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「法人決算」と「個人事業主決算」は何が違う?〜年末調整の方法も詳細解説〜

同じビジネスをしていても、それを経営している人が「法人」なのか「個人事業主」なのかにより、しなければならない事が違う場合があります。個人事業主から法人に組織変更した人などは、特にその違いに戸惑うかもしれません。
決算や税金については特に法人と個人では異なる点がたくさんある分野です。もちろん共通点もたくさんありますが、うっかり従来通りやっていたため、損をしてしまうこともあります。
そこで今回は「法人決算」と「個人事業主決算」の違い、また年末調整について紹介します。

 

 

1 「決算」「確定申告」とは

「決算」「確定申告」など、何となく意味は分かるが、その違いというと説明ができない言葉がいくつかあります。まずはひとつひとつ確認していきます。

 

決算 企業会計において、各会計期末に勘定記録を計算整理し、当該期間の経営成績を明らかにするために損益計算を行い、当該期末の財政状態を明らかにするために資産、負債、資本の金額を計算するための会計上の一切の手続きをいう。
(ブリタニカ国際大百科事典より)
確定申告 個人が、その年の1月1日から12月31日までを課税期間として、その期間内の収入・支出、医療費や寄付、扶養家族状況などから所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定すること
法人が、原則として定款に定められた事業年度を課税期間としてその期間内の所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき法人税額を確定すること
消費税の課税事業者である個人又は法人が、課税期間内における消費税額を計算した申告書を税務署へ提出し、その納税額を確定すること
(国税庁ホームページより)
申告 国民が法律上の規定により、官庁に一定の事柄を申し出ること。申し出ること(大辞林より)

 

簡単に言い換えると、「決算」とは、1年間の企業活動の結果をまとめる作業です。
「確定申告」とは、1年間の企業活動などの結果をまとめたのちに、支払うべき税金の金額を確定して税務署に申し出る手続きです。

 

決算というと、法人の決算というイメージが強いですが、個人事業主の場合でも1年間の経営実績をまとめる決算の作業が必要です。

 

確定申告というと、個人事業主や個人が行うものというイメージが強いですが、法人も支払うべき税金の金額を確定して申し出る確定申告の手続きが必要です。

 

経営結果をまとめるという作業(決算)と、その結果に基づき支払うべき税金の金額を確定し申告するという手続き(確定申告)があるということです。

 

 

2 法人の決算と個人事業主の決算

続いて法人の決算と個人事業主の決算の違いをみてみましょう。

 

 

2-1 納税額の算出方法

個人事業主と法人では根拠となる法律が異なるため、納税金額の算出方法が異なります。

 

個人事業主の場合は、所得税法が適用されます。そのため、会計上の「収益(売上)」から「費用(経費)」を差し引いて「利益」を計算します。「利益」はすなわち「所得」になるので、その所得金額に所得税率を掛けることで納税額が算出されます。

 

「収益-費用=利益(=所得)」
「所得×所得税率=納税額」

 

(参考)所得税額 早見表

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1800万円以下 33% 1,536,000円
1800万円超4000万円以下 40% 2,796,000円
4000万円超 45% 4,796,000円

 

一方法人の場合は、法人税法が適用されます。企業会計上の利益を出発点として、法人税法に則った課税対象となる所得金額を導き出す作業を行います。

 

法人税法上の「益金」と「損金」の算入、不算入の申告調整を行って所得金額を計算し、法人税率を掛けることで納税額が算出されます。

 

「益金―損金=所得」
「所得×法人税率=納税額」

 

(参考)法人税率

普通法人 全て 23.4%
中小法人 所得が年800万円相当額以下 15.0%
所得が年800万円相当額超 23.2%

 

もう少し詳しく説明すると、決算書上の利益に、損金にならない費用をプラスし、逆に益金にならないものをマイナスして、「所得」を計算するのが税務申告書です。

 

損金算入 会計上では費用にならないが、税法上では損金になるもの
→決算書の利益金額から減算します
益金不算入 会計上では収益になるが、税法上では税金の対象(益金)にならないもの
→決算書の利益金額から減算します
損金不算入 会計上は費用になるが、税法上では損金にならないもの
→決算書の利益金額に加算します
益金算入 会計上では収益にならないが、税法上では収益(益金)となるもの
→決算書の利益金額に加算します

 

主な調整項目(損金不算入項目が中心)

(交際費)

接待交際費については、その全額を損金として計上することはできません。認められた金額を越えて費用として計上している場合、その超過額を損金不算入として利益に加算します。

 

(引当金繰入額)

貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、返品調整引当金などの引当金の計上に関し、会計上では「当期以前の事象に起因するものであり、将来の費用もしくは損失が発生する可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができるケース」と定められています。しかし税務上で認められているのは貸倒引当金、返品調整引当金のみでそれ以外の引当金の繰入額については、全額が損金不算入となります。

 

(租税公課)

租税公課として費用計上しているものの中には、損金として算入できるものと算入できないものがあります。

損金算入できるもの

・固定資産税・事業税・不動産取得税・自動車税・都市計画税・登録免許税

損金算入できないもの

・法人税・延滞税・都道府県民税・市町村民税・罰金・過料

 

 

2-2 決算月と申告期日

個人事業主と法人では決算月や申告期日が異なります。法人の場合、申告までの準備期間が短くなるので注意が必要です。

 

個人事業主の場合は、白色申告・青色申告ともに事業年度は1月1日~12月31日で、決算日は12月31日と法律により定められています。そして確定申告の期限は所得税が翌年の3月15日、消費税が3月31日です。

 

法人の場合は、決算期は定款で定めた任意の1年間です。決算日は自由に設定することができますが経理処理の都合上、ほとんどの法人では月末を決算日にしています。注意しなければならないのは確定申告の期限は事業年度終了後2カ月以内ということす。2カ月以内に法人税を申告、納税しなければなりません。同じ12月31日が決算期末だとすると2月末日までに法人税と消費税の金額を確定して納税しなければならず、個人事業主の確定申告に比べ2週間~1カ月早くなります。

 

 

2-3 作成する書類

個人事業主と法人では申告に必要な書類が異なります。法人の場合、より多くの書類を作成する必要があります。内容も専門的な知識が必要な個所があり、個人事業主のときは自分で作成していたとしても、法人になったときには税理士に任せる方が無難です。

 

個人事業主の場合、作成する書類は3種類のみです。

 

確定申告書B

事業所得がある場合に作成します。社会保険料控除・生命保険料控除などの所得控除を記載し、納税額を算出します。

 

青色決算書(収支内訳書)

収益(売上)と費用(経費)を記載し、所得金額を計算します。

 

消費税申告書

「課税取引金額計算表」「課税売上高計算表」「課税仕入高計算表」を用いて消費税額を計算します。

 

法人の場合、作成する書類は8種類あります。

 

法人税申告書

決算利益から法人税法上で経費にならないものを足し戻していくことから始まります。個人事業主の申告書とは格段に複雑さが違います。

 

法人決算書

青色決算書等と同様で、収益(売上)と費用(経費)を記載し、所得金額を計算します。

 

勘定科目内訳書

決算書の勘定科目についての内訳書を作成します。
通常以下の内訳書を作成します
・預貯金等・受取手形・売掛金(未収入金)・仮払金(前渡金)/貸付金及び受取利息・棚卸資産(商品または製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品)・有価証券・固定資産(土地、土地の上に存在する権利及び建物に限る)・支払手形・買掛金(未払金・未払費用)・仮受金(前受金・預り金)/源泉所得税預り金・借入金及び支払利子・土地の売上高等・売上高等の事業所別・役員報酬手当等及び人件費・地代家賃等/工業所有権等の使用料・雑益、雑損失等)

 

事業概要説明書

売上・利益・役員報酬などの決算書の概要をまとめた書類を作成します。

 

適用額明細書(必要な場合のみ)

法人税に関係する特別措置の適用を受ける場合にその租税特別措置法の条項・適用額を記載します。

 

消費税申告書

個人事業主と同様で、「課税取引金額計算表」「課税売上高計算表」「課税仕入高計算表」を用いて消費税額を計算します。

 

法人地方税申告書(都道府県)

法人事業税・地方法人特別税・法人道府県民税の申告書を同時に作成していきます。

 

法人市町村民税申告書(市町村)

法人市町村民税の申告書を作成していきます。

 

 

2-4 控除の処理の違い

個人事業主と法人の決算では控除の処理に違いがあります。

 

個人事業主の場合、青色決算書で青色申告特別控除(最大65万円)が認められています。その他にも通常の所得控除や税額控除が使えます。また「小規模企業共済」という制度も活用でき、最大で年間84万円まで所得控除を受けることができます。

 

法人の場合、こうした控除はありません。中小企業等投資促進税制や所得拡大促進税制など、一定の設備投資を行なった場合や、従業員への給与所得額を増やすなどした場合に一定金額を控除する制度が活用できる場合があります。

 

 

2-5 株主総会の開催

個人事業主の場合は関係ありませんが、法人の場合は、決算を確定させて申告を行う前に株主総会で決算の承認を受ける必要があります。そのため定時株主総会を開催しなければなりません。

 

法人の場合、事業年度末から2カ月以内に決算処理を行い、次年度に向けて定時株主総会を開催します。定時株主総会では今期の決算報告とともに次期の役員給与の決定・承認などを行います。

 

役員給与は原則としてこの時期以外には変更できません。変更する場合には株主総会や取締役会の議事録を作成し、保存しておく必要があります。

 

大まかな流れは以下の通りです

 

  • 各事業年度の決算日における計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資産等変動計算書)、事業報告書と付属明細書を作成します。
  • 監査役に提出して、監査役による監査を受けます。監査期間は監査役が全ての書類を受け取った日から、原則4週間以内です。監査役は監査報告書を取締役に提出します。
  • 取締役会で計算書類や付属明細書について決算承認の決議を受けます。
  • 株主総会に向けて招集決議を行い、株主招集通知を発送します。その際に作成された計算書類と事業報告書、監査報告書を添付します。
    (定時株主総会開催日の2週間前(定款に株式の譲渡制限の定めがある非公開会社では原則として1週間前)までに各株主に書面等で発送します。
  • 決算日より2か月程度の間に定時株主総会を開催します。

 

 

3 年末調整とは

経営者の皆さんの中には、年末調整の時期が近づいてくると、「またこの時期が来たか・・」と感じる方も多いかもしれません。の時には「年末調整=お金が戻ってくる」ということで、「年末のお小遣い!」という感覚もあったのではないでしょうか。

 

ところが経営者にとっては、年末調整は「負担の多い事務手続き」という感覚があります。売上が増えるわけではないですし(経費が増えるわけもありませんが)、従業員にとっては自身の収入や税金の支払いに直結するものなので、細かい点まで気にする人も多く、どうしても手間の部分だけが気になります。

 

年末調整とは、給与所得者のその年に源泉徴収した金額を正しく計算し、支払うべき所得税額を確定させる制度です。

 

会社員が支払うべき所得税および復興特別所得税は、毎月支払われる給与や賞与から天引きされます(源泉徴収)。その年に支払われるであろう給与金額や、家族構成などをもとに概算で計算し、給与から天引きされています。

 

ただし天引きされる金額は、個人ごとの控除等の諸条件を加味していないため、本来納めるべき金額とは一致しません。また毎月支払われる給与や賞与は、残業代や昇給などもあり、毎回同じ金額が支払われる訳ではありません。家族構成についても、年の途中に扶養家族が増えることや、働き始めて扶養家族から外れる場合などがあります。

 

そのため年の初めの時点で想定していた所得金額と、実際に1年間支払われた金額には差異があり、納付すべき所得税の金額も過不足が発生する場合があります。

 

その年の最終の給与が支払われた後に年末調整を行い、1月1日から12月31日までに支払われた給与・賞与金額を元にして、所得税額を導き出し、各種控除などを勘案して、すでに源泉徴収している所得税額との最終的な過不足を計算するのです。

 

 

4 年末調整と確定申告はどこが違う?

確定申告は、「納税者自身」が1年間の所得を計算し、「翌年」に税務署へ税額を自己申告し、税金を納めます。「納税者」自身が「後払い」で税金を計算して納付する制度です。

 

一方、年末調整は「勤務先」が個人の代わりに「年度中」に税務署へ申告・納税を行います。「勤務先」が「先払い」で税金を計算して納付する制度です。見方を変えると、年末調整は勤務先の会社が従業員の確定申告を代行していることになります。

 

 

5 年末調整の対象となる人の条件は?

会社は給与を支払っている従業員から、その給与に関する所得税を源泉徴収する義務があります(源泉徴収義務者)。正社員だけでなく、パート、アルバイト、など給与を支払っている全ての人が対象になります。

 

給与を支払う人に税金を徴収する義務が課せられているので、会社員の納税率は、自身で納税を行う個人事業主に比べると高いといえます。

 

例外的に、年末調整の対象外となるのは以下の場合です。

 

  • 1年間の給与収入が2000万円以上の場合
  • 災害被害などで所得税の徴収猶予や還付を受けている場合
  • 副業をしていて、2カ所以上の収入源がある場合
  • 年の途中で退職して再就職しなかった場合
  • 2か月以上連続して雇用がない日雇いなどの場合

 

また以下のような場合は年の途中で会社が年末調整を行います。

 

  • 海外勤務がなどで非居住者となる場合
  • 死亡による退職の場合
  • 病気などで退職し、再就職の見込みが立たない場合
  • パートなどで年の途中に退職し、その年の給与総額が103万円以下の場合

 

(参考)
確定申告が必要な場合

  • 給与収入が2000万円超の場合
  • 給与所得者で他の所得合計が20万円超(収入-経費)の場合
  • 2つ以上の事業所から給与支払いを受けている場合

 

確定申告をすると還付金が受け取れる場合

  • 高額医療費を支払っていて医療費控除を受ける場合
  • ふるさと納税をして寄付金控除を受ける場合
  • 災害被害により前年の給与に源泉徴収税額の徴収猶予還付を受けている場合
  • 前年の途中で会社を退職し、年末調整を受けていない場合
  • マイホームを購入して、1年目で住宅ローン控除を初めて受ける場合
    (翌年以降は年末調整で対応)
  • 株などの売買で損失を計上して繰越控除や損益通算をしたい場合

 

 

6 年末調整に必要な書類を確認する

年末調整に必要な書類は以下の通りです。取り寄せに時間がかかるものもありますので、証明書等の準備は早めに行いましょう。

 

書類名 内容 証明書等
給与所得者の扶養控除等申告書 本人および家族に関する控除を申告するもの ・障害者手帳
・学生証
・源泉徴収票
給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書 保険関係の控除と配偶者特別控除 ・生命保険会社から送付された証明書
・厚生労働省が発行した証明書
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除を受けるため ・金融機関からの住宅ローン残高証明書

 

 

7 年末調整の流れ

年末調整の手続きは、およそ10月下旬から1月にかけて行います。

 

具体的な流れをみていきます。なお時期については、一応の目安の時期です。それぞれの会社の規模や体制により進め方は異なる場合があります。

 

10月下旬~:源泉徴収票の回収
11月~  :申告書類・証明書の回収
12月~  :給与の確定・書類の点検・年末調整の計算
1月~  :納税・新帳簿の作成

 

10月下旬~:源泉徴収票の回収
転職者などで、今年度に他の会社で給与収入があった場合は、前職の源泉徴収票の提出を受けます。前職の会社に依頼してもらうことになるので発行に時間がかかる場合があります。必要な場合は早めに依頼しましょう。

 

11月~  :申告書類・証明書の回収
年末調整では、次の書類と証明資料について、各従業員から提出を受けます。

 

①「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

原則としてその年の最初の給与を受け取る前日までに提出することになっています。
1月1日以降に、扶養家族が増えたときや、就職により扶養家族から外れた場合に異動内容を申告する書類です。

 

所得税の控除で関係のある項目は
「配偶者控除」「扶養控除」「障がい者控除」「寡婦控除」「勤労学生控除」など、主に家族に関する控除についてです。住民税の控除項目の記入もあります。

 

②「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」

生命保険など保険料に関する控除と、配偶者特別控除の申告を行うための書類です。証明書類とともに提出を受けます。

 

所得税の控除で関係のある項目は
「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」「配偶者特別控除」です。

 

③「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」

住宅ローン控除を受ける人から、申告書の提出を受けます。残高証明書とともに提出を受けます。連帯債務や親子リレー、共有持ち分のある場合はないように注意しましょう。

 

所得税の控除で関係のある項目は「住宅借入金特別控除」です。

 

12月~:給与の確定・書類の点検・年末調整の計算
12月分の給与と賞与を支払うと、各従業員の今年度の収入金額が確定します。

 

収入金額が確定したのちに、提出を受けた年末調整の申告書類をもとに、会社側で所得税の計算に入ります。

 

1月~:源泉徴収税額の納付・新源泉徴収簿の作成
従業員に前年度の「給与所得の源泉徴収票」を交付します。
税務署には全員分の「源泉徴収票」と「支払調書」「法定調書合計票」を作成し提出します。
市区町村宛に「給与支払報告書」と「総括表」を作成し提出します。

 

あわせてその年の最初の給与等の支払を行う前日までに、新年度分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について、従業員から提出を受けます。提出を受けて、新年度分の「給与所得に対する源泉徴収簿」を作成します。

 

 

6 年末調整を計算してみよう

一年間に支払った給与・源泉徴収税額・社会保険料の総額を求める手順は次のようになります。

 

a)本年度分の、給料・手当および賞与等の支払金額を合計し、本年分の給与の総額を計算します。

 

b)本年分の給料・手当および賞与等の源泉徴収した税額を合計し、本年分の源泉徴収税額の合計を計算します。

 

c)本年分の給料・手当および賞与等から社会保険料として控除した金額を合計し、本年分の社会保険料控除額の合計を計算します。

 

②給与所得控除額を計算する

本年度の給与の総額から、金額に対応した給与所得控除額を求めます。

 

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%
65万円に満たない場合には65万円
180万円超360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円超 220万円(上限)

 

③所得控除額合計額を計算する

提出された「給与所得者の扶養控除等申告書」「給与所得者の保険料控除申告兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」の内容をもとに控除する金額を計算します。

 

④課税所得金額を計算する

①から②③を差し引いた金額が所得税の課税所得金額です。この金額に所得税率をかけて所得税額を計算します

 

⑤所得税額を算出する

④の課税所得に、金額に対応する所得税率を掛けて所得税額を計算します。

 

(所得税額 早見表)

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1800万円以下 33% 1,536,000円
1800万円超4000万円以下 40% 2,796,000円
4000万円超 45% 4,796,000円

 

⑥年調年税額を計算する

所得税額が確定したら、「住宅借入金特別控除額」を差し引いて「年調所得税額」を計算します。そして年調所得税額に、102.1%を掛けて「年調年税額」を計算します。

 

⑦過不足を精算する

年調年税額と本年の源泉徴収税額を比較し、過不足がある場合は「還付」または「徴収」を行います。通常、その年の最後の給与支払い時に過不足の精算を行います。

 

 

8 各控除項目の説明

給与所得控除 給与所得者であれば受けられる 65万円以上
給与額に応じて計算
(別記早見表参照)
配偶者控除 配偶者の所得額が年38万円未満の場合に受けられる
青色申告事業専従者・白色申告事業専従者は除く
38万円もしくは48万円
配偶者特別控除 配偶者の所得が38万円超76万円未満の場合に受けられる
納税者の所得が1000万円超あると受けられない。
3万円~38万円
扶養控除 16歳以上の扶養対象親族がいる場合に受けられる。
9歳以上23歳未満は「特定扶養親族」、70歳以上は「老人扶養親族」に該当
38万円~63万円
障がい者控除 本人・配偶者・扶養親族が障がい者に該当すれば受けられる 27万円~75万円
寡婦控除 本人が寡婦であれば受けられる 27万円~35万円
勤労学生控除 本人が勤労学生で合計所得金額が65万円以下であれば受けられる 27万円
生命保険料控除 本人が生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合に受けられる ~12万円
地震保険料控除 地震保険料を支払っている場合に受けられる ~5万円
社会保険料控除 健康保険や年金などの社会保険料を支払った場合に受けられる 実際に支払った金額の全額
小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済の掛金、確定拠出年金の掛金、心身障がい者扶養共済の掛金を支払っている場合に受けられる 実際に支払った金額の全額
住宅借入金等特別控除 住宅を新築・建築・購入し、住宅ローンを利用している場合に受けられる(2年目以降) 住宅ローン等の年末残高の合計額をもとに居住を開始した年の計算方法により計算する

 

 

9 まとめ

法人決算と個人事業主の決算・確定申告の違いや年末調整ついて説明してきました。あらためて両者の違いを整理してみましょう。
「決算」  :1年間の企業活動の結果をまとめる作業です。法人でも個人事業主でも行います。
「確定申告」:1年間の企業活動の結果に基づき、支払うべき税金の金額を確定して税務署に申し出る手続きです。法人でも個人事業主でも行います。

 

法人の決算と個人事業主の決算の違い

  • 納税額の算出方法
  • 決算月と申告期日
  • 作成する書類
  • 控除
  • 株主総会

 

決算作業については、個人事業主に比べ、法人決算は作成する書類が多く、税務に関する専門知識が必要になります。不可能ということではありませんが、貴重な時間を費やして決算作業に取り組むよりは、決算作業は税理士や会計事務所に任せながら、本業にエネルギーを集中させる方がよいかもしれません。

 

確定申告で誤った金額を申告納税した場合や、申告期限までに間に合わなかった場合は、申告義務が適正に履行されなかったとして、ペナルティーが科せられることがあります。本来支払うべき金額を支払い、さらに過少申告加算税・無申告加算税・重加算税などの加算税を支払わなければなりません。

 

これから法人組織への変更を検討中の人や、すでに法人として経営をされている人は、専門家の力も上手に活用しながら、上手に決算と確定申告すると良いでしょう。

 

年末調整は、その年に源泉徴収した金額を正しく計算し、支払うべき所得税額を確定させる制度です。

 

・手続きの流れ

10月下旬~:源泉徴収票の回収
11月~  :申告書類・証明書の回収
12月~  :給与の確定・書類の点検・年末調整の計算
1月~   :納税・新帳簿の作成

 

・作成する書類

①「給与所得者の扶養控除等申告書」
②「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」
③「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」(該当者)

 

年末調整は経営者にとっては手間のかかる手続きですが、従業員ひとりひとりにとっては、収入や税金の支払に直結する手続きです。限られた期間の中で大量の書類のチェックと処理を正確に行わなければなりません。

 

手続きの流れを把握し、正確な知識を身に着け、効率よく手続きを進めていきましょう。

 

 


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