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会社設立の資本金で問題はない?出資金の扱い方や手続などを徹底解説

会社を設立する方の中には資本金(出資金)のことで悩みを持つ方が少なくありません。事業を始め成長させていくには「お金」の存在は不可欠であり、特に資本金は重要です。そこで今回は「資本金(出資)に関する扱い方や手続」などを解説します。

 

会社設立から事業の開始以降で資本金に関してどのような問題が生じどのような手続が必要になるのかなどを中心に、出資金の使える時期、現物出資の可能性、創業株主間契約の内容、第3者からの出資、出資と融資の違い、などを説明していきます。

 

資本金・出資の手続の内容、現物出資の方法や出資を多く集める方法などを知りたい方はぜひ参考にしてみてください。

 

 

1 資本金(出資)に関する問題

資本金(出資)に関する問題

 

まず、会社設立時に最も起こりやすい資本金(出資)に関する問題を紹介しましょう。

 

 

1-1 資本金を払込むタイミングによる問題

会社を設立する際、資本金を払い込みますが、法的手続に適さない払込みをすると登記で問題が生じる恐れがあります。

 

株式会社の設立登記の手続の中には資本金の振込みも含まれますが、そのタイミングを把握して実行しないと登記に支障をきたしかねません。例えば、資本金のための資金を用意できていても、誤った手続をすると法務局で申請が受理されないこともあるのです。

 

法務局で申請が受理されなければ、登記ができず予定していた日に会社設立が不可能となり実務に影響することになります。事業を行うにあたり許認可が必要となる業種もあるため、法人登記の遅れで許認可が遅れ結果的に事業の開始が大幅に遅れることもあるわけです。

 

資本金の払込み期日について正確に把握しておかないと法務局で登記書類が受理されない、申請が却下され得るため注意しなければなりません。

 

 

1-2 発起人に関するラブル

会社設立には発起人が必要ですが、安易に発起人を他者に依頼すると出資金の払込みや経営への影響などで問題になることも多いです。

 

発起人とは、会社設立時に資本金の出資や会社設立手続の作業などを担う者のことで1人以上必要です。会社を作る際に家族・親戚、知人・友人や元勤務先関係者などの親しい人に発起人になってもらうケースがよくありますが、安易に引き受けてもらうと後にトラブルに発展することも珍しくありません。

 

例えば、発起人は必ず1株以上引き受けることが義務付けられていますが、発起人を引き受けた友人が後になって支払いを拒否するということはあり得るのです。

 

逆に発起人として大量の株式を引くけてくれた(出資してくれた)親戚が会社設立後に経営に口を出すようになり、経営が不安定化するというようなケースも多く見られます。

 

信頼できない人などに発起人を安易に依頼すると、会社の経営を左右するようなトラブルを招くこともあるのです。

 

 

1-3 資本金の使用時期に関する失敗

経営者の中には出資金の使用可能な時期を勘違いして必要な設備や資材等の購入のタイミングを誤ってしまう方が少なからず見られます。

 

株式会社の設立に伴い発起人は発起人名義の銀行口座などに出資金を払込む必要がありますが、経営者の中には会社設立後でないとその出資金を使用できないと思っている方が少なくありません。

 

しかし、振込んだ出資金は法人登記が完了していなくても使用が可能ですが、知らずに登記が済んでから出資金を使う経営者が多いです。事業を開始するには事務所や資材などを先行して手配しないといけないケースもあります。

 

そんな場合に登記の完了を待って手配しては事業を遅らすことになり、需要を掴みそこなったり、競争優位の機会を失ったりすることになりかねません。

 

 

1-4 現物出資の扱い方による損

個人事業主から法人化して株式会社を設立する方は多いですが、その中には現物出資の扱いで損をする方も見られます。

 

起業家や個人事業主が株式会社を設立する際には、個人が所有する資産を会社の事業に使用する目的でその資産を資本とする現物出資が可能です。しかし、その現物出資やその方法についてよく知らない方は、現物出資を行わないことで損してしまいます。

 

例えば、個人で私的に使用してきた自家用車を会社の営業車として使いたい場合、それを現物出資として処理することができます。つまり、会社設立に伴って新たに営業車を購入しなくても自分の車を現物出資として利用できるわけです。

 

ただし、現物出資にはデメリットもあり、現物出資した財産の時価が資産価格を上回れば個人に譲渡所得が発生し所得税が課されることになりかねません。また、現物出資された会社側はその分だけ資本金が多くなるため、そのことで消費税や法人住民税の扱いが変わり不利な状況になる可能性もあります。

 

現物出資は現金の提供に関係なく資本金を増大させ、融資や許認可で有利になるといったメリットもありますが、適切に利用しないと損することもあるため注意が必要です。

 

 

1-5 資本金の誤った認識による失敗

資本金について誤った認識を持ち、そのことビジネスで不利益を被り損することもあります。

 

現在、株式会社は1円から資本金とすることが可能であることから資本金は少なくし、必要資金は融資に依存して事業をスタートさせるケースは珍しくありません。こうした経営は 自己負担を抑えられるため事業を開始しやすいというメリットがあります。

 

しかし、金融機関からの以後の融資が得られず必要資金が不足して結局、自己資金を使う、家族や親戚などから急遽借りる、という苦しい資金調達に迫られるケースが多く見られます。

 

また、資本金が少なく借入金が多い場合、業績が悪化すると直ぐに債務超過(負債の総額が資産の総額を超えている財務状況)の状態に陥りやすいです。 一般的に債務超過は「倒産しそうな会社」に見られ金融機関からの資金提供が一層困難になる状況です。

 

債務超過になれば今後の融資が困難になるほか、現在借りている資金の返済を求められることになりかねず、経営がさらに厳しい状況へ追い込まれます。

 

また、過小な資本金の場合、仕入先や販売先からの信用が低くなり、取引が困難になりかねません。起業時には影響が少なくても事業が拡大し法人化するような時期では新たな取引先の拡大も必要となりますが、過小な資本金が信用度を低下させ新たな取引において不利に働くこともあるのです。

 

 

2 資本金(出資)の手続

資本金(出資)の手続

 

ここでは資本金の設定や出資に関する手続について説明しましょう。

 

 

2-1 会社設立と資本金に関する手続

まず、会社設立の手続を簡単に示し、その中で資本金に関する手続がどのように行われるかを解説します。

 

①株式会社設立の流れ

株式会社を設立する場合、法務局で法人登記をしなければなりません。その登記を完了するまでに必要な手続(作業等)の項目としては以下のような内容が挙げられます。

 

  1. 1)会社の基本事項の決定
  2. 2)定款の作成
  3. 3)定款認証
  4. 4)資本金の払込み
  5. 5)登記書類作成
  6. 6)法務局への登記申請
  7. 7)登記後の各種手続

 

以上の流れからもわかる通り資本金に関する手続があり、規定のルールに従って進めて行かねばなりません。上記の流れの中で主に資本金に関係するポイントを確認していきましょう。

 

株式会社設立の流れ

 

1)会社の基本事項の決定

 

この作業では基本事項として、会社名(商号)、本店所在地、設立日などのほか、資本金の金額を決めます。資本金の金額の設定にはいくつもの考え方があり、取引上の信用、必要資金の金額(初期費用+数カ月の運転資金等)、融資・許認可の関係、消費税の関係、などの考慮が欠かせません

 

2)定款の作成

 

定款は会社の基本原則であり登記手続に必須の書類ですが、その中で必ず記載しなければならない事項の「絶対的記載事項」があります。具体的には以下の6項目で、資本金はその中の1つです。

 

  • ・事業目的
  • ・商号
  • ・本店所在地
  • ・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • ・発起人の氏名または名称および住所
  • ・発行可能株式総数

 

つまり、資本金の金額を設定しておかないと定款が完成できません。なお、資本金は金銭だけでなく「物」も対象となるため、現物出資する場合はそれも定款に記載します。

 

3)定款認証

 

定款作成後そのまま法務局へ提出するのではなく、「公証役場」で認証してもらう手続が必要です。会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場へ行って定款の記載が正しいかどうかを確認してもらいます。

 

4)資本金の払込み

 

資本金の払込みは、一般的には定款認証後に実施されるケースが多いです。なお、詳しい内容は後述します。

 

5)登記書類作成

 

定款認証と資本金の払込みが完了すれば、いよいよ法務局での登記手続になりますが、その登記申請に必要な書類等を準備します。主な書類は以下の通りです。

 

  • ・登記申請書
  • ・定款
  • ・資本金の払込証明証および通帳のコピー
  • ・代表取締役および取締役の就任承諾書や印鑑証明書等
  • ・監査役の就任承諾書および本人確認書類
  • ・印鑑届書
  • ・記載事項を別途記載した用紙または記録したCD-Rなど

 

なお、登記書類は製本化することになっており、印鑑証明書を除いた書類は重ねて左側をホチキスで留めるといった処置が必要になります。また、資本金関係では「資本金の払込証明証および通帳のコピー」を用意しなくてはなりません。

 

6)法務局への登記申請

 

登記書類が準備できれば法務局へ提出します。提出方法は、直接法務局へ行くか、郵送するかの2つです。なお、会社の設立日は「法務局に申請した日」ですが、郵送した場合は「書類が法務局に到着し、かつ申請が受理された日」が会社の設立日になります。

 

7)登記後の各種手続

 

登記手続が完了した後、社会保険の届出や許認可の申請など行政関係を含む様々な手続があるため注意しましょう。資本金関係だけで見た場合は法人の金融口座の開設と資本金の移動が主な手続になります。

 

出資金を事業の運営に自由に使用するためには、発起人の口座に振込まれていいた出資金を法人口座へ移動させることが不可欠です。

 

 

2-2 資本金払込みに関する法律とその手続

ここでは上記で確認した資本金(出資金)に関する手続の内容を詳しく説明します。

 

①発起人の役割と責任

まず、出資に関わりの深い発起人について簡単に解説しましょう。発起人の役割は主に「定款の作成」「出資」「設立時取締役の選任」になります。会社設立での法的手続においては最後の「設立時取締役の選任」が完了すれば、発起人の役割は終了となり、以降の手続はその取締役が行うことになるのです。

 

ただし、規模の小さい会社などでは発起人が取締役となって経営に加わるケースが多く、その場合発起人である取締役等がそれ以降の設立関係の手続を進めることになります。なお、取締役にならない発起人は会社設立後においては株主となり、取締役に会社の経営を任せる立場になるわけです。

 

発起人は自由に決めることが可能で、業務経験や資格なども関係なく、自然人である以外に「法人」(会社の目的に合致する範囲内)も発起人になれます。自然人としては、公証役場へ提出する発起人の印鑑証明書を発行できない15歳未満の者は発起人になれません。

 

なお、発起人の責任には以下のような点が挙げられます。

 

  • ・現物出資の財産が定款に記載された価額に著しく不足する場合などでは、発起人がその不足分を支払う義務がある
  • ・発起人は、株式会社の設立に関する任務を怠った場合、その生じた損害を賠償する責任がある
  • ・株式会社が成立しなかった場合、発起人は株式会社の設立で実施した行為の責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する

 

ただし、上記の責任は会社法第55条で総株主の同意があれば免除されることとなっています。

 

②会社の設立方法

発起人は会社設立の手続を行うわけですが、その設立方法は以下の2つです。

 

1)発起設立

 

会社設立に関して発行する株式の全部を発起人が引き受けて設立する方法

 

2)募集設立

 

会社設立に関して発行する株式の一部を発起人が引受け、残りは株主を募集して設立する方法

 

規模の小さい会社など多くのケースでは発起設立が採用されています。もちろん事業規模が大きく必要資金が多くなるような場合では募集設立も少なくありません。ただし、もともと知名度・実績のある個人事業主や画期的な新規事業を考案した起業家などでないと募集設立を実現するのは容易でないでしょう。

 

③発起人による出資

株式会社の設立に関する法律は会社法であり、その出資と発起人に関連した内容は法第34条などで規定されています。

 

1)出資の履行

 

第34条は発起人が出資を実行するにあたっての規定で、その内容は以下の通りです。

 

・第1項:
⇒発起人は、設立時の発行株式を引受け後遅滞なく引き受けた株式についてその出資に係る金銭の全額を払い込む、または出資に係る金銭以外の財産の全部を給付する必要がある

 

なお、設立時発行株式の数は定款の定めのほか、発起人全員の同意でもって割当てることが可能です。そのため定款作成日の前や発起人全員が同意した日の前では、発起人への設立時株式数の割当てが決まっていないことになるため、適法の出資はできなくなります。

 

従って、出資の履行日は定款作成日以後または発起人全員が同意した日以後ですが、一般的には定款認証後に出資されるケースが多いです。しかし、定款認証前に払込みされた場合でも、上記の通り払込みが定款作成日または発起人全員の合意日以降なら設立登記の申請は受理されます。

 

・第2項:
⇒第1項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(信託会社等も含む)にしなければならない

 

2)発起人の引き受け株数

 

株式会社を発起設立する際、発行する株式の全部を発起人が引き受けるわけですが、(各)発起人は最低でも設立時発行株式を1株以上(募集設立でも同様)引き受けなければならないことになっています(法25条の2)。

 

従って、発起人となれば必ず1株以上を保有する出資、すなわち金銭や財産の提供が必要となるわけです。

 

④資本金払込みの具体的な手続

まず、発起人は定款で定めた会社設立時の資本金を発起人名義の金融口座に入金しなければなりません。登記前に会社の法人口座は作れないため、発起人の中から特定の者(代表者)を選びその本人および他の発起人は代表者の個人口座へ振込むことになります。

 

各発起人から予定の出資金が入金された後は、以下の登記手続に必要な登記書類を準備していきます。

 

1)発起人の通帳をコピーする

 

各発起人から代表者の口座へ出資金が入金された後、その入金情報が分かる通帳をコピーしますが、その入金情報が確認できなければなりません。具体的には、代表者の口座にその本人および他の発起人が出資金を振込んだ情報(入金者の氏名や金額の記録)が確認できることです。

 

なお、代表者の個人口座は新たに口座開設するのが望ましいでしょう。また、通帳の代わりに取引明細書なども可能です。

 

●通帳のコピーが必要な箇所

 

コピーが必要な箇所は、「通帳の表紙(表・裏)」「支店名、口座番号などが記載されたページ」「発起人の振込みが記載されたページ」になります。

 

2)払込証明書を作成する

 

資本金の振込みを証明する「払込証明書」の作成が必要です。各発起人が資本金を支払ったことを払込証明書で代表取締役が証明します。払込証明書は2通作成し、1通は登記申請用、残り1通は会社保管用です。

 

払込証明書の内容は以下のようになります。

 

  • ・払込まれた金額の総額
  • ・払込まれた株数(1株あたりの払込みの金額)
  • ・年月日
  • ・会社本店の所在地
  • ・会社名(商号)
  • ・代表取締役氏名

 

払込証明書

 

当会社の設立時発行株式について、次のとおり発行価額全額の払込みがあったことを証明する。

 

払込みがあった金額の総額    ○○○○○円
設立時発行株式数            ○○株
(1株あたりの払込みの金額 ○万円)

 

令和○年○月○日
本店 東京都○○区○○○丁目○番○号○○
商号 ○○○○株式会社
代表取締役   ○○○○ 印

 

日付は、「全発起人の払込みが完了した日以降」「役員(設立時取締役や監査役など)の選任した日以降」にします。

 

3)通帳のコピーと払込証明書を1冊にまとめる

 

次は通帳のコピーと払込証明書を合わせて1冊にまとめる(合綴する)作業です。まとめる順番は、以下の通りです(上からの順)。

 

  • ・払込証明書
  • ・通帳の表紙
  • ・銀行名と口座名義人等が記載されている通帳の表紙裏(または表紙を1枚めくった銀行名と口座名義人等が記載されているページ)
  • ・通帳の入金内容の記載のある箇所…最下段

 

書類を重ねたら左側上下2カ所をホチキスで止め、各ページとページの境目(継ぎ目)に会社代表者印で割り印を押印します(現在、代表者印の押印や証明書類の割印はなくても構いません *(通達)〔令和3年1月29日付法務省民商第10号〕により)。

 

以上の合綴ができれば資本金払込みの書類は完成となり、他の登記書類とともに法務局へ提出します。

 

⑤登記後の出資金の取扱い

登記手続が完了(会社設立)したら法人の金融口座の開設と資本金の移動が必要です。なお、法人の銀行口座の開設は簡単とは言えないため(不正送金、マネーロンダリング防止等のため審査が厳しい)、早めに手続を済ませ事業の開始に影響しないようにしましょう。

 

銀行の口座開設には、登記簿謄本の提出が必要になりますが、登記の完了後謄本が入手できるまでに7日~10日程度かかるため、その日数を計算に入れて口座開設を進めるべきです。

 

また、法人口座の開設の申請後、実際に開設され使用できるまでに1~2週間程度かかることも珍しくありません。そのため会社の設立登記から法人の口座開設までに約1カ月の期間が見込まれます。取引上など法人口座の開設が必要な時期が決まっていれば、その日程に合わせて手続を進めることが重要です。

 

なお、金融機関から口座開設を断られることもありますが、その主な理由として以下の点が挙げられます。

 

  • ・資本金の金額が低い(各金融機関で異なる)
  • ・事務所の実態が疑わしい(レンタルオフィス等などは実質的な事務所と認識されない場合がある)
  • ・事業目的や事業内容に問題がある(事業内容がよくわからない、公序良俗に反する事業と見られる場合など)

 

法人口座の開設後は発起人の個人口座にあった出資金を法人口座へ移動させる作業が必要です。引出しや振込みによって移動させるわけですが、ATM・窓口の手数料、振込手数料や移動させるための各々の時間などを考慮して行いましょう。なお、これらの手数料は法人負担(経費)にできます。

 

 

2-3 現物出資の手続

ここでは現物出資の手続について詳しく説明しましょう。

 

会社を設立する際金銭だけでなく、個人が所有していた自動車、不動産、パソコンのほか債券や有価証券、権利(特許権・営業権等)なども会社の資本とすることが可能です。このお金以外の物による出資のこと「現物出資」と言います。

 

そして、法的には現物出資だけで会社を設立することも不可能ではありません。2018年には仮想通貨で会社設立するという事例も出ています。また、会社設立時だけでなく、その後増資する際にも現物出資は可能です。

 

①現物出資の要件

現物出資が可能となる条件を確認していきましょう。

 

1)現物出資が可能な者

 

会社設立時に現物出資が可能なのは発起人だけです。

 

2)定款への記載

 

現物出資をする場合、その出資者の名前、財産、価額、出資者に対して割り当てる設立時発行株式の数、を定款に記載しなければなりません。
*定款の相対的記載事項として記載します。

 

●定款への記載例

 

(現物出資)
第○○条 当会社の設立に際して現物出資をする者の氏名、出資の目的である財産、その価額およびこれに対して割り当てる株式の数は、次のとおりである。

 

(1)出資者
発起人 ○○○○

 

(2)出資財産およびその価額
普通乗用車
○○社製 ○○ 平成○○年式(型式)
車台番号 ○○○○
価額 金○○万円

 

  パーソナルコンピューター1台
○社製
型番 ○○○○
製造番号 ○○○○○○
価額 金○○万円

 

(3)以上に対して割り当てる株式の数
○○株

 

3)裁判所選任の検査役による財産価値の評価

 

裁判所選任の検査役と呼ばれる専門家から資本金額と現物出資財産の評価額が妥当であるかについての調査を受けます。なお、この検査役の調査は、弁護士・公認会計士・税理士の現物出資の財産に対する評価証明の発行をもって替えることが可能です。
*不動産を現物出資する場合、弁護士等の証明のほかに不動産鑑定士の不動産鑑定書が必要

 

対象物にもよりますが、検査役による調査には月単位の期間を要することもあり、多くの時間と多額の費用がかかります。そのため、以下の要件に該当する場合は検査役の調査を受けなくて済むようになっているのです。

 

  • ・定款に記載され、または記録された価額の総額が500万円を超えない場合
  • ・市場価格のある有価証券について定款に記載され、または記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合
  • ・検査役による調査に替えて、現物出資財産等について定款に記載され、または記録された価額が相当であることについて弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む)、監査法人、税理士または税理士法人の証明(現物出資財産等が不動産である場合は、当該証明および不動産鑑定士の鑑定評価)を受けた場合

 

時間やコストを節約したい場合は特に検査役の調査が不要となる範囲で現物出資するほうが妥当と言えるでしょう。なお、現物出資された財産の価額が500万円以下の場合には設立時の役員の調査報告書が必要になります。

 

4)現物出資の不足額担保責任

 

現物出資の財産価額が定款に記載した価額に著しく不足する場合、発起人および設立時取締役はその不足額を支払う義務を負います(会社法第52条1項)。つまり、定款で記載した現物出資の価額と検査役の評価額が大幅に異なり定款の記載価額が過小である場合、その差額を発起人は補填しなければなりません。

 

②現物出資の手続

現物出資の手続は以下の通りです。

 

1)定款への記載

 

まず、定款に現物出資する内容を記載します。

 

2)「財産引継書」の作成

 

発起人は財産引継書を作成して、設立する会社(発起人総代)に提出しなければなりません。書面の内容は以下のようになります。

 

財産引継書

 

私所有の下記財産を現物出資として給付します。

 

令和○年○月○日
東京都○○区○○町○○丁目○番○号
発起人  ○○○○ 印
○○○○株式会社 御中

 

 

(1)普通乗用車
○○社製 ○○ 平成○○年式(型式)
車台番号 ○○○○
価額 金○○万円

 

(2)パーソナルコンピューター
○社製
型番 ○○○○
製造番号 ○○○○○○
価額 金○○万円

 

以上この価額の合計 金○○万円

 

なお、現物出資については定款にも記載しているため財産引継書の記載は、定款の記載と同じ表記にします。定款に記載した住所、氏名、押印を合わせるようにしましょう。また、財産引継書の日付は、定款の認証日以後の日付にします。

 

3)「調査報告書」の作成

 

設立会社の取締役は、現物出資財産の価額が相当であるか否かを調査する「調査報告書」を作成しなければなりません(監査役設置会社の場合は、設立時取締役および設立時監査役)。日付は定款認証日以後の日で財産引継書の日付以後の日付にします。

 

本書には設立時の取締役の全員の署名押印が求められ、監査役を設置する場合には設立時取締役全員に加え設立時監査役の署名押印も必要です。印鑑はできれば実印が望ましいでしょう。

 

調査事項は以下の項目になります。

 

(1)現物出資等にかかる少額財産または有価証券の価額について
・定款に記載された現物出資財産が、総額500万円を超えない場合、その価額が相当かどうかの調査

 

・定款に記載された現物出資財産が、市場価格のある有価証券で、その価額が法務省令で定める算定額を超えない場合、その価額が相当かどうかの調査

 

(2)現物出資等にかかる財産の価額に関する弁護士等の証明について
定款に記載された現物出資財産の価額に関する弁護士等の証明(不動産の場合、弁護士等の証明および不動産鑑定士の鑑定評価)が相当かどうかの調査

 

(3)出資の履行が完了していることについて
・金銭の出資の場合、発起人が定めた払込場所において、払込みがなされたかどうかの調査

 

・現物出資の場合、目的財産の全部の給付がなされたかどうかの調査

 

(4)株式会社の設立手続が法令または定款に違反していないことについて

 

調査報告書の具体的な記載内容は以下の通りです。

 

調査報告書

 

私たちは、設立中の○○○○株式会社の取締役に選任されたので、会社法第46条の規定に基づいて調査した。
その結果は次のとおりである。

 

調査事項

 

1 定款に記載された現物出資財産の価額に関する事項(会社法第33条第10項第1号および第2号に該当する事項)
定款に定めた、現物出資をする者は発起人○○○○であり、出資の目的である財産、その価額並びにこれに対して割り当てる設立時発行株式数は以下のとおりである。

 

(1)普通乗用車
○社製 
車種 ○○○○
平成○○年式(型式)
定款に記載された価額 金○○万円
これに対し割り当てる設立時発行株式 ○○株

 

(2)パーソナルコンピューター
○社製
型番 ○○○
製造番号 ○○○○○
定款に記載された価額 金○○万円
これに対し割り当てる設立時発行株式 ○○株

 

イ 上記(1)については、○○万円以上と見積もられるべきところ、定款に記載した価額は金○○万円であり、これに対して割り当てる設立時発行株式の数は○○株であることから、当該定款の定めは正当なものと認められる。
ロ 上記(2)については、○○万円以上と見積もられるべきところ、定款に記載した価額は金○○万円であり、これに対して割り当てる設立時発行株式の数は○○株であることから、当該定款の定めは正当なものと認められる。

 

2 払い込みが完了していることについては、別紙により認めることができる。

 

3 現物出資の目的たる財産の給付があったことは、別紙財産引継書により認めることができる。

 

4 上記事項以外の設立手続が法令または定款に違反していないことを認めることができる

 

上記のとおり会社法の規定に従い報告する。
令和○年○○月○○日

設立時取締役 ○○○ 印
設立時取締役 ○○○ 印

 

4)裁判所からの検査役による調査

 

会社法33条では、現物出資がある場合、裁判所へ検査役の選任を申立て、調査を受けることを要請しています。検査役の調査は100万円といった多額の費用と月単位の時間を要することになり得るため、検査役の調査対象とならない範囲での現物出資を検討することも重要です。

 

 

3 資本金・出資の考え方・扱い方

資本金・出資の考え方・扱い方

 

ここでは株式会社を設立する際の創業株主間の契約、第3者との投資に関する契約、出資金の使用時期、出資と融資との違い、など資本金に関する考え方やその取扱い方について説明します。

 

 

3-1 株式会社の資本政策

資本政策とは、株式を発行して調達する資本と、資本を提供してくれる株主の構成をどのようにするかを決定することです。つまり、誰を株主として、その株主にいくらずつの株式を割当ていくらの資金を得るかを決める作業と言えるでしょう。

 

株式を得て株主になれば、株主はその会社の株主総会へ出席して議決権を行使できるようになり経営に関与できます。そのため経営者の立場からすれば、株主が多くなると多様な意見や要求などを受ける可能性が高まるため会社運営が困難になりやすいです。

 

また、一部の株主でも大量の株式を保有することになれば、さらに経営への圧力は大きくなるほか、株式数によっては経営権を奪われる危険性が増します。

 

株式発行による資本金の確保や増大は、返済不要の安定資金として会社運営に役立ちますが、その株主の構成によっては後に苦しい経営を強いられかねないため慎重な資本政策の検討が必要です。

 

以上のことから資本政策では、調達資金の額と経営の裁量権をどのように適切に設定するかがポイントになりますが、その際には「創業時の共同出資者間の出資」と「第3者からの出資」の2点を中心に検討するとよいでしょう。

 

①創業時の共同出資者間の出資

創業後、共同出資者間でのトラブルも多いため、その点を考慮した出資割合を検討することが重要です。

 

複数の起業家が共同で出資して会社を立ち上げるケースは多いですが、その後様々な事情により共同出資者が事業から手を引いたり、対立してもめたりといった状況に陥ることも珍しくありません。

 

例えば、2人の起業家が出資金を半分ずつ出し合って会社設立した場合に両者が事業運営で対立すれば、議決権が同数となるため意思決定が困難になってしまいます。

 

また、3人で共同出資(保有株式数は、Aが40%、Bが30%、Cが30%)して会社設立した後、Cが事業から手を引くため株式を買い取ってほしいと申し出るようなケースも少なくありません。

 

保有株式の最も多いA氏がこの会社の代表取締役社長を務めていたとしても、CがBに保有株式を売却すれば会社の経営権はBが握りAは社長の座を奪われることになり得ます。

 

創業の共同出資者・経営者であっても事情が変われば互いに意見が異なり対立したり、会社を去ったりするケースは少なくありません。また、Cが会社を去るころに事業の拡大により株価が大幅に上昇することもあり、買取価格でもめることもあります。

 

ほかにもCがこの会社と競業関係にある会社に転職したり、会社を設立したりする場合、この会社の機密情報やノウハウが流出し事業上の不利益を被りかねません。

 

こうした状況を見越した資本政策が必要であり、トラブルを回避するための「創業株主間契約書」の作成が求められます。

 

●創業株主間契約書

 

創業株主間契約は、複数人の出資者で会社を設立する際に出資者が創業時に保有した株式で将来起こり得るリスクを軽減するために創業株主間でかわす契約のことです。

 

創業株主間契約書はその契約内容を取り決める証拠の書面と言えます。具体的には、創業株主の誰かが退職する場合に退職者が保有している株式を社長など会社に残る株主が買い取れることについて合意することや、合意できない場合の決定方法を決めることを目的に作成されるのです。

 

●創業株主間契約書の作成のポイント

 

創業株主間契約を締結する際のポイントがいくつかありますが、その中でも「買取に関する条項」「譲渡に関する条項」「競業避止義務に関する条項」は特に重要です

 

1)買取に関する条項

 

買取条項は、創業者の誰かが退職や死亡した場合に、他の残った創業者がその者から株式を買い取れるという条項になります。この条項で買い取れる点を定めておかないと退職する本人や死亡した場合の家族にその株式の譲渡を強いることができません。

 

なお、契約書には以下の点を記載することになります。

 

  • ・会社の役員および従業員のいずれかの地位をも喪失した場合
  • ・死亡した場合

 

最低でも上記の内容を含めるほか、「創業者間契約書に定めた事項に違反した場合」「経営専念義務違反」などの記載も検討するとよいでしょう。

 

2)譲渡に関する条項

 

創業株主間契約書で創業株主の譲渡に関する事項を記載しておくべきです。記載項目は、譲渡価格、譲渡の手続、譲渡の禁止事項などになります。

 

譲渡価格は「会社株式の1株あたりの譲渡価額は、退職創業者の当該会社株式1株あたりの取得価額と同額とする」といった内容になるでしょう(様々な考え方あり)。

 

譲渡の手続は、「会社株式の譲渡請求を行う場合、退職する等の者は残る創業者の指示に従い直ちに、当該会社株式を表章する株券を彼らに交付するとともに、会社の取締役会に対する譲渡承認請求、名義書換請求等、会社株式の有効な譲渡に必要なあらゆる手続を行うものとする」といった内容です。

 

譲渡の禁止事項は、「事前の書面の承諾なしに、退職する等の者が保有する会社株式の全部または一部につき、譲渡、貸借、担保設定その他の処分を行ってはならない」といった内容になります。

 

3)競業避止義務

 

「競業避止義務に関する条項」とは、その会社独自の技術やノウハウなどを同種のビジネスに流用することなどを禁止する規定です。

 

退職する創業者が会社の顧客情報や生産ノウハウを活用して別の会社を立ち上げ事業を始めた場合、それは自社の脅威になる可能性が高く、損失を被る恐れがあります。そのため、創業株主間契約書で競業避止義務に関する条項を設けてそのリスクを防止するのです。

 

具体的には、「競合するビジネスを禁止する規定」といった内容になりますが、「事業内容」「競合を禁止する期間」「地域などの制限」などの条件に一定の合理性が求められます。合理性が欠如すれば無効になる可能性もあるため、法律の専門家などの意見を確認するべきです(法令や裁判例も要確認)。

 

②第3者からの出資

第3者からの出資とは、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資家からの出資のことです。有望なベンチャー企業などがビジネスコンテストなどに参加してVC等に認められると出資や融資に結びつくケースが多く見られます。もちろん新規設立会社のすべてが出資してもらえるわけではありません。

 

しかし、第3者から出資を得ると創業期の資金繰りが楽になり事業開始後の経営の安定化を図れたり、想定以上の事業展開ができたりするため、創業間もない会社にとっては貴重な資金調達になるのは間違いないです。

 

ただし、出資は株式を発行して出資者に手渡すことになるため、経営への圧力が高まるというリスクが生じやすくなります。そのリスクの程度を抑える目的で「出資契約書」が利用されるケースも多いです。その契約書のポイントを確認していきましょう。

 

1)出資契約書(投資契約書)とは

 

出資契約書とは、ベンチャー企業などが資金調達のためにVCなどの投資家に対して自社株式を発行して出資してもらう際の契約書のことです。投資(出資)してくれる第3者は様々ですが、主に以下のような企業や投資家がいます。

 

  • ・投資先の成長後にその株式公開(IPO)等により大きな投資リターンを狙うVC
  • ・投資先の事業のパートナー(共同開発企業等)となる会社
  • ・事業への応援のほか、配当金や株主優待などを期待する「エンジェル投資家(個人投資家)」

 

出資を受ける側としては、契約内容で株式数、株式の譲渡価格、役員派遣、配当、将来のIPOやM&Aなどについて不利にならないかの検討が必要です。ただし、投資家からは彼らの利益確保のための条項を要求してきます。

 

例えば、出資した資金が事業の以外の目的で使用されない、不適切な経営で企業価値が低下しない、IPOを実現する、といった内容です。そのため契約書では自社が被るリスクの軽減だけでなく、投資家にとってのメリットとのバランスをとることが重要になります。

 

2)出資契約書の基本内容

 

出資契約書には以下の内容のほか、重要な条項が盛り込まれます。

 

  • ・普通株式や優先株式などの株式の種類
  • ・発行株式数(出資あたりの株式数)
  • ・株式の発行価格(1株あたり)
  • ・実際の出資額の合計(払込金額)
  • ・出資者が資金を支払う払込期日

 

●条項

 

A 表明保証条項
表明保証条項は、投資先である自社の事業内容、財務状況や法務などの情報が真実かつ性格であることを出資者に対して表明して、それを保証するための条項です。

 

投資家は投資する際に対象会社の財務面や法務面に関する調査(デューデリジェンス)を行いますが、その調査は完全とは言えません。そのためそのリスクを補完するために表明保証条項が要求されます。

 

契約時点の事実の表明だけでなく、将来における法律違反や、反社会的勢力との関与などについて記載するケースも多いです。

 

B 株式買取条項
表明保証条項の記載内容が真実でない場合など、出資者から株式買取や損害賠償請求が可能となる内容を規定するのが株式買取条項(株式買取請求権)になります。経営者が表明保証等の契約内容に違反する行為を行った際に、会社や経営者に株式の買取や損害賠償の請求が可能となる条項です。

 

この条項で、経営者株主が会社の経営に専念する義務を定め、取締役の辞任や他社事業の兼業などを禁止する条項が含められることもあります。

 

C 資金使途の制限
投資家が出資した資金を経営者が個人の私的な使用や目的外の使途で利用するのを回避するための条項です。

 

D 株式譲渡の制限
投資家株主が自由にその他の第3者に自社株式を譲渡すれば経営に悪影響を及ぼす「好ましくない投資家」が増える可能性があるため、それを回避するための「株式譲渡の制限」です。

 

E 投資家のExit
VCなどは将来のIPOやM&A(これらが「Exit」)を目的に投資するため、投資を受ける側はExitを要求される可能性が低くありません。そのため事前にExitの内容を規定しておくことは投資を受ける側としても重要です。

 

例えば、「投資時点で設定した目標を達成(IPOやM&A等)した場合には、株式の売却を可能とする」などになります。

 

 

3-2 出資金の使える時期

出資金の使える時期

 

会社法では会社設立時に資本金とした出資金は原則的にいつ事業のために使用しても構いことになっています。

 

会社設立後に金融機関に会社の法人口座を開設しますが、上記の内容から法人口座の開設前に引き出しも問題はなく、発起人口座からの移動はその時点での残高を移動させればよいのです。つまり、振込んだ出資金を全額残してそれを法人口座へ移動させるというような配慮は必要ありません。

 

既に確認した通り、出資金の入金日は定款作成日以降にする必要がありますが、入金した出資金の使用は設立登記の申請前でも可能です。ただし、登記申請する際には出資金の払込証明書と発起人の銀行通帳のコピー(出資金が預金口座に振込まれたという記録)が必要になります。

 

つまり、入金されたという事実が確認できる状態の通帳をコピーしたならその後は会社設立前でも直ぐに引き出せるのです。ただし、提出する通帳の口座に記録されていない出資金を使用すると問題になります。

 

会社を設立し事業を始めるには、事務所、倉庫や工場のほか、機械・設備、事務機・什器や材料・部品などを事前に用意しておく必要があり、それを確保するための代金の支払いが当然必要になります。そうした費用を賄うために資本金があり、活用するべきです。

 

資本金の使用は登記が完了した時点の会社設立から可能になるのでは?と勝手に思い込まれている方がいるかもしれないですが、実際は会社設立前でも可能である点を認識しておきましょう。

 

 

3-3 出資と融資の使い分け

出資者からの出資金は自社株式を発行した対価として支払われるものであり返済する義務はありません。他方、融資は他者からの借金であり返済義務があるものです。

 

一見、出資のほうが創業者・経営者にとって有利に見え融資のほうが損するように思えますが、どちらにもメリットとデメリットがあります。また、出資と融資を提供する内容や条件によって、自社にとっての有利か不利かが変わってくることも少なくありません。

 

つまり、状況次第で両者は有利・不利のどちらにもなり得るのです。そのことを認識して両者を使い分けることが重要であり、イメージでその利用を判断することは避けましょう。

 

両者を使い分け各々有利・有効な調達手段にするためには、各々の特徴、メリット・デメリットを把握することが重要です。

 

①出資の特徴

出資の特徴

 

●メリット

 

1)返済不要

 

出資は借金ではないため返済義務がなくそれ自体により財政を圧迫される心配がありません。配当金の支払いという負担はありますが、経営が厳しい場合は無配にすることも可能です。

 

しかし、融資の場合、返済は義務であり支払利息という負担もあり支払いできない場合は経営危機に陥りますが、出資ならそのリスクはありません。

 

2)ハンズオン等の支援の可能性

 

会社の発展は投資家のExitに繋がるため、投資家は投資先に情報提供や業務提携などの支援(投資先に伴走するような継続的な支援=ハンズオン支援)を行うケースが多いです。つまり、VCなどからの出資は会社の成長を加速させる可能性があります。

 

3)担保・保証人が不要で多額の資金調達も可能

 

融資と違って出資では担保や保証人を要求されることがなく、融資以上の多額の資金を調達できるケースも少なくありません。もちろん事業の将来性などにもよりますが、出資の場合民間の金融機関による融資以上の金額を調達できる可能性があります。

 

●デメリット

 

1)経営の不安定化

出資は自社株式を投資家等に譲渡して株主の立場を与えることになります。つまり、出資は経営権の一部を譲渡する行為に等しく、多く手渡すと経営が不安定になりかねません。

 

2)出資を受ける可能性の低さ

 

どの会社、どんなビジネスでもVCなどから出資を受けられるのではなく、事業の革新性や競争優位性などで将来性の高い会社などだけが対象になります。つまり、既存の平凡は事業で会社設立しても第3者から投資を受けるのは困難なのです。

 

また、成長の見込みの高い会社であってもVC等の目に留まらなくては投資を受けることができないため、VC等が主催するビジネスコンテスト等に積極的に参加しアピールすることなどが求められます。

 

②融資の特徴

融資の特徴

 

●メリット

 

1)経営権の譲渡は不要

 

融資は返済義務がある反面、株式を手渡すことがないため経営権を譲渡しなくて済み経営の安定化が図れます。ただし、銀行などから多額の融資を受けると銀行から役員の派遣を要求されたり、経営に口を挟まれたりするケースは珍しくありません。

 

2)実現可能性の高さ

 

日本政策金融公庫といった公的金融機関からの融資なら出資より実現可能性は高いです。民間の金融機関からの融資は容易ではないですが、日本政策金融公庫の創業融資などは比較的利用しやすいでしょう。

 

融資限度額は利用する会社によって異なってきますが、1000万円までの資金なら公的融資は比較的借りやすいです。

 

3)公的融資なら低利の利息負担

 

日本政策金融公庫の創業資金融資や新事業育成資金融資などの場合基準金利は1%台前半であり、さらに特定の条件に合致する場合特別利率(1%を下回る)が適用されます。

 

出資の場合、返済利息の支払いはないですが、上場するような会社に成長すれば配当金の負担も株価の数%になりかねません。そうした場合、年間の支出では融資のほうが出資よりも負担が軽いこともあるのです。

 

●デメリット

 

1)利息を上乗せした返済義務

 

融資は支払利息を伴う返済義務があり、滞れば倒産危機に直面することになるため、会社にとっては重い負担です。たとえ低利の公的融資などであっても返済を怠れば倒産に追い込まれます。

 

2)保証や担保の可能性

 

民間・公的機関に関わらず金融機関からの融資の場合、担保や保証人が要求される可能性が小さくありません。特に民間の銀行の場合はその傾向が強く、代表者に個人保証を求めるケースがよく見られます。

 

こうした場合、事業の失敗により経営者個人が負担を強いられることになりその後の生活が破綻する恐れが生じます。

 

3)資金使途の制限

 

融資によっては資金使途が制限されるケースも少なくありません。融資の使途として、運転資金や設備資金などが設定される場合、異なった使途に使うと一括返済が求められるケースもあります。借りたどの資金も同じお金には違いはないですが、何に使っても良いというわけではありません。

 

 

4 資本金の調達方法と増やし方

資本金の調達方法と増やし方

 

ここでは出資金をどのように確保し資本金を増大させるかについて説明しましょう。

 

 

4-1 出資金の調達方法の種類とその難易度

目標とする出資金を確保するためには様々な調達方法を知っておく必要があるほか、適切に使い分けられるように各方法の特徴や難易度を創業者・経営者は認識しておくべきです。

 

①創業者等の個人の資金

この資金は、会社を設立する創業者や共同経営者が提供する出資金になります。創業者が貯金や退職金などで確保したお金や財産を会社設立の自己資本とする最も代表的な方法です。

 

創業者個人が用意できる範囲の資金なら、実現可能性は高く容易な手段と言えるでしょう。

 

②個人投資家からの出資

有望なベンチャー企業などに投資する個人投資家のことを「エンジェル投資家」と言います。彼らは創業前の個人や創業後間もない企業に、その事業に必要な資金を提供し援助しれくれます。また、彼らの中には取引先企業の紹介や情報提供といった支援まで行ってくれることもあるのです。

 

以前はエンジェル投資家との出会いは容易ではなかったですが、現代はインターネット上のマッチングサービスが普及しており出資を求める者とエンジェル投資家との出会いの可能性が高まりました。

 

また、マッチングサービスの中には少額の出資を募集できるサービスもあり不特定多数からの出資を得るのが容易になっています。

 

③VCからの出資

VCは有望な個人や企業に投資してその企業のExitにより利益を得ることを生業とする事業者です。一般的にVCは個人投資家以上の資金を保有しており、投資先への投資額も個人以上に多い点が特徴になります。

 

VCは有望な調達先ですが、彼らの目に留まり投資を受けるのは簡単ではありません。個人投資家の中にはリターンの有無や大きさに関係なくその会社を応援するために投資するといったケースも見られますが、VCの場合はリターンを提供しないと投資を得るのは不可能です。

 

そのため自社の事業に魅力があり将来Exitが見込める可能性を提示できないと投資は期待できません。単に革新性や優位性があるだけでなく、事業化や成長の可能性を具体的に示せる戦略・戦術の提示が必要になります。

 

なお、VCのタイプも様々で、現在では以下のようなタイプが存在しています。

 

・金融機関系VC
三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなど

 

・独立系VC
ジャフコ、グロービス・キャピタル・パートナーズ など

 

・政府系VC
DBJキャピタル、INCJなど

 

そのほかにも中小企業投資育成株式会社、大学系VCや自治体系VCなどがあります。なお、VCでは出資以外の支援を行っているケースもあり、経営アドバイス、取引先や開発協力者等の紹介、その他情報提供などを受けられることも多いです。

 

また、VCの一形態として、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)があります。CVCは、広く資金を集めてベンチャー企業などに投資する(ファンドによる投資)というスキームを、自社事業の戦略目的のために実施する投資形態です。

 

例えば、自社の製品開発に必要な技術を有するスタートアップ企業などに投資することなどが挙げられます。また、ファンドの創設に関係なく大企業が自社事業のパートナーになりそうな企業を直接的に支援・育成する目的で投資する形態も多いです。

 

大企業が独自にビジネスコンテストやアクセラレータプログラムなどを用意して投資先を発掘・育成するケースが増えています。

 

 

4-2 出資金を広く・多く集める方法

上記で確認した調達先で、広く・多く集めるための方法を確認していきましょう。

 

①創業者自身の出資金を増やす方法

この場合、創業者自身が会社設立時期に合わせて貯金や退職金などで資産形成を図る必要があります。会社からの給与だけでは十分でない場合、許される範囲において副業などでカバーすることも検討しましょう。

 

ただし、家族の状況なども考慮したファイナンシャルプランニングが不可欠です。子供の教育や家庭生活の充実なども考えた無理のない資産形成を進めることが望まれます。

 

なお、創業者の家族、特に両親からの協力を得ることは重要です。親などの家族に出資してもらったり、親から財産を早めに相続してもらったり(節税対策は必要)することで創業者の出資金を増やせるようにしましょう。

 

②個人投資家からの出資を増やす方法

現在、エンジェル投資家から出資金を得るにはマッチングサイトの利用が有効です。実績が豊富なマッチングサイトに登録することでエンジェル投資家との出会いのチャンスを広げられます。

 

そのマッチングサイトはいくつもありますが、「ANGEL PORT(エンジェルポート)」などが有名です。著名人や独立行政法人など多様な個人投資家が登録しています。

 

なお、現在ではクラウドファンディングを利用した出資金の確保が有望です。出資を前提としたクラウドファンディング・サービスには、株式を提供するタイプ(株式投資型)のほか、株式を提供しないタイプ(返礼品・株主優待・社会貢献等の提供)があり、自社にあったサービスを選ぶことが可能です。

 

ただし、サービス事業者により出資金の確保の実現性が異なる点は注意が必要になります。実現性を高めるためには実績が豊富な株式投資型のサービス(「FUNDINNO(ファンディーノ)」等)などを検討するとよいでしょう。

 

③VCからの出資を増やす方法

VCにより異なりますが、概して以下のような点が出資の判断材料になります。

 

  • ・商品やサービスなど事業での新規性・革新性と競争優位性(ポジション)
  • ・事業分野の成長性(市場規模の拡大可能性、業界ポテンシャル)
  • ・Exitの可能性
  • ・経営者の魅力(実績や信頼性等)
  • ・事業計画の妥当性

 

出資を得るにはVCが主催するビジネスコンテスト等に参加することが不可欠ですが、その際には上記のポイントを的確にまとめた事業計画書やプレゼンテーション資料を披露してアピールしましょう。

 

また、VCも含めたマッチングサイトなどを活用するのも有効です。その他、弁護士などの法律関係、企業や大学等の研究機関関係、同業者のVCなどはVCの情報源となっているため、これらの関連先に自社をアピールしておくとよいでしょう。

 

もちろんVC、CVCや大企業などのコーポレートサイトには投資案件を掲載するケースも多いため、定期的に募集情報を確認することも欠かせません。

 

 

5 まとめ

まとめ

 

返済義務がない出資による資本金の確保は安定資金として企業経営に有効です。特に事業を拡大させていく際の多額の資金確保には融資よりも増資による資金調達が望まれます。

 

仮に会社設立当初は融資に依存した経営で事業をスタートできても過度な返済負担が直ぐに経営危機をもたらしかねないため、徐々に資本の増強に努めるべきです。

 

また、会社設立時では資本金・出資に関する手続も多く、誤ると事業に影響しすることもあるため注意しなければなりません。資本金を振込むタイミングを間違えれば、法人登記の手続で問題が生じ会社設立が遅れることもあります。

 

また、振込んだ出資金を使える時期を勘違いすれば、事務所の設置や商材等の購入などの時期が遅れることもあるのです。現物出資ができる状態なのにその可能性を把握していないと余計な支出を増やし資金繰りをより困難にさせることもあります。

 

株式会社は少額の自己資本で設立可能であるため、資本金の設定を安易に考える傾向が見られます。しかし、資本金の認識や手続を適正に認識して対応しないと上記のような問題に遭遇しかねないため、この機会に資本金・出資の扱い方などを見直してみてください。


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