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会社設立で日本政策金融公庫の融資に落ちたときの対策方法とは

会社設立の際、日本政策金融公庫(通称:公庫)から融資を受けようと考えている方も多くいらっしゃると思います。多くの方が、「金利が低い」というイメージを漠然とお持ちかと思いますが、具体的な借り方、手順などは複雑です。

 

会社設立自体よりも、日本政策金融公庫の融資を受けることの方が、より難しいといえます。日本政策金融公庫から融資を受けたという事実は、「日本政策金融公庫が、事業自体にある程度のお墨付きを与えた」という印象を外部に与えるため、他の金融機関の融資でも、好材料として受け取られるケースがあり、返済実績を作ることで、今後の追加融資も期待できます。この記事では会社設立で日本政策金融公庫の融資に落ちたときの対策方法について詳しく説明しますので、興味のある方は参考にしてください。

 

 

1 日本政策金融公庫とはそもそもどういう組織?

日本政策金融公庫は、もともと複数の政府系金融機関が合併してできた組織です。以前は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国際協力銀行(平成24年に株式会社国際協力銀行として分離)などの、国の各分野の金融事業が存在していましたが、これを統一させたのが、日本政策金融公庫です。

 

 

 

1-1 日本政策金融公庫の成り立ち

日本政策金融公庫は、中小企業向けの融資だけでなく、農林漁業のための融資、個人事業主・フリーランス向けの融資、個人向けとして学生向けの学資ローンなど幅広い融資を取り扱っています。

 

 

一口に、日本政策金融公庫といっても、対応する顧客の層は個人事業から中規模企業まで
かなりの幅があるわけです。ある程度企業として発展すると、国民生活部門から、中小企業部門へシフトすることになりますが、多くの会社設立後の企業は当初、国民生活事業部門の担当者の方と関わることになります。

 

また、国民生活事業部門と中小企業事業部門では、フロアが分かれている場合も多いです。

 

 

 

1-2 日本政策金融公庫が他の金融機関と異なる点

日本政策金融公庫は、「起業をする人に優しい(ただし、審査は厳しい)という点があります。また、原則、無担保かつ第三者、親族などの保証人不要(起業して法人を設立する場合は、経営者自身が、自分の会社に対して連帯保証をする必要はあるケースが多いです)で借りられるというメリットもあります。

 

以前は、各公庫、金融機関とも、「人的保証」といい、第三者の連帯保証人を要求するケースが多くありました。しかし、借主の破綻により、連帯保証人になった人が弁済の義務を負うことが社会問題となり、現在では国民生活金融公庫、金融機関で連帯保証人を原則求めない方向となっています。

 

また、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立を金融庁自身が銀行の評価項目として重視していることから、今後も第三者の連帯保証人を求めないという方向性は変わらないと予測されています。

 

また、前述の通り、日本政策金融公庫から融資を受けた(かつ滞りなく返済している)という事実は、今後の他の金融機関での融資、信用保証協会の保証などの審査面でもプラスになりますし、日本政策金融公庫と金融機関・保証協会などで協調融資(シンジケートローン)を受けられるケースもあります。ただ、その場合、税理士や資金調達に詳しい専門家のバックアップが重要になるケースも多いでしょう。

 

日本政策金融公庫と関わる上で注意したいのが、日本政策金融公庫は返済の延滞に対しとても厳しい点です。一回の延滞でも今後の融資に対して大きなマイナス材料となり、また延滞が続くと「一括弁済」といい、「借入額全額の支払い」を求められることとなります。

 

さらにそれでも支払わないと、債権回収事業者に債権を譲渡され、債権回収事業者との話し合いや、訴訟を起こされるケースも想定されます。

 

そのため、着実に返済をできるよう、毎月の厳密な資金計画は欠かせません。

 

また、少しでも返済が遅延しそうになるおそれがあれば、遅延が発生する前に、日本政策金融公庫の窓口に事情を相談し、返済猶予、リスケジュールなどの相談をすることが望まれます。

 

その際に気を付けるのは、ただ、「返済が遅れます」ではなく、「返済が遅れる可能性がありますが、今後このような形で状況を改善していこうと考えています」という、前向きな提案も併せて提示することです。

 

特に、返済金が支払えないという場合だとパニックになりがちですが、こういうときこそ落ち着いて、どうすれば状況を好転できるか、冷静に考え、日本政策金融公庫にリスケジュール・改善策両方を備えて提案することをお勧めします。

 

 

 

1-3 日本政策金融公庫はどこで融資審査をする?

日本政策金融公庫で融資を受ける際は、最寄りの日本政策金融公庫の支店に行くというイメージがあります。

 

もちろん、その方法も可能ですが、事務所や自宅に日本政策金融公庫の担当者に来てもらい面談を行うケースも少なくありません。税理士事務所など任意の特定の場所で面談を行えるケースもあります。

 

ただし、日本政策金融公庫の担当者は、一度は事務所なり自宅を、事業や本人の実態確認のために訪問、外見を行う傾向が強いです。(訪問がある場合は、基本的に事前連絡があるケースが多いです)

 

そのため、事務所や自宅に訪問されてもいいように、整理整頓や事業の準備資料、事業を行っていれば事業実態がわかるような書類一式を備えておく必要があるといえましょう。

 

 

2  日本政策金融公庫の融資条件は?

日本政策金融公庫には、様々な融資のプログラムがあります。

 

新規企業やスタートアップ、小規模事業者向けのものでいえば、「一般貸付」、業況の変化や取引先の破綻、災害などの際の「セーフティネット貸付」、起業をする人のための「新企業育成貸付」、IT投資や海外展開、事業再編、地域活性化などを図る方のための「企業活力強化貸付」、環境・エネルギー対策の「環境・エネルギー対策貸付」、企業再生のための「企業再生貸付」、震災・豪雨被害、商工会議所と連携したマル経融資など「その他の融資制度」、理髪店、美容院他生活衛生に関わる事業向けの「生活衛生貸付」など、創業者向けの融資をピックアップするだけでも、非常に種類が多くあることがわかります。

 

ただ、具体的にどの融資を活用するのが最適かについては、自分自身で判断するのは難しいでしょう。日本政策金融公庫の担当者との面談や、税理士・資金調達の専門家などと事前に相談し、利率がリーズナブルかつ融資の許可がおりやすいと見込まれるものを相談して決めるのが望ましいといえます。

 

 

 

2-1 創業融資が一番狙いやすい!

どんな金融機関でも、最初の融資については、非常に慎重になります。なぜなら、実績が出るかどうかがわからないからです。

 

当初の事業の想定通りに行かないこと、場合によっては業態転換(ピボット)などを行い、業務の方向性を変えて活路を図るという方法もありますが、いずれにせよ、いかに立派な事業計画があっても、「そのとおりに推移するとは限らない」というのが率直なところです。

 

ですが日本政策金融公庫の場合、国がバックに付いている関係上、創業融資に対して様々なプログラムを作り、積極的に創業融資に携わろうとしています。

 

なお、日本政策金融公庫に限らず金融機関の基本方針として、「資金使途通りにお金をつかっているか」ということを重く見ています。例えば、設備資金として借りたはずのお金が、実際にその設備に回されず、運転資金に回っていた場合、「期限の利益の喪失」といい、「借りたときの取り決めを破ったので、全額貸したお金を返してください」と一括での弁済を要求されるケースがあります。

 

また、通常の住宅ローン融資などでも、やむを得ない事情があり、事前に金融機関に相談し、許諾を得ている場合以外の状態で、無断で他社に貸し、賃料を得ていた場合、期限の利益の喪失により一括弁済を求められるケースなど、金融機関は、「約束と異なる条件にお金を使うこと」に対して、厳しい対応を行ってきますので、資金使途通りに資金を用いること、用途が不明確なら運転資金できちんと借り、設備資金は使途が明確なものにわけ、後で資金使途を尋ねられても問題がないようにしておくことが重要です。

 

また、融資限度額がそれぞれ定まっていますが、当然この融資限度額をまるごと借りられるケースというのはまれといえましょう。

 

資金使途や返済能力、事業の見込みなどを踏まえて、それぞれ日本政策金融公庫の担当者、税理士・資金調達の専門家と相談して決める必要があります。

 

また、新規事業であっても、IT活用促進資金やソーシャルビジネス支援資金など、条件に合致すれば新規事業向けの貸付以外の貸付も受けることができるケースがあります。

 

なお、下記の表は新規事業向けの融資に加え、新規事業でも受けやすい融資も含めピックアップしております(令和元年9月現在の制度で、今後変更される可能性があります)。

 

融資制度 対象者 融資限度額 融資期間(うち据置期間、つまり支払いを猶予される期間)
新規開業資金 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
女性、若者/シニア起業家支援資金 女性または35歳未満か55歳以上の方であって、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
再挑戦支援資金 (再チャレンジ支援融資) 廃業歴等があり、「廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人である」「廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み」「廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること」の3つの要件にすべて合致、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
新事業活動促進資金 経営多角化、事業転換などにより、第二創業などを図る、前述のピボット(方向転換・業態転換のケース)。原則、「経営革新計画」の承認、「新連携計画」の認定、「農商工等連携事業計画」の認定、「地域産業資源活用事業計画」の認定、「地域産業資源活用支援事業計画」の認定、「経営力向上計画」の認定、中小企業等経営強化法に基づく中小企業等の経営強化に関する基本方針に定める新たな取り組みを行い、2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる、技術・ノウハウ等に新規性がみられるなどの条件にあてはまる必要があるが、それ以外の場合でも適用されるケースはある 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
中小企業経営力強化資金 新事業分野の開拓のために事業計画を策定し、外部専門家(認定経営革新等支援機関)の指導や助言を受けていることが必要。また、借主が策定した事業計画期間内において、年1回以上、事業計画進捗状況を公庫に報告する必要があり、怠ると一括弁済になることもあるので注意 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
IT活用促進資金 情報化投資を行う場合。新規事業の場合、ネットワーク設備、PC、タブレット、備品などが必要となるため、他の制度とあわせて使うケースもある 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
地域活性化・雇用促進資金 承認地域経済牽引事業計画などに従って事業を行う、または雇用創出効果が見込まれる設備投資を行うケース 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
ソーシャルビジネス支援資金 社会起業など、社会的課題の解決を目的とする事業を営むケースに適用。NPO法人か、NPO法人以外であって、「保育サービス事業、介護サービス事業等」もしくは「社会的課題の解決を目的とする事業等」に適用 7,200万円(うち運転資金4,800万円) 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金: 7年以内(2年以内)
新創業融資制度 新たに事業を始める方または事業開始後で税務申告を2期終えていない場合。貸付額が1,000万円を超える場合は、「雇用の創出を伴う事業」、「現在勤務する企業と同じ業種の事業を始める」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める」、「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める」等の一定の要件に該当することが要される。また、新たに事業を始めるか、事業開始後税務申告を1期終えていない場合は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できることが要されるが、「現在勤務する企業と同じ業種の事業を始める」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める」等に該当する場合は、自己資本の要件は不要に 3,000万円(うち運転資金1,500万円) 各制度に定める返済期間以内
挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン) 創業・新事業展開・海外展開・事業再生等に取り組む中小企業・小規模事業者であって、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果が見込まれる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業などに取り組む 4,000万円(事業承継・集約・活性化支援資金を利用の場合は別枠4,000万円) 5年1カ月以上15年以内
生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付> 生活衛生関係(理髪店・美容院・クリーニング業・飲食店など、他にも後述するが多岐にわたる)の事業を創業、または創業後おおむね7年以内 一般貸付または振興事業貸付の融資限度額+3,000万円 設備資金:20年以内(2年以内)
運転資金:7年以内(2年以内)

 

なお、最後の生活衛生関係事業は、理美容業・飲食店などのイメージが大きいですが、厚生労働省の定義では、下記の事業が生活衛生関係事業として定義されています。

 

 

①サービス業

理容店、美容店、映画館、クリーニング店、公衆浴場(銭湯)、ホテル・旅館、簡易宿泊所、下宿営業

 

②販売業

食肉販売店、食鳥肉販売店、氷雪販売業

 

③飲食業

すし店、めん類店(そば・うどん店)、中華料理店、社交業(スナック・バーなど)、料理店(料亭など)、喫茶店、その他の飲食店(食堂・レストランなど)

 

という形で、比較的幅広い業種が生活衛生関係事業に関わります。(意外ですが、清掃業や廃棄物処理業などは生活衛生関係事業に含まれません)

 

以上、新規開業者向けの融資制度をご紹介しました。

 

このように種類が多く、条件も様々ある中から自分に向いた融資制度を探すというよりは、非常に大変です。

 

自身の事業計画などを踏まえ、税理士・資金調達などの専門家に相談したり、公庫の担当者に相談することで、適した融資を提案してもらうなど、現況を相手に話し、適した融資制度を先方から提案してもらうようにするのが望ましいと言えます。

 

また、税理士・資金調達の専門家などは、中小企業庁認定の「経営革新等支援機関認定」を受けているケースも多いです。そのため、経営そのものの円滑化も含め、資金調達の相談に応じてくれるケースも多いでしょう。

 

創業融資を受ける際は、失敗したときのデメリットが大きいので、できるだけ税理士・資金調達の専門家の指導を受けるのが望ましいといえます。

 

 

 

2-2 個人の通帳・信用情報もチェックされるなど、融資申請の1年前から注意

申請する代表者個人について、代表者個人の様々な意味での「信用」が、融資申請の際はチェックされます。そしては、判断は最終的には書面ベースで行われますので、いくらいい計画や情熱があっても、信用情報に問題があれば、一気に融資は厳しくなります。

 

詳しくは後ほど説明しますが、特に申請一年前からは、公共料金の支払い漏れをなくす、税金を遅延・滞納しない、金融機関・クレジットカードなどの引き落とし漏れがないようにする、消費者金融を利用しないなどの注意が必要です。

 

また、自己資金を貯めておくことも重要です。日本政策金融公庫の一部の新規創業向け融資の要件では、借りたい金額の10分の1を用意することが求められていますが、以前は3分の1でした。そのため、3分の1以上の自己資本があると非常に日本政策金融公庫の心証はよくなります。

 

気を付けたいのが、誰かから一時的にお金を借りて、大きなお金をいれるという「見せ金」の行為は行わないことです。

 

一時的に口座に大きなお金を入れたものでは、「ああ、これは見せ金だな」とすぐ担当者にわかりますし、日本政策金融公庫側に不信感を与えてしまいます。通帳で毎月コツコツ貯めることにより、きちんと積み上げてきたプロセスを、貯金通帳の履歴で証明できることが必要です。

 

 

 

2-3 どの資金が適しているかは、できるだけ専門家と相談を

前述した通り、融資資金の項目は非常に多く、金利なども制度により異なります。自己資金の状況や支払漏れ、クレジットヒストリーの問題なども含めて、できるだけ税理士・資金調達の専門家に対しては、状況を正直に話し、どの融資制度を活用するのが望ましいかを相談することが大切といえましょう。

 

税理士・資金調達の専門家としても、マイナスの要素があり、日本政策金融公庫では融資が厳しい場合でも、他の金融機関や調達方法を提案してくれるケースもあります。日本政策金融公庫だけが創業時の資金調達の方法ではない、専門家に相談すると新たなアイデアが出てくる可能性もあることは念頭に置いておいた方がよいでしょう。

 

 

3 日本政策金融公庫の審査に落ちてしまう人の特徴とは?

日本政策金融公庫の融資は、創業者でも受けやすい反面、実績ゼロのところから融資を受けるわけですので、厳しく審査される部分も多くあります。

 

一度審査に落ちると、最低半年は融資審査を受けることができませんし、最初の段階より融資を受けるハードルが上がる可能性もあります。

 

そのため、審査に落ちてしまう人の特徴を踏まえ、審査に確実に通るようにしましょう。特に、日本政策金融公庫の審査で落ちる人の傾向、特徴について、まとめました。

 

 

 

3-1 信用情報に問題がある

まず、言うまでもありませんが、税金の滞納があっては融資が受けられなくなります。銀行・クレジットカードなど信用情報機関の情報にも注意が必要です。携帯の割賦の支払漏れには特に注意すべきところですし、消費者金融の利用は、履歴があるだけで厳しくなるケースも考えられます。

 

日本政策金融公庫は、融資の貸し出し実行時に、個人の信用情報を確認する仕組みとなっています。

 

銀行、クレジットカード会社、信販会社、消費者金融会社などは、「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」、「クレジット・インフォメーション・センター(CIC)」「日本信用情報機構(JICC)」を共同で設立しております。

 

銀行は「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」、クレジットカード会社、信販会社は「クレジット・インフォメーション・センター(CIC)」、消費者金融会社は「日本信用情報機構(JICC)」を主に利用するケースが多く、この3社間では、延滞、破産などの事故情報を共有しています。

 

日本政策金融公庫は、「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」と「クレジット・インフォメーション・センター(CIC)」のデータを参照します。この中で、遅延、その他事故情報があると、一気に厳しくなります。

 

また住宅ローン、マイカーローン、分割払いなどは問題ないですが、消費者金融の利用履歴があると、こちらも厳しく見られてしまいます。

 

特に、携帯の(割賦代金の)延滞は盲点ですので、割賦代金の支払い漏れは絶対にないように注意してください。

 

 

 

3-2 個人の通帳の引き落としで、引き落とし漏れがある

また、電気・ガス・水道料金など、公共料金の引き落としモレはNGです。

 

日本政策金融公庫で創業者融資を受ける場合、原則として、個人の通帳の全て(ネットバンキングの場合は、取引履歴の印刷物)で過去一年分をチェックされると想定しておいたほうがよいでしょう。そのなかでチェックされるのは、前述の自己資金が、コツコツと貯められたものであるかの他に、公共料金などの引き落とし漏れがないかなどもチェックされます。

 

ここで直近1年以内のところで引き落とし漏れがある項目があると、かなり審査は厳しくなると考えておいた方がよいでしょう。

 

 

 

3-3 面談対策をきちんとおこなわない

日本政策金融公庫の担当者との面談対策も重要です。

 

融資の可否を決めるのは担当者だけではありません。融資希望者と面談した印象、事業計画の理解、熱意など様々な点を書面にして、審査部門に書面ベースで渡す形となりますので、審査部門が熱意、マインドだけでなく、資金計画の適切さ、事業計画の見込み、ビジョンなど、「自分の言葉で、冷静さと情熱を双方持ちながら事業を語れるか」がカギになります。

 

また、服装についても、現場作業を伴わない業種ではスーツで行くことを強くお勧めします。ただ、建設、農林漁業等は仕事着で行っても問題はないですし(ただ、洗濯など基本的な清潔感は必要です)、理美容、アパレルなどであればそれにふさわしいファッションでもよいでしょう。

 

業種にふさわしい、清潔感ある無難な装いをすることは強く心がけてください。

 

税理士・資金調達の専門家などですと、これまでの資金調達での経験などから、何を聞かれるかは大体わかっていますので、税理士・資金調達の専門家の力を借りる場合は、ぜひ面談前に専門家と想定問答の練習を行うようにすると望ましいです。

 

なお、注意点を一つあげると、公庫や自身の事務所・自宅などの面談に、税理士・資金調達の専門家が同席することはNGです。ただし、税理士・資金調達の専門家や公庫間での合意があり、税理士・資金調達の専門家の事務所で面談を行うなど、専門家がいる必然性がある場所で、専門家が同席するのは問題視されにくいです。とはいえ、いずれにしても、受け答えの主体になるのは融資を受ける自分自身であることは留意した方がよいでしょう。

 

 

 

3-4 事業計画が不十分(売上根拠・資金計画・収益が安定的に出せるか)

事業計画は極めて重要です。日本政策金融公庫のページにも、事業計画のフォームはありますが、基本的には別紙記載という形で、極力オリジナルでつくるのが望ましいでしょう。

 

特に公庫が求めているのが、安定かつ着実に売り上げが出せるのか?という点です。
当然ですが、毎月着実な売上、利益がないと、公庫も返済を受け取ることができません。

 

そのため、申込者の過去の勤務歴や事業歴とこれからやることがリンクしている、すでに企業や個人などから売上が入る見込みがある、個人として仮契約を結んである程度収入が入る見込みがあるなど、「前職とこれから行う事業がリンクしている」「売上が既に立っている、立つ見込みがある」ことで、日本政策金融公庫としても融資を出しやすくなります。

 

また、資金計画についても、ともかく着実に、地に足のついた内容で作ることは重要です。

 

収益の安定性という面でも、例えば前職や他の企業から業務受託の約束が書面などの形で取れていれば、着実にクライアントワークで売上が挙がるな、という好印象を与えられます。

 

事業計画についても、税理士・資金調達の専門家と協議し、ブラッシュアップするのがベストです。自身でも申請する場合でも、日本政策金融公庫の担当者が事業計画のブラッシュアップに協力してくれますので、提出する前、できれば作成途中の段階から、担当者に相談しておくのが望ましいでしょう。

 

また、税理士・資金調達の専門家に依頼する場合、日本政策金融公庫の担当者に相談する場合両方において、「最初のざっとした計画は自分でつくる」ことが重要です。

 

何をするか、どれくらいお金が必要そうか、どれくらい売上が見込めそうか、ビジネスとして有望かなど、最初の事業計画の根底となる部分は、自分の力、自分の言葉でつくることができるだけ望まれます。

 

例えば、自分で事業計画を書くのはなかなかできなくても、税理士・資金調達の専門家と口頭で壁打ちをする中で、より事業計画のイメージが固まり、結果として文章にしやすくなることも想定されます。

 

そのため、できれば税理士・資金調達の専門家などに相談したりして、自身の事業のよさを客観的に引き出してもらうことをおすすめします。

 

 

 

3-5 反社会的勢力と関与がある(ことが疑われる)

近年、反社会的勢力との関与がある団体、人物と関わらないように、あらゆる官公庁、法人、団体が注意して取り組んでいます。

 

公庫との融資においても、反社会的勢力と関与がないことを宣言することが求められます。

 

日本政策金融公庫自身が実務上反社チェックを行うかは不明確ですが、いずれにせよ交友関係にも注意が必要です。

 

 

 

3-6 なんでも自分でやろうとしてしまう

会社設立もですが、何でも自分でやろうとしてしまう人は特に注意が必要です。創業融資は、前述の通り、一度審査に落ちてしまうと、いろいろなマイナスがあるため、極力最初の審査で通るように、事業内容、申請書類、面談対策、資金使途、資金計画など様々な書類をブラッシュアップしておく必要があります。

 

そのためには、自分だけでやろうとするより、税理士・資金調達の専門家など、融資・資金調達に詳しい人の力を借りて、融資を受けられる確率を高めるようにすることが重要と言えます。

 

また、様々な角度から自身の事業を第三者の専門家に見てもらうことにより、より精度の高い融資申請書類が作れるだけでなく、事業計画や各種事項を見てもらい、面接対策などもする課程で、「ここはこうした方が顧客に良さが伝わりやすい」「この資金計画は、もっと厳しく見積もった方がいい「面接で、この受け答えはあまり相手に良い印象を与えないので、このように対処した方がよい」など、様々な形でアドバイスを受け、あわせて事業改良のヒントを見つけることができるケースも想定されます。

 

そのため、会社設立を行った専門家なり、税理士・資金調達の専門家など、なじみがあるなり、資金調達に実績があるなり、専門家の力を借りて進めた方が、様々な面においてスムースに行きやすいといえるでしょう。

 

 

 

3-7 その他

あくまで可能性ですが、ここまでSNSが発達した現代ですと、日本政策金融公庫の担当者が、SNSを確認している可能性もゼロではありません。その中で、派手な生活をうかがわせる記述や、他者との交友などで「この人が代表の会社に融資してもいいのか?」と思われてしまっては、どうにもなりません。プライベートに関しても、派手に見られるような行動は慎んだ方がいい場合もあるでしょう。

 

また、当てはまるケースは少ないかと思いますが、事業の定款に「金融業」もしくはそれに類すると思われる業務が存在する場合や、投資助言にかかる業種、一部の風俗営業などは融資の対象外となります。

 

 

4 日本政策金融公庫の審査に落ちたときの対策方法とは?

まず、一般論として、日本政策金融公庫の融資審査に落ちたときは、最低半年間は期間を空ける必要があると言われています。

 

そのため、創業時、確実に融資を受けられるよう、税理士・資金調達の専門家などとしっかり連携し、融資申請を行うのが望ましいです。とはいえ、半年待つというのは、大きな時間のロスとなります。

 

 

 

4-1 半年我慢する

どうしても日本政策金融公庫の融資を受けたい、という場合は、半年間我慢し、税理士・資金調達の専門家などに申請書類などをチェックしてもらい、再申請を出すという方法もあります。

 

ただ、半年間他の融資を受けずに我慢するというのは大変ですので、切り替えて他の融資や他の資金調達を考える方が望ましいといえましょう。

 

 

 

4-2 信用保証協会の保証付き融資など他の金融機関からの融資を狙う

日本政策金融公庫の融資が否決された場合(特に独力で申請し、否決された場合)、できるだけ税理士・資金調達の専門家なり、地域の商工会議所(年間数千円を払って加入する必要があります)に相談するなりで、第三者の意見を受けながら、早急に別の金融機関から融資を受けることを探っていく必要があります。

 

①信用保証協会の保証付き融資を検討する

各都道府県の信用保証協会による保証(マル保)と呼ばれる、保証付き融資を金融機関から受けるという方法があります。保証料分若干金利は高めになる可能性がありますが、それでも融資を受けることが先決です。

 

なお、信用保証協会の保証を受けない融資を、金融機関では「プロパー(融資)」といい、こちらが低金利のケースが多いですが、審査は厳しくなります。

 

融資申請は、信用保証協会に対し直接行うのではなく、取引先の金融機関を通して、信用保証協会に依頼する形となります。

 

大手都銀より、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合など、規模がさほど大きくなく、審査に対して柔軟なところに相談するとよいでしょう。

 

ただし、融資を受ける上で気を付けるべき事があります。それは、「できるだけ税理士・資金調達の専門家や商工会議所など公的機関の紹介を活用し、融資の窓口にいきなり自分だけで行かない方が、金融機関の心証が良い」ということです。

 

特に、地域金融機関の場合、地元の税理士・資金調達の専門家や商工会議所の紹介があると、非常に相手側としてもハードルが下がります。

 

なぜなら、税理士・資金調達の専門家にしても、商工会議所にしても、問題のある案件にならないように、相談者から十分なヒアリングと事前に様々な計画、事業アドバイスの練り込みなどを行った上で、「これなら安心して紹介できる」というレベルまで様々な部分を磨き上げてから金融機関側につなぐためです。事前に十分に計画が練られていれば、金融機関の貸し出し担当者としても融資に前向きに取り組みやすくなります。

 

ちなみに、審査の厳しさで言うと、一般論では、メガバンクほど審査が厳しく、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫・信用組合など、規模が小さくなるほど、審査に対して前向きに取り組んでくれる傾向があり、担当者自身も積極的に動いてくれ、小回りがききます。

 

そのため、信用金庫・信用組合などとも積極的に関わり、情報交換をしたり、協業ができそうな人を紹介してもらったり、逆に自分が人を紹介したり等、積極的に動いていくと、融資以外の点でもメリットが発生することも想定されます。

 

余談ですが、1日に2つの銀行・金融機関に同時に融資を申し込むという細工はおすすめしません。他行で融資を申請した情報は、全国銀行個人信用情報センター(KSC)に即日登録されますので、複数の銀行・金融機関に融資を申し込んだところで、双方の銀行・金融機関にとって心証が悪くなり、どちらも受けられないというケースも想定されます。

 

融資申請の際は、正直に、ただ、言わないでいいことまで言わない、余計なこと、相手の心証を害することは控えるという点は、よくよく注意しておいた方がいいでしょう。

 

 

 

4-3 クラウドファンディングなど、他の資金調達の手法も考える

最近は、クラウドファンディングなど、様々な資金調達の手法が生まれています。

 

クラウドファンディングは、インターネットを通し、不特定多数の人から、「こういう事業を行いますので、こういうリターンを提供しますので、出資しませんか?」と提案する手法です。

 

お金を返すという形ではなく、モノやサービスの提供で、出資にお礼するという形になります。そのため、モノのリターンやサービスへのリターン、ビジネスや出資を募る人自身への信頼などが問われ、融資とは異なる難しさがありますが、きちんとリターンを提供できる見込みがあれば、クラウドファンディングも一つの選択肢と考えて良いでしょう。

 

他にも資金調達の方法は複数ありますが、注意する点として、資金調達手法の中で、資本金に対する出資を受けることと、金利の高いローンを利用するのはあまりおすすめできません。

 

まず、資本金に対して外部から出資を受けるということですが、資本金に対する出資を受けるということは、自分の持株を相手に譲り渡すこととなります。

 

自社が成長しても、株を譲り受けた側が、その分を受け取るため、全額自己資本の場合に比べ、実入りが減ってしまうなど、収入面でもデメリットが生じます。

 

加えて、会社の中での自身の持株割合が少なくなるため、過半数など一定割合以上の株式を第三者に保有されると、経営権がなくなってしまうおそれがあります。

 

特に、過半数の株式を第三者が保有すると、第三者の意思で取締役の選任・解任ができてしまいます。自分が作ったはずの会社なのに、自分のものではなくなってしまうわけです。

 

そこからさらに第三者の保有比率が増え、3分の2を超えると、会社の合併、事業譲渡など会社の存続そのものも、外部に握られてしまうおそれが出てきます。

 

そのため、極力会社設立をした創業者は、株式総数の3分の1以上、過半数、3分の2以上を分水嶺として、極力自身が株式の3分の2、最悪でも過半数は自己保有にしておくことが重要となります。

 

改めて強調すると、最善なのは、100%株式は創業者が保有することです。株を相手に渡すのは、会社の一部を渡すことだという心づもりでいた方がよいでしょう。

 

また、金利の高いローンで資金調達をすることも控えた方が望ましいです。例えば、500万円の資金を10%などの金利で借り受けると、年間の利息は50万円にも上ります。一般的な金融機関で調達すれば、概ね2%~4%のレンジにも収まると想定され、仮に3%で資金調達できていれば、年間の利息は15万となります。

 

利息は経費に算入できますが、元金は経費にならず、売上から諸経費・利息を引いて残った中から、元金の返済をする必要があるわけです。

 

このように、返済の負担の高さを考えると、高金利での資金調達はおすすめできません。

 

 

 

4-4 時には一旦待つ勇気も必要

前述のクラウドファンディングなど、国民生活金融公庫で資金調達ができなかった場合でも、他の方法で資金調達ができる場合もあります。

 

そして他の資金調達の方法もありますが、金利等の問題で、長期的に会社を存続したいという人にはリスクがあるため、今回はあえて触れませんでした。

 

そもそも、高い金利など無理しないと資金調達をできない状況で、お金を借りることはお勧めしにくい、というのが率直なところです。

 

ビジネスプランの練り直し、自己資本の蓄積、支払等総合面を含めて、条件をよくできるよう現時点でできる努力・工夫を行い、極力国民生活金融公庫、金融機関から一般的な形で融資が受けられるようにしていく方が、ずっと会社設立、起業による失敗を回避できるといえましょう。

 

特に資金調達については、最初のミスが大きなマイナスになります。税理士・資金調達の専門家などに当初より相談し、「最初の内に専門家の力を借りてみる」ということが大切になると考えた方が望ましいでしょう。

 

 

5 エンジェル税制とは

会社設立時に必要となる事業資金を調達する方法の一つが、エンジェル投資です。エンジェル投資とは、設立間もないベンチャーや中小企業へ行う投資をいいます。そんなベンチャー企業や中小企業への投資を後押しする施策が『エンジェル税制』になります。ベンチャー企業や中小企業へ投資する投資家を優遇することで、ベンチャー企業や中小企業の資金調達を応援する税制です。

 

具体的には、ベンチャー企業等へ投資を行った個人投資家に対して①投資時点と②株式売却時点の2つのいずれの時点でも税制上の優遇措置を行う制度になります。

 

◆エンジェル税制の税制上の優遇措置

①投資時点 以下の2つの優遇措置から選択することが可能です。 A)『ベンチャー企業等への投資額 -2,000円』を投資実施年度の総所得金額から控除することが可能です。* B)ベンチャー企業等への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除することが可能です。
②株式売却時点 投資で取得した株式を売却した際に発生した損失は、売却年度から翌年以降の3年間はほかの株式譲渡益と相殺することが可能です。

*控除対象となる投資額上限は、『総所得金額の40%』か『1,000万円』のいずれか低いほうとなります。
*控除対象となる投資額上限はありません。
*ベンチャー企業等が上場せずに破産や解散などにより株式価値が0になった場合でも、株式価値が0になった翌年以降3年間は損失の繰り越しが可能です。また、投資時点で優遇措置を受けた場合は、その控除対象金額を取得価額から差し引き売却損失を計算します。

 

以下ではエンジェル税制が投資対象となる企業の要件と、減税対象となる個人の要件を説明し、減税計算シミュレーションをあわせて記載します。

 

 

 

5-1 エンジェル税制の優遇措置対象となる投資対象

エンジェル税制がベンチャー企業等の資金調達を応援する税制であるため、どの企業に対しての投資であってもエンジェル税制が適応されるわけではありません。それぞれの優遇措置に対して適応される企業の要件が定められています。

 

・ 投資時点の優遇措置Aの適用要件

事業年度(設立経過年数) 適用要件
1年未満かつ最初の事業年度を経過していない 研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上でありかつ常勤の役員・従業員の10%以上であること
1年未満かつ最初の事業年度を経過している 研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上でありかつ常勤の役員・従業員の10%以上であり、直前期迄の営業キャッシュフローが赤字であること
1年以上から2年未満 試験研究費等*が収入金額の3%を超えて直前期迄の営業キャッシュフローが赤字であること。または、研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上でありかつ常勤の役員・従業員の10%以上であり、直前期迄の営業キャッシュフローが赤字であること
2年以上から3年未満 試験研究費等*が収入金額の3%を超えて直前期迄の営業キャッシュフローが赤字であること。または、売上高成長率が25%を超えていて直前期迄の営業キャッシュフローが赤字であること

*試験研究費等には、試験研究費の他に宣伝費とマーケティング費用など、技術の採用ならびに改良に係る費用や、新しい経営組織の採用や市場の開拓等に係る費用を含みます。

 

・ 投資時点の優遇措置Bの適用要件

事業年度(設立経過年数) 適用要件
1年未満 研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上でありかつ常勤の役員・従業員の10%以上であること
1年以上かつ2年未満 試験研究費等*が収入金額の3%を超えていること。または、新事業活動従事者が2人以上でありかつ常勤の役員・従業員の10%以上であること
2年以上から5年未満 試験研究費等*が収入金額の3%を超えていること。または売上高成長率が25%を超えていること
5年以上から10年未満 試験研究費等*が収入金額の5%を超えていること

*試験研究費等には、試験研究費の他に宣伝費とマーケティング費用など、技術の採用ならびに改良に係る費用や、新しい経営組織の採用や市場の開拓等に係る費用を含みます。

 

・優遇措置A、Bの共通要件

以下の3つの要件は優遇措置AとBの共通要件になります。

 

  1. ①特定の株主グループ*からの投資合計が5/6(約83%)**を超えない会社であること。
  2. ②大規模法人(資本金1億円超等)および当該大規模法人と子会社等の特殊関係にある法人(以下『大規模法人グループ』と呼ぶ)の所有に属さないこと**。
  3. ③未登録・未上場の株式会社で、風俗営業等に該当する事業を行う会社でないこと。

 

*特定の株主グループとは、30%以上の発行済み株式を保有している株主(およびその親族やその関係会社等)をいいます。
*大規模法人グループに属さないこととは、1/2超の発行済み株式を1つの大規模法人グループが保有していないこと、および2/3以上の発行済み株式を複数の大規模法人グループが保有していないことをいいます。

 

 

 

5-2 エンジェル税制の減税対象となる個人の要件

エンジェル税制の減税対象となる投資家は個人であることを基本とします。そのうえで以下の2項目が優遇措置AとBの共通の要件となります。

 

  1. ①金銭の払込*によって、対象企業の株式を取得していること。
  2. ②対象企業が同族会社*である場合には、所有割合*が大きいものから第三位までの株主(およびその親族やその関係会社等)の所有割合を順に加算し、所有割合が初めて50%を超える時点での株主に属していないこと。

 

*他人からの譲渡や現物出資によって取得した株式は対象となりません。あくまで現金出資が対象となります。
*同族会社は、その会社の3人以下の株主(およびその親族やその関係会社等)が、当該企業の株式または議決権50%を超えて保有している会社です。
*所有割合は、持ち株割合または議決権保有割合を指します。

 

 

 

5-3 エンジェル税制利用のシミュレーション

エンジェル税制は、総所得が多い場合には優遇措置Aのメリットが大きく、株式譲渡額が多い場合には優遇措置Bのメリットが大きくなるようになっています。

 

・投資家タイプ別優遇措置比較

項目 投資家Xさん 投資家Yさん
①総所得金額 800万円 400万円
②企業への投資額 400万円 600万円
③売却額 50万円 100万円
④株式譲渡額(他) 100万円 300万円
⑤優遇措置A控除額 319.8万円 159.8万円
⑥優遇措置B控除額 100万円 300万円

 

総所得金額が多い投資家Xさんは優遇措置Aを選択した場合に控除額が約3.2倍多くなり、他の株式取引で得た株式譲渡額(他)が多い投資家Yさんは優遇措置Bを選択した場合に控除額が約1.9倍多くなります。

 

・ 売却時の優遇措置

項目 投資家Xさん 投資家Yさん
⑦取得原価 80.2万円 300万円
⑧繰越可能控除額* 30.2万円 200万円

*株式の売却を行うことで損失が発生したその年と翌年以降の3年間、株式譲渡益から相殺が可能です。
売却時の優遇措置計算方法(投資家Xさんの計算シミュレーション)
⑦取得原価=②企業への投資額(400万円)-⑤優遇措置A控除額(319.8万円)*
⑧繰越可能控除額=⑦取得原価(80.2万円)-③売却額(50万円)
*投資家Yさんの場合には、⑥優遇措置B控除額で計算します。

 

 

6 エンジェル税制の利用手続き

投資を受けた企業と投資家のそれぞれに手続きが必要になるため、お互いにエンジェル税制の利用手続きを理解している必要があります。エンジェル税制の利用手続きの流れを理解し、各手続き詳細ならびに各申請における必要書類等を押さえる必要があります。

 

◆エンジェル税制の利用手続きの流れ

  手続き実施者 手続き内容
投資を受けた企業 税制適格の確認を経済産業局へ申請する。
投資を受けた企業 確認書の交付を経済産業局から受ける。
投資を受けた企業 確認書と必要書類を投資家へ交付する。
投資家 確定申告を実施する。
投資家 控除に係る税金還付を受ける。

 

 

 

6-1 エンジェル税制の手続き詳細

①税制適格の確認を経済産業局へ申請する

エンジェル税制適格の確認書では、『投資を受けた企業がエンジェル税制の対象企業』であることと、『投資自体がエンジェル税制の対象となる投資』であることを確認します。申請時に必須書類と場合により必要になる書類があります。詳細は以下に記載します。

 

必要度 書類名 説明
必須 申請書 中小企業庁HPよりダウンロードができます。
定款 投資を受けた会社の定款を用意してください。
登記事項証明書 投資を受けて変更された登記事項証明書を用意してください。
株主名簿 投資を受けて変更された株主名簿を用意してください。
従業員数を証するもの 従業員台帳等の提出が必要です。
投資契約書(写し) エンジェル税制を受けようとする投資の契約書写しを用意してください。
場合により必要 直前期のBS/PL/CF等の財務諸表 損益対照表/損益計算書/キャッシュフロー表を提出する場合があります。
確定申告書別表二(写し) 同族会社の判定に関する明細書を提出を求められる場合があります。
法人事業概況説明書(写し) 国税局HPよりテンプレートがダウンロードできます。
事業計画書  

 

②投資を受けた企業が確認書の交付を経済産業局から受ける。

経済産業局でエンジェル税制の対象である企業と投資であることが確認されると、確認書が交付されます。確定申告が迫って確認の申請を行う方もおりますが、時間的余裕をもって計画的に申請を行いましょう。

 

③投資を受けた企業が確認書と必要書類を投資家へ交付する。

企業が投資家に交付する書類は以下の3つになります。これらの書類は投資した翌年に確定申告を行う必要があるため、確認完了後速やかに投資家へ交付するようにします。

 

  • ✓経済産業大臣からの確認書
  • ✓投資家が減税対象要件を満たしている確認書(企業作成)
  • ✓株式異動状況明細書

 

④投資家が確定申告を行う。

確定申告様式は中小企業庁HPから確認することができます。また、③投資を受けた企業が交付した書類は確定申告時に提出が必要となります。

 

⑤投資家が控除に係る税金還付を受ける。

これでエンジェル税制による税金還付を受け取ることができます。

 

 

 

6-2 事前確認制度

実際に投資をしてからエンジェル税制の対象かどうかを確認すると、万が一該当しないなどの投資家が期待した控除を受けるメリットを享受することができません。投資家のメリットを守るためにあるのが『事前確認制度』になります。

 

事前確認制度とは、投資を受ける前にエンジェル税制の対象かどうかを企業が確認を受けることができる制度になります。そのため、起業は投資家に対して自社がエンジェル税制適用企業であることを前提に投資話を進めることができます。また事前確認が行われた企業は経済産業省のWebサイトで会社名が確認できます。そのため、エンジェル税制の対象か証明することが可能です。
事前確認制度の申請ならびに申請書類のダウンロードは経済産業省のWebサイトから可能です。

 

対象企業への投資を行うことで、投資家が控除を受けることができるメリットがあるエンジェル税制のポイントを解説しました。エンジェル税制の対象となる創業からまだ間もない中小企業にとって資金調達は事業運営と同じくらい重要な課題になります。自社に投資してくれる投資家を増やすことは株主を増やすことになります。株主が増えれば、経営において投資経験からくる様々な有効な意見や提言を受ける機会が増えます。ぜひエンジェル税制を理解し投資家に正しく説明できるようになり、よりよい投資を呼び込む一つの武器にしましょう。

 

 

7 まとめ

ここまで日本政策金融公庫の融資やエンジェル税制制度についてまとめてきました。もし最初が想定額に満たない融資であったとしても、きちんと返済し、実績を作っていくことで、返済途中での追加融資や、融資完了後の追加融資にもつなげることができます。そのため、「借りた実績をつくる」「返していく実績を積み上げる」の二点は日本政策金融公庫のみならず、他の金融機関と関わっていく上で、非常に重要な要素となります。また創業融資を確実に受けられるように専門家の力を借りることもぜひ検討してみてください。

 

 


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