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キャッシュフロー計算書とは?貸借対照表や損益計算書との違いを徹底解説!

キャッシュフロー計算書は貸借対照表と損益計算書と合わせて財務三表と呼ばれることがありますが、その重要性が認知されはじめたのは最近のことです。貸借対照表や損益計算書はどこの企業も作成していますが、キャッシュフロー計算書を作っていない企業もたくさん存在します。本記事では財務三表の中でも知られていないキャッシュフロー計算書について詳しく説明します。

 

 

1 キャッシュフロー計算書とは何か

まずはキャッシュフロー計算書とは何か、どのような性質を持った表なのかについて説明します。

 

 

1-1 キャッシュフロー計算書とは何か?

キャッシュフロー計算書は英語ではStatements of cash flowsと呼び、その名の通りお金の流れを表した表になります。キャッシュフローが表すお金の流れは「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分かれており、期首から期末にかけて、3つのキャッシュフローでどの位のお金の増減が発生したのか、トータルでどの位キャッシュが増減したのかを表しています。

 

実は、キャッシュフローの重要性が認識されたのは近年のことで、昔は損益計算書や貸借対照表ほどキャッシュフロー計算書が重要だとは思われていませんでした。

 

ただし、経営者の視点からはキャッシュフローは実はとても重要です。後の「キャッシュフロー経営」の部分で詳しく説明しますが、経営者は「キャッシュフロー」をベースに経営戦略を組み立てていることが多いです。

 

たしかに損益計算書や貸借対照表がどうなるかも考えて経営を行いますが、どちらかと言えば、それは税理士の方が得意なことが多い領域で、経営者の経営判断の結果にしか過ぎません。よって、財務三表の中でもキャッシュフロー計算書はその企業の経営方針を最も読み解きやすい資料になっています。

 

 

1-2 キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違い

キャッシュフロー計算書と同じように企業のお金の流れを表すデータとして「資金繰り表」があります。混同しやすいですが、キャッシュフロー計算書と資金繰り表は異なります。

 

資金繰り表とは経営者や経営担当者が資金繰りをチェックする目的でつくる表です。一方で、キャッシュフロー計算書はその決算年度にお金がどのように増えたりしたか減ったりしたかを株主や銀行などに説明する目的でつくる表です。

 

つまり、キャッシュフロー計算書と資金繰り表の大きな違いは3つです。

 

①キャッシュフロー計算書は過去、資金繰り表は未来

1つは、キャッシュフロー計算書は過去の説明、資金繰り表は未来を予想するための表だということです。

 

キャッシュフロー計算書は過去のお金の流れを説明することはできますが、今の資金繰りがどうなっているのか、今後どのように変化していきそうなのかは予想することができません。一方で資金繰り表は未来を予想するためなので、資金繰り表をチェックすれば、いつどの位のお金が出たりが入ったりするのか、どこでの位の資金が必要になるのかわかります。

 

②資金繰りは秘密事項、キャッシュフロー計算書は公開を前提に作る

2つ目に資金繰り表は基本的に会社の外部に公開しない表であることに対して、キャッシュフロー計算書は公開することを前提につくる資料です。

 

資金繰り表は現在と未来の資金繰り予想というセンシティブな情報が含まれています。仮に資金繰り表が誰にでも見られる状態で公開していると、数か月後に資金繰りが悪化して倒産するかもしれない、この銀行や投資家からこの位の資金調達を予定しているなどのように、経営上、社外の人間にも、従業員にも知られたくない情報が流出してしまいます。

 

一方でキャッシュフロー計算書は過去の経営情報ですし、損益計算書や貸借対照表からもある程度どのようなキャッシュフローになっているかを予想することができますし、資金繰り表と比較すると相対的にセンシティブな情報は含まれていません。

 

③キャッシュフロー計算書はフォーマットが決まっているが、資金繰り表は決まっている

3つ目の違いとして、キャッシュフロー計算書は作成するフォーマットが決まっているのに対して、資金繰り表は決まったフォーマットがありません。

 

キャッシュフロー計算書は書き方に多少の違いはあるものの、「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」に分けることや各項目に書くべきことなど全てのキャッシュフロー計算書に適用されるルールが定められています。

 

一方で、資金繰り表については極端に言えば、数字だけが走り書きしているメモ書きでも、経営者や経理担当者が会社の資金繰りを管理できるのならばそれは資金繰り表になります。

 

 

2 キャッシュフロー計算書を作成する目的

では、キャッシュフロー計算書の概要について説明したところで、そもそもなぜキャッシュフロー計算書を作らなければならないのか、その目的と重要性について説明します。

 

 

 

2-1 「キャッシュ」とは?

そもそもキャッシュフロー計算書、キャッシュフロー計算書で定義する「キャッシュ」とは、硬貨や紙幣などのいわゆる「現金」だけではありません。「要求払い預金」と「現金同等物」も「キャッシュ」の定義に含まれています。小切手は先日付小切手のようにすぐに現金化できない小切手を除けば原則的に現金扱いになります。

 

「要求払い預金」とは決済にすぐ使える普通預金や当座預金などの銀行預金のことを指し、貯蓄に使用している定期預金などは含まれません。

 

「現金同等物」とは換金が容易であり、価値がほとんど変動しない現金に近い短期投資のことを指します。例えば、3か月以内に期限が来る定期預金や譲渡性預金、コマーシャルペーパーなどが挙げられます。

 

例えば、3か月以内に満期を迎える受取手形や3か月以内に受取期日を迎える売掛金などすぐに換金することが難しく、回収不能や不渡りによって価値が変動する可能性があるので現金同等物に含まれません。

 

すなわち、現金とすぐに現金化できるモノがキャッシュフロー計算書における「キャッシュ」の定義です。

 

 

 

2-2 キャッシュがなぜ重要なのか

では、なぜ「キャッシュ」の流れをチェックすることが重要なのでしょうか。

 

会社にとって最悪のケースは倒産してしまうことです。では、どのような場合に会社が倒産してしまうのでしょうか。会社が倒産してしまう原因は1つキャッシュが無くなって支払いができなくなることです。

 

理論上は支払いに使えるキャッシュがある限り企業はどれだけ赤字を出しても、債務超過に陥ってしまっても、税金を滞納したり、融資の返済が滞ってしまったりしても倒産はしません。一方で、いくら黒字であっても、土地や建物などを所有していても手元の現金が無くなれば倒産してしまいます。これを黒字倒産と呼びます。つまり、現金をどの位保有しているのかということは企業の安全性を測る一つの重要な指標だと言えます。

 

また、会社は現状維持を目標にすればいずれ衰退していきます。会社が衰退しないためには、常に既存事業のブラッシュアップを行ったり、新規事業を立ち上げたりする必要があります。そのためには知恵さえあれば会社が成長するわけではありません。それ相応の事業投資が必要になります。そして事業投資を行うためには現金が必要です。

 

以上のように、会社を倒産させないためにも、成長させるためにも「キャッシュ」は重要なのです。

 

 

2-3 なぜキャッシュフロー計算書が必要なのか

キャッシュフロー計算書はこのキャッシュに注目して編集された財務データです。その会社のキャッシュを見ることによって、その会社が今どのような状態にあるのかを把握することができます。

 

キャッシュが増減する要素は「キャッシュフロー計算書の読み方」の部分で詳しく説明しますが、「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つに分類できます。

 

そして、この3つのバランスを見ることによって、経営者の事業方針を推測することができます。例えば、営業キャッシュフローが増えているのに投資キャッシュフローも財務キャッシュフローも減っていない場合は、会社に資金を貯めこんで保守的に会社の基盤を作ろうとしている事が想像できます。反対に営業キャッシュフローが大幅にマイナスになっているのに、財務活動キャッシュフローでプラスにしている場合は、事業投資を積極的に行っていることがわかります。

 

先ほど説明した通り、会社の保有するキャッシュが無くなって支払いができずに事業が継続できなくなったときに会社は倒産してしまうので、倒産のリスクが無いか、きちんと資金繰りが回っているのかはキャッシュフロー計算書を見て判断することになります。

 

もう1つキャッシュフロー計算書を作成する重要な理由がありますが、これは貸借対照表や損益計算書とは何かについて説明したあとに詳しく説明します。

 

 

2-4 キャッシュフローの作成は義務ではない?

ちなみにキャッシュフロー計算書は、貸借対照表と損益計算書と並んで企業の重要な財務データですが、貸借対照表と損益計算書は決算から2か月以内に作成して税務署に提出することが義務付けられているのに対して、キャッシュフロー計算書は税務署への提出が義務付けられていません。

 

そもそも、中小企業の中にはキャッシュフロー計算書を作成していない企業もたくさん存在します。実務的にはキャッシュフロー計算書は必要ないからです。貸借対照表、損益計算書、資金繰り表の3つのデータがあれば経営者は十分に意思決定を行うことができます。

 

ただし、キャッシュフロー計算書の重要性は近年高まっています。国際的な会計基準に日本の会計基準を近づけるという理由からグルーバルに活躍している企業はキャッシュフロー計算書を作成する必要がありますし、上場企業はきちんと経営情報を開示して、投資家を保護するために2000年からキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられています。

 

地場の中小企業レベルならキャッシュフロー計算書を作成する必要はありませんが、ある程度会社の事業拡大や積極的な資金調達を狙っていくのならキャッシュフロー計算書は作成した方が良いでしょう。

 

 

3 キャッシュフロー計算書の読み方

では、具体的にキャッシュフロー計算書はどのように読めば良いのかついて説明します。先ほども説明した通り、キャッシュフロー計算書は大きく分けて「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つの項目によって構成されています。項目毎にどのような指標なのかについて示します。

 

 

3-1 営業キャッシュフロー

まずは営業キャッシュフローについて説明します。営業キャッシュフローとは企業が営業活動によって生み出したキャッシュの流れのことを指します。つまり、商品の販売や、経費の支払いなど差によってどの位のお金の流れが発生したかということです。

 

営業キャッシュフローの表示方法には直接法と間接法という2つの方法があります。実務的に使われることが多いのは間接法の方です。

 

直接法では、販売や仕入れ、人件費の支払いなどのように主要な取引毎のキャッシュフローの総額を記載します。間接法では個別の経費を全て記載せずに、税引前当期純利益に減価償却費のような実際のお金の支払いを伴わない減価償却費などの非資金損金と、投資活動や財務活動に含まれるキャッシュフローを加減して記載する方法があります。

 

営業キャッシュフローがプラスになっているということは経営活動できちんと利益が生み出せているということになります。

 

ちなみに損益計算書上の営業利益と、キャッシュフロー計算書上の営業キャッシュフローは直接的には関係ありません。キャッシュフローに記載されているのはあくまでも実際の現金の推移だけなので注意してください。

 

 

3-2 投資キャッシュフロー

続いて紹介するのは「投資キャッシュフロー」です。投資キャッシュフローでは企業がどのように財産を運用しているかが書かれています。

 

投資キャッシュフローの中に含まれている代表的なものとしては、固定資産の取得による支出や売却による収入、同じく有価証券の取得による支出や売却による収入などが考えられます。

 

きちんと事業投資をしている場合は有価証券や固定資産を購入することが多いので、投資活動キャッシュフローはマイナスになりがちです。逆に保有している資産を売却して、手元のキャッシュを手厚くしようとしている場合、キャッシュフローはプラスになります。

 

企業がどの位意欲的に事業投資を行っているのか、今後の企業の成長を予想する先行指標として分析することができます。

 

 

3-3 財務キャッシュフロー

最後に紹介するのが「財務キャッシュフロー」です。財務キャッシュフローからは企業の資金調達の方法を分析することができます。

 

資金調達をすればするほど財務キャッシュフローはプラスになり、逆に融資を返済したりして資金量を少なくするほど財務キャッシュフローはマイナスになります。財務キャッシュフローの欄には株式の発行によって得た収入や、借入金の調達や返済による収支が記載されています。

 

もちろん、事業によってどのようにキャッシュを生み出すのかも経営者の腕の見せ所ですが、どのように資金調達をするのかも経営者の腕の見せ所です。

 

資金調達ができなければ事業投資はできないので、どの位財務キャッシュフローをプラスにして営業や投資に回せるキャッシュを作るのかは重要です。一方でいたずらに資金調達しても使い道がなければ、ただ無駄に利息などの資金調達コストを支払うことになります。

 

このバランスを見極めて適切な量の財務キャッシュフローを算定して、実際に工面するというのは経営者にとって重要なスキルです。

 

 

4 財務三表におけるキャッシュフロー計算書

以上のようにキャッシュフロー計算書とは何かについて説明しましたが、キャッシュフロー計算書と貸借対照表、損益計算書の3つを合わせて、経営や会計の世界ではよく財務三表と呼びます。様々な会社の経営や会計に関するデータでなぜこの3つが特に重要だと言われているのか、キャッシュフロー計算書とそれぞれの表はどのように関係しているのかについて説明します。

 

 

4-1 財務三表とは?

「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つを指して財務三表と呼びます。さまざまな財務に関するデータの中でも、この3つのだけが特にピックアップされているのは、この3つの表を見れば会社の財務状態の重要な部分はだいたい把握できるからです。

 

キャッシュフロー計算書については先ほど説明しましたので、貸借対照表と損益計算書がそれぞれどのような財務データなのかについて説明します。

 

①貸借対照表

貸借対照表は決算日に会社がどのような資産や負債を保有しているのかについて説明する表です。簡単に言えば、会社がどの位金持ちなのかを示しています。

 

貸借対照表は大きく「資産の部」「負債の部」「純資産の部」に分かれており、表の左側に資産の部、右側に負債の部と純資産の部が並んでいます。ちなみに右側と左側の合計金額は必ず一致していて「資産の部=負債の部+純資産の部」となります。

 

「資産の部」とは会社がどのような資産を保有しているのかを示しています。例えば現金をどの位保有しているか、建物や機械をどの位保有していて資産価値はどの位なのか、商品の在庫はどの位あるのかなどの情報が記載されています。

 

「負債の部」とは会社がどの位の借金や借りがあるのかについて示しています。例えば銀行から受けている融資の金額や、取引先にまだ支払っていない買掛金の金額、償還していない社債の金額などが示されています。

 

「純資産の部」は資産から借金を差し引いて、純粋に会社がどの位の資産を保有しているのかを示しています。純資産の内容としては会社が発行している株式の金額、積み上げられている利益の金額、土地や有価証券の含み損益などが含まれています。資産の部と負債の部はマイナスになることはありませんが、純資産の部はマイナスになることがあります。純資産の部がマイナスになった状態のことを「債務超過」と呼び倒産しそうなわけではありませんが、事業の継続が危険な状態です。

 

銀行融資などを受ける際には貸借対照表の内容が重要です。貸借対照表が充実しているということは、それだけ融資のとりっぱぐれが少ない可能性が高いので、銀行は貸借対照表の状態が良い金持ち企業に融資したいと考えます。

 

②損益計算書

損益計算書とは決算日までの1年間に会社にどのような収益や損失が発生したのかを表すデータです。簡単に言えば、会社にどの位収入や支出があるのかを示しています。

 

損益計算書には5つの利益があります。「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」です。(赤字になれば「利益」の部分は「損失」となります)

 

「売上総利益」とは売上から売上原価を差し引いた企業の利益で粗利とも呼ばれます。売上はそのまま商品やサービスを売って得た収益のことを指します。売上原価とはその売上を作るのに直接消費した、商品の仕入れ代金や製造コストなどのことを指します。

 

「営業利益」とは売上総利益から、販売費及び一般管理費(販管費)を差し引いた利益のことを指します。販管費とは売上原価以外の事業に掛かった人件費や広告宣伝費、家賃などのことを指します。

 

「経常利益」とは営業利益に営業外利益・損失を合わせた利益のことを指します。営業外利益(損失)とは本業とは直接関係ないけれども発生している収益や損失のことを指し、銀行に支払っている利息が、会社の空き物件を貸したときの賃貸収入などのことを指します。

 

「税引前当期純利益」とは経常利益に特別利益。損失を合わせた利益のことを指します。特別利益・損失とはその年度だけしか発生しない事業に関係ない利益や損失のことを指します。例えば、保有している土地を売却することによって得た売却益や、地震や火災によって発生した損失が特別利益、損失になります。

 

「当期純利益」は税引前当期純利益から法人税等を差し引いて、会社の最終的に残る利益のことを指します。当期純利益は会社にそのまま利益剰余金として積み立てることができますし、資本金を増やすもできます。また、株主への配当として支払うこともできます。

 

損益計算書の内容ももちろん融資の可否に影響を与えますが、損益計算書は主に税金対策を考える際に重要です。法人税などの税金は会社の収益をベースに税務のルールで調整して算出されるので、利益をいかに減らすのかというのが重要です。(後で説明しますが、利益を出す会社が必ずしも良い会社であるわけでありません。)

 

 

4-2 貸借対照表と損益計算書の曖昧さ 

以上で一通り財務三表について説明しましたので、「なぜキャッシュフロー計算書が必要なのか」の部分で保留していたもう1つの理由について説明します。

 

実は、貸借対照表や損益計算書はまったく同じ会社の財務三表をつくる場合でも異なる形の結果が出てしまうことがあります。このような貸借対照表や損益計算書と比較すると会社の経営状態を正確に把握できるのがキャッシュフロー計算書です。つまり、会社の経営状態を客観的に見るためにキャッシュフロー計算書が必要になるのです。

 

ちなみに、貸借対照表や損益計算書が曖昧になるのは粉飾決算を行っているからでも、途中で計算方法を間違えているからでもなく会計のルールにバリエーションがあるからです。

 

このように適用している会計のルールによって結果が変わってしまう、貸借対照表や損益計算書と比較すると、キャッシュフロー計算書は正確に企業の経営状態を表しています。貸借対照表や損益計算書が持つ曖昧さについて説明し、キャッシュフロー計算書ではどのように扱われているのか説明します。

 

①貸借対照表の曖昧さ

貸借対照表が決算書を作る際に曖昧になってしまいがちなのは、資産の評価方法にバリエーションが存在するからです。

 

例えば、典型的なのが減価償却費です。減価償却とは建物や機械などの価値を使用年数によって割り引く資産の評価方法です。

 

例えば、200万円で10年定額償却、残存価値がゼロになる備品があったとします。

 

この商品の場合、決算書上は、
1年目は200万円
2年目は180万円
3年目は160万円
と毎年20万円ずつ価値が下がっていき、10年目には0円になります。

 

この1年毎の備品の資産価値の下がり幅を減価償却費と呼び今回のケースでは毎年20万円ずつ減価償却費という費用が発生します。

 

ただし、何年で償却するか、どのように償却するのかは会計を行う人の裁量によってある程度コントロールすることができます。例えば、償却の仕方には定額法、定率法という2つの方法があります。定額法の償却方法は先ほど説明したとおりですが、定率法では一定割合で資産を償却していきます。先ほど定額法の資産償却方法について説明しましたが、

 

定率法によって同じ条件で資産を償却すると、
1年目は40万円
2年目は32万円
3年目は約26万円
4年目は約21万円
5年目は約17万円

 

とはじめのうちの償却金額は大きくなって、年度が過ぎる毎に償却費が少なくなっていきます。

 

また、減価償却のための耐用年数は法律によって決められていますが、備品に対する解釈次第でカテゴリーを選択する余地が発生します。

 

例えば先ほどの事例で10年ではなく8年で定額償却すると、1年あたりの減価償却費は25万円となります。

 

このように、20万円、40万円、25万円と3パターンの減価償却があり得えますが、もちろんこの費用は帳簿上の費用で実際の支出が伴っているわけではありません。ただし、どの金額で資産価値が減少していくかによって、会社の持っている帳簿上の資産の見た目は大きくことあります。

 

このように曖昧な貸借対照表上の資産の取り扱いに対して、キャッシュフロー計算書上は備品を購入した年に投資活動キャッシュフローに200万円分のマイナスが発生するだけです。これは償却方法に関係ありません。

 

キャッシュフロー計算書の方が正確に企業の投資状況を表していると言えます。

 

 

②損益計算書の曖昧さ

損益計算書にも曖昧な部分があります。先ほどの減価償却費については損益計算書にも通じる部分がありますが、損益計算書で特に注意したい曖昧さが売上や費用の計上のタイミングと実際のキャッシュイン、キャッシュアウトのタイミングの違いです。

 

損益計算書は発生主義によって売上や経費を計上しています。例えば2月に100万円で仕入れた商品を4月に200万円で販売して、6月に代金を回収するという取引について考えます。

 

実際のお金の動きは、2月に-100万円、6月に+200万円で差し引き100万の利益がでることになります。もちろん、利益というのは帳簿上において発生するお金であり、6月に手に入る現金は200万円であって、100万円ではありません。

 

実態的にはこのようなお金の流れになり、キャッシュフロー計算書でもこのようなお金の流れを示します。

 

一方で損益計算書上は、2月には100万円が在庫に変わりましたが資産が資産に変わっただけなので費用には計上できません。

 

そして4月に売上があがった時に初めて売上200万円と売上原価100万円が計上できるのです。また、4月に売上が200万円計上されますが、これを回収できるのは6月の事でもしかしたら回収できないかもしれませんが、回収できなくなって初めて損金として扱えます。

 

このように損益計算書では売上や原価について記載していますが、実際のお金の流れを反映したものではなく、理論上のタイミングによって売上や原価が計上されているのです。

 

この曖昧さは企業を評価する上でも危険です。例えば、損益計算書上は大きな利益を出せている企業でも、実はその中身を分析すると、ほとんどが売掛金でまだ現金化されていなかったり、中には回収できそうにない売掛金も含まれていたりして、実際の資金繰りが厳しいというケースも存在します。

 

損益計算書と貸借対照表の両方を見比べることによって、このようなリスクは軽減することができますが、キャッシュフロー計算書を見て、実際のお金の流れをチェックした方が早いし確実です。

 

 

5 経営者が知っておくべきキャッシュフローに関する知識

以上のようにキャッシュフロー計算書について詳しく説明していますが、経営者は細かいキャッシュフロー計算書の中身や作り方についてまでは細かく知る必要はありません。最後にキャッシュフローについて経営者が知っておかなければならない、いくつかの重要なことについて説明します。

 

 

 

5-1 キャッシュフロー経営とは?

まず、経営者が意識しなければならないキーワードとして「キャッシュフロー経営」があります。キャッシュフロー経営とはキャッシュフローを意識した経営を行った方が良いということです。実はできる経営者の多くは貸借対照表や損益計算書ではなくキャッシュフローを意識しながら経営を行っている人が多いです。

 

例えば、日本で一番有名な企業の経営者の1人、ソフトバンクの孫正義氏がいます。ソフトバンクについては損益計算書や貸借対照表の中身を見て悲観論を唱える人がいます。

 

ソフトバンクの借金は10兆円以上あるから、もうどうせソフトバンクは倒産してしまうよという人もいますし、ペッパー君などの事業で大赤字を出している時には損益計算書だけを見てなぜペッパー君のような大赤字の事業を継続しているのかという人もいます。

 

しかし、会社はキャッシュさえあれば倒産しないので、いくら借金をしても、赤字を出しても倒産することはありません。伸びている企業の経営者にはむしろ、キャッシュフローには気をつけるけど、赤字や資金調達を恐れない人が多いです。

 

例えば、ソフトバンクの孫氏の他にも、Amazonのジェフ・ベゾスやテスラ・スペースXのイーロン・マスクのように、大赤字や多額の資金調達などの高いリスクを取ることによって、それを源泉として急成長する企業を作る経営者もいます。

 

もちろん、このような経営方法はリスクも高いですが、損益計算書や貸借対照表ではなく、キャッシュフローベースで経営を考えるのは非常に重要な視点です。

 

 

 

5-2 キャッシュフローによる企業の評価方法

また、企業の評価もキャッシュフローで行われることが多いです。企業の評価方法にはさまざまな方法がありますが、最もベーシックな企業の評価方法の1つがDCF法というキャッシュフローをベースにした評価方法でベンチャー投資などによく使われる手法です。

 

DCF法の「DCF」とはDiscounted Cash Flowの略で、将来事業によって発生するであろうキャッシュフローをベースに現在の割引価値を算定する方法です。

 

企業の現在の実績や事業計画通りに企業が成長した場合にこの位のキャッシュフローを生み出すビジネスになるだろうということを推定します。そして未来の事業の完成像から今の進捗具合をもとに現在の企業価値を算定します。

 

 

 

5-3 キャッシュフローで考える企業の成長サイクル

最後にキャッシュフローで考える企業の成長サイクルについて説明して本記事を終了とします。

 

経営戦略の世界ではライフサイクル理論という理論があります。ライフサイクル理論では、企業が成長するステップは導入期、成長期、成熟期、衰退期にわかれます。もちろん、成熟期に入ったけれども、衰退せずに次の商品をヒットさせてもう1度成長期になるというパターンなどもあります。そして、企業がどのタイミングにいるかによって大筋の経営方針が異なります。

 

導入期の企業はまさに商品やサービスを開発して市場に名乗りを上げようという段階です。まだ売上がほとんどなく設備なども十分ではないので、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー共にマイナスになることが多いです。このステージで求められる経営者の意思決定はどのように資金を調達して財務キャッシュフローをプラスにして、その資金をどのように分配するのかということです。

 

そして、商品が上手く入れ始めて市場でのシェアを拡大し始めると成長期の企業になります。成長期の企業になれば、利益も出せるようになり、設備投資ができ、資金調達もしやすくなります。このときの経営者に求められるのが、営業、投資、財務のバランス感覚です。

 

シェアを高めるために営業キャッシュフローをマイナスにしても、財務でキャッシュフローをプラスにして会社の成長スピードをあげるのか、あるいは営業キャッシュフローをプラスにして、それを原資に投資キャッシュフローをマイナスにするかなど、3つのバランスをどのように保つのかの判断が経営者に求められます。

 

成熟期になると、営業キャッシュフローはコンスタントにプラスになっているものの、成長が鈍化してしまっています。このときの経営者に求められるのは何に投資するのかという意思決定です。営業キャッシュフローがプラスのうちに新たな営業キャッシュフローになりそうな事業に投資をしていかないと企業は緩やかに衰退します。営業キャッシュフローや財務キャッシュフローをプラスにして投資キャッシュフローをマイナスにする必要があります。

 

ここで上手く投資に成功すると、企業は再び導入期から成長期に戻ることができます。

 

最後に紹介するのが衰退期です。衰退期には市場がシュリンクしたり会社の競争力がなくなったりすることによって営業キャッシュフローがマイナスになります。一般的にこの状態になると経営再建か事業を畳むことを検討します。衰退期に入ると、銀行から投資のための融資を受けるのが困難になるので、事業を縮小してあまったお金を投資に回すことによって事業の立て直しをします。ただし、衰退期に入ってから行動するとジリ貧になることが多いので仕掛けは成熟の間に済ませておいた方が良いでしょう。

 

営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローにそれぞれどの位プラスマイナスが発生していて、業界がどのようになっているのかを分析すると企業がどのステージにいて、経営者が会社をどうしようとしているかが分析することができます。

 

 


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