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  <    <  2022年度後半からの起業・会社設立のタイミングとその考慮したいポイント

2022年度後半からの起業・会社設立のタイミングとその考慮したいポイント

起業や会社設立の時期によっては、その後の事業展開につまずき事業の失敗に繋がるケースも多いです。そのため、事業の開始や法人化の時期は慎重に検討しなければなりません。

 

そこで、今回の記事では2022年後半以降で起業や会社設立する場合に、起業プロセスや環境要因などどのような点に留意して適切な時期を決定していくかを解説します。

 

起業等のタイミングの重要性、経営課題や法規制・パンデミック・戦争等の環境要因などの考慮、適切な時期設定の検討方法等を詳しく紹介するので、参考にしてみてください。

 

 

1 起業・会社設立する時期のケースと重要性

起業・会社設立する時期のケースと重要性

 

ここでは起業や会社設立するタイミングにはどのようなケースがあり、それが経営上どう重要であるかなどを説明しましょう。

 

 

1-1 事業上や取引上の都合

開業前後での取引にかかわる理由から起業等の時期を決めるケースも多いです。

 

1)各種の契約

たとえば、事務所、工場、設備等の購入や賃貸などの契約にあたり、事業者や法人であることが条件であったり、節税等の面で必要であったりして開業されるケースが少なくありません。

 

2)取引の条件

大企業などとの取引や特定の案件において、個人事業主では入札できない、取引してもらえない、というケースも多いです。知名度や特殊な技術などがない限り、個人事業主等が大企業と取引するのは容易ではありません。

 

また、金融取引においても個人事業主と法人とでは、有利・不利が生じることがあります。一般的に個人事業主と法人とでは金融機関の融資姿勢に違いがあり、融資額や貸付金利の面で法人の方が有利になる可能性が高いです。

 

もちろん法人化どうかに関係なく、事業者の財政状況等の審査結果により融資およびその条件が決定されますが、法人と個人事業者に対する融資商品やサービスに一定の差があることは珍しくありません。

 

3)事業上の責任の所在

個人事業者は事業に対して有限責任が課されますが、株式会社は会社の有限責任となります。たとえば、個人事業主が事業上の融資を受けた場合、その返済は個人として追わねばなりません(自分の貯金や家などの資産等で)。

 

一方、株式会社などが受けた融資は、会社が責任を負うことになり、返済できない場合は倒産します。その場合、経営者が保証人にならない以外、その責任は自身が出資した範囲に留まり、個人の貯金等を返済に回す必要はありません。

 

従って、事業の拡大に伴い、個人の責任が大きくなった時が、法人化の一つのタイミングになり、その責任負担の軽減が可能となります。

 

4)許認可

特定の事業を営む場合、所定の行政機関の許可を受けなければならないケースがあり、それが開業のタイミングになり得ます。許認可の種類は多種多様で、許可申請する先も各都道府県、保健所、税務署、警察署、など様々です。

 

許認可は、届出、許可、認可、登録、免許の5種類があり、その事業の種類で異なります。なお、許可の取得が必要であるのに、取得しないで営業すると、行政処分等の責任が問われることになるため注意が必要です。

 

また、金融機関から融資を受ける場合、その事業の許認可の取得が条件となることもあり、許可を示す証明書のコピー等が求められることもあります。こうした点から許認可を取得するタイミングで会社設立等を決定するケースも少なくないです。

 

5)補助金等の利用

行政からの経営支援策が多く提供されていますが、各支援策は年度によって変わることも多いです。そのため、特定の施策を利用したい場合、その期限に合わせて起業等が必要となります。

 

たとえば、コロナ関連の雇用助成金の特例などでは、事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象になっていますが、年度が変わりこの制度が終了することもあり得るのです。

 

こうした魅力的な施策が利用できる時期を起業等のタイミングとして検討することも必要になります。

 

 

1-2 事業機会への対応

ビジネスで成功するには、訪れている事業機会を捉えてスタートダッシュし事業を安定させることが欠かせません。開業時は経営が不安定になりがちですが、事業を安定させて成長へと繋げるためには、一定以上の仕事量を確保することが必要なのです。

 

従って、目の前のビジネスチャンスを確実に掴むことが不可欠であり、それが可能なタイミングが開業の時期として適しています。起業家が思い描くビジネスモデルがいかに画期的であっても、その需要量が少ない、ライバルが多い、といった時期では事業の成功は困難です。

 

また、少ない需要者をかき集められる通信技術の登場、経済状況の変化、パンデミックや災害等の発生、法規制の新設・改正、購買者の行動変容、などにより特定の商品・サービスの需要量が急増するという事業機会が生じることがあります。

 

たとえば、コロナ禍となって、飲食業等の店内営業や店内販売が低迷する一方、自宅消費向けの商品の販売やそれを届ける個別配送業は好調でした。外出が控えられ巣ごもり需要が増大し、オンラインでの商品販売のほかサービスの提供も増えています。

 

こうしたビジネスチャンスがいつまで続くかという点は顧慮しなければなりませんが、事業を始める重要なタイミングの一つになることは間違いないでしょう。

 

ほかには他者の事業を継承する機会、たとえば、M&A(事業買収)で既存の企業を譲り受ける機会が起業等のタイミングになります。後継者不足に悩む中小企業は多いですが、その対策として他社に事業を譲って会社を存続させたいという経営者が少なくないのです。

 

買手にとっては、M&Aも起業等の絶好の機会となり、事業を始めるタイミングになります。

 

 

1-3 税金面の有利不利

開業日や会社設立日がいつになるかで、税金面で有利になったり不利になったりすることもあるため、その点の考慮も必要です。

 

たとえば、これまでの消費税制度では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者の場合、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されます。

 

この制度では消費税の免税事業者として会社設立(資本金1,000万円未満、売上高が1,000万円以下)した場合、会社設立日を決算日から離れた日で設定すると、免税が適用される期間が長くなって大きな節税効果を得られることになるのです。

 

なお、後述する「インボイス制度」の施行により、免税事業者であることが実質的に困難になる可能性が生じ、起業等の時期にも影響しかねないため注意しましょう。

 

また、個人事業主と法人とでは対象となる税制度が異なります。個人事業主の場合、売上高から必要経費を控除した後の利益が自分の所得(事業所得)となり、これに「所得税」が課税されます。所得税には累進税率が適用されるため、所得が大きくなるほど税率は高いです。

 

従って、たくさん儲けている個人事業主は税金をより多く払わなくてはなりません。他方、法人の場合は会社の利益に対して法人税が課されます。法人税率は企業規模等によって異なりますが、15%~23%程度で、儲けの多寡に関係なく一定の税率が適用されるのです。

 

また、法人経営者の給与(役員報酬)は会社の経費となり、法人所得を低減させます。加えて役員には会社員に適用される給与所得控除が受けられるため、個人事業主より節税できる可能性が大きいです。ほかにも法人には欠損金繰越控除制度などの有利な特典が受けられます。

 

従って、個人事業主には、その状況によっては法人化した方が税制面で有利になるケースが少なくないのです。

 

事業者にとって税金は現金支出の一つであり、多いと経営の負担になります。そのため法人化して金銭的な負担が大きく減るなら、その時が法人化のタイミングとして適しています。

 

 

1-4 個人による副業や事業の拡大

個人の副業や個人事業主での事業の拡大が進めば、それが独立や法人化のタイミングになります。

 

現在、大企業などでも社員の副業を認める傾向が見られるようになってきました。そして、副業が成功して事業の拡大が見込める際に会社設立して独立するケースも増えているのです。なお、個人事業主が事業の拡大により法人化するケースは今も多く見られます。

 

事業の拡大には、人員、営業拠点・工場・倉庫等の施設、製造や販売・サービスで必要となる機械・機器、材料・部品等の資材、などの準備が必要です。そのため従業員と資金の確保がこれまで以上に重要となり、そのために独立や法人化してその調達を円滑にしていかねばならないこともあります。

 

つまり、事業の成長・拡大とともに個人の副業から独立した個人事業主へ、個人事業主から法人へとシフトするタイミングが生じます。

 

 

1-5 社内ベンチャー等の機会

大企業などでは社員から新規事業のアイデアを募集し、将来性のある案件に対してそれを社内ベンチャー企業としてスタートさせる制度が多く見られます。また、そうした社内ベンチャー企業がある程度成功した場合に、その経営者にその企業を譲渡するケースも少なくないです。

 

こうした社内ベンチャー制度では、会社が支援してくれるため個人の資金不足を心配する必要がなく、事業の失敗に伴う無限責任のリスクも負わなくて済みます。

 

もし有望なビジネスアイデアを思いつき、ビジネスの仕組みの構想(ターゲットの選定、商品・サービスの内容および提供方法、競争う優位性の実現、販売先の見込み、等)に目途がつけば、その時点がこの制度へ応募するタイミングになるでしょう。

 

また、社内ベンチャー制度と異なりますが、取引先等の経営者などから既存事業や業務で独立を進められるケースもあり、それも起業・独立のタイミングの一つになり得るでしょう。

 

 

2 起業等のタイミングと経営課題

起業等のタイミングと経営課題

 

開業時の経営課題がその後の事業の成否にかかわってきます。そのため、経営課題の解決に目途が付いた時が、起業等のタイミングの一つになるのです。

 

日本政策金融公庫では毎年「新規開業実態調査」を行っており2019年、2020年と2021年における「開業時で苦労したこと」の結果(3つまでの複数回答)が下表のように報告されています。

 

開業時で苦労したこと 2019年 2020年 2021年
資金繰り、資金調達 46.9% 55.0% 57.6%
顧客、販路の開拓 47.0% 46.8% 44.8%
財務・税務・法務に関する知識の不足 30.2% 34.4%、 38.4%
従業員の確保 18.4% 17.5% 15.1%
仕入先・外注先の確保 14.1% 15.0% 15.1%

 

以上が直近の3年間における上位5項目の結果ですが、資金面、販売面、経営知識面、人材面、取引先面の順位はほぼ同じです。なお、2020年と2021年の結果については、新型コロナの感染拡大の影響が反映され、資金繰りに苦慮されたことが推察されます。

 

その他の項目としては、「経営の相談ができる相手がいないこと」「商品・サービスの企画・開発」「従業員教育、人材育成」「業界に関する知識不足」などが7%~10数%程度の値で挙げられています。

 

以上のことから、お金、販売・取引先、人、経営知識の確保という課題解決が重要となっており、その解決の目途が立つ時が起業等の望ましい時期と言えるでしょう。

 

 

3 2022年後半の起業・会社設立等で考慮したい環境要因

2022年後半の起業・会社設立等で考慮したい環境要因

 

ここでは、今後の2022年後半以降という時期において起業等を行う場合に、特に考慮しておきたい環境要因を取り上げ、どのように起業等の時期を考えたら良いかを説明しましょう。

 

 

3-1 インボイス制度の影響

インボイス制度の影響

 

これから導入されるインボイス制度の概要を説明し、事業者にどのような影響が及ぶか、そして、それが会社設立等のタイミングにどう関係するか、などを確認します。

 

1)インボイスとは

インボイスとは「適格請求書(保存方式)」のことです。適格請求書は、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝達するために使用する手段(請求書)になります。具体的には、従来からの「区分記載請求書*」に「登録番号」、「適用税率」および「消費税額等」の記載が追加される請求書等です。

 

なお、インボイスは、請求書、納品書、領収書、レシート等、書類の名称に関係なく、必要事項が記載された書類が該当します。

 

*区分記載請求書の記載内容

  • ・発行側の企業名や氏名
  • ・取引年月日
  • ・内訳
  • ・金額
  • ・宛名
  • ・軽減税率対象商品の旨
  • ・税率ごとに対価した額

 

従って、インボイスの記載内容は、「区分記載請求書の記載内容+登録番号+適用税率+税率ごとに区分した消費税額等」です。

 

なお、顧客が不特定多数である小売業、飲食店業、タクシー業等の場合は、正規のインボイスに代えて、簡易インボイス(記載事項が簡略化された「適格簡易請求書」)を発行することが可能です。

 

2)インボイス制度の概要

インボイス制度では、売手であるインボイス発行事業者は、買手である取引相手(課税事業者)から要求された場合に、インボイスを交付しなければなりません(また、交付したインボイスの写しの保存が必要です)。

 

買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)のインボイス発行事業者から交付を受けたインボイスの保存等が必要となります。なお、買手は、自身が作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することによって、仕入税額控除*の適用を受けることが可能です。

 

*仕入税額控除:
消費税では、原則として、課税期間中に自社が売上げた時に預かった消費税(売上税額)と自社が仕入れた時に支払った消費税(仕入税額)の差額を納付することになりますが、この仕組みが「仕入税額控除」と呼ばれています。「仕入税額控除」を受けるためには、一定の事項を記載した帳簿と上記のインボイスの保存が必要です。

 

3)インボイス制度の開始時期と手続

インボイス制度は、令和5年10月1日から開始されます。この制度の開始にあたり、令和3年10月から、「適格請求書発行事業者の登録申請」が既に始まりました。

 

このインボイスは、適格請求書発行事業者のみが発行できることとなっているため、令和5年10月から同制度の適用を受ける(発行する)には令和5年3月31日までに登録申請書の提出が必要です。

 

そのインボイス(適格請求書)を発行できるようにするためには、所轄の税務署に登録申請書を提出し、「適格請求書発行事業者」にならなければなりません。

 

課税事業者は「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があり、免税事業者がインボイス(適格請求書)を発行したい場合には課税事業者になる必要があります。つまり、今までの免税事業者は課税事業者となるわけです(別途に消費税課税事業者選択届を提出しなくてもよい)。

 

4)インボイス制度の事業者への影響

インボイス制度の事業者への影響としては、主に以下の点が挙げられます。

 

●請求書やシステムの対応

 

適格請求書発行事業者になる事業者は、インボイスを発行し会計処理できるシステムを導入する必要があります。たとえば、従来の請求書やレシート等には記載項目の追加などが必要となり、新たな様式に変更しなければなりません。

 

また、その内容に合わせて会計処理や税務処理ができるシステム(ソフト等)に変える必要があります。その対応が遅れると適正なインボイスが発行できず、取引に影響が及ぶこともあるため、早めに進めるようにしましょう。

 

●免税事業者への影響

 

免税事業者が適格請求書発行事業者とならず、インボイスを発行しない場合、取引先の消費税額に影響が及ぶことになるため、BtoB(事業者対事業者)のビジネスの場合は特に、その買手との取引に支障をきたす可能性が生じます。

 

免税事業者(売手)からの課税仕入は、インボイスが発行されないと、原則的に仕入税額控除ができなくなり、売手の消費税額が従来制度と変わってきます。たとえば、以下のような例です。

 

A 売手が適格請求書発行事業者である場合
*消費税は10%で計算

 

・売手側

売上:40000円

消費税:4000円

消費税納付額:4000円

 

・買手側

売上:90000円

消費税:9000円

 

仕入額:40000円

消費税:4000円

 

買手側の消費税納付額:9000円-4000円=5000円

*売手の消費税納付額は「仕入税額控除」が適用され買手の納付額から差し引くことが可能

 

B 売手が免税事業者(適格請求書発行事業者でない)の場合

 

・売手側(免税事業者)

売上:44000円

消費税:0円

消費税納付額:0円

 

買手側:

売上:90000円

消費税:9000円

 

仕入額:44000円

消費税:0円

 

消費税納付額:9000円-0円=9000円

 

以上のように買手が、免税事業者である売手から仕入れる場合、仕入税額控除ができなくなるため、売手が適格請求書発行事業者であるケースと比較して消費税納付額が4000円増加し、結果として利益が4000円減少することになるのです。

 

つまり、買手にとっては、適格請求書発行事業者でない免税事業者との取引は損することになるため、何らかの対応を取る可能性が生じます。具体的には以下のような点です(ただし、法的な問題が生じることもある)。

 

・インボイスの発行の要求

買手はインボイスを受けないと仕入控除ができず、損するため売手にインボイスの発行を求める可能性があります(適格請求書発行事業者になることの要求)。

 

・取引の停止や縮小

上記の場合買手が損失を回避するために、インボイスを発行しない免税事業者等との取引を停止または縮小する可能性が高くなるでしょう。もちろん売手が提供する商品・サービスの代替がない場合の影響は小さくなるはずです。

 

・値引の要請

また、買手は損失を補うために売手に値引を要請する可能性があります。値引きの金額や範囲などは取引の内容や状況次第になるでしょう。

 

5)インボイス制度と起業等の時期との影響

売手が免税事業者である場合は今後の取引や事業展開に影響するため、インボイス制度への対応を考慮した起業・会社設立のタイミングを計る必要もあります。

 

●免税事業者としてのメリットを最大限活かす場合

 

消費税制度では、課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円以下である場合、その事業者の消費税の納税義務が免除されます。また、消費税の免税事業者として会社設立(資本金1,000万円未満、売上高が1,000万円以下)した場合、2年間の免税が適用されてきました。

 

そのためこのメリットを考慮して会社設立等の時期を決定することも必要です。

 

免税事業者となっている個人事業主も法人もインボイスを令和5年10月1日から発行できる適格請求書発行事業者になるためには令和5年3月31日までに登録申請しなければなりません。

 

従って、起業家や個人事業主が会社設立して、消費税の免税の恩恵(2年間の免除)を最大限に受けるには、令和3年(2021年)10月までの法人設立が要件となっていました。現在は令和4年(2022年)の後半(11月)であるため、その免税特典をできるだけ享受するには会社設立は急ぐ必要があるわけです。

 

また、個人事業としての創業も上記と同様に、令和5年10月1日からの適格請求書発行事業者になる場合、できるだけ早く創業した方が免税期間を長くできます。

 

●インボイス制度の経過措置の考慮

 

インボイス制度の開始後には経過措置が設けられています。具体的には、下記の期間については、免税事業者からの仕入れでも、それぞれ一定の仕入税額控除が可能となっているのです。

 

  • ・令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%
  • ・令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%

 

つまり、この経過措置の期間において、買手は、売手が免税事業者であっても仕入税額相当額の一定割合(上記)を控除できることになるため、損失を大幅に軽減できるのです。そのため、買手が売手に対してインボイスの発行の要求や値引き等の要請をする圧力はやや小さくなるかもしれません。

 

従って、この経過措置の期間が取引に影響し得るため、その点を踏まえて適格請求書発行事業者になるかどうかの判断も求められます。つまり、適格請求書発行事業者になるのを機に会社設立等する場合は、経過措置の期間が自社にどう影響するかを判断した上で決定するのが望ましいのです。

 

たとえば、買手(取引先)が経過措置を活用して、その期間において売手の免税事業者に何も圧力をかけない場合は、経過措置の期間後に適格請求書発行事業者に登録する、会社設立する、という選択肢も検討できるでしょう。

 

 

3-2 コロナ禍での業界の動向

コロナ禍での業界の動向

 

コロナ禍が続く現在および将来の業界の動向に合わせて起業等のタイミングを検討することも重要です。

 

1)2022年前半までのコロナ禍の状況

新型コロナの感染拡大により日本を含め世界経済は大きな打撃を受けました。一旦、その感染拡大は終息に向かいましたが、変異株による流行で第7波が生じ日に10万人を超える感染者が発生し、2022年の11月半ばの現在では第8波の兆候が明らかになっています。

 

コロナ禍においては、営業自粛や行動制限などが発せられ、外食や旅行などが気軽に楽しめなくなり、仕事ではリモートワークの普及、家庭では巣ごもり需要の増加などが見られました。

 

こうした状況の結果、飲食業、サービス業、宿泊業、観光業などではまともな営業ができなくなり、業績を大きく落とすどころか倒産・廃業に至った事業者も多いです。また、開業者もコロナ禍に影響されています。

 

先の日本政策金融公庫の「2021年新規開業実態調査」(P15)の「7 新型コロナウイルス感染症の影響」によると、マイナスの影響を受けた開業者の割合は76.9%です。それを業種別で見ると、飲食業・宿泊業が93.4%と最大で、運輸業87.7%、卸売業85.7%と続いています。

 

現在では感染者数が多いものの、重症化するリスクが小さくなっていることから、国による行動制限は実施されず、外国人の入国制限も緩和されている状況です。その結果、飲食、買物、旅行などへの需要が次第に回復してきており、繁華街や観光地には賑わいが少しずつ戻ってきました。

 

その結果、先の飲食業、サービス業、宿泊業、観光業およびその関連の小売業などの業績は回復傾向にあり、これらの分野での起業等のタイミングとしては、最悪な状況から脱出しつつあると考えられます。

 

2)今後の起業のタイミング

しかし、第8波がほぼ確実な状況にあるため、その点を考慮した起業や会社設立が必要です。

 

日に10万人を超える感染者数が続けば、再び人々は外出を控え、買物やレジャーを気軽に楽しむ方も少なくなる可能性が高まります。つまり、戻りつつあった需要がまた減少する恐れが生じるため、それを踏まえた事業展開が欠かせません。

 

具体的には、感染防止対策の高度化のほか、コロナ禍で変容した消費者等の行動特性に対応できる方策が必要です。たとえば、飲食業界においては、不特定多数に対して豊富な品揃えとリーゾナブルな価格で飲料・料理を提供する大衆店(チェーン)は、焼肉、焼き鳥、串カツやから揚げなどの専門店よりも苦境に陥っています。

 

ガストとサイゼリヤなどの外食チェーン店を見ると、やはり前者のようなタイプよりも後者のような専門業態のほうが業績はよく出店数も回復傾向にあるのです。特にサイゼリヤのように、ミラノ風ドリアやアロスティチーニなどの人気商品がある店舗ではその傾向が見られます。

 

コロナ禍によって消費者等の購買行動や嗜好などが変わっているため、単に繁華街等へ客足が戻ってきたとしても、それが自社に及ぶとは限りません。こうした変容したニーズを把握し、それに対応できるビジネスシステムを整備できたと判断できた時が起業等のタイミングとして有効になるでしょう。

 

 

3-3 インフレ・為替変動の影響

インフレ・為替変動の影響

 

急激なインフレーション(以下「インフレ」)や為替変動は、消費者や事業者に大きく影響し、結果として事業活動のプラス要因にもマイナス要因にもなり得えます。そのためそれらの推移を見守り、その動向に対応できるかを判断して起業等のタイミングを検討せねばなりません。

 

1)インフレ率と起業等のタイミング

まず、インフレについて確認しましょう。

 

●インフレ率の推移

株式会社第一生命経済研究所のサイトでは、2022年7月20日に「日米欧の物価上昇率の比較」の情報が公開されました。その主な内容は以下の通りです。

 

・日本のインフレ率は消費増税時を除けば約30年振りに前年比2%に達したが、9%前後の欧米諸国と比較してその物価上昇は限定的である

⇒6月の米国の消費者物価が前年比+9.1%と40年振りの高水準が記録され、ユーロ圏の統一基準消費者物価(HICP)は同+8.6%と統計開始以来の過去最高を更新しているのに比べ、日本の物価上昇率はまだ限定的、と分析されています。

 

・(この結果は)企業の価格支配力の違い、経済回復ペースの違い、人手不足の度合いの違いなどが反映されている

⇒日本はバブル崩壊後のデフレ状態の長期化に伴い企業の価格支配力が低下しました。また、現在も新型コロナの変異株により感染拡大が見られ、経済活動の回復は欧米諸国と比べ遅れている状況で、需給が逼迫するような状況にありません。

 

そうした状況を反映して人手不足も欧米よりはまだ深刻な状況とは言えず、賃金の大幅上昇に結び付いているケースは少ないです。

 

・今後のエネルギー価格や為替相場の動向により(日本のインフレ率は)3%台に乗せる可能性はあるものの、欧米のような2桁台へと進むようなインフレ加速に直面することは予想しにくい

⇒国内の物価上昇は、欧米諸国の経済状況、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー・穀物の供給不足、為替変動などの状況に大きく左右されますが、それらの状況もやや落ち着きが見られるようになっており、欧米のような上昇は見込みにくいと考えられます。

 

最後に、今後の国内物価上昇については、携帯電話通信料の押し下げ効果の低減、資源高のエネルギー価格への反映、各種原材料高や円安進行等による輸入物価の上昇などにより、食品や日用品等の値上げが続き、インフレ率はさらに強まる可能性が高い、とまとめられているのです。

 

●起業等のタイミング

 

上記の通り、現在はインフレが進行する状況にあり、電気・ガスの光熱費やガソリン等の燃料代のほか、食品・日用品等、原材料などの大幅な上昇が続いています。

 

製造業や飲食業などは原材料やエネルギー等のコストの上昇により商品への価格転嫁を進めていますが、業界やその企業が有する価格支配力の違いにより十分な値上げができないケースは少なくありません。つまり、値上げが十分できない企業は厳しい経営状況にあるわけです。

 

こうした状況が想定される業界や業種での起業や会社設立による開業は大きなリスクを伴います。顧客に魅力的な商品・サービスを提供する事業で、他社との競争優位性があっても、開業後に値上げを頻繁に起こせば客足が遠のく可能性は小さくないでしょう。

 

そのため自社事業のコストに大きく影響する要因(エネルギーや原材料等)の物価上昇がある程度落ち着くのを待って開業の時期を決めるのが賢明です。

 

製造や販売等でのプロセス改善によるコストダウン、使用材料の代替や仕入先の変更等で、価格上昇圧力を緩和させる努力も必要になります。しかし、こうした取組による効果も物価上昇の要因次第では十分に発揮できないこともあるため、まずは物価上昇の落ち着きを見守ることが重要です。

 

2)為替レートの変動と起業等のタイミング

 

●為替レートの推移

 

東京為替市場の月末(17時)のドル・円の為替レートは以下のように推移しています。

 

年・月 円/ドル
2021/02 106.09
2021/03 110.74
2021/04 108.89
2021/05 109.72
2021/06 110.55
2021/07 109.53
2021/08 109.82
2021/09 111.88
2021/10 113.61
2021/11 113.19
2021/12 115.12
2022/01 115.43
2022/02 115.5
2022/03 121.64
2022/04 130.6
2022/05 127.76
2022/06 136.2
2022/07 132.78
2022/08 138.6
2022/09 144.32
2022/10 148.01

 

上表から、2021年2月から2022年1月の1年間で10円ほど円安が進行し、2022年2月から同年10月の間では約32円もさらに円安が進んでいることが確認できます。2021年2月から2022年10月の間では約42円も円安になりました。

 

これは2021年2月時点の円/ドルのレートで見ると約4割の円安が進んだことになります。たとえば、その時点で、100円で米国に売っていたものが60円ほどの価値で売れるようになり、逆に100円で米国から購入していたものが140円の価値で買うようになるわけです。

 

従って、輸出企業にとっては安く売れて有利になる一方、輸入企業は国内での販売で高く売ることになり(国内の物価上昇の大きな要因になっている)、輸出入業は大きな影響を受けています。

 

●起業等のタイミング

 

為替レートの変動はプラスにもマイナスにもなりますが、変動の大きさやその進行速度の状況が特にビジネスに影響します。

 

たとえば、円安が急激に進行する場合、輸出でのビジネスは有利になるため、製品を国内で作って海外に輸送して販売するケースなどは強い価格競争力を持つことが可能です。従って、輸出企業として開業する事業者等にとっては、今は起業等に適したタイミングになり得ます。

 

他方、海外に工場や拠点を増やして現地での販売や日本への輸出を進める場合、そうした施設を確保するコストが大きく増大するとともに、現地従業員の人件費もかさむことになり、利益を圧迫しかねません。従って、施設等を伴う海外進出としては、現在の環境は良いと言えません。

 

これまでの数十年もの間、円高が進行して輸出企業は海外に生産拠点を設け、国内製造業の空洞化が進みましたが、ここ最近の円安進行でその利点が失われつつあり、国内回帰の傾向が見られるようになりました。

 

海外展開を伴う事業で起業等を行う場合、円安進行の動きを考慮してそのタイミングと海外展開のあり方を十分に考慮しなければなりません。

 

エネルギー、食糧や原材料等を輸入する企業は、購入価格が上昇することになりますが、大手商社などは価格支配力が強いため、価格転嫁が容易であり利益への影響が限定的になる可能性が高いです。

 

他方、そうした大手商社等から輸入品を購入する国内事業者はその価格上昇を一手に引き受けることとなります。彼らも国内販売価格にも転嫁させていきますが、価格支配力が弱いため欧米ほどの上昇は実現されていません。

 

従って、輸入した原材料や食品等を購入して生産・販売する企業にとっては、厳しい経営環境になっているため、起業等には関しては慎重な検討が必要です。為替が落ち着く、一定の水準まで円高に戻る、そして、その時点でのレートで事業が成立できるなどを判断して起業等のタイミングを検討しましょう。

 

 

3-4 地政学リスクの影響

地政学リスクの影響

 

世界での戦争等や対立などの地政学リスクの顕在化が起業等のタイミングに影響するため注意が必要です。

 

●戦争等の状況と影響

 

直近ではロシアのウクライナ侵攻により、欧米日とロシアとの間の輸出入に影響がおよび、ロシアへの製品・サービス等の輸出制限、ロシアからの輸入制限といった現象が生じることになりました。

 

ロシアからの輸入品は、エネルギー資源や鉱物のほか、小麦等の農産物などが主ですが、その量が莫大です。そのため輸入がストップあるいは制限されることにより、輸入量を確保できない国や、供給量の減少による価格の高騰の影響を受ける国が少なくありません。

 

侵攻を受けたウクライナも小麦等の輸出に支障がでて、世界的な供給不足が進みそれも価格の高騰に繋がっています。このような状況により、エネルギー・鉱物や穀物等には供給不安があり価格の高騰が続いて、日本国内でも事業者業や消費者に大きな影響が及んでいるのです。

 

また、米中関係では表面的には安全保障や経済の面での対立も進み、世界経済への悪影響が懸念されています。特に安全保障面では、中国によるインド洋・南シナ海・東シナ海・太平洋等への海洋進出および力による現状変更の試みが周辺諸国の安全を脅かすものとなっています。

 

また、「一つの中国」を絶対的な原則として、その核心的利益を現実のものとするために、現中国政府が台湾へ武力侵攻し統一を果たす動きを強めているという見方が強まってきました。

 

もし実際に進行した場合、いかに中国経済が大きくても欧米日はロシアのように強力な経済制裁を科す可能性が高いです。その場合、特に軍事利用が可能な原材料、部品や製品等の中国への輸出が困難になるでしょう。

 

高度な生産財は軍事利用の対象となり得るため、中国はもとより欧米諸国等への輸出および中国国内の事業活動が制限または停止に追い込まれ、日本の事業者には大きな影響が及ぶでしょう。

 

現在でも米国は、先端半導体、中国の先端半導体工場向けの製造装置の輸出を原則的に禁じており、同盟国などもその影響を受けています。

 

このように自国のほか、関係の深い国などが、戦争や対立の状態に入れば、日本は大きな影響を受け、企業にとっては事業機会よりも事業リスクがはるかに大きくなるのです。

 

●起業等のタイミング

 

大きな戦争・紛争や対立が生じると、その国・地域に関連する事業においては、ビジネス自体が立ち行かなくなる可能性が生じるため、起業等のタイミングとしては適していません。また、戦争等に至っていない場合でもその可能性が高い場合には事業参入や起業等は控えるのが賢明でしょう。

 

たとえば、2021年にミャンマーでは軍事クーデターが起こりましたが、軍部による民衆の弾圧(人権侵害等)があり、経済制裁や支援の停止などが各国により起こり、経済活動に大きな影響がおよびました。日本の企業の中には事業を縮小・撤退するケースも見られています。

 

もちろんこうした状況でも起業等を控えると、ビジネスチャンスを逃してしまうリスクもあるため、それを考慮した判断が求められます。たとえば、小規模な形態で始めるという方法の検討も必要でしょう。

 

中国との貿易や現地での事業展開を伴う事業を始めるにしても、上記のような状況を考えると本格的な進出等はリスクが大きくなるため、自社の直接的な進出ではなく、中国企業を通じた事業展開を小規模から始め様子を見るといった対応の検討も重要でしょう。

 

3-5 SDGs等の動向

SDGs等の動向

 

脱炭素社会やSDGs(持続可能な開発目標)への取組が世界的に推進され、大きな事業機会が生じているため、これらへの対応が起業等のタイミングになり得ます。

 

●脱炭素社会への動き

 

菅政権時代の第203回臨時国会において、菅総理が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言されました。その主な内容は以下の通りです。

 

・成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に最大限注力する

⇒2050年までに、日本は温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル」、すなわち脱炭素社会の実現を目指すと宣言されたのです。

 

・温暖化への対応は経済成長の制約ではなく、積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要である

⇒そのためには、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルなどの革新的なイノベーションが不可欠であり、実用化に向けた研究開発を加速させなければならないとも指摘されました。

 

また、規制改革などの政策を強力に推進し、グリーン投資の更なる普及を進め、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で新たに検討する場を創設することなどを挙げられています。

 

・環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進め、世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出す

・省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの最大限の導入のほか、安全最優先による原子力政策の推進などにより、安定的なエネルギー供給を確立する

⇒これにより、長年活用し続けてきた石炭火力発電に対する政策が抜本的に転換されることになりました。

 

現在はこの宣言の方針に基づき、「地域脱炭素ロードマップ」が令和3年6月9日に公表され、カーボンニュートラルの実現に向けた政策が進められています。また、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図る「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が令和3年5月26日に成立しています。

 

●SDGsへの動き

 

(1)日本政府の取組

 

日本政府はSDGsの実施に向けて国内の基盤整備に取り組み、2016年5月に総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を設置しました。

 

さらに、この本部の下で、行政、民間セクター、NGO・NPO、有識者、国際機関、各種団体等を含む幅広いステークホルダーによって構成される「SDGs推進円卓会議」が開催され、「SDGs実施指針」が決定されています。

 

2021年6月の第10回推進本部会合では、2017年以来、2回目となる自発的国家レビューが決定され、以下のような点が報告されました。

 

ⅰ 国内のSDGs推進体制・主な取組

 

・SDGs推進に向けた国内体制:2017年12月以来、「SDGsアクションプラン」を毎年策定

 

・国内普及の動き:SDGs推進本部の下、「ジャパンSDGsアワード」、「SDGs未来都市」等の取組を通じてSDGsの国内的な認知度向上や啓発、普及のための広報・啓発活動を積極的に実施

 

・8つの優先課題と主な取組:国内の課題と取組や国際協力に関する主な取組を記載

 

ⅱ 各目標の達成状況

 

政府評価

 

・再エネ比率は18%(2019年度)にまで拡大。導入量は再エネ全体で世界第6位(2018年)、太陽光発電は世界第3位(2018年)となり、再エネの導入は着実に進展している

 

・温室効果ガスの総排出量は、2014年度以降、6年連続減少

 

・学習指導要領の改訂が行われ、持続可能な開発のための教育(ESD)の理念が盛り込まれた

 

・女性活躍は一定の前進が見られているが、日本のジェンダー・ギャップ指数の総合順位は156か国中120位。また、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が、女性に特に強く表れている

 

円卓会議民間構成員による評価

 

・経営陣のSDGs認知・定着率は85%(2020年、「SDGs実態調査」)となり企業経営にSDGsが浸透。一般のSDGs認知度は50%を初めて超えた

 

・2020年初頭からコロナ克服のための国際協調に取り組み、COVAX、ACTアクセラレーターの創設や資金拠出にも積極的に取り組んだことは高い評価

 

・国内では300を超える自治体がゼロカーボンシティを表明。企業レベルにおいても、「SDGs実態調査」では90%以上の企業が脱炭素化に向けた取組を進めている。2050年に実質的排出をゼロにするという目標に鑑みると、再エネの大幅な増加には未だほど遠い

 

以上の報告のように、現在までに政府・自治体によるSDGsに向けた支援策が提供され、国内企業のSDGsに対する認知度は高まり、具体的に取り組む企業が増加してきました。

 

なお、「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」(結果概要)によると、SDGsの認知度・対応状況等は以下のような結果が得られています。

 

・「SDGsについて全く知らない」と回答した企業は84.2%(=中小企業のSDGs認知度15.8%)

 

⇒中小企業へのSDGsの浸透は限定的であることが判明しました。

 

・『SDGsについての対応を検討・実施していない企業(SDGsを知らない企業含む)』における「SDGsの印象」について、「自社には関係ない」と「優先度は下がる」と回答した企業の割合(約43.9%)より、「取り組む必要性を理解する」と「既に取り組んでいる」と回答した企業の割合の方が多い(約56.1%)

 

⇒中小企業のSDGsの認識は低いものの、取組の必要性を感じる企業は少なくないです。中小企業の取組が本格すれば、SDGs関連の様々な分野での事業機会の発生が期待されます。

 

・『SDGsについて対応を検討・既に対応を行っている企業』における「SDGsに対応するための具体的な取組」について、最も多い回答は「SDGsについて理解するための情報収集・勉強等」(約80%)、次いで「SDGsへの対応を自社の経営計画・事業計画等に反映」(約40%)。数は少ないが「SDGsを新規事業の立ち上げや新商品・新サービス開発等に活用」(約20%)と回答した企業もあった

 

⇒中小企業のこうした傾向から、SDGsに直接的に貢献する製品・システム等の提供や、そうした取組への支援、SDGs関連の新事業や新商品開発などの支援サービスの増加が期待できるでしょう。

 

●起業等のタイミング

 

カーボンニュートラルやSDGsの実現に向けた取組は、全世界が抱える課題の解決として進められる活動であるため、企業にとっては何らかの事業機会になる可能性が高いです。

 

そして、その事業機会を起業等のタイミングとして活用できるでしょう。ただし、上記のような取組をビジネスとする場合、事業として成立する需要の存在が前提になることには注意しましょう。

 

たとえば、再生可能エネルギーによるより高効率な発電システムを提供する事業、製造業の生産工程における原材料の削減、端材等の再利用・新用途の開発などのコンサルティング事業、自然に優しい素材による衣服の製造販売、貧困問題に悩む国からの資源や材料等を使用した海外事業の推進、などが上記の取組の事業に該当するでしょう。

 

こうしたビジネスは、関係する当事者に利益が生じるだけでなく、社会として高く評価され、必要とされるモノです。しかし、ビジネスである以上提供する対象者に必要性と一定の需要量がなければ、ビジネスとして成り立ちません。

 

つまり、この点は一般的なビジネスと同じです。いかに社会に役立つビジネスであってもそのニーズが少ない、価値が小さい、というのであれば、商売にならないのです。

 

そのため、SDGs関連の事業では、社会貢献の実現、商品等としてのニーズの充足、一定の需要量の存在が必要であり、それらを満たせることが確認できた場合に起業等を進めるのがよいでしょう。

 

 

4 起業・会社設立の時期を決定する方法とその重要点

起業・会社設立の時期を決定する方法とその重要点

 

ここでは起業等で成功するために、起業・会社設立の時期をどのような事項(主に起業プロセスでの重要点)で検討して決定していくか、を説明していきます。

 

 

4-1 ニーズの把握

 

ビジネスアイデアが事業の発端になりますが、そのアイデアはビジネスの対象とする相手のニーズが源泉となるため、その把握が起業等のタイミングにも大きな影響を及ぼします。

 

もちろんニーズの把握だけではビジネスの形とはならず、どのように実現していくかの仕組みを作る必要があります。しかし、その仕組みを適切に作り、運用していくには的確なニーズの把握が前提となるのです。

 

ニーズを正しく捉えることで、それを充足できるビジネスシステムを適切に整え、実行できるようになります。そのため事業に成功できる起業等を行うには的確なニーズの把握ができるようになることが、起業等(のタイミング)の前提になるのです。

 

そして、このニーズの把握や仕組みの設定を適切に実施するには自身・自社を取り巻く経営環境を適切に分析することが欠かせません。経営環境には、社会、経済、政治や市場・業界(での競合等)などがあり、その現在だけでなく変化していく将来の状況から自身・自社が対応すべき(したい)ニーズを見い出す必要があります。

 

たとえば、社会環境の面では、少子高齢化社会の急速な進展、女性の長期間に渡る就業化の加速、リモートワークの普及、コロナ禍での外出抑制、といった現象が見られるようになりました。そして、こうした現象が国民の意識や行動に変化を与え、それが事業機会になることもあるのです。

 

少子高齢化の進展は、介護サービスの需要増、子供一人に対する教育費の増大などが直接的なビジネスに繋がっています。女性の就業化では、家事代行サービスやハウスクリーニング等の需要増、コロナ禍での外出抑制では、ECショッピングの拡大、自宅消費の増大、などがよく見られるようになりました。

 

また、先に取り上げたインボイス制度等の法律の創設や変更、新型コロナウイルスのようなパンデミックの発生、インフレや為替変動の急変、地政学リスクの発生、社会課題への対応、などの影響によるニーズの変化を十分に考慮しなければなりません。

 

こうした様々な状況の中から自身・自社と関わりのある分野、興味のある分野などに着目して分析し、対応するニーズを発見していくことが重要であり、そのニーズの把握できる時点が起業等を検討するスタート地点になります。

 

 

4-2 明確なターゲットの選定

 

ビジネスにおいては「ニーズを有する者」を明らかにしてビジネスの仕組みを組み立てることが重要になります。男女別、年齢層別、所得の違い、地域の違い、個人・事業者等の違い、価格反応度の違い、行動様式の違い、などで対象者を区分し特定することが必要です。

 

社会、経済、政治等の各要因の分野でも対象者によりニーズが異なってくるため、適切な基準を設けて区分し対象者を絞らなければなりません。また、企業には経営資源に限りがあるため、その制約の中でビジネスを展開するには区分に応じて商売相手を定める必要もあります。

 

マーケティング戦略では、対象とする分野について市場を細分化しそのうちのどのセグメント(区分)に的を絞るかという作業(競争上のポジションの分析等で)が行われます。マーケティング戦略の手順に従わないまでも、上記のように何らかの基準によりターゲットを設定することは重要です。

 

そして、需要量、自社の経営資源(技術、生産能力や販売ルートなど)などから、ビジネスとして成立するか、自社がアクセス可能か、事業展開できるか、などを判断してターゲットを選定していきます。

 

その際、起業家等はこれまでの就業経験等で得た自身の知識・経験・ノウハウや社内外で得た人脈(協力者・取引先候補)、などの資源を活用することによりニーズとターゲットを設定していくことが重要です。

 

もし上記のような対応ができずターゲットを見誤ると、ビジネスシステムを組めない、業務が円滑に遂行できない、など事業展開に支障をきたすほか、上手くいっても十分な収益が得られず、事業を失敗させやすくなります。

 

そのため、自社にとって最適なターゲットを選定することが不可欠であり、その選定の見極めができた時が、成功に繋がる起業・会社設立の実施がさらに進められるのです。

 

 

4-3 ビジネスシステム等の構想

続いて起業等を具体化させるには、ビジネスのモデルとシステムの構想を完了させねばなりません。ビジネスの対象となるニーズとターゲットを設定すれば、どの商品・サービスをどのように提供するか、という仕組みづくり(製造する・販売する・アフターサービスする、等の事業を具体的に行う仕組み)が必要となるのです。

 

また、この仕組みづくりでは、他社との差別化、顧客満足度の向上、業務上の効率性なども踏まえて構築しなければなりません。ターゲットにとって魅力的な商品・サービスを届け、ライバルとの差別化等を図り、より無駄のない業務を行うことで、事業は成功へと導かれるのです。

 

たとえば、「業界や他社で提供されておらず、ターゲットのニーズにも合致する人気商品やサービスを開発して提供する」、「SNSなどインターネット上での情報収集やコミュニケーション等による、ニーズの収集、商品開発、集客と関係作りで事業展開する」といったシステムを構想していきます。

 

こうした成功へと導く仕組みを構想して、具体的なビジネスシステムに目途が付けば、実際の起業等のタイミングが近づくはずです。

 

 

4-4 経営資源の確保

ビジネスシステムの実際の構築や運営には、それに必要な経営資源の存在が欠かせません。具体的には、人材、金、技術・知識・ノウハウ・免許等、建物・設備機械等、販売先・仕入先・外注等、などが必要になります。

 

モデルやシステムの内容によりこれらの資源の質や量は異なってきますが、それらに適した質・量の確保が不可欠です。起業時の経営課題でも見られるように、特に人材確保、資金調達の拡充と販売先・仕入先等の確保などは特に重要になっています。

 

ビジネスシステムの構想までのプロセスを終え、仕組みを適切に構築・運営するための資源が確保できれば、その事業の成功確率は上昇することになるため、その状態が起業を決定するより直接なタイミングになるでしょう。

 

 

4-5 組織体制の整備

ビジネスシステムを適切に運営するには、それに適した組織体制を構築することが不可欠です。つまり、ビジネスを成功に導くための人材の確保と組織編成を行い、組織が回るようなマネジメント体制(リーダーシップを含む)を取ることが重要になります。

 

開業時から一定規模以上の事業を展開する場合、従業員を雇い業務(製造・販売・経理等)を分けた組織運営になるのが一般的です。業務量に対して人員が不足すれば、事業が円滑に進まず経営に悪影響を及ぼすこともあります。

 

また、人員が適切であっても作業の仕方が悪い、統一されていない、といった状況では期待される成果も得られにくいです。さらに社内の指示命令が適切に実施されないと業務が混乱しミスに繋がることも少なくありません。

 

人手不足が深刻化し、従業員の離職率が高止まりする今日において、人材の確保・維持は重要課題です。また、単に人員を確保できるだけでなく、組織を目標に向けて効率的・効果的に運用するマネジメントも事業を成功させるには手の抜けない活動になります。

 

こうした組織体制の整備は、起業してから本格的に着手されるケースも多いですが、目標とする体制を構想できる時、実現の目途が付く時なども起業のタイミングとして検討することも必要です。

 

 

5 まとめ

起業・会社設立の時期とタイミングについてのまとめ

 

画期的なビジネスアイデアを思い付いて、起業や会社設立をしても、需要量が少ない、アイデアを具現化するための仕組みが描けない、仕組つくりに向けた資源が十分でない、などの場合は開業が困難になるほか、事業の失敗に繋がりかねません。

 

また、事業を発展させるには環境への対応が必要ですが、急激に変化するインパクトの強い要因が発生することもあり、その状況を的確に分析し対応できる事業の構想が、その起業等の成功を左右します。

 

今回取り上げた経営の重要点や環境要因などに注意しながら起業や会社設立の時期を検討してみてください。


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