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会社設立時から考えよう!人生100年時代の会社づくり

「人生100年時代」が到来しつつある現代では、それを実現するための企業のあり方・行動が問われるようになってきました。また、ニューノーマルの時代を迎えるなど、企業を取り巻く環境の変化は激しく、それに適応できる事業運営が経営者(起業家)に求められています。

 

そこで今回の記事では、変わりゆく社会に対応できる会社づくりについて、組織形態や人的資源管理を詳しく解説します。人生100年時代の労働者の働き方に対応する企業のマネジメント、急激な変化に対応できるアジャイルな経営スタイルや組織のあり方などを紹介するので、これからの時代の会社づくりに興味のある方などは、参考にしてください。

 

 

1 現在の企業を取り巻く環境

現在の企業を取り巻く環境

 

人生100年時代を迎えつつある日本社会の企業と労働者を取り巻く環境について確認していきましょう。

 

 

1-1 企業の経営状況

学校法人産業能率大学 総合研究所は全国の企業経営者を対象に「2022年社長の経営施策調査」を2021年12月に実施し、以下のような調査結果を公表しました。

 

●2022年の業績は上向きの見通し

2022年の業績見通しについて、前年に比べて「大幅に上回る」との回答が8.9%、「やや上回る」が36.3%で、合わせると45.2%が前年を上回る見込みと回答されています。前回調査では、上回る見込みの合計が33.3%であったことから、2022年の業績見通しでは業績回復の勢いが強いと言えるでしょう。

 

●2021年に影響が大きかった要因(上位5項目)

2021年の経営活動に影響を与えた要因については、次の5項目が上位に挙げられました。

 

  1. 1位:新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛 64.0%
  2. 2位:新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動の自粛 51.1%
  3. 3位:断続的に発出された緊急事態宣言・まん延防止等 重点措置 35.3%
  4. 4位:対面営業の機会喪失 31.6%
  5. 5位:新型コロナウイルスの感染拡大に伴う営業時間の短縮 28.8%

 

以上の通り新型コロナ対策による外出自粛は移動自粛などが業績に大きく影響しています。

 

●向こう3年間で不安に感じていること

向こう3年間で経営施策上不安に感じていることは、以下の項目が上位に挙げられました。

 

  1. 1位:コロナ禍の長期化(リバウンド) 61.0%
  2. 2位:労働力人口の減少および高齢化 48.5%
  3. 3位:原油価格の高騰 47.8%
  4. 4位:為替相場の乱高下 20.1%
  5. 5位:世界的な天候不順 16.1%
  6. 6位:海外からの観光客の減少 10.5%
  7. 7位:その他 5.2%

 

3位となっている「原油価格の高騰」は今回の調査で新たに加えられた項目ですが、事業上の大きな不安要素となっていることが判明しました。また、2位の少子高齢化という社会問題が経営に影響を及ぼすということが改めて確認できます。

 

●2022年に国や自治体に期待すること

2022年の国や自治体の施策として期待することについては、以下のような結果が得られました。

 

  1. 1位:新型コロナウイルスの治療薬開発・普及支援 60.8%
  2. 2位:各種補助金・助成金の充実 50.3%
  3. 3位:法人税の減税 45.1%
  4. 4位:消費税の減税 34.4%
  5. 5位:新型コロナウイルスワクチンパスポートの普及促進 18.9%

 

以上の内容は主にコロナ対策であり、その重要性が確認できます。なお、「法人税の減税」は「消費税の減税」よりも10ポイント以上高いです。このことは、間接税を下げて景気対策するよりも直接税の負担を軽くしたいというニーズの強さの表れとも受け取れます。

 

●人材面で直面している課題

人材面で直面している課題は以下のような結果でした。

 

  1. 1位:若手が育たない 34.1%
  2. 2位:社員が高齢化している 32.4%
  3. 3位:中間管理職が頼りない 30.0%
  4. 4位:社員のスキルや知見が陳腐化している 26.3%
  5. 5位:後継者がいない 25.4%
  6. 6位:社内に相談相手がいない 12.0%

 

以上のように様々な課題が見られますが、まとめると「人材確保」と「人材育成」に問題があるという状況です。適切な人材の確保と育成ができなければ企業の存続は困難となるため、抜本的な対策が求められます。

 

●人員の過不足状況

人員の過不足状況については、前回調査では「不足している」が過去最低でしたが今回は6.9ポイント増加して49.6%となり、人手不足を感じる企業が増加しました。一方、「過剰である」(5.2%)は前回調査から5.2ポイント減少しています。

 

コロナ禍の当初においては労働需要が大きく減退しましたが、2021年には労働需要の回復が見られるようになりました。

 

●副業制度の導入状況

副業制度の導入状況の調査では、「導入している」(28.2%)が前回調査から10ポイント以上の増加で過去最高となっています。「導入していないが導入を検討している」も19.3%あり、前者と合わせると半数近い(47.5%)状況であり、副業制度の導入に前向きの企業が多くなりました。

 

コロナによる影響などで雇用調整や従業員の給与削減などに踏み切る企業が増加しました。こうした状況で従業員の生活を保護するために、従業員に副業の機会を与えることも重要となっているようです。

 

●技術革新や社会環境の変化が経営に与える影響

この影響に関する質問では、「ビジネスチャンスにつながる」に影響する項目として、「人工知能(AI)の進化による自動化技術の発達」(33.8%)、「IoTを活用したスマートホームの普及」(27.7%)、「キャッシュレス支払い対応店舗の増加」(26.7%)がトップ3となりました。

 

逆に「ビジネスの足枷になる」の影響の項目では、「温室効果ガスの排出抑制(脱炭素)」(21.1%)がトップで、「再生可能エネルギーの利用拡大」(17.2%)、「SDGs(持続可能な開発目標)への対応」(17.0%)が続き、環境問題への対応がビジネス上のマイナス要素と見るケースも少なくないです。

 

技術革新や社会環境の変化は企業にはプラスにもマイナスにも左右するため、国等による支援とともに企業自身による対応力の強化が求められます。

 

 

1-2 マクロ環境の状況

国内外のマクロ環境の状況について、伊藤忠商事株式会社の「PEST分析(2030年までのマクロ環境要因)」を参考に説明しましょう。なお、PEST分析はマクロ環境を政治、経済、社会、技術の面から分析する手法です。

 

●政治

・「政治動向」の面は、ビジネス上の機会よりもリスクになる可能性が高い

 

1.民主主義・自由主義の停滞(政情不安定化や格差問題等)

 

現在、世界では民主国家の数が非民主国家を下回るという状況になっており、民主主義への転換は停滞しています。民主体制から強権体制へと逆戻りするケースのほか、頻繁な政策変更の発生などにより企業にとってはリスクの増大に繋がる可能性が高いです。

 

2.異なる政治体制間での対立激化

 

世界では「民主国家対独裁国家」といった構図の対立が見られるようになっており、グローバル企業などではサプライチェーンの見直しも必要になってきています。

 

こうした対立が、世界経済の悪化、貿易量の減少、輸出・投資規制の強化などに繋がりリスクとなる可能性は低くありません。

 

3.地政学リスク

 

ロシアによるウクライナ侵攻といった地政学リスクが顕在化すると、資源や農作物等の供給量の減少に伴う価格上昇が現実化します。こうしたテロ・戦争等の地政学リスクは輸入事業者等には機会になる一方、経済停滞や金融市場の混乱を招き経済全般には大きなリスクです。

 

・「経済政策動向」の面も機会よりもリスクになる可能性が高い

 

1.成長重視から持続可能性重視へ

 

現在では「成長から持続可能性」を重視する経済政策への転換が強まってきました。この状況は安定した経済成長が期待されるものの、経済成長ペースの鈍化がリスクとして懸念されます。持続可能性重視の経済活動への対応が必要です。

 

2.財政金融政策の正常化

 

これまで量的緩和や金利引下げ、減税などの財政金融政策が実施されてきましたが、景気が回復する状況になれば正常化へと政策変更される可能性が高まります。

 

また、現在、世界中でインフレ圧力が高まって、金融引き締めが加速しつつあるため、金利の上昇や増税がリスクになりかねません。

 

・「税制・規制の変化」はリスクより機会となる可能性が高い

 

1.通商協議・協定

 

TPP、RCEP等など国際的な協定が締結される動きは、既存取引の減少や消滅に繋がるリスクがあるものの、貿易量の増加や新たな商流の発生をもたらす効果が高いです。

 

2.温室効果ガス排出抑制の規制

 

パリ協定などにより全ての国が温室効果ガスの排出削減に取組むことが要請されています。こうした流れを背景として、太陽光・風力発電等の再生可能エネルギー市場が拡大する可能性が高いです。

 

一方、石炭・石油等の化石燃料市場は縮小することが予想され、関連事業者には大きなリスクになります。

 

3.BEPS(税源浸食と利益移転)対策、環境税など国際的な租税の潮流

 

税率の高い国から無税あるいは低税率の国へ所得を移し、納税額を抑制する「BEPS」への対策、温室効果ガスの排出抑制を促すための環境税の導入、外資誘致を目的とする法人税引下げ競争の回避、といった租税制度の改革が世界的要請され始めました。

 

こうした新たな税制が導入されることによって商流が変わり企業によってはチャンスになり得ます。一方で、商流の変化を受け既存取引が減少したり、税負担が増加したりするリスクの可能性は小さくありません。

 

4.デジタル分野での規制強化

 

インターネット利用が進むと個人情報等を含むデータはプラットフォーマーに集積され彼らのサービス上の競争優位性の源泉にもなっています。しかし、不公正な手段による個人情報等の取得または利用の可能性が懸念されており、デジタル分野での規制強化が進展する可能性が高いです。

 

規制が強化されれば、既存のプラットフォーマーのデータ独占は困難となる一方、逆に各事業者が利活用できるオープンデータが増えビジネスチャンスになる可能性も期待されます。

 

しかし、各事業者は規制に対応するための費用が増加するほか、適正な保護や利用ができない場合には企業の信用を低下させる、などのデメリットに直面する可能性も小さくありません。

 

●経済

・「先進国経済の停滞」によりリスクが増す可能性が高い

これまで世界経済をリードしてきた先進国では成長の鈍化が見られ始め、その主役の座がアジア諸国などの新興国へシフトしつつあります。そのため主要な取引が欧米や日本などから新興国へ移ろうとしており、前者との取引は減少、後者とは増大というチャンスとリスクが共存する状況です。

 

・「新興国経済の格差拡大」では機会とリスクは同等程度

経済発展が順調な新興国では、生活水準の向上に伴う消費市場の拡大、人口増を背景とするインフラ・食料需要の増加などが期待され企業には大きなチャンスになり得ます。

 

一方、経済発展の不安定や社会情勢の悪化が見られる新興国では、不良債権などが発生しやすくなるなどのリスクも小さくないです。

 

・「ドル高」では機会よりややリスクの方が懸念される

輸出企業にとって、円安進行は収益拡大のチャンスとなるほか、国としては生産拠点の国内回帰に繋がりGDPの基盤強化に繋がります。一方で新興国通貨の下落によるリスクの増大や海外事業の収益悪化というマイナス面に直面する可能性は小さくないです。

 

・「資産(株式・不動産)・資源相場のボラティリティ(変動率)」の面では機会よりリスクが強い

政治状況が不安定である場合、資産や資源の取引も不安定になりやすく、その結果相場のボラティリティが大きくなる傾向があります。変動幅が大きいとトレードでは大きな収益を生む一方、リスクも大きくなります。

 

金融や不動産の市場において投資の過熱が続いる国や地域で急激に他の経済活動が悪化する場合には一気にバブルが崩壊し、その国全体の経済活動が停滞する恐れがあるため注意しなければなりません。

 

●社会

・「気候変動(脱炭素化)対応の加速」の面では、大きな機会とリスクが共存

この面では再生可能エネルギー等に関する機会が増加するため、関連する商品・サービスの高付加価値化やブランド価値の向上が実現できれば新規顧客獲得の可能性が高まります。

 

SDGsへの意識が高まるにつれ化石燃料の需要が減少する可能性が高く、既存の関連業種にとっては大きなリスクです。また、脱炭素化への対応に伴う再生可能エネルギーの利用や設備投資などの負担が経営を圧迫しかねません。

 

・「職場環境の整備」の面でも同等の機会とリスクが存在

働き方改革や感染防止等への対応で、企業にはこれまで以上の職場環境の整備が求められます。IT等ツールの活用、ダイバーシティ(多様な働き方)の推進、勤務体制の柔軟化、などに取組めば労働生産性の向上、健康・モチベーションの向上、優秀な人材の確保に繋げることも可能です。

 

一方、その整備が不十分である場合、人手不足状態の継続、人材の流出、ハラスメント・メンタルヘルス・長時間労働に伴う健康関連費用の増加、などのリスクが生じかねません。

 

・「健康志向、クオリティ・オブ・ライフ意識の高まり」の面でも同等の機会とリスクが存在

パンデミックに伴い非接触社会が求められており、これに対応する商品・サービスの需要の増加が期待されます。また、食の安全・安心の可視化が要望されるなど健康増進に関する需要も増加しビジネス機会になり得るでしょう。

 

一方で事業者側が安全や健康に関する問題を起こした場合、信用力が大幅に低下します。また、そうした問題は業界や社会保障制度に対する不安を増大させ関連市場が収縮する可能性も小さくないです。

 

・「安定的な調達・供給」の面でも同等の機会とリスクが存在

新興国での資源需要の増大は供給事業者にとってはチャンスです。また、世界的に環境・人権意識が高まる中、商品ライフサイクルを通じた環境負荷の低減や人権に配慮した安定供給は先進国を中心に求められているため対応すれば機会になります。

 

逆に環境や人権に配慮しない調達・供給は、反対運動の発生やそれらの対策費用の負担に直面する可能性は小さくありません。なお、低価格を重視した調達・供給を持続させると、産業全体が競争等で構造的に疲弊する可能性が高くなります。

 

●技術

・「技術革新によるビジネスモデルの変化」の面でも同等の機会とリスクが存在

技術革新を行い革新的なサービスや新たなビジネスモデルを開発すれば、ビジネス機会を広げることが可能になります。また、新技術を活用して生産性の向上やサプライチェーンの最適化などを実現し収益拡大を図ることも可能です。

 

一方、AI、IoT、脱炭素化に向けた次世代技術、その他の新技術の普及・浸透により既存のビジネスモデルが陳腐化・消滅するリスクが増大します。また、サイバーテロなどのアタックにより社内データが外部に流出するリスクも小さくありません。

 

 

2 労働環境と労働者の働き方

労働環境と労働者の働き方

 

現在の労働環境や労働者の働き方について確認していきましょう。

 

 

2-1 国の主な労働政策

現在の日本の労働政策の中心は2019年に施行された働き方改革関連法に基づく政策です。具体的には、「長時間労働の是正」、「正規・非正規の不合理な処遇格差の解消」、「多様な働き方の推進」を目標とした政策になります。

 

また、2021年に「高齢者雇用安定法」の改正があり、企業には従業員の70歳までの就業機会の確保に向けた努力義務が課せられ、労働者にとっては老後の生活の安定のために仕事に就ける可能性が広がりました。

 

この法整備は、産業界での人手不足、若い世代における社会保障費の負担増、格差拡大、などの問題があり、それらを改善するために多様な人材の活用(多様な働き方等によって)や高齢者の活用、などを進めたいという国の意思が反映されたものと見られています。

 

もちろん労働者ニーズにも合致しているため、国民からの反発は少ないですが、企業にとっては負担が小さくありません。

 

残業時間を減らす、休日を増加する、育児休暇などを取得しやすくする、定年制の撤廃や延長などの制度変更を行う、非正規社員の正社員化を進める、といったことが企業は求められることになります。

 

こうした対応は企業にとってはコスト増に繋がるほか、生産性の低下を招く可能性も否定できないため、組織のあり方や業務方法等を改善しないと事業の継続が難しくなってしまいます。

 

 

2-2 ニューノーマル時代の働き方

新型コロナの感染拡大により企業の人的資源管理や労働者の働き方に対する考えが大きく変わりました。ここではその点を確認しましょう。

 

1)新型コロナによる影響

 

感染防止を目的とした3密回避の施策として、時差出勤、交代制勤務(隔日勤務等)や在宅勤務(リモートワーク等)などを導入する企業が増加しました。

 

総務省の「令和2年通信利用動向調査」の結果によると、「テレワークを導入している」と回答した企業の割合は、2018年が19.1%、2019年が20.2%でしたが、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発出された2020年(n数2221)には、47.5%と大幅に増加しています。

 

2020年の場合、「今後導入予定がある」とした企業の割合は10.7%で、導入している企業と合わせると半数超の58.2%にもなり、リモートワークの普及の勢いが確認できました。

 

なお、東京都の産業労働局が発表している、2022年2月の「都内企業のテレワーク実施状況」では、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は62.7%で、1月の前回調査(57.3%)に比べて5.4ポイント増加した、と発表されています。

 

このようにコロナ禍ではリモートワークが進んでおり、感染が収束した場合でもリモートワークがある程度定着する可能性は低くないでしょう。

 

2)働き方のニーズ

 

内閣府の「令和元年度 年次経済財政報告」の第2章「労働市場の多様化とその課題」によると、「労働者の観点からは、職業キャリアの多様化、より高齢まで働き続ける意欲の高まり、働く時間や場所などの柔軟性、ワーク・ライフ・バランスの重視といった働き方のニーズや価値観の多様化が進んでいる」と指摘しています。

 

職業キャリアとは、簡単に言うと各労働者の職業に関する軌道や軌跡(どのような仕事や職務についてきたか)のことです。

 

現代は、バブルの崩壊やリーマンショックのような景気の変動、技術革新(イノベーション)、パンデミック・自然災害、テロ・紛争・戦争、などが少なからず発生する社会で、それらが労働市場にも大きな影響を及ぼします。

 

それらの発生により、労働需給のバランスが不安定になり、労働者は1つの企業や1つの職業に従事することが困難になってきたと言えるでしょう。そのため労働者は、変化する就業機会を捉えるために多様なキャリアを積むことが重要となってきました。そして、その対応のために転職や副業を検討する人が増えています。

 

高年齢まで働きたいというニーズは、年金額の減少に対応するために、定年までの生活水準を維持するために、定年後も仕事に就くことが必要だという認識の現れと言えるででしょう。

 

「老後の生活に必要な資金は2000万円」などと言われると、年金生活だけではゆとりある生活を送れないと考える人も多くなるはずです。

 

また、働きながら休暇をとるという就業スタイルの「ワーケーション」なども見られるようになっており、働く時間や場所に対する企業や労働者の考え方が変化してきました。

 

コロナ対策として、時差出勤やリモートワークの導入が進み、事務所で決まった時間に集まって働くというスタイルから自宅等でテレワークにより業務をこなすスタイルが広っています。

 

その結果、労働者の通勤時間は大きく減少し、その空いた時間は趣味や家事などに費やすことが可能となりました。自由な時間を堪能できる生活に慣れると、コロナの収束後もリモートワークの継続を望む労働者は多くなる可能性があります。

 

また、残業や休日出勤のような長時間労働に対して抵抗感を抱く傾向が強まる可能性も否定できません。

 

ワーケーションについても、働き方改革の一環として、また、業務の生産性を高める手段として、導入する企業が多く見られるようになってきました。リゾート地などのワーケーション施設を利用して、社員に休暇を取らせながら業務に従事してもらい、生産性向上やクリエイティブな発想を促す企業が増えています。

 

また、労働力を確保するためには、企業は子供の育児や家族の介護などの問題に対応する必要もあり、長時間労働の改善や柔軟な働き方の整備などワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取組が重要となっています。

 

つまり、労働者には生活重視の働き方を重んじる傾向が強まってきたため、企業としてはワーク・ライフ・バランスの実現が図れる適切な就業環境の整備が必要となっています。

 

 

3 これからの時代の企業組織のあり方

これからの時代の企業組織のあり方

 

変化の激しい現代の経営環境に対応できる企業組織のあり方を考察していきましょう。

 

 

3-1 企業の成長に必要な資源や機能

2022年の中小企業白書等の内容では、「企業の成長を促す経営力と組織」に必要な要素として以下のような点が挙げられています。

 

●無形資産投資とその活用

企業の成長(付加価値向上)を促進する手段として、労働力の確保や有形資産投資の増加は必要ですが、人的資本・研究開発・IT資本等への投資などを含む無形資産投資の増加も成長を促すために重要です。

 

必要な労働力や優秀な人材を確保したり、生産性の高い設備や差別化できる機械などを整備したりすることで、企業は付加価値を直接的に向上できます。

 

他方、即戦力となる人材や特定の技能・技術等を有する人材などを確保することは容易でないため、地道や採用活動で従業員を採用して研修や訓練などにより育成するといった人材開発への投資も重要になります。

 

また、市場で生き残るためには優位性を確保するための技術等の開発が必要であり、研究開発への投資も疎かにできません。もちろんIT投資は企業活動全般の効率性や優位性にかかわる改善や開発に密接的に関わるため積極的に行っていく必要があります。

 

特にITを活用してイノベーションを起こし新たな付加価値を創造するデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資は益々重要になるでしょう。

 

●ブランド構築とその価値の向上

ブランドも無形資産の一つですが、会社設立して間もない企業や中小企業等では特にブランドを構築しその価値を向上させることが自社の成長に有効です。

 

ブランド構築するメリットは、企業独自の付加価値を有することとなり、結果として知名度の上昇による取引機会の増大や適正価格で販売できる価格決定力の保持に役立つことが挙げられます。

 

下図は「2022年版中小企業白書・小規模企業白書の概要」P36の資料で、ブランドの構築・維持を図る取組の有無が、「自社ブランドの取引価格への寄与」にどう影響するかをまとめたものです。

 

ブランドの構築・維持を図る取組を実施している企業の方が、「自社ブランドが取引価格へ寄与している」割合が高くなっています。つまり、ブランド構築・維持への取組はそのブランド力により価格面で有利になりやすいのです。

 

ブランドの構築・維持を図る取り組み

出典:株式会社東京商工リサーチ「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」

 

ブランドの構築・維持を図る取組の有無と売上高総利益率の関係で見ると、取組んでいる企業の売上高総利益率の水準は24.0%で、取組んでいない企業では22.8%と取組んでいる企業の方が上回っています。

 

以上のことからブランドの構築・維持は競争優位性や収益性の面で有効な手段になることが分かるはずです。

 

●デザイン経営

経済産業省等によると、デザイン経営とは、「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営」と定義されています。このデザインには、「ブランド構築」と「イノベーション」に役立つデザインとに分けられており、前者は企業が大事にしている価値や意志を表現する取組、後者は顧客の潜在ニーズに基づいて事業を構想する取組、としての位置づけです。

 

後者に関するデザインではDXの実現にもかかわってくるため、企業の能力として今後特に重要になるでしょう。

 

デザイン経営のための具体的な活動としては、「経営者や経営層がデザイン責任者となって、商品・サービス・事業開発の上流工程や、経営戦略の策定段階からデザインの専門人材を活用する」などの取組みです。

 

デザイン経営の効果では、「企業のブランド構築やブランド力向上」、「魅力ある商品・サービス・事業の創出」、「従業員の意欲や自社への愛着心の向上」などが期待されます。

 

つまり、デザイン経営の実践は、ブランド力の向上のほか、新技術・新商品などの創出によるイノベーション、従業員のモチベーションアップ、などの「インターナル・ブランディング」にも有効です。

 

また、ブランド力の向上は取引価格面での有利をもたらすため、デザイン経営は結果として取引面での有利、延いては業績アップにも繋がると期待されます。

 

●人的資本や組織の充実

企業組織は経営資源の基本要素である人材によって構成・運用されるため、企業の経営が適切に機能するかどうかは、その会社の組織・人材のあり方や内容に大きく左右されます。

 

下表の第2-2-16図(P216)は直面する経営課題のうち経営者が「重視する経営課題」についてまとめた資料です。資料によると、「人材」について重要な経営課題と認識している割合が8割超となっており、経営者の人材に対する関心の高さが確認できるはずです。

 

また、「組織」も3番目に挙げられており重要な課題として認識されています。会社を生かすも殺すも組織次第であり、その組織を構成・運用する人的資本が重要視されるのは当然と言えるでしょう。

 

重視する経営課題

出典:株式会社帝国データバンク「中小企業の経営力及び組織に関する調査」

 

そのため、人的資本をより良い状態にするための手立ても必要になります。具体的には従業員の能力開発に力を入れるケースが多いです。なお、従業員に対する能力開発が積極的であるほど、従業員のモチベーションも向上しやすくなります。

 

そのため従業員の能力開発(OJT研修、OFF-JT研修、自己啓発等)は組織全体の能力の向上をもたらし事業上の成果にも繋がります。

 

能力開発のほかには、人事評価制度、賃金制度、福利厚生、など従業員の労働条件や処遇等に関する施策の整備や充実が求められます。従業員が安心・快適に会社の業務に従事するためには、こうした人事制度を適正に整備し運用することが必要です。

 

また、組織を適正な状態に維持するためには、組織を硬直化させない取組も求められます。経営環境の変化が激しい現代において、過去の成功体験は長持ちしにくいため、組織にはその変化に対応できる柔軟さが不可欠となります。

 

そのためにはコミュニケーションが図りやすい、風通しの良い組織構造にして様々な意見を議論して最適解を抽出できる体制にすることが求められます。また、組織構造での対応だけでは不十分になり得るため、外部人材などを活用して組織に新しい風を注入するといった取組みも重要です。

 

 

3-2 時代に対応できる俊敏な経営

現代はVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ)が堅調なVUCAの時代と言われており、その環境下で企業が成長を遂げるには俊敏な経営が必要だと言われています。

 

俊敏な経営を実現するための経営方法として、「アジリティ経営」や「アジャイル経営」などが注目されるようになってきました。

 

アジリティ経営は「企業がビジネスの環境変化に俊敏に対応する組織能力」などと定義されており、以下のような能力等が指摘されています。

 

  • ・市場ニーズを素早く捉える意志と能力
  • ・素早く意思決定する意志と能力
  • ・外部環境の変化に対応して計画を迅速に修正する意志と能力
  • ・サービス、プロダクト、プロセスを能動的に見直し、更新できる能力と意志

 

アジリティ経営が求められる背景はVUCAの状況下にあるからですが、科学技術の発達、とりわけIT・デジタル技術の進化によりビジネス環境の変化が激しくなった点が挙げられるでしょう。

 

IT・デジタル技術の進化は、人々の行動様式を変え、使用する製品・サービスのライフサイクルを短命化するため、企業はそうした変化に俊敏に対応しないと、好調から衰退へと一気に業績を落とすことになります。

 

そのため現代の企業には目まぐるしく変化する環境に俊敏かつ柔軟に対応できる組織能力が必要であり、その一つとして俊敏な経営に取組むことが求められます。

 

ただし、単に早い・迅速であるだけでなく、あくまで環境の変化に適切に対応してビジネスとして成功や成長できることが重要になります。つまり、単なるスピードを競うことに囚われるのではなく、顧客のニーズを掴みライバルに勝てるスピードを重視しなければなりません。

 

顧客満足が十分に得られない製品・サービスを他者に先駆けて提供しても意味がないということです。

 

「アジャイル経営」もスピードを重視する経営ですが、プログラム開発等における「アジャイル開発」の方法を経営分野に応用させた経営手法と言えるでしょう。アジリティ経営との関係で見ると、狭義においてアジャイル経営はアジリティ経営の一つの方法として見られています。

 

アジャイル開発は、情報システム開発で見られる「計画→設計→実装→テスト」といった大きな開発工程で区分した順番による開発ではなく、各工程をもっと小さく区分して、小さい単位で優先順位の高い作業から進める方法です。

 

 

4 労働者の働き方への企業の対応

労働者の働き方への企業の対応

 

人生100年時代に向けて労働者が求める働き方に適切に応えるための企業の取組み方を考えてみましょう。

 

 

4-1 政府の働き方改革の3本柱

政府の働き方改革の観点(以下の3点)から労働者の働き方について企業が取組む必要のある対応方法を説明します。

 

1)長時間労働の解消

 

非効率な長時間労働は生産性を低下させるだけでなく、労働者の労務負担を重くさせ病気・ケガ等に繋がる危険を増すため改善が必要です。

 

また、長時間労働が発生する職場では残業が頻繁に発生したり、有給休暇など休みが取りにくかったり、といった状況が多く見られます。その結果、就業後のプライベートな時間が少なくなり個人の生活を楽しむといったゆとりある生活の実現が困難になっています。

 

女性の場合は、そういった状況が出産や育児を行う機会や時間等を奪うことになるため、会社を退職するといった事態を招く恐れがあります。このように長時間労働は労働者が求めるワーク・ライフ・バランスを妨げる大きな要因であるため改善が欠かせません。

 

長時間労働の解消の取組としては、既存企業においては業務改善による効率化が優先されます。業務遂行方法を見直し、ムダ・ムラ・ムリに繋がる作業方法を、負担が小さくスピーディーで簡単に処理できる方法へと考案し標準化していくことが重要です。

 

新設会社等では開業前に上記のような標準化を進めることが必要ですが、困難な場合でもできるだけ早い時期から改善活動に入れるように努力しなければなりません。なお、改善活動は一度で終わりというものでなく定期的に業務を見直していくことが重要です。

 

2)非正規社員と正社員の格差是正

 

非正規社員と正社員の格差が大きいと、非正規社員の採用が困難になるほか、正社員の離職の増加に繋がりかねないため、その格差是正が求められます。

 

育児や介護など様々な個人の事情によって非正規での雇用を望む労働者は少なからず存在しますが、待遇面で正社員との格差が大きいと非正規を選択するのは困難になるはずです。つまり、正社員が非正規雇用を望んでも格差が大きいため退職する可能性が高まってしまいます。

 

この状況は企業にとっては、貴重な戦略を失うことになるほか、非正規社員を柔軟に雇用することが難しくなってしまいます。その結果、厳しい人出不足状態に陥る可能性が増大してしまいます。

 

こうしたことから非正規社員と正社員の格差是正が必要であり、同一職務には同一の待遇を提供するといった対応が求められます。もちろんまったく同じというわけにもいかないですが、社員の意見や世間の状況などを踏まえ是正に取組むことが重要です。

 

また、非正規社員から正社員への転換を図れる制度を設けることも必要になるでしょう。

 

3)高齢者の雇用促進

 

少子高齢化が進む日本社会では、若い人材の確保は容易ではありません。その一方で、65歳以上になっても働きたいという高齢者も多いため、企業としては高齢者を積極的に雇用し活用することが求められます。

 

既存の会社では、自社を定年退職する人や退職した人を雇用延長や再雇用といった形でも雇用すれば、即戦力の人材として活用できます。新設会社にあっては、自社業務と類似した業務経験者等を、人材紹介機関や人材情報サイトなどに依頼すれば確保することも可能です。

 

なお、高齢者を活用するあたっては、彼らの健康状態や経験・保有スキル等を踏まえた雇用管理が必要です。採用した高齢者が従事する職場の責任者に彼らの扱い方を丸投げするのではなく、会社としての一貫性がありかつ適切な方法で彼らに働いてもらうルール作りが求められます。

 

 

4-2 人生100年時代の働き方

独立行政法人労働政策研究・研修機構は、「人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査」を実施しており、その結果を令和2年5月29日に発表しました。

 

その中で企業が予測する「人生100年時代」の労働者の働き方が、以下のようにまとめられています。

 

回答の多い項目は以下の通りです。

  • ・従業員の勤続年数の長期化(73.0%)
  • ・介護負担など働き方への配慮(62.3%)
  • ・短時間就業希望の増加(37.6%)
  • ・転職の増加(37.3%)
  • ・兼業・副業の増加(37.1%)
  • ・キャリア設計への関心の高まり(21.4%)

 

なお、企業規模別にみると、300人以上の大企業では、転職の増加(42.5%)、兼業・副業の増加(40.5%)、30~299人規模の中小企業では、短時間就業希望の増加(38.0%)などが多く、その点が特徴となっています。なお、キャリア設計への関心の高まりは大企業で32.2%、中小企業で20.3%と差が大きいです。

 

以上の結果から、既存会社も新設会社も上記のような労働者が求める働き方に対応した人事制度・施策の整備が求められます。

 

「従業員の勤続年数の長期化」については、2025年より65歳定年制が義務化され、今後はさらに引き上げが要請される可能性は小さくないです。労働者にとっては、人生100年時代に備えるにあたり70歳を超え、働けるうちはいつまでも会社で仕事を続けたいというニーズが強まってくるでしょう。

 

そのため高齢者を会社の戦力として活用していく場合、年齢の上限ではなく労働者の状況に応じて勤務が継続できる仕組みの導入と運用が企業には必要です。そうした体制を早めに作ることが既存の貴重な中核人材の離職を防ぎ、新たな優秀な人材の獲得にも役立ちます。

 

「介護負担など働き方への配慮」や「短時間就業希望の増加」については、介護のほか出産や育児・子育てなどに対応できる働き方を提供できることが企業に求められます。つまり、仕事と家庭の両立が可能となる柔軟な働き方ができる制度や環境を企業が整え、運用・管理することが必要です。

 

一時的な非正規社員への変更および正社員への復帰に関する制度、非正規社員と正社員との待遇面の格差是正、有給休暇や出産・育児休暇・男性の育児休暇等の取得促進、多様な働き方への相談対応、といった制度・仕組みを企業は整えていかねばなりません。

 

「転職の増加」については、まず転職の状況を把握することが重要です。企業にとっての「転職の増加」は、その会社から人材が流出するという転職と、逆に中途採用者の獲得による転職の2つに分かれます。つまり、流出と流入の両方を含めて「転職の増加」を考え適切に対応しなければなりません。

 

特に優秀な中核人材が転職し会社を去ってしまうと事業遂行に支障をきたし業績の悪化にも繋がるため、引き留めておける施策・環境等の整備が必要です。収入、労働時間・休日、評価と処遇などのほか、働きやすい職場環境や従事したい業務・業種の選択(キャリア開発等)などに関する労働者ニーズに応えることが求められます。

 

こうした対応は働く場所としての自社の魅力を高めることにも繋がるため、転職者の流入を促す効果も期待できるでしょう。

 

「兼業・副業の増加」については、新型コロナの感染拡大を背景に会社として兼業・副業を認める動きが日本の企業に多く見られるようになりました。パンデミックのほか、突発的な景気の悪化、自然災害等による業務の停止、などで会社の事業が正常に遂行できなくなり、雇用が不安定になるケースも多いです。

 

こうした状況になると、残業時間の削減、解雇・一時解雇などの雇用調整が進められ、結果として雇用の不安定化や労働者の収入減少が表面化するため、労働者には対策として兼業・副業に踏み切るケースが増えていきます。

 

この対応として、企業には兼業・副業を受入れる人的資源管理が必要となります。兼業・副業を許容すると、会社の業務への影響のほか、将来的には独立により退職者の増加を招くことになりかねません。

 

この事態は会社にとって表面的には痛手に見えますが、会社の業務に関連する事業で独立する場合には外注先として機能してくれることが期待できます。つまり、これは兼業・副業を通じて将来のパートナーを育成・確保できることを意味するわけです。

 

会社の人員を増やして事業を拡大させることも重要ですが、変化の激しい時代において事業規模をコンパクトにまとめて機動力を活かせる組織にしておくことは悪い方法ではありません。

 

「キャリア設計への関心の高まり」とは、労働者が今後自分はどのような仕事に就きどう働いていくか、というキャリアデザインに関心を寄せる人が増えている、ということです。

 

労働者が希望する社内での昇進・昇格、目標とする役職、従事したい業務への就業、などを実現するためには自社内での「キャリアパス」を考える必要があり、企業としてはそのキャリアデザインとキャリアバスの実行を支援することが求められます。

 

なお、キャリアデザインでは自社以外の範囲にも及ぶため、その考案を労働者自身に委ねる企業も少なくないですが、企業は適正に関与することが重要です。

 

キャリアデザインにしっかり取組む労働者は、仕事に対する目標が明確で達成意欲も強い傾向が見られるため、より良い成果を得る傾向が見られます。そのため企業側が労働者のキャリアデザインを適切に導けるサポートを行えば会社の業績向上にも役立ちます。

 

また、労働者のキャリアパスの目標達成に向けた助言や支援を行うことで、会社への信頼度が高まり、離職の防止にも繋がります。キャリアについてのカウンセリングや研修の機会を提供し、設計した内容に沿って進める人事上のサポート制度の整備・運用が重要です。

 

 

5 会社設立時から考える「人生100年時代に向けた組織づくり」の進め方

会社設立時から考える「人生100年時代に向けた組織づくり」の進め方

 

人生100年時代に対応できる会社づくりの進め方を、経営組織と人的資源管理の面から説明しましょう。

 

 

5-1 アジャイル経営等の進め方

企業が長期に渡って存続するには、環境変化に強い俊敏で機動性の高い組織体制が必要です。ここではアジャイルな経営を実現するための方法を確認していきましょう。

 

1)俊敏な経営ができる組織作りとは

俊敏な経営ができる組織を作る場合、各企業の状況(事業内容や規模等)にあった方法で進めるのが重要です。「アジャイル経営」などの方法論の活用にこだわらず、自社にマッチした方法で進めるようにしましょう。

 

なお、参考として、アジャイル経営で採用される組織構造の「スクラム」について簡単に説明します。このスクラムとは、ラグビーにおけるフォワードが肩を組み合うスクラムが由来で、組織の職務横断的な小規模なグループを意味します。

 

スクラムは、従来の職能(機能)別単位でまとめられる縦割り構造の組織編成ではなく、マーケティング・営業・技術開発等の各職能メンバーが組入れられる少人数のチーム編成です。

 

チームが特定の目標を達成するために編成され、他のチームとも協力しながら活動する形態です。各スクラムには権限と責任が付与され、少数精鋭の構成員が協調しながら目標に向かって一丸となって業務を進めて行きます。

 

チームの管理・運用は、縦割り組織のトップダウン方式ではなく、現場構成員の自律的な判断で行われるのが基本です。スポーツで例えると、監督の指示に従ってゲームをプレイする野球のチームがトップダウン方式で、ゲームが始まれば各プレイヤーに試合運びを任せるラグビーのチームがスクラムチームになります。

 

縦割り組織の場合、下位の部署(担当者等)がやりたいことについて上層に伝達して承認を得る、他部門と調整する、といった意思決定ルールが存在するため、実行までに時間がかかります。

 

一方、アジャイル経営ではスクラムチームが自律的に行動できるため上記のような余計な時間が不要で、機動的に業務を進めることが可能です。

 

2)アジャイルな経営が可能となる組織作りの進め方

1.経営層のアジャイル経営等に対する理解

 

経営層が柔軟で俊敏に動ける組織の重要性を理解し、自社の実情に合ったアジャイルな経営ができる組織体制を考案する必要があります。

 

たとえば、会社設立したばかりの小規模企業の場合、開業当初は経営者の指示で組織を回す方が効率的になりやすいため、トップダウン方式の組織運営を採用するのが有効です。

 

事業規模が大きくなって業務が複雑になり、他部門との連携がより重要になってきた場合、トップダウン型よりもスクラムチーム型等の組織の方がスピーディーな経営が可能となるため、移行を検討すると良いでしょう。

 

2.アジャイル経営等に対する従業員の理解

 

アジャイル経営等を前提する組織の運営では、各従業員に自ら考え行動する自律的な労働スタイルを求めることになります。一般的な指示命令系統の下で行う業務方法と異なるため、従業員にはアジャイル経営等の内容、メリットのほか、具体的な働き方や業務遂行方法などを丁寧に教えなければなりません。

 

そのためアジャイル経営等に詳しいコンサルティング会社等に導入のサポートを依頼することも重要です。そして、外部の指導・研修などにより従業員の理解を深め、自律的な行動や連携・協調などが取れるようにサポートしましょう。

 

なお、アジャイル経営等の実現には、チームの目的、目標やビジョンに関するメンバー間の共有が重要になります。そのためチームにとっての最も重視すべき顧客やステークホルダーのニーズは何か、守るべき理念は何か、行うべき使命は何か、といった点をメンバーに理解してもらうことが不可欠です。

 

3.状況に合わせた導入

 

開発部、設計部、営業部、製造部、などの職能別部門で構成される製造業の場合、事業規模が大きくなると縦割り組織の弊害が出て迅速な経営が困難になる傾向があります。こうした状況に合わせて俊敏に動ける組織形態にすることが重要です。

 

たとえば、新規事業を進める場合、「新たな事業機会の発見⇒市場調査⇒プロトタイプの開発・製作⇒市場テスト⇒市場の反応に対応する製品や販売方法等の修正⇒大量生産および市場投入」、といった工程が一般的に採用されます。

 

縦割り組織のままだと、この一連の工程を進める際に調整等で時間が多くかかり過ぎるため、各部門から最適な人材を集めた少数精鋭のチームを作って時間短縮する方法が有効です。

 

全行程の関係者が同じ職場に集まって業務を進めるスタイルであるため、従来の縦割りよりも意思疎通が良好で連携・協力も行いやすく、工程の順序にこだわらない部分的な同時並行作業も行いやすいです。その結果、全行程の作業時間を大幅に短縮できるようになります。

 

こうした導入は企業の事業内容や業務方法等に応じて進めることが重要です。特に業務プロセスと組織形態の関係を整理し、目標を達成するための両者の最適な関係や状態を模索することが求められます。

 

目標の実現のためには各業務プロセスはどうあるべきか、どう扱うべきか、そのプロセスの最適な状態に対して組織編成はどうすべきか、を検討し試行錯誤で進めることも必要です。

 

たとえば、新設会社が現状の規模をあまり大きくしないで事業を拡大したい場合、外部の力を利用して必要なチームを作り対応するという方法も有効になります。自社の社員が各チームのリーダーとなって、外部から必要人材を確保したチームを作れば、複数のプロジェクトなどに対応することも可能です。

 

なお、規模の大きな会社の場合は、最初から多数のチームを作ると混乱する可能性が高いため、1チームの運用でスタートさせるのがよいでしょう。トライアルとして、上手くいった点や失敗した点などを確認して改善した後、全社展開を検討する方が無難です。

 

4.管理と業務の標準化

 

スクラムチームなどを運営する場合、トップ等の管理者は細かな命令や指示を出さず、チームメンバーに行動を委ねるというマネジメントが求められます。具体的には、トップはあまり口を挟まず、定期的に活動状況を確認し、問題があれば指摘し改善を促すという管理スタイルです。

 

また、アジャイル経営等を進める上でも各職能部門の業務の標準化は生産性・スピード・品質などの向上に有効であるため、会社設立当初から常に取組み改善に努めることが重要です。

 

誰がチームに入っても大きな違いがでないように業務の標準化を進めることが、アジャイル経営等を全社的に展開する上で欠かせません。

 

 

5-2 働き方ニーズに応える人的資源管理の進め方

労働者がずっと働きたいと思える企業になるには、それに適した人事システムと人的資源管理が必要です。

 

1)企業の理念・存在意義(パーパス)と経営戦略の提示

どのような企業で働きたいか、という労働者の思いは、企業の理念・存在意義や経営戦略などにも影響されるため、企業はそれらを労働者に明確に提示しなければなりません。

 

理念、存在意義や使命などは企業全体の価値観として事業運営に反映されます。そのため共感できる価値観なら労働者はその企業での就業を望み、そうでなければ望みません。

 

また、そうした価値観をもとに企業は一定期間の事業方針と目標を定め、それらを実現するための行動を経営戦略としてまとめます。つまり、企業がこれからどのような事業を展開するかの方針と行動をまとめた経営戦略は、労働者が企業を選ぶ際の根拠情報となるわけです。

 

労働者が望む事業や遂行方法を取る企業なら勤めたい、そうでないなら勤めない、といった判断になるでしょう。

 

こうしたことから企業は適切な人材を確保するために、企業の価値観や経営戦略などを提示する必要があります。

 

2)戦略に基づく組織作りと人事システムの構想

経営戦略や事業戦略を遂行するためには、それに必要な組織を編成し、それを実行する従業員に相応しい人事システムが求められます。

 

たとえば、戦略に基づいてアジャイル経営等を志向するなら自律した組織のスクラムチームやプロジェクトチームのような組織の編成と運用が必要です。そして、そうした組織を採用する場合、それに適した人事システムが欠かせません。

 

従来なら職能部門ごとで能力や成果についての評価を行いそれに適した処遇を行うことになりますが、自律型組織の場合は職能部門のような一律の評価・処遇のシステムを採用することが困難です。

 

チーム単位の評価・処遇をどうするのか、チーム内における各メンバーの評価・処遇をどうするのか、といった組織や事業の運営に適した人事システムの構築が求められます。

 

3)人生100年時代に向けた人事施策の策定

基本の人事システムの内容が定まった後は、人生100年時代に向けて求められる制度や施策を検討しましょう。

 

具体的には、先に確認した、勤続年数の長期化、介護・出産・育児等への配慮、短時間就業等への対応、転職・兼業・副業への対応、キャリア設計への支援、などの制度設計と運用管理の設定になります。

 

なお、設定にあたっては、会社の実情に合わせて進めることが重要です。特に新設会社の場合、人やお金などの経営資源が限られるため、大企業などで導入されている制度を取入れると自社の業務や財政上の負担になりかねません。

 

そのため施策の導入による影響を考慮した緩やかな進め方の検討も必要です。他社や世間が実施しているから、直ぐに導入しよう、というような安易な進め方にならないよう注意しましょう。

 

また、制度・施策の内容を検討する上で従業員の要望や意見もヒアリングし、可能な内容は反映するといった配慮も必要です。こうした新制度の導入では人事部門などが中心となりますが、他の部門の従業員を加えたプロジェクトチームを作って進めるケースもよく見られます。

 

自社にこのような制度設計に関する知見が不足している場合は、人事制度の構築に精通した専門家やコンサルティング会社等に支援してもらうことも必要です。

 

4)新制度の評価と改善

新たな人事制度等を作って運用した後は、制度が正しく機能して従業員の満足や業務の成果等に繋がっているか、などの評価が求められます。また、状態を確認して不備や問題などがある場合には直ちに改善するようにしましょう。

 

こうした確認は毎年の人事考課制度の中で従業員の考えを聞き取り評価することが重要ですが、人事部などが数年に1回程度は全社員から意見を求めて確認するといった取組も必要です。

 

人事考課での面談では上司に直接要望を伝えるのに抵抗を感ずるケースもあるため、無記名のアンケート調査や意見の募集などにより確認することも検討しましょう。

 

なお、制度の変更にあたっては、事前に労働組合や労働者を代表する者などの意見を聞くといった配慮も重要です。

 

 

6 まとめ

会社設立時から考える「人生100年時代に向けた組織づくり」

 

「人生100年時代」という環境を迎えるあたり、企業にはそれに適応できる組織作りと人的資源管理が必要になっています。

 

激しい事業環境の変化に対応するためには、アジャイル経営などのスピード重視の経営が重要です。また、労働者は多様な働き方を求めるようになっているため、高年齢でも働ける、仕事と生活の両立ができる、キャリア開発支援もあるといった対応が企業には求められます。


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