限、消費者行動の変容等)が大きいと推察されます。

 

このコロナ禍にある不動産取引の状況を見ると、2021年は20年よりも下落の大きさが小さく取引件数が増加傾向にあると言えるでしょう。コロナの第5波による影響は今後数値として現れますが、第4波においてはそれまでよりも影響が少なく回復の早さ・強さが見られます。

 

時期 合計件数
2020/1月 27,872
2020/2月 31,211
2020/3月 44,278
2020/4月 32,542
2020/5月 24,436
2020/6月 30,127
2020/7月 33,402
2020/8月 30,999
2020/9月 34,967
2020/10月 36,137
2020/11月 35,130
2020/12月 41,026
2021/1月 26,503
2021/2月 31,335
2021/3月 46,152
2021/4月 38306
2021/5月 32567
2021/6月 37044

 

以上の通り、2020年の前半では不動産の価格や取引件数において大きな減少が見られましたが、後半には上昇へ転じるようになりコロナの影響を受ける前の水準へ回復する動きが確認できました。

 

取引件数では、コロナ禍の影響を受け始めた2020年の前半よりも第3波や第4波の影響を受けた2021年前半のほうが良い傾向が見られます。また、価格指数においては、2020年は2019年よりもやや高い水準で推移し、21年は上昇傾向を持続しているのです。

 

コロナ禍の影響が心配される日本経済ですが、今のところ不動産業界全体としては、悪影響は限定的で良好な面が少なからず存在していることが確認できます。

 

②不動産業の分野(業種等)別の業績動向

不動産業界の売上高トップ10企業を見ると10社中2社が増収、2社が横ばい、6社が減収といった状況です。この上位10社は売上高が大きくなるデベロッパー(不動産開発業者)などを中心とした総合不動産会社が占めています。

 

売上高1位は三井不動産で20,075億円(増収)、2位は三菱地所で12,075億円(減収)、3位は大東建託で10,142億円(横ばい)となっています。同じ大手総合デベロッパーである三井不動産と三菱地所ですが、全社が増収で後者が減収と明暗を分けた業績となりました。

 

このような業績の違いは、どのような事業分野を得意としているかによって差が生じると考えられます。総合不動産会社の事業としては、ビル・商業施設等の開発や賃貸および管理、マンション・戸建住宅等の開発、販売、賃貸および管理、不動産の売買、仲介およびコンサルティング、などです。

 

こうした事業のうち、各会社がどの分野を得意とするか、事業規模が大きいかによって業績の違いが生じます。

 

先の国土交通省の取引件数データについて、「戸建住宅とマンション(区分所有・一棟)」と「その他の分野」でグラフ化したものが下表の資料です。

 

国土交通省の取引件数データ

 

2020年1月から21年6月までの戸建とマンション(区分所有)の取引件数を見ると、同じような挙動(推移)が確認できますが、マンション・アパート(1棟)と比較して乱高下がやや激しいです。ただし、期間全般として20年5月から回復傾向が確認できます。

 

つまり、コロナ禍の影響も比較的小さく、それ以外の分野よりも回復の力強さが見られるわけです。一方、マンション・アポート(1棟)の取引件数は多少の乱高下はあるものの、概ね横ばいで推移しています。従って、コロナの影響は比較的小さいと言えそうです。

 

国土交通省の取引件数データ

 

店舗、オフィス、倉庫、工場といった分野での取引件数では、乱高下の挙動は全体的には同じ傾向ですが店舗とオフィスはその変動幅が大きいです。店舗とオフィスはその挙動からコロナの感染状況によっては大きな影響を受ける可能性があり、今後の乱高下が懸念されます。

 

倉庫と工場は件数の絶対値が他より小さいこともあり乱高下の幅はそれら以外よりも小さいですが、回復が抑えられているような状況と言えそうです。今後も比較的安定した取引数が期待できる反面、大幅な回復は期待しにくいでしょう。

 

このように不動産ビジネスの対象分野によりコロナ等の影響を受ける度合いが異なり業績にも違いが生じると推察されます。

 

③賃料と空室率

三鬼商事株式会社がコーポレートサイトで提供している情報(オフィスデータ)によると、2020年8月の東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の空室率は3.07%で21年8月は6.31%です。つまり、この約1年間で東京都心のオフォスの空室率が倍以上に跳ね上がっています。

 

また、これらの地区の平均賃料を見ると、20年8月は22,822円/坪で21年8月は20,932円/坪と約1年で約2千円/坪も下落(約8.3%下落)しているのです。

 

一方、株式会社東京カンテイがコーポレートで提供している「市況レポート」(賃料月別推移)によると、東京都の分譲マンションの賃料は、2020年8月が3,698円/㎡で、21年8月は3,725円/㎡です。この期間での賃料は概ね穏やかな上昇傾向が確認できます。

 

東京都のマンションを含む賃貸住宅の空室率については、株式会社タスの「賃貸住宅市場レポート」の「首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版2021年9月」で確認できます。

 

この資料によると、首都圏の空室率TVI(タス社の空室インデックス)における2020年8月の値は13.3ポイントで、21年7月は12.87ポイントと穏やかな減少傾向です。

 

こうした情報から東京都の賃貸住宅のニーズはオフィス需要に見られるような停滞感はなく、比較的良好であることが理解できます。

 

④新型コロナの影響による問題

株式会社東京商工リサーチは自社のコーポレートサイトで「『コロナ禍における不動産業のアンケート』調査」の結果を2021年4月30日に公表しました。その内容は以下の通りです。

 

・2020年2月のアンケート結果では、コロナの「影響が出ている」は15.1%(297社中、45社)だった

 

・しかし、3月には不動産売買業者から建築資材の入荷遅れによる物件引き渡しへの影響が出始め、その後、賃貸業者がテナントの退去や家賃の減額、猶予要請を受けるなど、影響は徐々に拡大していった

 

・2021年4月のアンケートでは、コロナの影響を受けたのは73.6%(220社中、162社)に達する。そのうち、「影響が出たがすでに収束」は9.5%(21社)、64.0%(141社)は依然としてコロナの脅威にある

 

・コロナの影響を受けた不動産業のうち、前年同月比での減収は2020年5月の緊急事態宣言下で89.2%(242社中、216社)に達した(不動産契約のキャンセルや営業活動の自粛などにより)

 

・2021年3月でも、71.0%(107社中、76社)と7割がコロナ禍以前と比べて減収

 

・2021年4月時点で、コロナ関連の支援策の利用は56.8%(220社中、125社)。同月の「廃業検討率」は7.6%(197社中、15社)で全産業平均(6.8%)を上回る
⇒コロナ支援に伴う過剰債務が増え、先行きの不透明感が強い状況下にあって廃業を検討する不動産業が増加しつつあります。

 

・緊急事態宣言などに伴いコロナ禍での経済活動が停滞し、生活や事業の拠点を提供する不動産業の回復の遅れは回避困難であり、今後は廃業や倒産がさらに進展する可能性が強まっている

 

また、東京商工リサーチ社は上記のアンケート結果で以下のような不動産業の業種別の影響を分析しています。
*不動産業を細分化し、不動産の売買や代理、仲介業の「不動産取引業」と、不動産のオーナー、または管理を手がける「不動産賃貸業・管理業」で分析

 

「業種別 賃料減額やテナント退去など不動産賃貸・管理業の影響が重い」

 

・「不動産取引業」の減収企業率は、2020年3月に76.3%(72社中、55社)、5月は90.6%(107社中、97社)に達する。その後は徐々に回復したが、20年7月から2021年2月まで7割前後で推移
減収の原因は、建築資材の入荷遅れに伴う物件の完工遅延、取引先の業績悪化に起因する契約解除や営業活動自粛などによる影響です。

 

・「不動産賃貸業・管理業」の減収企業率は、飲食店等のテナントの退去と新規入居の不調、賃料減額や猶予要請への対応等により2020年5月は88.1%(135社中、119社)と、高水準で推移。

 

宣言解除後しばらく高止まりした後、10月には7割(69.4%)を下回る。しかし、2回目の緊急事態宣言で再び上昇し、2021年1月は82.7%(81社中、67社)と8割を超えた

 

以上の内容から不動産業の事業者向けビジネスにおいては、新型コロナの影響が業績を悪化させ事業継続を困難にしていることが理解できます。現状の不動産業界では住宅関連向けビジネスにおいては良好な面も見られますが、オフィスや店舗などの事業者向けビジネスは厳しい状況にあると言ってよいでしょう。

 

 

1-2 不動産業界が今抱えている課題

これまでデータで確認してきた不動産業界の状況に、現在どのような問題や課題があるのかを説明します。

 

動産業界が今抱えている課題

 

①人口減少・少子高齢化

日本は人口減少と少子高齢化の進展が顕著になっており、それが不動産業界の成長を阻害する恐れがあります。

 

日本の総人口は2008年に約1億2,800万人のピークに達した後減少し始めました。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、2030年には約1億1,900万人、2065年には約8,800万人になるという推定です。

 

また、人口構成では2015年から2030年にかけて、15歳未満人口は273万人の減少、生産年齢(15~64歳)人口は853万人の減少となる一方、高齢者(65歳以上)人口は329万人の増加になると見込まれています。

 

世帯数は、2015年の5,333万世帯から2023年まで増加して5,419万世帯でピークアウトするとの予想です。従来の家族類型の主流であった「夫婦と子」の世帯は122.4万世帯の減少となると推定されています。

 

他方、単独世帯は183.6万世帯の増加で、特に65歳以上の高齢者単身世帯の増加が著しく、2015年から2030年にかけて1.27倍(625万世帯→796万世帯)に増加すると予測されているのです。

 

このように日本の人口が減少するだけでなく、人口構成が変容し世帯構成にも変化が予測されるため、不動産業界では特に住宅ニーズの減少と変化への対応に迫られることになるでしょう。

 

②2022年問題

不動産業界で注目を浴びている「2022年問題」とは、主に都市部で指定されている「生産緑地」が、2022年に指定が解除されて、それらの土地が住宅用地として大量に供給されるに伴い不動産価値が急落する可能性があるという懸念のことを指します。

 

1991年の「生産緑地法(進みすぎる開発から良好な都市環境を確保する目的)」の改正で、市街化区域内の農地のうち、一定の要件に該当する農地について、都市計画で生産緑地に指定できるようになりました。

 

生産緑地に指定された農地は、継続して農業を行うことが要求され、農業経営に必要な施設等の設置以外が禁じられた半面、固定資産税や都市計画税の減額、相続税や贈与税の納税猶予などの税制上の優遇を受けられるようになったのです。

 

この生産緑地に指定された多くの土地が2022年に期限満了となるほか、農業従事者が減っているため、生産緑地としての指定更新が難しくなっている土地が多いと見られています。

 

生産緑地の指定解除となれば税制上の優遇を受けられなくなるため、売却される土地が増える可能性が高いと見込まれており、それが土地の暴落に繋がるのではという噂が広がっているわけです。

 

つまり、2022年問題とは、生産緑地の指定解除地の増加⇒該当地の売却増⇒土地の暴落、という推測による懸念ですが、どの程度土地の価格や不動産取引に影響するかは定かではありません。ただし、22年以降の経済や不動産市場の状況により現実化する可能性はゼロとは言えないでしょう。

 

③IT化の遅れ

不動産業界は他の業界に比べIT化やデジタル化が遅れていると言われ、それが業界の成長を阻害する可能性があると危惧されています。

 

総務省が発表している「情報通信白書」には、平成26年時調査における各産業別の産業別ICT利活用状況が示されており、その中で不動産業がICT化の進展スコアにおいて最も低い水準にあることが確認できます。つまり、不動産業界はIT化が最も遅れている業界の1つなのです。

 

・産業別ICT利活用状況(スコア)

産業別ICT利活用状況(スコア)

 

IT化が遅れている主な原因としては以下のような点が挙げられます。

 

  • ・物件を販売・仲介する事業者に多数の個人事業者が多い
  • ・個人事業者などは資金力が乏しく十分なIT投資が容易でない
  • ・経営者に高齢者が多くITリテラシーが十分でない
  • ・販売や仲介に関する業務では対面や電話などのサービスが主流である

 

⇒不動産業の業務が、来客対応やメール・電話対応、物件や顧客の情報管理、内見対応、売上管理などの作業が主に人力で対応するケースが多いことなどが関係していると見られています。

 

不動産業の労働生産性は1件あたりの取引高が高いことから他の業界と比べて高いですが、米国など他の国と比較した場合、かなり低いと言わざるを得ません。例えば、米国の不動産業界の労働生産性と比較した場合、米国を100の基準にすると日本はその27.1%です(公益財団法人日本生産性本部の「産業別労働生産性水準の国際比較」より)。

 

日本の他の業界ではIT化やデジタル化が進められ、それらを活用してイノベーションを起こし事業を発展させる動き(デジタルトランスフォーメーション等)が加速し始めています。しかし、不動産業界はIT化が遅れておりそれにより成長のスピードが遅くなることが心配されます。

 

生活やビジネスの基盤となる不動産の確保に時間やコストが必要以上に多くかかるようでは日本経済にとってはマイナス要因であることに間違いないでしょう。

 

④新型コロナの影響

新型コロナの影響は、既に業績などの数値面でも確認しましたが、ここでは業務面や投資面などから確認していきます。

 

不動産会社の業務へのコロナの影響については、「来店数の減少」「内見数の減少」「問い合わせの減少」などに伴い「売上の減少」へ繋がる可能性が高いです。また、「営業時間の短縮」「イベントの中止や延期」「物件引渡しの延期」などに見舞われる可能性も小さくありません。

 

さらに「テレワークの導入」など業務の進め方を変更した場合の生産性の低下も心配されます。

 

不動産会社の主な事業内容は、「賃貸物件の仲介」「賃貸物件の管理」「売買の仲介」「マンション等の分譲」などです。その業務内容やその進め方等が事業の進展や業績に影響しますが、人との直接的なコミュニケーションを主体する業務(会社)ほどコロナの影響が強くなるはずです。

 

投資関連の影響として、賃貸需要、物件価格と融資の3つが危惧されます。賃貸需要については、テナント側の閉店等の退去に伴う空室の増加や家賃の滞納などが問題となってきました。

 

感染拡大の防止のために国民への外出自粛要請、事業者への営業時間短縮要請等が実施され、それにより飲食店等の収益が激減し彼らから貸主への家賃減免措置を求める動きが生じています。

 

行政からの補助・支援もありますが、十分とは言えないためテナント側の要求に応じればと、貸主の負担が大きくなります。また、テナント側の撤退が増加すれば空室の長期化というリスクも増大する可能性が高いです。

 

物件価格については、コロナ禍による長引く景気の低迷で物件価格への影響が心配されます。現在のところ不動産価格指数は比較的良好ですが、新型コロナの感染拡大が収束しないと今後はオフィスや店舗などの事業者向けの下落がさらに強まり、住宅関連の価格まで波及しかねません。

 

例えば、新築マンションの内見率などに減少が見られていることから今後は物件の成約数が落ち込み、それが値引販売の増加に繋がって価格低下が生じる可能性が危惧されているのです。

 

融資については、コロナ禍による景気の長期停滞に伴い、これまで不動産業界への融資に比較的に積極的だった金融機関の融資姿勢が硬化する可能性が懸念されます。

 

コロナ禍の影響による資金繰りの悪化に備えたい不動産事業者をこれまで金融機関が支援してきました。しかし、飲食等の事業者の倒産や撤退の増加、不動産取引の減少、賃料等の低下などが進み事業者の業績や財政状況の悪化が増大していけば、金融機関は融資に慎重にならざるを得ません。

 

日銀のマイナス金利政策下で投資用不動産への融資実行が不動産価格を高値で維持させてきましたが、融資が縮小し取引量が減少していけば不動産価格は下落して担保評価の下落も予想されます。所有物件の担保価値が下がれば、事業者の資金調達がさらに困難になっていくでしょう。

 

⑤グローバル化の進展

訪日外国人旅行者数は、2018年に史上初めて3,000万人を突破して、2020年の目標は4,000万人とされていました。また、在留外国人数は約264万人(2018年6月時点)と過去最高となっており、2019年4月に外国人材の受け入れ制度が開始され、彼らの住まいを確保するといった新たな需要も期待されています。

 

不動産業界は、こうした海外からの流入者に伴う不動産需要の増大に対応していくことが求められているのです。

 

一方、日本の製造業などを中心として海外での事業展開に乗り出す企業も増加しました。特にASEANなどを中心とするアジア諸国への進出は目覚ましいですが、そのASEAN諸国の経済発展そのものが急ピッチで進んでおり不動産需要は日本以上に旺盛です。

 

こうした海外の不動産需要の増大は、日本の不動産業界にとってもチャンスであり、更なる成長を目指すためには、その需要を取り込んでいくことが求められます。

 

 

2 ポストコロナを含む今後の不動産ビジネス

ポストコロナを含む今後の不動産ビジネス

不動産業界の状況や課題を踏まえて、今後の不動産ビジネスの方向性やあり方などを考えてみましょう。

 

 

2-1 人口減少と少子高齢化社会での不動産ビジネス

人口減少による住宅需要の減少と高齢者人口の増加に対応する不動産ビジネスが求められます。国土交通省の「新設住宅着工戸数の推移」(総戸数、持家系・借家系別)によると、新設住宅着工戸数は平成11年の1,226千戸から令和元年には884千戸と大幅に減少しました。さらにシンクタンクなどの予測では今後も減少する可能性が高いです。

 

また、4人家族構成などの世帯が3人以下の少人数世帯へと移行しつつあるため、住宅ビジネスはその変化に対応していく必要があります。

 

そして、その少人数世帯対応では、夫婦2人の共働き世帯、子供1人がいる子育て世帯、高齢者のみの高齢者世帯、1人暮らしの単身世帯、などにターゲットを細分化し、各々の住宅ニーズやライフスタイルにマッチした住宅サービスの提供が重要になるのです。

 

夫婦2人の共働き世帯では、通勤の便利さ、食事や買物が夜遅くまで利用できる環境、帰宅時間の違いが気にならない部屋の間取り、といった面での対応が有効になるでしょう。

 

子供がいる子育て世帯では、保育所・学校、病院、公園などの子供に適した住環境、地域の治安の良さや静寂性、子供部屋や子供と寛げるリビングといった間取りなどの充実が求められるはずです。

 

高齢者世帯では、階段のない平屋、楽に移動できる動線、孫と遊べるリビング、気軽に散歩できる住環境などの配慮が重要になります。

 

単身世帯では、職場への近接性、趣味に没頭できる部屋や自分のこだわりを反映できる空間の創出、買物や外食などが気軽に楽しめる立地、などのニーズに対応できることが必要です。

 

今後予想される住宅利用者についてターゲットを定め、彼らの住宅ニーズを的確に捉えて充足できる住居やその関連サービスを提供していくことが求められます。

 

 

2-2 2022年問題への対応

2022年に生産緑地として指定された土地が解除され、それらが売却されることで土地の価格が下がるのではと懸念されていますが、本当に自社のビジネスに影響するかを見極めた上で必要な場合には対策も講じなければなりません。

 

生産緑地の多い東京都を含む首都圏の不動産ビジネスについては注意が必要ですが、本当に自社に影響するのか、という点を確認しておくべきです。具体的には、自社のビジネス領域内にある生産緑地で土地の暴落が発生するのか、どの程度下落するのかなどの可能性について分析しておく必要があります。

 

例えば、都心から離れた場所、駅から徒歩10分以上かかる場所の生産緑地が売却されても都心や駅近い場所の地価への影響は小さいことが予想されます。他方、郊外で駅から離れた地域の生産緑地が売却されるとその周辺の地価が下がる可能性は低くありません。

 

具体的には、郊外で駅から離れた地域のファミリー向け住宅などです。その地域の生産緑地が売却され、そこでファミリー向け住宅が多く開発されていけば、周辺の物件で空室が増加し賃料が徐々に下がっていく可能性があります。

 

その結果、そこでの不動産の仲介や管理ビジネスにおける収益低下の可能性が高くなってしまうのです。しかし、実際に生産緑地が売却されるかは不明であり、売却されても地価が下がるまでに一定の時間が必要になります。さらに住宅が建設され賃料が下がるまでにはもっと時間がかかるはずです。

 

このように自社の事業エリア内の生産緑地がどのような状況にあるのかを確認し、その上で必要な対策を検討しましょう。なお、生産緑地問題による業績への影響を緩和には、以下のような方法などを検討すべきです。

 

・生産緑地が少ない地域や都心の駅に近い地域では生産緑地問題の影響は比較的小さいと考えられるため、そうした地域での事業の拡大や進出を検討する

 

・生産緑地の売却を防止できる、土地の活用方法を提案する
⇒例えば、「農業体験農園」です。農業体験農園は、農家が地域住民等に対して農作業の講習・体験を提供し、入園料を収入として得るビジネスになります。このビジネスは、耕作主体が農家であるため農地法に基づく利用権設定などの許認可も必要なく、相続税納税猶予を受けている農地での開設も可能です。

 

事業者は、生産緑地の売却を阻止できるほか、ビジネスモデルの提案・コンサルティング、集客や管理に関するサービスの提供等で収益に繋げられます。

 

 

2-3 ITの不動産ビジネスへの活用

ITの不動産ビジネスへの活用

不動産業の業務は主に人と紙・ハンコを介して行われるものが主流でした。しかし、インターネット、ビッグデータの収集、AIによるデータ解析、ソフトウェアの活用、などの情報通信技術がビジネスに活用され始め、不動産業務にも変化が見られるようになってきました。

 

IT化の進展で、物件探しにおける物件の取引データも確認できるようになってきており、「不動産査定の一括査定」も実現されています。不動産物件の売却先を探す際に、このシステムを利用すれば一瞬で6社といった複数社からの査定額を入手できるようになったのです。

 

こうしたITを活用した情報提供やマッチングなどにより不動産取引が容易に促進され不動産ビジネスの拡大や成長に繋がっています。また、最近では新型コロナの影響により内見者が減少していますが、現物を訪問しなくても実施できるVR(仮想)内見の導入を進める業者も増えてきました。

 

こうした不動産ビジネスのIT化の中で、「不動産テック」として推進されるものも増えています。不動産テックとは、「不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと」です(一般社団法人 不動産テック協会より)。

 

つまり、インターネット、AI、ビッグデータや情報システムなどのテクノロジーを活用して不動産ビジネスを変革する行為や仕組みが不動産テックと言えます。

 

なお、不動産テック協会が定義する不動産テックのカテゴリーは以下の通りです。

 

カテゴリー 内容
VR・AR VR・ARの機器を活用したサービス等
IoT ネットワークに接続されるデバイス等から得られたデータ等を分析するサービス等
スペースシェアリング 不動産や空きスペースのシェアやマッチングのサービス等
リフォーム・リノベーション リフォーム・リノベーションの企画設計施工、WEBプラットフォーム上でのマッチングサービス等
不動産情報 物件情報を除く、不動産に関連するデータを提供・分析するサービス
仲介業務支援 不動産売買・賃貸の仲介業務の支援サービス、ツール
管理業務支援 不動産管理会社等の主にPM業務の効率化のための支援サービス等
ローン・保証 不動産取得に関するローン、保証サービスを提供、仲介、比較をしているサービス
クラウドファンディング WEBプラットフォームで資金を集め、不動産へ投融資を行うマッチングサービス等
価格可視化・査定 様々なデータ等から不動産価格、賃料の査定、その将来見通しなどを行うサービス等
マッチング 物件所有者と利用者、労働力と業務などをマッチングさせるサービス
物件情報・メディア 物件情報を集約して掲載するサービスやプラットフォーム等

 

こうしたカテゴリーの不動産テックを活用して業務の効率性と競争優位性を獲得し成長していくことが期待されます。

 

 

2-4 グローバル化への対応

不動産ビジネスのグローバル化対応として、以下のような点が挙げられます。

 

①海外からの訪問者等への対応

近年、海外からの旅行者やビジネス客等の増加が目覚ましいですが、ポストコロナ以降ではその回復が期待できるはずです。コロナ禍の影響により宿泊業・飲食業が大きなダメージを受けましたが、コロナが収束していけば、インバウンド需要も回復していくことが予想されます。

 

今後は訪問者の増加に伴い店舗の再開や新規開業等が期待できるため、それらに対応するサービスの提供は重要となるはずです。ほかにも観光地やリゾート地の再整備や開発なども必要になるでしょう。

 

北海道のスキーリゾート地や沖縄県の海辺のリゾート地などは海外旅行者の人気が高く外国人の購入により土地の価格が高騰しました。日本には数多くの観光地やリゾート地もあるため、地域と連携した開発は有望です。

 

また、コロナ禍で減少していた技能実習生も増加していく可能性が高いため、国内の監理団体などと連携して彼らの宿伯施設、実習場等を提供していくといった事業の拡大も期待できるでしょう。

 

②国内企業の海外進出での対応

国内の製造業などは円高対策や安価な労働力の確保などを目的に海外に進出するケースが当たり前になってきており、今では中国からASEANなどの新興国の地域に拠点をシフトする動きも増えてきました。

 

また、生産面だけでなく海外での販売に力を入れる企業も増加しており、国内企業の海外における不動産ニーズは高いです。経済産業省の「海外事業活動基本調査」の「現地法人企業数の推移」のデータを見ると、2010年度は18,599社で2019年度は25,693社と大きく増加していることが分かります。

 

2019年度データを業種別で見ると、25,693社のうち製造業が11,199社、非製造業が14,494社となっており、非製造業が製造業を上回っている状況です。こうした海外進出に伴う拠点の確保にかかわる不動産需要を取り込むためのビジネスも検討すべきでしょう。

 

③ASEAN等への不動産投資と都市開発への対応

ASEAN等のアジア諸国では急激な経済成長が進展しており、都市開発や住宅建設などが活発です。日本の高度経済成長時に見られたような旺盛な不動産需要が生まれており、日本の企業にとってはその成長を取り込めるチャンスとなっています。

 

海外の都市開発等では何かと制約が多く日本企業が参画するのは容易ではないですが、日本が高度経済成長期から今日までに培ってきた快適で安心・安全な街づくり・省エネの住環境整備や耐震性のある建物・構造物等のノウハウは現地にとって魅力的です。

 

例えば、交通機関との近接性や移動の便利さといった立地の良さ、学校・病院・役所・公園・金融機関・商業施設などをバランスよく配置した街づくり、細かな住居者ニーズに対応できる室内設計、信頼の高い耐震性、高断熱・高気密・効率換気、太陽光発電システム、などの高い環境性能のある建物、といった点を提案・アピールすれば受注に繋げられるでしょう。

 

また、海外の不動産物件を対象とする投資が日本国内でも注目されています。国内の不動産投資では期待できるリターンが十分ではないため、成長著しいASEAN諸国の不動産投資に熱い視線が注がれているのです。

 

海外の不動産投資物件を確保して、物件の販売のほか、賃貸の仲介や現地での管理業務を担うことでビジネスを拡大させることも可能になります。

 

 

2-5 ポストコロナ以降の対応

ウイズコロナの状況にあっては、労働や業務に関する3密回避・感染防止に対応する、在宅ワークやサテライトオフィス等の働き方に対応する、巣ごもり生活を快適にする、といった不動産サービスの提供が課題でした。

 

今ものそうした対応が必要であり、ポストコロナにあってもその傾向はある程度続くと予想されます。つまり、ウイズコロナにおける人々や事業者の行動様式が、今後ニューノーマルなものとなった場合の対応として必要になるです。

 

在宅ワークが主流となれば、家庭内での仕事スペースの確保も本格化し、自宅の間取りの変更や増築なども増える可能性があります。防音性を確保した部屋・書斎等の設置といったニーズなども増え、それらがリフォームの増加に繋がるというチャンスになり得るのです。

 

また、今までの労働場所であった会社の事務所で多人数が一堂に会して働くケースは少なくなる可能性があり、余ったスペースの変更や人数に適したスペースのあるオフィスへ移転するといった動きも見られるでしょう。

 

ほかにも会社側としては、家庭内のワークスペースの確保が困難な者への対策として、サテライトオフィスや個室ブースなどを社員に提供するケースも増える可能性があります。

 

不動産業者としては、従来主流であったオフィス需要に対する事務所の供給からこうしたワークスペースの供給といったニーズの変更に対応することも必要です。

 

飲食・サービス業などにおいては、まだしばらくは3密回避・感染防止に重点を置いた店舗にしておく必要があるため、そうした店舗を開発したり仲介したりできるサービスが求められます。

 

ただし、新型コロナの感染拡大の脅威がなくなり、従来のようにマスクなしで会話、運動や食事ができるようになれば、逆にコミュニケーションを快適にできる店舗や事務所の必要性は増すはずです。そのためコロナの感染拡大の収束と人々の行動変容を注視し、それに連動した対応が取れるようにしましょう。

 

新型コロナの影響で巣ごもり需要が増加した結果、インターネット通販も飛躍的に伸びそれにつれて輸送量も大きく増加しました(「EC市場の規模が更に拡大し、2020年度の宅配便取扱個数は対前年比で概ね10~20%増」)。

 

例えば、日本郵便ではネット通販の荷物量が大幅に増えたため、当日の再配達受付と荷物の集配受付を停止する、といった事態に陥ったことがあります。

 

輸送量が増える一方、ドライバーは不足がちとなっているため、物流のあり方も見直しされつつあり、より効率的な物流の実現のために適切な物流拠点の設置が進められつつあります(ラストワンマイル特化型の物流拠点の増加等)。

 

また、自然災害の急増により物流拠点の分散化を進める企業の動きも見られるようになってきました。こうした物流のあり方の変化に合わせた不動産ビジネスも重要になるでしょう。

 

 

3 不動産ビジネスを始めるには

不動産ビジネスを始めるには

不動産ビジネスをどのように開始するかについて、その一般的な手順やポイントを簡単に説明しましょう。

 

 

3-1 不動産ビジネスとは

まず、不動産ビジネスの内容を確認します。

 

①不動産業の種類

不動産事業者とは不動産を取り扱う事業者のことで、大まかに以下のような業種に分かれます。

 

不動産業の種類

 

  • ・不動産物件の開発
  • ・不動産の売買
  • ・不動産の仲介
  • ・不動産の管理
  • ・不動産のコンサルティング
  • ・その他

 

1)不動産デベロッパー

不動産デベロッパーとは、住宅・マンションやオフィスビルなどのほか、都市全体といった不動産を開発する専門業者のことです。具体的には、街の開発や再整備等、リゾートの開発、大型商業施設の開発、大規模宅地の造成や大型マンション開発、などが不動産デベロッパーの事業になります。

 

不動産デベロッパーの事業は規模が大きくなるため、建設工事や土地の確保にかかる資金が膨大になりやすく、建設業許可を有する規模の大きな会社が多いです。

 

2)不動産の売買

不動産の売買事業は、不動産会社が自分で確保した不動産を売買する事業になります。これは不動産の仲介ではなく不動産会社が自ら建設したり買取ったりした不動産を顧客に販売する事業です。

 

対象不動産によって必要資金が異なりますが、仲介業よりも多く必要となるため、個人事業者が営むのは簡単ではありません。なお、売買事業は不動産そのものの売買により、収益が仲介業よりも多くなりやすいです。

 

3)不動産の仲介

不動産の仲介業は売買の仲介と賃貸の仲介に分かれます。両方とも営業している不動産会社もいますが、賃貸仲介を専門にする個人事業者などは多いです。賃貸仲介では、アパートやマンション等の住宅ほか、事務所や店舗など事業用不動産の賃貸物件も扱われています。

 

仲介業では、賃貸借契約が成立した場合に支払われる仲介手数料が収入となりますが、1件あたりの金額は売買と比べて小さいです。ただし、賃貸ニーズは売買よりも多く、ニーズも多様であるため、比較的安定した収益を確保しやすい点が魅力となっています。

 

4)不動産の管理

不動産の管理事業は、住宅等の入居者の募集・斡旋から家賃の回収といった業務の請負です。住宅のほか駐車場の管理など、管理対象は広範囲におよびます。

 

なお、事業者は入居者の家賃滞納、空室時の家賃保証、入居者間のトラブル、といった問題などに対応しなければなりません。事業者ではなく、不動産の所有者(大家等)が行っているケースも多いです。

 

5)不動産のコンサルティング

不動産のコンサルティングは、顧客が売買、投資、相続等を考えている土地や建物についての相談を受け、顧客の不動産に関する要望・悩み等を解決するための企画案や対策案を提案する業務になります。

 

不動産会社が事業としてコンサルティング業務を営むケースも多いですが、不動産会社に勤務していた者が不動産コンサルタントとして独立し開業するケースも少なくありません。

 

6)その他

所有者から不動産を一括借り上げして家賃保証を行い、物件の入居者募集や入居者の賃料回収などを行うサブリース事業や、老朽化した物件を買い取った後に改修して付加価値を加え賃貸や売買の物件とするリフォーム・リノベーション事業などもあります。

 

②不動産業の経営形態

不動産業においても経営形態として、個人事業と法人事業の形態をとることが可能です。ここでは不動産業における両形態のメリット・デメリットを確認しましょう。

 

●個人経営

1)メリット
以下のような点が挙げられます。

 

  • ・開業時の手続の費用や経費が比較的少ない
  • ・赤字の場合、所得税や住民税の支払は不要
  • ・法人と違い登記が不要。税務署への届出のみで開業できるなど手間が少ない
  • ・宅地建物取引業の免許申請までの時間が少なく済む(登記手続の時間が不要であるため)

 

2)デメリット

 

  • ・取引時の信用は高くない
  • ・法人に比べ金融機関からの融資が不利
  • ・倒産の場合、個人が債務を負う
  • ・個人の所得には累進課税が適用され税金が多くなる可能性がある
  • ・国民健康保険や国民年金への加入となる

 

●法人経営

 

1)メリット

 

  • ・社会的な信用が個人より高い
  • ・金融機関からの融資が個人より有利
  • ・倒産の場合の責任は出資の範囲内の有限責任
  • ・事業利益は法人税が適用され、税負担が小さくなりやすい。経営者の収入は給与所得控除が適用され、節税対策で有利
  • ・法人の方が事業上の多様なサービスを受けやすい

 

2)デメリット

 

  • ・法人登記等の費用や手間が小さくない(開業時の認証手数料や諸経費)
  • ・従業員の社会保険料の負担と手続の手間が少なくない
  • ・税務調査の可能性が増す
  • ・赤字でも法人住民税の支払いがある

 

 

3-2 不動産業の会社設立を含む開業の手順

不動産業を始める手順を簡単に説明します。なお、不動産業は宅地建物取引業法などに従って行う必要があり、開業の手順もその規定に沿って進めなくてはなりません。

 

以下に主な流れを順番に説明しましょう。

 

不動産業の会社設立を含む開業の手順

 

①開業準備

最初は開業準備です。なお、開業の進め方の中心は「経営形態の選定」「業種形態の選定」「開業資金の確保」「営業保証金の用意」の4つになります。

 

経営形態と業務形態は、選択する形態により開業時に必要となる費用や取引に関する制限などが異なってくるため、自分の状況を考慮して決定するべきです。特に、開業時には、営業保証金などの多額の開業資金が必要になり得るため慎重に検討しましょう。

 

・開業時の必要資金の内訳例(公益社団法人 全日本不動産協会 HPより
以下の条件による資金設定です。

 

常勤者:1名(開業者のみ)
事務所:賃貸物件
宅地建物取引士:開業者が取得済み

 

開業時に必要なもの 内訳
事務所 ●事務所経費敷金、当初賃料、内装工事費等
●事務機器、家具、備品等応接テーブル、イス、事務机、キャビネット等電話、事務機(コピー・FAX・プリンタ)、PC等
●通信関係電話やインターネットの加入や工事の費用等
営業保証金(弁済業務保証金分担金) ●営業保証金1000万円※不動産協会に加入した場合は弁済業務保証金分担金60万円
免許申請 ●申請時の経費申請手数料3万3000円、必要書類の購入・準備等
業界団体への加入 全日本不動産協会・不動産保証協会・全国不動産協会、などへの加入費用
その他諸経費 印鑑・名刺・筆記具などの事務用品、自動車、関連書類の準備等

 

開業時に必要な経費 内訳
事務所維持費 毎月の賃料・通信費・水道光熱費等
業界団体の会費 各種加入団体の会費
その他の諸経費 免許の更新手数料、自動車の維持費、事務所用品等の消耗品費用等

 

・営業保証金の内容

営業保証金は、不動産業者が営業を始める前に供託所に供託するものです。

 

1)営業保証金の供託は、宅地建物取引業法で定められた義務になります。不動産業者が消費者と取引する場合、その消費者が損失を被る場合の弁済に営業保証金が利用されるのです。なお、弁済額の上限は営業保証金相当額となります。

 

2)事業者に複数の支店がある場合、本店で1000万円、各支店で500万円の供託金が必要です。ただし、不動産協会に加入した場合は本店で60万円、各支店で30万円の弁済業務保証金分担金を納付すれば営業保証金は免除されます。

 

3)免許年月日から3カ月以内の供託手続が必要で、免許行政庁への届出を完了しない場合は、免許が取り消される可能性もあるため要注意です。

 

②事務所の設置

事務所の設置には一定の要件があり、何処にでも、どんな形態でも設置できるものではありません。専用出入口や独立した事務所スペースの設置が義務付けられているなど、要件を満たす必要があります。

 

不動産経営に相応しい事務所のあり方は、不動産業に不可欠な「宅地建物取引業免許」の取得に関わる要件となるほか、事務所の形態や立地は、事業運営や業績に影響するため慎重に検討すべきです。

 

なお、初期投資の低減のために、自宅の一室(戸建ての住宅の一部を事務所にする)や、他法人が入居している事務所の一角を利用(オフィスビルにテナントとして入居)して営業することも可能です。

 

以下に会社設立(法人に)する場合の流れを簡単に示しておきましょう。

 

1)会社の基本事項の決定
商号(会社名)、目的、所在地、資本金、役員、などの会社の基本事項を決める必要があります。

 

2)会社印鑑の作成
登記申請書に押印する(登記所に届け出る)会社の「代表者印」(代表取締役の印鑑)が必要です。通常、「会社代表者の印鑑」が「会社実印」として使用されますが、銀行印などは別に用意した方が管理上よいでしょう。

 

一般的には、営業開始後の業務上の利用の点から汎用的に使用できる銀行印、社印(角印)、ゴム印(横書き)などが作成されます。

 

3)定款の作成と認証
定款は、自社の活動上の基本ルールを定めたものです。定款の内容には、会社の目的や商号など必ず記載する絶対記載事項から任意事項まであります。定款の作成後、公証役場にて認証を受けねばなりません。

 

4)資本金の払込み
指定の金融機関に資本金を払込み、残高証明書の発行を受けておく必要があります。

 

5)登記申請
法務局で会社設立の登記申請を行います。

 

6)会社設立後の諸届出
会社設立後は、税金関係で税務署、健康保険・年金保険・労災保険などの社会保険関係では労働基準監督署、社会保険事務所、ハローワークなどの機関へ届出が必要になります。

 

③宅地建物取引士の設置

開業には専任の「宅地建物取引士」を、従業員5人に1人以上の割合で事務所に所属させなければなりません(宅地建物取引業法第31条の3:「事務所等の規模、業務内容等を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならない」)。

 

宅地建物取引士は、不動産取引が法律に則り公正・公平に行われるように、消費者への重要事項説明、重要事項説明書への記名・押印、契約書等の書面への記名・押印・交付、などの重要な業務を担います。退職などで人員が不足した場合は補充が必要です。

 

④免許の申請

「宅地建物取引業免許」は、不動産業を行うために不可欠な免許です。免許取得には「欠格事由に該当しないこと」「事務所の形態を整えていること」「宅地建物取引士を設置していること」の3点を満たす必要があります。

 

なお、免許を要する宅地建物取引業とは、不特定多数の人を相手方として、次のような取引を反復または継続して行う事業のことです。

 

・「自己物件」「他人の物件の代理」「他人の物件の媒介」の全てに対して「売買」「交換」を行う

 

・「他人の物件の代理」「他人の物件の媒介」の2つに対して「賃貸」を行う

 

免許の区分は、「1つの都道府県内に事務所を持つ」場合は都道府県知事免許、「2つ以上の都道府県に事務所を持つ」場合は国土交通大臣免許になります。

 

⑤協会への加入

不動産協会は、公益社団法人 全日本不動産協会と公益社団法人 宅地建物取引業協会などがあり、不動産業界の発展と業者・消費者の保護を目的に活動しています。

 

不動産協会へ入会すると、営業保証金の免除や不動産流通システムの「レインズ」(REINS)や「ラビーネット」の利用、教育研修の受講、などのメリットが享受でき、開業後に多様なサポートを受けることも可能です。

 

以上の手順を完了すればいよいよ開業となります。

 

 

4 不動産業を経営する上での注意点

不動産業を経営する上での注意点

最後にまとめを兼ねて、現在からポストコロナにおける不動産ビジネスで特に注意しておきたい経営上の注意点を示しておきましょう。

 

 

4-1 不動産会社の会社設立のポイント

経営形態の選択が重要です。個人形態にするか法人形態にするかを適切に判断しなければなりません。

 

法人形態には信用や取引において有利な面が多いですが、会社設立に伴う手続の手間や費用も少なからずかかることから個人形態以上のメリットが見出せない場合は慌てて法人にすることもないでしょう。

 

特に資金が少なく事業範囲が狭い、また従業員が経営者一人だけという場合は個人形態でスタートするのも有効です。開業後、取引量や収益が拡大して税負担も重くなり、従業員も増えるようになった時点で法人化するというケースは多く見られます。

 

会社設立する場合は、開業時に高額化しやすい必要資金をできるだけ抑える取組が不可欠です。

 

例えば、従業員を仕事量以上に確保してしまうと人件費だけでなく社会保険料の負担も重くなり財政状態を悪くさせます。また、訪問客がほとんどない営業形態(訪問営業、特定顧客対応やWEB対応等)なのに無理して事務所を借りれば、無駄に費用を膨らませるだけです。

 

開業直後赤字の可能性が高いのに法人形態にすれば、赤字でも法人住民税を支払うことになり財政を圧迫させてしまいます。創業時の状態(資金や事業規模等)を十分に考慮した上で経営形態を決定しましょう。

 

 

4-2 デジタル化への備え

デジタル化への備え

今後の不動産ビジネスでは業務の効率化、顧客対応、ニーズの掘り起こしなどについて競争優位性を高めるためにIT化やデジタル化を進めることが重要です。

 

不動産取引は高額になるほか、使用者の生活や仕事のスペースなどに利用されるため、物件の説明、確認や多くの書類による手続などがあり、業務に手間がかかる傾向があります。そのため不動産業者の業務効率は低く改善が必要であると指摘されてきました。

 

こうした業務効率の低さをデジタル化で改善することで、手数料等のコストを引き下げ、取引のスピードを向上させれば、他社との差別化が図れて優位に立てます。

 

実店舗での対面式の営業中心では取引数を伸ばすにも限界がありますが、WEBを活用した事業展開にすれば、人員を大幅に増やさずに取引数の増加も可能になるはずです。

 

ただし、不動産情報は不動産ポータルサイトなどで消費者が容易に入手できるため、ありきたりな物件情報の提供では顧客の支持を得るのは難しいでしょう。

 

顧客は物件購入や賃貸を考える際にその住環境を重視するため、それに関するより細かな情報提供を求めています。そのため不動産業者がそうした情報を的確に収集し提供できるサービスをデジタル化で実現すれば自社を有利させることが可能となるのです。

 

また、そうした顧客を集客し見込客として、アプローチしていく経営をデジタル化対応で実現することも重要になります。訪問、電話やWEB・メール等での問い合わせなどから顧客情報を整理して、分析の上見込客としてアプローチする、接客状況を把握して適切なサービスや情報提供等を行う、などが可能な管理システムの構築も有効になるでしょう。

 

 

4-3 ウイズコロナとポストコロナへの対応

コロナ禍にあっては、生活者、労働者や事業者の行動に大きな変化が見られるようになったため、不動産業者においてもその変化に対応した事業活動が必要です。

 

既に確認したとおり、コロナ禍によって、消費者には巣ごもり需要が、労働者には在宅ワークやリモートワークなどの必要性が生じて、不動産業者にはその変化により旧ビジネスの衰退と新ビジネスの機会が現れようとしています。

 

例えば、コロナ禍によりオフィスや店舗の需要には減少が見られる一方、リモートワーク等で役立つワークスペース、サテライトオフィスなどのニーズが増えました。また、在宅ワークで自宅のリフォームや増築なども増加しています。

 

こうした動きに対応することで(物件の情報や取扱数の豊富さ、相談対応等)、事業を維持拡大させることが重要です。しかし、やがてポストコロナの時代に突入していくことになるため、新たな動きの変化に注意しなくてはなりません。

 

在宅ワークなどで都心から離れた郊外に住居や働き場所を求める傾向から逆に都心へ回帰する動きが見られる可能性もあります。こうした世の中の動きを注視してそのニーズ動向に合わせた事業展開が今後重要になっていくでしょう。

 

また、中国の不動産バブルの崩壊の可能性など世界情勢にも注意が必要です。中国の恒大集団をはじめとする大手不動産事業者の経営危機が現実化すれば、中国経済は大きく傾きその余波がアジア地域だけでなく全世界におよび、米国のインフレ問題等と合わされば世界的な大不況に発展しかねません。

 

グローバル化対応として海外での事業展開は重要ですが、中国経済の悪化が進行すれば、その余波で海外ビジネスは大きなダメージを受けかねないため、今後の海外進出・展開はより慎重に検討してください。


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